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第113話 自ら手を下す元魔王
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「グラウンド・ピアッシング・ソーン!」
ヴァコルが魔法を使うと、ラースに向けて岩のとげが大量に出現する。
「小癪な! この程度で俺様が貫けると思っておるのか!」
一瞬怯んだものの、ラースは棍棒を振り回して岩のとげを破壊しようとする。
「ふんっ!」
棍棒で岩のとげを破壊するラース。しかもそれだけではなく、アリエスたちを狙うように岩の破片を飛ばしてくる。
ところが、そんな攻撃はアリエスの防御魔法の前にまったく意味はなかった。
アリエスが張ったハイシールドは、ラースの力の乗った破片攻撃をすべて弾いてしまっていた。
「なんだと?!」
驚くラースだが、それだけでは済まなかった。
にょきっと砕いた岩からさらに新たなとげが生えてきたのだ。
「くそっ、なんだこれは!」
ラースはさらにとげを砕いていくが、砕けば砕くほど、新たなとげが生えてくる。それこそ無限増殖のように、にょきにょきと鋭いとげがラース目がけて襲い掛かっている。
「な、なんなのですか。この魔法は」
「ふん。ボクが開発した魔法ですよ。魔力を込めた岩のとげが、衝撃を感知してさらに相手を追い詰めていくんです。回避する方法は放っておくこと」
「なんともまあ、意地の悪い魔法ですね」
「魔族相手ならちょうどいい魔法だと思うけどね。あいつもいいように翻弄されているようですし」
「確かに、そうですね」
魔法の仕組みを理解せず、砕かれては再生してくる岩のとげに、ラースは延々と襲われ続けていた。
だが、さすがに魔王を名乗っているとあって意外としぶとい。
となれば、狙いは自然ともう一体に向かうことになる。
「逃がしませんよ、ディサイト!」
派手な魔法が放たれている中、抗える状態になかったディサイトはこそこそと岩の隙間から逃げ出そうとしていた。
それを、アリエスが見逃すわけがなかった。
「ヴァコル様、司教様や伯爵様、カプリナ様の援護へ向かって下さい。まだ魔族との交戦は続いております。こちらは私に任せて下さい」
「し、しかし……」
アリエスがヴァコルに声をかけるが、ヴァコルはなぜか渋っている。
「このままではあいつらを逃してしまいますし、伯爵様の軍勢もいつまでもつか分かりません。お願いです、すぐに援護へ!」
アリエスの必死のお願いに、ヴァコルはゾディアーク伯爵たちの援護へと向かうことに決めた。
ヴァコルが走り去っていくことを確認すると、アリエスは改めてディサイトを追いかけることにした。
ディサイトはあまり大きくない体が幸いしてか、岩の間から慎重に逃げ出そうとしていた。
「くそっ……。この俺がこんな情けないことになろうとは」
ディサイトは実に悔しそうである。
「あの頭の悪いラースをうまく使って、魔王軍の掌握をしようとしたのに……。くそっ、なんだ、この反則的な聖女の力は!」
魔法を使えばすぐにでも撤退できそうなのに、アリエスの魔法のせいで魔力がうまく練れない。それに加えてヴァコルの放った岩のとげを出現させる魔法で脱出に苦戦していた。壊せば、間違いなく自分の体は岩に貫かれるのが分かっているからだ。
ようやく脱出のめどがついたディサイトだが、それは簡単にいくものではなかった。
「どこに行かれるのかしら、ディサイト」
「なっ!?」
女性の声が聞こえてきたので振り向いてみると、そこには不気味な笑顔を浮かべるアリエスの姿があった。
「ふふっ、知らないのですかね。聖女からは逃げられないということを」
「くそっ! こうなったら……!」
笑顔を浮かべるアリエスを見て、ディサイトはとある行動に出ようとする。
ところが、ガチンと体の動きが止まってしまう。
