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第76話 聖女に会いたい元魔王の部下
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ゾディアーク伯爵領の領都に向けて、一人の魔族が移動をしている。
それは、ライラと何度か接触経験のある、パイシズの息子であるピスケースだった。
(まさか私に聖女と接触してこいと命令が下るとは思いませんでしたね)
ピスケースは予想外の命令に驚きながらも、父親の命令だからとおとなしく従っている。
(しかし、なにゆえ敵である聖女に助けを求めるというのでしょうか。私には、到底理解できませんね)
疑問を感じながらも、ピスケースはサンカサス王国のゾディアーク伯爵領の領都を一直線に目指す。
いつもなら途中の森でライラと落ち合っているところだが、今回は街が目的地だ。それゆえ、ピスケースは留まることなくさらに突き進んでいく。
近くまでやって来たピスケースではあったが、どうやって街の中に入るのか、そのことを考えているようだった。
それというのも、魔族には分かりやすい特徴というものがあるからだ。
人間に近しい姿の場合、たいていは頭に角を持っているという特徴がある。
その角の大きさはさまざまであり、ライラの場合は思ったよりも小さく目立たない。それに加えて変化の魔法も使えるとあって、難なく街に入ることができたのだ。
ところが、ピスケースの場合はそうはいかない。角はそこそこ大きく、さらに変化の魔法も使えない。肌の色もあって、目立って仕方がないのである。
ここまで来て手がないとなると、さすがのピスケースも困り果てたものである。
「何をしてるのですか、ピスケース」
「どわっ!」
考え込んでいる後ろから声が聞こえてきて、ピスケースは驚きのあまり飛び上がってしまっていた。
「その声は、ライラか。急に気配もなく出てこないで下さい」
心臓をばっくばくとさせながら、ピスケースは文句を言っている。
ところが、ライラは呆れた表情でピスケースを見ている。
「あのねえ。あなたも諜報ならこれくらいすぐに分かったでしょうに。何をそんなに考え込んでいるのですか」
両手を腰に当てて、ピスケースに言い返している。
そんなことを言われても困るとさらにいい返そうとしたピスケースだったが、今は言い合っている時ではないと、姿勢を正している。
「父上……、パイシズ様より新たな命を下され、私はここまでやってきた次第です」
「あら、パイシズ様が?」
ピスケースの話す内容に、ちょっとびっくりするライラである。
すぐさま辺りを見回したライラは、ピスケースに場所を変えるようにと提案を出す。
いかんせん、街から近すぎるのだ。魔族とともにいる姿を見られれば、サハーやスラリーがいたとしてもどう思われるか分かったものではない。傭兵としての信用を積み重ねてきたライラは慎重になっているのである。
ライラの事情をピスケースも理解したらしく、ちょっと離れた目立たない場所へとやってきた。
「それで、どういうご命令なのかしら」
ライラが改めて問いかけると、ピスケースは少し表情を曇らせた。
「実は、魔王軍のことで、サンカサスの聖女に相談をしてこいと言われたのです」
「な、なるほど……」
ピスケースの話を聞いて、ライラは思わず事情を察してしまった。
最近まで自分もその組織の中にいたので、パイシズがピスケースにそのような命令を出した意図に気が付いてしまったのだ。
ところが、ライラは腕を組んで悩みこんでしまう。
「ライラ殿?」
態度が気になってしまったピスケースは、ライラに確認をしてしまう。
「いや、最近アリエス様は、魔力の制御を身につけるために、王都から魔法使いを呼んで特訓をしている最中なのですよ」
「それなら、空く時間があるでしょうに。接触に問題はないと思いますが?」
事情を知らないピスケースが、ライラに確認をする。
ところが、ライラは首を横に振っていた。
「朝から夕方までみっちりとなのですよ。しかも、毎日。アリエス様は魔力制御について、本気で学ばれているようです。魔王様の時のように強引に抑え込むといったことができませんからね」
「なるほど……。人間の体は脆弱ですからね。ちょっと魔力を強く入れるだけで、簡単に弾けますからね」
なんとも恐ろしいことを言うピスケースである。
だが、ライラもその内容に何度も頷いている。さすがは諜報。この分では近しいことを何かやった可能性が考えられる。
「接触が図れるとなれば……、次のカプリナさんとの乗馬訓練の時でしょうかね。その時だけは、魔法使いもついて来れないみたいですから」
「それはよかった。何日後だ?」
「次は、確か三日後だったはずです。十日に一度という頻度で行ってらっしゃいますからね」
「むむむ……、三日か」
ピスケースはなぜか険しい表情になっていた。
「仕方ありませんよ。サハーと接触してみましたが、今のアリエス様には余裕がありません」
そういって、ライラはちょっとした案を思いついたようだ。
「そうですよ。サハーを使いましょう。彼ならアリエス様の護衛を仰せつかっていますから、伝言くらい行うことは可能です」
「そうか。ならばさっそくそれで頼もう。父上から頼まれたのは、こういう内容だ。すぐさま伝えてくれ」
ピスケースは魔法で書面を作り出すと、ライラに託していた。
