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第30話 狙いをつけられる元魔王
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翌日、カプリナは乗馬を教えてくれている騎士と一緒に少し街から離れていた。
近くにある湖まで、少し距離を伸ばしてみることになったからだ。
街道に沿いながら馬を走らせていると、一人の旅人が前からやって来るのが見えた。
なんだろうかなと思った次の瞬間、旅人がカプリナたちの前で立ち止まった。
「どうどう、どう……」
カプリナと騎士は馬を止める。
「危ないじゃないか。どうして急に立ち止まったのかな」
「申し訳ありません。ちょっとお聞きしたことがありまして」
旅人は声の感じからして女性のようだ。
そこで騎士は、顔を見せるようにお願いをする。
かぶっていたフードが外れると、そこから現れたのはかなりきれいな顔立ちをした長髪の女性だった。
「すみません。この先にゾディアーク伯爵領の領都があるとお伺いしたのですが、この先で合っていますでしょうか」
「ああ、それは間違いない。しかし、女性の一人旅は感心しないな。我々でよろしければ案内致しましょう」
「それは助かります。なにせ初めて来る場所ですので、ちょっと不安でしたから」
女性はほっとした様子を見せていた。
だが、すぐになにやら表情が曇り始める。
「あの……やたら視線を感じるのですが、じっと見てませんよね?」
「見てませんよ」
「騎士としてそれは断じてしない」
カプリナも騎士もきっぱりと否定する。
だが、女性は視線を感じ続けている。
そして、はっと何かに気が付くと、首を左右に振っていた。
「どうかされましたか?」
「いえ、どうも気のせいのようでした。それではご案内よろしくお願いします」
なんとも変な反応に、カプリナは首を傾げていた。
女性は馬に乗せるという誘いを断り、一緒になって歩いている。
その間、ずっとカプリナが羽織っているマントに視線が向いているようだった。
(この気配はまさかね……。行方不明だとは聞いていたけれど、こんなところで出会うだなんて)
どうやら、カプリナの羽織っているマントが何かということに薄々と勘づいているようである。
とはいえ、今は街へと案内をしてもらっているので、あまり波風を立てないようにと指摘しないでいた。
街へと戻ってくると、中央の広場まで案内する。
そこで馬を止めた騎士は、奥の方に見える少し高い建物を指して女性に話を始める。
「あそこがこの街の教会ですので、分からないことがあればあそこで聞けばたいていのことは解決すると思います。それ以外にもここにはあそこに商業ギルドが、こっちに傭兵ギルドがありますんで、いろいろと相談してみるといいですよ」
「ありがとうございます。ちょっと新しい場所で活動してみようと思いますので、傭兵ギルドに寄らせて頂きます」
「そうですか。そうだ、申し遅れました。私はこちらの聖騎士であるカプリナ様を指導しております、ホーンドと申します。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
女性は名前を聞かれてちょっと考え込んでいる。
それというのも、カプリナの羽織るマントが予想通りのものと推測した時、正体が分かってしまう可能性があるからだ。
「私は、ララと申します。魔法使いですが、ソロで活動しているのです」
「ララ殿ですね。魔法使いでソロは大変でしょう。よいご縁があることをお祈りしております。それでは我々はこれにて」
騎士はそうとだけ言い残すと、カプリナを連れて再び街の外へと馬を駆っていった。
カプリナとホーンドと別れたララは、すぐに傭兵ギルドへと向けて歩き出す。
(さて、ようやく聖女のいる街にやってきました。パイシズとの約束もありますし、まずは分からないように偽名で活動しませんとね)
まずは傭兵として街の事情を探ろうというわけだ。
ところが、そんなララ、もといライラにはいきなり懸念が持ち上がっていた。
それが、先程であった聖騎士といわれた少女カプリナのことだった。
(私の勘が正しければ、あのマントはスライムによる擬態だ。人間と仲良くできるようなスライムは、言葉の喋れるスラリーくらいだ)
そう、ライラが警戒する対象は、聖女たちのいる教会だけではなくなってしまったのだ。
カプリナにくっついていると思われるスラリーも気をつけなければいけなくなってしまった。
スラリーもライラも、魔王だった時のアリエスを支えていたサポート部隊の所属だ。互いに面識があるというわけなのだ。
(今の私の任務は、この街に住むという聖女の詳しい情報だ。いきなりつまずくわけにはいかない。もしもの時には、昔の仲間とはいえどひと思いに……)
ライラはぎゅっと拳に力が入ってしまう。
だが、すぐに思いとどまって首を左右に強く振る。
気を取り直して入っていった傭兵ギルド。ライラは偽名のララで無事に傭兵登録を済ませる。
(こういう時は、前の魔王様の下で勉強させて頂いた人間界のしきたりが役に立ちますね。さすが魔王様、先見の明があります)
傭兵ギルドを出たライラは、すぐに拠点となる宿を取ると、作戦を立てながらゆっくり休むことにした。
(パイシズ様の命令を必ず遂行し、無事に戻ります。覚悟をしていて下さい、この街の聖女とやら)
