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第37話 生誕祭の話を聞かされる元魔王
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二回目の乗馬体験を終えたアリエスは、翌日の活動を始める。
筋肉痛が起きなかったことがよかったのか、とても嬉しそうにはしゃいでいるようにも見える。
「アリエス、嬉しそうですね」
あまりにもにこやかにしているものだから、牧師はとても気になってしまったようだ。
「はい、お爺ちゃん。今日は体がなんともないですから、とても嬉しいんです」
「おお、そうですか。では、アリエス。朝食の後でもっと嬉しいことをお知らせしましょう」
「それは何ですか、お爺ちゃん」
「食事の後のお楽しみですよ」
育ての親である牧師がごまかしてくるので、アリエスはちょっと不機嫌になりながらも我慢することにした。
朝食を食べ終えたアリエスは、司祭のところにお呼ばれをしていた。育ての親である牧師から話が聞けるかと思っていたので、再び不満顔である。
「よく来ましたね、アリエス」
「司祭様、お話とは何でございますでしょうか」
アリエスは体の前で両手を組んで、ちょっと緊張した様子で司祭と向かい合っている。
しかし、司祭はアリエスの質問に答えずに、椅子に座るように促していた。
アリエスは促されたのでおとなしく椅子に座り、じっと司祭の方を見据えていた。
司祭と牧師も座り、いよいよ話が始まる。
「アリエス、近々あなたの誕生日がきます」
「はい、そうですね。これで私も十一歳ですかね」
「うむ」
デビュタントは十歳になった男女が行うことになっているので、誕生日より後にならないとデビュタントを迎えることはできない。これは洗礼式も同じで、満年齢を迎えてから行う。
アリエスの誕生日は、教会に拾われた日の数日前と推測され、それが正式な誕生日として採用されている。
「それで、今年はデビュタントを迎えましたので、聖女認定を誕生日に合わせて行うことにしました。なので、今年の誕生日は国中はおろか、他国の聖女たちからも祝われることとなります」
「まあ、そんなことをしてもよろしいのですか?」
「はい。アリエスだからこそ行えるようなものです」
アリエスはぱあっと表情を明るくして、両手をポンと叩いている。相当に嬉しそうだ。
(ふふふっ、聖女指名だけなら面白くもなかったが、誕生日を含めて他国の聖女に祝ってもらえるなど、これはこれで楽しいことはないな)
内なる魔王は聖女に殺された意趣返しができると、実に楽しくなっていた。そのために、いつもよりも明るい笑顔を見せているのである。
だが、司祭も牧師も裏ではそんなことをアリエスが考えているとはまったく気が付かず、盛大な誕生日祝いを喜んでいるようにしか思っていないようだった。
「ゾディアーク伯爵家だけではなく、国からも多くの参列者を迎えての盛大な誕生日となるでしょう。王都ではなく、一領主の領都で行われるというのは前代未聞ではありますけれどね」
司祭はおかしそうに笑っていた。
アリエスもつられて笑ってはいるものの、その直後、信じられないことを聞かされてしまう。
「それでアリエス。ちょっと言いづらいことがあるのです」
「なんでしょうか、司祭様」
「乗馬に関して、誕生日を過ぎるまで行えなくなってしまいます」
「えっ……」
アリエスは大きなショックを受けていた。馬に乗れないというだけなのだが、今のアリエスにとっては大きな楽しみを奪われてしまったのだから、この反応なってしまうのは無理もないことなのだ。
それに加えて、教会も街もそのための準備で忙しくなる。
つまり、アリエスには外出の許可すらも出なくなってしまったのだ。
「ええ、それはいくらなんでも酷すぎませんか?」
「仕方ないのです。こんな小さな領都で大規模な行事が行われるのですから。いかんせん人手が足りなさすぎるというものです。必要な人員を回すこととなれば、誰も人員が余りません」
「教会で閉じこもっているなんて……、そんな……」
言葉数が少なくなるくらい、アリエスは精神的ダメージが大きかったようだ。
「アリエス、ショックなのは分かります。ですが、生誕祭の日まで我慢して下さい。サハーだけはあなたにつけておきますから、わがままは彼に叶えてもらって下さい」
「サハー……。そうですか、彼がいるのでしたら、我慢します」
魔王時代の部下であるサハーと一緒ならば、まだ何とか無茶を通せると考えたアリエスは、仕方なく司祭のいうことを聞き入れたのだった。
しかし、今日から誕生日までとなると、思った以上に日数がある。かなり少女に精神が引っ張られてしまった魔王にとって、その期間をちゃんと耐えきれるかどうかというのは未知数だった。
聖女として教育されてきてはいるが、その本質は前世が魔王というわがまま盛りの十歳の少女なのだから。
かくして、アリエスの聖女認定の儀式に向けての準備が始まることとなった。
そこそこの賑やかさではあるが王都から離れたこじんまりとしたゾディアーク伯爵領の領都は、経験したことのない大きな行事の舞台となる。