書面を受け取ったライラは、依頼だけこなしたら届けると約束してくれたようである。
アリエスとピスケースの接触。それは容易にはいかないようだった。
それは、ライラと何度か接触経験のある、パイシズの息子であるピスケースだった。
(まさか私に聖女と接触してこいと命令が下るとは思いませんでしたね)
ピスケースは予想外の命令に驚きながらも、父親の命令だからとおとなしく従っている。
(しかし、なにゆえ敵である聖女に助けを求めるというのでしょうか。私には、到底理解できませんね)
疑問を感じながらも、ピスケースはサンカサス王国のゾディアーク伯爵領の領都を一直線に目指す。
いつもなら途中の森でライラと落ち合っているところだが、今回は街が目的地だ。それゆえ、ピスケースは留まることなくさらに突き進んでいく。
近くまでやって来たピスケースではあったが、どうやって街の中に入るのか、そのことを考えているようだった。
それというのも、魔族には分かりやすい特徴というものがあるからだ。
人間に近しい姿の場合、たいていは頭に角を持っているという特徴がある。
その角の大きさはさまざまであり、ライラの場合は思ったよりも小さく目立たない。それに加えて変化の魔法も使えるとあって、難なく街に入ることができたのだ。
ところが、ピスケースの場合はそうはいかない。角はそこそこ大きく、さらに変化の魔法も使えない。肌の色もあって、目立って仕方がないのである。
ここまで来て手がないとなると、さすがのピスケースも困り果てたものである。
「何をしてるのですか、ピスケース」
「どわっ!」
考え込んでいる後ろから声が聞こえてきて、ピスケースは驚きのあまり飛び上がってしまっていた。
「その声は、ライラか。急に気配もなく出てこないで下さい」
心臓をばっくばくとさせながら、ピスケースは文句を言っている。
ところが、ライラは呆れた表情でピスケースを見ている。
「あのねえ。あなたも諜報ならこれくらいすぐに分かったでしょうに。何をそんなに考え込んでいるのですか」
両手を腰に当てて、ピスケースに言い返している。
そんなことを言われても困るとさらにいい返そうとしたピスケースだったが、今は言い合っている時ではないと、姿勢を正している。
「父上……、パイシズ様より新たな命を下され、私はここまでやってきた次第です」
「あら、パイシズ様が?」
ピスケースの話す内容に、ちょっとびっくりするライラである。
すぐさま辺りを見回したライラは、ピスケースに場所を変えるようにと提案を出す。
いかんせん、街から近すぎるのだ。魔族とともにいる姿を見られれば、サハーやスラリーがいたとしてもどう思われるか分かったものではない。傭兵としての信用を積み重ねてきたライラは慎重になっているのである。
ライラの事情をピスケースも理解したらしく、ちょっと離れた目立たない場所へとやってきた。
「それで、どういうご命令なのかしら」
ライラが改めて問いかけると、ピスケースは少し表情を曇らせた。
「実は、魔王軍のことで、サンカサスの聖女に相談をしてこいと言われたのです」
「な、なるほど……」
ピスケースの話を聞いて、ライラは思わず事情を察してしまった。
最近まで自分もその組織の中にいたので、パイシズがピスケースにそのような命令を出した意図に気が付いてしまったのだ。
ところが、ライラは腕を組んで悩みこんでしまう。
「ライラ殿?」
態度が気になってしまったピスケースは、ライラに確認をしてしまう。
「いや、最近アリエス様は、魔力の制御を身につけるために、王都から魔法使いを呼んで特訓をしている最中なのですよ」
「それなら、空く時間があるでしょうに。接触に問題はないと思いますが?」
事情を知らないピスケースが、ライラに確認をする。
ところが、ライラは首を横に振っていた。
「朝から夕方までみっちりとなのですよ。しかも、毎日。アリエス様は魔力制御について、本気で学ばれているようです。魔王様の時のように強引に抑え込むといったことができませんからね」
「なるほど……。人間の体は脆弱ですからね。ちょっと魔力を強く入れるだけで、簡単に弾けますからね」
なんとも恐ろしいことを言うピスケースである。
だが、ライラもその内容に何度も頷いている。さすがは諜報。この分では近しいことを何かやった可能性が考えられる。
「接触が図れるとなれば……、次のカプリナさんとの乗馬訓練の時でしょうかね。その時だけは、魔法使いもついて来れないみたいですから」
「それはよかった。何日後だ?」
「次は、確か三日後だったはずです。十日に一度という頻度で行ってらっしゃいますからね」
「むむむ……、三日か」
ピスケースはなぜか険しい表情になっていた。
「仕方ありませんよ。サハーと接触してみましたが、今のアリエス様には余裕がありません」
そういって、ライラはちょっとした案を思いついたようだ。
「そうですよ。サハーを使いましょう。彼ならアリエス様の護衛を仰せつかっていますから、伝言くらい行うことは可能です」
「そうか。ならばさっそくそれで頼もう。父上から頼まれたのは、こういう内容だ。すぐさま伝えてくれ」
ピスケースは魔法で書面を作り出すと、ライラに託していた。
書面を受け取ったライラは、依頼だけこなしたら届けると約束してくれたようである。
アリエスとピスケースの接触。それは容易にはいかないようだった。
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