「なっ、なんだ、これは!」
喋れるものの、体がまったくいうことを聞かない。魔力もうまく練れない状態にあるので、ディサイトは完全に詰みの状態になっていた。
「まったく、私の可愛い部下たちに、よくもここまで酷いことをしてくれたものですね」
丁寧な口調ではあるが、ビリビリとくる威圧が感じられる。
その一言一言に、ディサイトの体が完全に震え上がっていた。
「はっ、お前は聖女だろう。一体、誰を指して部下といっているのかな?」
冷や汗を流しながらも、ディサイトはアリエスに対して強気の姿勢を見せている。影の支配者たる自分が、こんな小娘にいいようにされてたまるかという意地からだった。
ところが、アリエスの口元が不気味に動く。
口角がつり上がり、とても聖女らしからぬ邪悪な笑みを浮かべているのだ。
「そうですか……。それは分かりませんよね。今の私は、完全に神聖力しか持っていませんからね」
じっとディサイトの顔を見つめ続けている。まばたきすらしないその目は、恐怖そのものでしかない。
「第一、表舞台にも出てきていないあなたの種族のことを知っているのです。この時点で悟っていただけなければなりませんよね?」
「なん……だと……?」
アリエスはにっこりと微笑む。
ディサイトの表情が引きつっていく。
「まさか、お前は……。いや、あなた様は……!」
「気付くのが遅いですよ。私の可愛い部下たちに非道なことをさせたその罪、その身で償いなさい」
「やめろ! 謝る、この通り、謝るから!」
「コール・ジャッジメント!」
必死に命乞いをするディサイトだったが、この時のアリエスはまったくもって容赦がなかった。
アリエスが叫ぶと、天空から光の帯が降りてくる。
「私の数少ない攻撃魔法です。その身を焼かれて、果てなさい」
「うぎゃああああっ!!」
地表に到達した光の帯に、ディサイトの体は完全に包まれてしまう。
邪悪な力の持ち主であるディサイトは、神聖力に満ちた光の帯に全身を焼かれ、そのまま消滅してしまったのだった。
ヴァコルが魔法を使うと、ラースに向けて岩のとげが大量に出現する。
「小癪な! この程度で俺様が貫けると思っておるのか!」
一瞬怯んだものの、ラースは棍棒を振り回して岩のとげを破壊しようとする。
「ふんっ!」
棍棒で岩のとげを破壊するラース。しかもそれだけではなく、アリエスたちを狙うように岩の破片を飛ばしてくる。
ところが、そんな攻撃はアリエスの防御魔法の前にまったく意味はなかった。
アリエスが張ったハイシールドは、ラースの力の乗った破片攻撃をすべて弾いてしまっていた。
「なんだと?!」
驚くラースだが、それだけでは済まなかった。
にょきっと砕いた岩からさらに新たなとげが生えてきたのだ。
「くそっ、なんだこれは!」
ラースはさらにとげを砕いていくが、砕けば砕くほど、新たなとげが生えてくる。それこそ無限増殖のように、にょきにょきと鋭いとげがラース目がけて襲い掛かっている。
「な、なんなのですか。この魔法は」
「ふん。ボクが開発した魔法ですよ。魔力を込めた岩のとげが、衝撃を感知してさらに相手を追い詰めていくんです。回避する方法は放っておくこと」
「なんともまあ、意地の悪い魔法ですね」
「魔族相手ならちょうどいい魔法だと思うけどね。あいつもいいように翻弄されているようですし」
「確かに、そうですね」
魔法の仕組みを理解せず、砕かれては再生してくる岩のとげに、ラースは延々と襲われ続けていた。
だが、さすがに魔王を名乗っているとあって意外としぶとい。
となれば、狙いは自然ともう一体に向かうことになる。
「逃がしませんよ、ディサイト!」
派手な魔法が放たれている中、抗える状態になかったディサイトはこそこそと岩の隙間から逃げ出そうとしていた。
それを、アリエスが見逃すわけがなかった。