はたして無事にアリエスの生誕祭と聖女認定の儀式を終えることができるのだろうか。
慌ただしい日常が、いよいよ始まるのだった。
筋肉痛が起きなかったことがよかったのか、とても嬉しそうにはしゃいでいるようにも見える。
「アリエス、嬉しそうですね」
あまりにもにこやかにしているものだから、牧師はとても気になってしまったようだ。
「はい、お爺ちゃん。今日は体がなんともないですから、とても嬉しいんです」
「おお、そうですか。では、アリエス。朝食の後でもっと嬉しいことをお知らせしましょう」
「それは何ですか、お爺ちゃん」
「食事の後のお楽しみですよ」
育ての親である牧師がごまかしてくるので、アリエスはちょっと不機嫌になりながらも我慢することにした。
朝食を食べ終えたアリエスは、司祭のところにお呼ばれをしていた。育ての親である牧師から話が聞けるかと思っていたので、再び不満顔である。
「よく来ましたね、アリエス」
「司祭様、お話とは何でございますでしょうか」
アリエスは体の前で両手を組んで、ちょっと緊張した様子で司祭と向かい合っている。
しかし、司祭はアリエスの質問に答えずに、椅子に座るように促していた。
アリエスは促されたのでおとなしく椅子に座り、じっと司祭の方を見据えていた。
司祭と牧師も座り、いよいよ話が始まる。
「アリエス、近々あなたの誕生日がきます」
「はい、そうですね。これで私も十一歳ですかね」
「うむ」
デビュタントは十歳になった男女が行うことになっているので、誕生日より後にならないとデビュタントを迎えることはできない。これは洗礼式も同じで、満年齢を迎えてから行う。
アリエスの誕生日は、教会に拾われた日の数日前と推測され、それが正式な誕生日として採用されている。
「それで、今年はデビュタントを迎えましたので、聖女認定を誕生日に合わせて行うことにしました。なので、今年の誕生日は国中はおろか、他国の聖女たちからも祝われることとなります」
「まあ、そんなことをしてもよろしいのですか?」
「はい。アリエスだからこそ行えるようなものです」
アリエスはぱあっと表情を明るくして、両手をポンと叩いている。相当に嬉しそうだ。
(ふふふっ、聖女指名だけなら面白くもなかったが、誕生日を含めて他国の聖女に祝ってもらえるなど、これはこれで楽しいことはないな)
内なる魔王は聖女に殺された意趣返しができると、実に楽しくなっていた。そのために、いつもよりも明るい笑顔を見せているのである。
だが、司祭も牧師も裏ではそんなことをアリエスが考えているとはまったく気が付かず、盛大な誕生日祝いを喜んでいるようにしか思っていないようだった。
「ゾディアーク伯爵家だけではなく、国からも多くの参列者を迎えての盛大な誕生日となるでしょう。王都ではなく、一領主の領都で行われるというのは前代未聞ではありますけれどね」
司祭はおかしそうに笑っていた。
アリエスもつられて笑ってはいるものの、その直後、信じられないことを聞かされてしまう。
「それでアリエス。ちょっと言いづらいことがあるのです」
「なんでしょうか、司祭様」
「乗馬に関して、誕生日を過ぎるまで行えなくなってしまいます」
「えっ……」
アリエスは大きなショックを受けていた。馬に乗れないというだけなのだが、今のアリエスにとっては大きな楽しみを奪われてしまったのだから、この反応なってしまうのは無理もないことなのだ。
それに加えて、教会も街もそのための準備で忙しくなる。
つまり、アリエスには外出の許可すらも出なくなってしまったのだ。
「ええ、それはいくらなんでも酷すぎませんか?」
「仕方ないのです。こんな小さな領都で大規模な行事が行われるのですから。いかんせん人手が足りなさすぎるというものです。必要な人員を回すこととなれば、誰も人員が余りません」
「教会で閉じこもっているなんて……、そんな……」
言葉数が少なくなるくらい、アリエスは精神的ダメージが大きかったようだ。
「アリエス、ショックなのは分かります。ですが、生誕祭の日まで我慢して下さい。サハーだけはあなたにつけておきますから、わがままは彼に叶えてもらって下さい」
「サハー……。そうですか、彼がいるのでしたら、我慢します」
魔王時代の部下であるサハーと一緒ならば、まだ何とか無茶を通せると考えたアリエスは、仕方なく司祭のいうことを聞き入れたのだった。
しかし、今日から誕生日までとなると、思った以上に日数がある。かなり少女に精神が引っ張られてしまった魔王にとって、その期間をちゃんと耐えきれるかどうかというのは未知数だった。
聖女として教育されてきてはいるが、その本質は前世が魔王というわがまま盛りの十歳の少女なのだから。
かくして、アリエスの聖女認定の儀式に向けての準備が始まることとなった。
そこそこの賑やかさではあるが王都から離れたこじんまりとしたゾディアーク伯爵領の領都は、経験したことのない大きな行事の舞台となる。
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慌ただしい日常が、いよいよ始まるのだった。
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