ライラが強くこう思った時、教会で眠るアリエスが小さく身震いをしたのだった。
近くにある湖まで、少し距離を伸ばしてみることになったからだ。
街道に沿いながら馬を走らせていると、一人の旅人が前からやって来るのが見えた。
なんだろうかなと思った次の瞬間、旅人がカプリナたちの前で立ち止まった。
「どうどう、どう……」
カプリナと騎士は馬を止める。
「危ないじゃないか。どうして急に立ち止まったのかな」
「申し訳ありません。ちょっとお聞きしたことがありまして」
旅人は声の感じからして女性のようだ。
そこで騎士は、顔を見せるようにお願いをする。
かぶっていたフードが外れると、そこから現れたのはかなりきれいな顔立ちをした長髪の女性だった。
「すみません。この先にゾディアーク伯爵領の領都があるとお伺いしたのですが、この先で合っていますでしょうか」
「ああ、それは間違いない。しかし、女性の一人旅は感心しないな。我々でよろしければ案内致しましょう」
「それは助かります。なにせ初めて来る場所ですので、ちょっと不安でしたから」
女性はほっとした様子を見せていた。
だが、すぐになにやら表情が曇り始める。
「あの……やたら視線を感じるのですが、じっと見てませんよね?」
「見てませんよ」
「騎士としてそれは断じてしない」
カプリナも騎士もきっぱりと否定する。
だが、女性は視線を感じ続けている。
そして、はっと何かに気が付くと、首を左右に振っていた。
「どうかされましたか?」
「いえ、どうも気のせいのようでした。それではご案内よろしくお願いします」
なんとも変な反応に、カプリナは首を傾げていた。
女性は馬に乗せるという誘いを断り、一緒になって歩いている。
その間、ずっとカプリナが羽織っているマントに視線が向いているようだった。
(この気配はまさかね……。行方不明だとは聞いていたけれど、こんなところで出会うだなんて)
どうやら、カプリナの羽織っているマントが何かということに薄々と勘づいているようである。
とはいえ、今は街へと案内をしてもらっているので、あまり波風を立てないようにと指摘しないでいた。
街へと戻ってくると、中央の広場まで案内する。
そこで馬を止めた騎士は、奥の方に見える少し高い建物を指して女性に話を始める。
「あそこがこの街の教会ですので、分からないことがあればあそこで聞けばたいていのことは解決すると思います。それ以外にもここにはあそこに商業ギルドが、こっちに傭兵ギルドがありますんで、いろいろと相談してみるといいですよ」
「ありがとうございます。ちょっと新しい場所で活動してみようと思いますので、傭兵ギルドに寄らせて頂きます」
「そうですか。そうだ、申し遅れました。私はこちらの聖騎士であるカプリナ様を指導しております、ホーンドと申します。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
女性は名前を聞かれてちょっと考え込んでいる。
それというのも、カプリナの羽織るマントが予想通りのものと推測した時、正体が分かってしまう可能性があるからだ。
「私は、ララと申します。魔法使いですが、ソロで活動しているのです」
「ララ殿ですね。魔法使いでソロは大変でしょう。よいご縁があることをお祈りしております。それでは我々はこれにて」
騎士はそうとだけ言い残すと、カプリナを連れて再び街の外へと馬を駆っていった。
カプリナとホーンドと別れたララは、すぐに傭兵ギルドへと向けて歩き出す。
(さて、ようやく聖女のいる街にやってきました。パイシズとの約束もありますし、まずは分からないように偽名で活動しませんとね)
まずは傭兵として街の事情を探ろうというわけだ。
ところが、そんなララ、もといライラにはいきなり懸念が持ち上がっていた。
それが、先程であった聖騎士といわれた少女カプリナのことだった。
(私の勘が正しければ、あのマントはスライムによる擬態だ。人間と仲良くできるようなスライムは、言葉の喋れるスラリーくらいだ)
そう、ライラが警戒する対象は、聖女たちのいる教会だけではなくなってしまったのだ。
カプリナにくっついていると思われるスラリーも気をつけなければいけなくなってしまった。
スラリーもライラも、魔王だった時のアリエスを支えていたサポート部隊の所属だ。互いに面識があるというわけなのだ。
(今の私の任務は、この街に住むという聖女の詳しい情報だ。いきなりつまずくわけにはいかない。もしもの時には、昔の仲間とはいえどひと思いに……)
ライラはぎゅっと拳に力が入ってしまう。
だが、すぐに思いとどまって首を左右に強く振る。
気を取り直して入っていった傭兵ギルド。ライラは偽名のララで無事に傭兵登録を済ませる。
(こういう時は、前の魔王様の下で勉強させて頂いた人間界のしきたりが役に立ちますね。さすが魔王様、先見の明があります)
傭兵ギルドを出たライラは、すぐに拠点となる宿を取ると、作戦を立てながらゆっくり休むことにした。
(パイシズ様の命令を必ず遂行し、無事に戻ります。覚悟をしていて下さい、この街の聖女とやら)
ライラが強くこう思った時、教会で眠るアリエスが小さく身震いをしたのだった。
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