「ヴァコル様、司教様や伯爵様、カプリナ様の援護へ向かって下さい。まだ魔族との交戦は続いております。こちらは私に任せて下さい」
「し、しかし……」
アリエスがヴァコルに声をかけるが、ヴァコルはなぜか渋っている。
「このままではあいつらを逃してしまいますし、伯爵様の軍勢もいつまでもつか分かりません。お願いです、すぐに援護へ!」
アリエスの必死のお願いに、ヴァコルはゾディアーク伯爵たちの援護へと向かうことに決めた。
ヴァコルが走り去っていくことを確認すると、アリエスは改めてディサイトを追いかけることにした。
ディサイトはあまり大きくない体が幸いしてか、岩の間から慎重に逃げ出そうとしていた。
「くそっ……。この俺がこんな情けないことになろうとは」
ディサイトは実に悔しそうである。
「あの頭の悪いラースをうまく使って、魔王軍の掌握をしようとしたのに……。くそっ、なんだ、この反則的な聖女の力は!」
魔法を使えばすぐにでも撤退できそうなのに、アリエスの魔法のせいで魔力がうまく練れない。それに加えてヴァコルの放った岩のとげを出現させる魔法で脱出に苦戦していた。壊せば、間違いなく自分の体は岩に貫かれるのが分かっているからだ。
ようやく脱出のめどがついたディサイトだが、それは簡単にいくものではなかった。
「どこに行かれるのかしら、ディサイト」
「なっ!?」
女性の声が聞こえてきたので振り向いてみると、そこには不気味な笑顔を浮かべるアリエスの姿があった。
「ふふっ、知らないのですかね。聖女からは逃げられないということを」
「くそっ! こうなったら……!」
笑顔を浮かべるアリエスを見て、ディサイトはとある行動に出ようとする。
ところが、ガチンと体の動きが止まってしまう。
「なっ、なんだ、これは!」
喋れるものの、体がまったくいうことを聞かない。魔力もうまく練れない状態にあるので、ディサイトは完全に詰みの状態になっていた。
「まったく、私の可愛い部下たちに、よくもここまで酷いことをしてくれたものですね」
丁寧な口調ではあるが、ビリビリとくる威圧が感じられる。
その一言一言に、ディサイトの体が完全に震え上がっていた。
「はっ、お前は聖女だろう。一体、誰を指して部下といっているのかな?」
冷や汗を流しながらも、ディサイトはアリエスに対して強気の姿勢を見せている。影の支配者たる自分が、こんな小娘にいいようにされてたまるかという意地からだった。
ところが、アリエスの口元が不気味に動く。
口角がつり上がり、とても聖女らしからぬ邪悪な笑みを浮かべているのだ。
「そうですか……。それは分かりませんよね。今の私は、完全に神聖力しか持っていませんからね」
じっとディサイトの顔を見つめ続けている。まばたきすらしないその目は、恐怖そのものでしかない。
「第一、表舞台にも出てきていないあなたの種族のことを知っているのです。この時点で悟っていただけなければなりませんよね?」
「なん……だと……?」
アリエスはにっこりと微笑む。
ディサイトの表情が引きつっていく。
「まさか、お前は……。いや、あなた様は……!」
「気付くのが遅いですよ。私の可愛い部下たちに非道なことをさせたその罪、その身で償いなさい」
「やめろ! 謝る、この通り、謝るから!」
「コール・ジャッジメント!」
必死に命乞いをするディサイトだったが、この時のアリエスはまったくもって容赦がなかった。
アリエスが叫ぶと、天空から光の帯が降りてくる。
「私の数少ない攻撃魔法です。その身を焼かれて、果てなさい」
「うぎゃああああっ!!」
地表に到達した光の帯に、ディサイトの体は完全に包まれてしまう。
邪悪な力の持ち主であるディサイトは、神聖力に満ちた光の帯に全身を焼かれ、そのまま消滅してしまったのだった。
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