44 / 156
第44話 報告をする元魔王の部下
しおりを挟む
アリエスの生誕祭と聖女指名の儀式が着実に整いつつある中、潜入調査を続けているライラは、依頼を受けて郊外の森へとやって来ていた。
今日は採集系の依頼を受けてやって来ているので、森の奥深くに入り込んでいる。
ライラが依頼の対象である植物を探していると、一人の魔族がふらりと姿を現す。
「パイシズ様の使いの者ですか。よくここが分かったものですね」
「指定をしてきたのはあなたではありませんか、ライラ様。お久しぶりです、ご報告を聞かせて頂きましょう」
どうやら目の前の魔族は、ライラが報告をするために呼び寄せた魔族のようだ。
全身をローブで覆っており、どのような姿かはまったく分からない。
とりあえず、ライラはこの魔族に対してここまでの報告を行う。聞いていた魔族は、その報告の内容に驚いているようだった。
「なんと、行方不明になっているフィシェギルは生きていましたか」
「ええ。驚いたことに、聖女候補の少女の護衛になっていましたね。分からないように全身を隠すような服装をしていますけど、あれは誰が見てもよく分かるでしょう」
「ふむふむ。これはパイシズ様だけでよろしいですかね、伝える相手は」
報告を受けている魔族が、ライラに確認をしている。
それに対してライラは、当然でしょうというような表情を見せている。
「パイシズ以外に話をしてみなさい。間違いなく裏切り者といって攻め入ってきます。まだいろいろと確認したいことがありますから、それはどうしても避けておきたいのですよ」
「承知致しました。では、この報告の全件をパイシズ様に伝える、そういうことでよろしいのですね」
「当然です。私の調査はあくまでパイシズ様からの依頼。他の方に教える義理などありません。あなたも絶対誰にも話さないで下さいね」
「ははっ、もちろんでございますとも」
魔族はライラの言葉に震えながら答えていた。
「それと、今日から五日後にこの街の聖女の生誕祭と聖女認定の儀式が行われます」
「ほほう。それはいよいよ、我々と敵対する存在になるということですな」
「ええ。でも、私はあの聖女を何かと引っ掛かりを覚えていますので、当日の護衛の一人として潜入することになっています」
「ライラ様自らが!」
魔族は目を丸くして驚いている。
「当日はこの国だけではなく、よそからも聖女が集まりますので、かなり危険な任務ですね。聖女によっては私の擬態を簡単に見抜きそうですからね」
「いやはや、ライラ様を失えば、我々への打撃はかなり大きいですぞ」
「ええ、正直賭けになるでしょうね。魔族を受けて入れているような街なのですから」
ライラはかなり不安を抱えているようである。
「……分かりました。報告はこれですべてでございますね」
「はい、お願いしますね」
「承知致しました。私はパイシズ様とライラ様にご恩があります。いかなることがあっても裏切りませぬ」
ローブに身を包んだ魔族は、ライラから一歩距離を取る。
「それでは、ライラ様。ご無事を願っておりますぞ」
報告のすべてを受け取った魔族は、その場から霧のように姿をかき消してしまった。
魔族が立ち去ったのを確認すると、ライラはため息をひとつついて、採集作業を再開させたのだった。
―――
ライラから報告を受けた魔族が、拠点へと戻ってくる。
その足で真っすぐパイシズのところへとやって来た。
「パイシズ様、ライラ様より報告を受け取って参りました」
「おお、ご苦労だったな、ピスケース」
パイシズはピスケースと呼んだローブに身を包んだ魔族を手を広げて迎え入れていた。
「さすがは我が息子だな。だが、私と二人きりで一緒にいる時は父上と呼んで構わぬからな?」
ばさりとローブが外されると、そこからパイシズによく似た感じの顔をした魔族が姿を見せる。なるほど、親子というのも頷ける風貌だ。
「ふむふむ……。サハーが生きていたか。しかも、聖女の護衛を務めているとは、これはなんとも信じがたいことだな……」
「裏切りですかね?」
「いや、サハーは忠義にあつい男だ。簡単に裏切るなど考えられる」
報告を見ながら、パイシズは険しい顔で唸り続けている。
「これも気になるな」
「どこですか、父上」
パイシズが指差す部分をピスケースが覗き込んでいる。
「サハーと並んで、前魔王様の部下であったスラリーだな。奴までが聖女の周りで働いている」
「スラリーですか。私はその魔族をよく知りませんね」
「ライラと同じ諜報部の魔族だったからな。一部の魔族しか知らぬ存在だ。なにせスライムだからな」
「なんと?!」
パイシズから聞かされた内容に、ピスケースが大きく驚いている。
「サハーにスラリー、この二体を従える聖女……。ライラの続報を待つしかあるまいな」
「左様でございますか、父上」
ライラからの報告は、パイシズにとってとても衝撃的な内容だった。
自分たちと同じように聖女によって倒されてしまった魔王に仕えていた魔族が、そろいもそろって聖女の下で働いているのだから。
だが、自分たちは今の新しい魔王の下で働く身。自由に動けないもどかしさに、パイシズはライラへと期待のすべてを賭けるしかなかったのだった。
今日は採集系の依頼を受けてやって来ているので、森の奥深くに入り込んでいる。
ライラが依頼の対象である植物を探していると、一人の魔族がふらりと姿を現す。
「パイシズ様の使いの者ですか。よくここが分かったものですね」
「指定をしてきたのはあなたではありませんか、ライラ様。お久しぶりです、ご報告を聞かせて頂きましょう」
どうやら目の前の魔族は、ライラが報告をするために呼び寄せた魔族のようだ。
全身をローブで覆っており、どのような姿かはまったく分からない。
とりあえず、ライラはこの魔族に対してここまでの報告を行う。聞いていた魔族は、その報告の内容に驚いているようだった。
「なんと、行方不明になっているフィシェギルは生きていましたか」
「ええ。驚いたことに、聖女候補の少女の護衛になっていましたね。分からないように全身を隠すような服装をしていますけど、あれは誰が見てもよく分かるでしょう」
「ふむふむ。これはパイシズ様だけでよろしいですかね、伝える相手は」
報告を受けている魔族が、ライラに確認をしている。
それに対してライラは、当然でしょうというような表情を見せている。
「パイシズ以外に話をしてみなさい。間違いなく裏切り者といって攻め入ってきます。まだいろいろと確認したいことがありますから、それはどうしても避けておきたいのですよ」
「承知致しました。では、この報告の全件をパイシズ様に伝える、そういうことでよろしいのですね」
「当然です。私の調査はあくまでパイシズ様からの依頼。他の方に教える義理などありません。あなたも絶対誰にも話さないで下さいね」
「ははっ、もちろんでございますとも」
魔族はライラの言葉に震えながら答えていた。
「それと、今日から五日後にこの街の聖女の生誕祭と聖女認定の儀式が行われます」
「ほほう。それはいよいよ、我々と敵対する存在になるということですな」
「ええ。でも、私はあの聖女を何かと引っ掛かりを覚えていますので、当日の護衛の一人として潜入することになっています」
「ライラ様自らが!」
魔族は目を丸くして驚いている。
「当日はこの国だけではなく、よそからも聖女が集まりますので、かなり危険な任務ですね。聖女によっては私の擬態を簡単に見抜きそうですからね」
「いやはや、ライラ様を失えば、我々への打撃はかなり大きいですぞ」
「ええ、正直賭けになるでしょうね。魔族を受けて入れているような街なのですから」
ライラはかなり不安を抱えているようである。
「……分かりました。報告はこれですべてでございますね」
「はい、お願いしますね」
「承知致しました。私はパイシズ様とライラ様にご恩があります。いかなることがあっても裏切りませぬ」
ローブに身を包んだ魔族は、ライラから一歩距離を取る。
「それでは、ライラ様。ご無事を願っておりますぞ」
報告のすべてを受け取った魔族は、その場から霧のように姿をかき消してしまった。
魔族が立ち去ったのを確認すると、ライラはため息をひとつついて、採集作業を再開させたのだった。
―――
ライラから報告を受けた魔族が、拠点へと戻ってくる。
その足で真っすぐパイシズのところへとやって来た。
「パイシズ様、ライラ様より報告を受け取って参りました」
「おお、ご苦労だったな、ピスケース」
パイシズはピスケースと呼んだローブに身を包んだ魔族を手を広げて迎え入れていた。
「さすがは我が息子だな。だが、私と二人きりで一緒にいる時は父上と呼んで構わぬからな?」
ばさりとローブが外されると、そこからパイシズによく似た感じの顔をした魔族が姿を見せる。なるほど、親子というのも頷ける風貌だ。
「ふむふむ……。サハーが生きていたか。しかも、聖女の護衛を務めているとは、これはなんとも信じがたいことだな……」
「裏切りですかね?」
「いや、サハーは忠義にあつい男だ。簡単に裏切るなど考えられる」
報告を見ながら、パイシズは険しい顔で唸り続けている。
「これも気になるな」
「どこですか、父上」
パイシズが指差す部分をピスケースが覗き込んでいる。
「サハーと並んで、前魔王様の部下であったスラリーだな。奴までが聖女の周りで働いている」
「スラリーですか。私はその魔族をよく知りませんね」
「ライラと同じ諜報部の魔族だったからな。一部の魔族しか知らぬ存在だ。なにせスライムだからな」
「なんと?!」
パイシズから聞かされた内容に、ピスケースが大きく驚いている。
「サハーにスラリー、この二体を従える聖女……。ライラの続報を待つしかあるまいな」
「左様でございますか、父上」
ライラからの報告は、パイシズにとってとても衝撃的な内容だった。
自分たちと同じように聖女によって倒されてしまった魔王に仕えていた魔族が、そろいもそろって聖女の下で働いているのだから。
だが、自分たちは今の新しい魔王の下で働く身。自由に動けないもどかしさに、パイシズはライラへと期待のすべてを賭けるしかなかったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる