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第115話 追撃する元魔王
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アリエスは、ディサイトを倒した後、ひとまずみんなのところに戻ることにした。
下手にラースを追いかけるよりも、ゾディアーク伯爵の軍勢と魔王軍、双方に出る危害を最小限にとどめたかったからだ。ペガサスに乗れば、おそらく追いかけることは可能だろう。
身体強化を使い、できるだけ早くみんなのところへと戻っていく。
その途中で、アリエスは敗走する魔王軍と遭遇してしまう。
「あら、見覚えのある方々がたくさん」
「げえっ、聖女!」
アリエスがきょとんと何度もまばたきするのに対し、魔族たちの方は会ってはいけないものに出会ってしまったような表情を浮かべていた。
「よかったご無事なのですね。早く退きなさい。二度とラースに従わぬように城には戻らないことをお勧めします」
「……殺されないのか?」
「はい、私はあなた方を逃がします。私は慈悲深い聖女ですから」
両手を胸の前で合わせて、アリエスはにっこりと微笑んでいる。
アリエスの中の魔王は腕を組んで胸を張っているつもりだろうが、聖女なのでこういう動作になるのである。
「おお、ありがたい……」
魔族たちはなぜかアリエスを拝んでいた。
元が魔王なので普通だとは思われるが、今の姿は聖女なのでなんとも不思議な光景になっていた。
「ラースはディサイトという精神を操る魔族と組んで、みなさんを侵攻に駆り出したようです。そのディサイトは倒しましたので、今後を考えると一時的でもラースと距離を取る方がいいでしょう」
「そうだったのか……。俺たちはなんてことを」
「ああ、前の魔王様になんて顔向けをしたらいいんだ」
「大丈夫ですよ。ともかく今は、さっさと逃げなさい。今のままでは人間からの反撃を受けてしまいます」
「ありがてえ。……聖女って敵なはずなのに、なんだかあんたの言うことは信じられる気がするよ」
魔族から聞こえてくる言葉の一つ一つに、アリエスは胸が痛む。
自分が死んだことで、今いる魔族たちに苦労をかけているのかと思うと、いたたまれない気持ちになってしまうのだ。
「どうかご無事で」
「すまない」
言葉が見つからなくて、当たり障りのない言葉をかけるアリエス。だが、その声に対して返ってきた言葉に、アリエスはとても申し訳なくなってしまった。
「さて、伯爵様たちの追撃を極力抑えながら、魔族のみなさんをできるだけ逃がしませんと。ラースによって操られていた哀れな方々ですからね」
アリエスはひとまず、戦いを終結させるために伯爵たちのところへと急いだのだった。
ようやくアリエスは伯爵たちのところまで戻ってきた。
「おお、アリエス様、戻られましたか。一体どうしたのですか、魔族が逃げていくのですが」
「伯爵様、もう決着はつきました。これ以上の深追いは必要ございません」
「それはどういうことでしょうか」
アリエスの説明に、伯爵は首を捻っている。
「ほとんどの魔族が、精神を操る魔族によって無理やり戦わされていたのです。その魔族を討伐しましたので、我に返った魔族たちが状況を理解できずに混乱を起こしているのですよ」
「な、なんと?!」
アリエスの説明に、ゾディアーク伯爵は驚いている。
「私はこの戦いの大ボスである魔族との決着をつけるべく、再び戦場に赴きます。伯爵様はケガ人たちの救護をお願いします」
「分かりました。お気をつけて下さい」
アリエスは伯爵と別れて、まずはペガサスと魔族の兄妹を預けてきたカプリナのところへと向かう。
事情を説明して、兄妹をカプリナに預けると、アリエスはペガサスに乗ってラースを追いかけていく。
その頃のラースは、ようやくヴァコルの魔法から逃れられていた。
「くそっ、なんて面倒な魔法だったんだ。俺様をこんなところまで追い返しおって……」
岩のとげに攻め立てられて、体のあちこちに傷を負っているが、さすがは頑丈が取りえだけあって平然と立っているようだ。
「おい、ディサイト!」
離れてしまったディサイトを呼ぶが、反応がない。
もう一度大声で呼ぶものの、やはり反応が返ってくることはなかった。
「くそっ、逃げたかくたばったか……」
ラースは歯をぐっと食いしばっている。
「この俺様に恥をかかせおって。あの魔法使い、絶対に殺してやる……」
怒りに体を震わせながら、改めてラースはゾディアーク伯爵領へと向かって歩き始める。
「げっ、魔王様?!」
そこに撤退中の魔族が姿を現してしまう。
ラースは出くわした魔族たちをギロリと睨みながら、ゆっくりと近付いていく。
「お前たち、なぜ戻ろうとしている。人間どもを蹂躙しろといったはずだよな?」
「お、仰る意味が分かりません。私は戦うことが嫌いです。なのになぜ……」
「うるさい! とっとと人間を殺しに行け! さもないと……」
ラースは棍棒を振りかざし、魔族へと制裁を加えようとしている。
魔族にラースのこん棒が振り下ろされそうになった時だった。
「お待ちなさい!」
上空から女性の声が響き渡る。
それと同時に、魔族たちを守るように防御魔法が張られ、ラースの攻撃を防いだ。
「どこの誰だ!」
ラースの声が響き渡る。
上空からペガサスが舞い降り、魔族たちを守るようにアリエスは地面へと降り立った。
下手にラースを追いかけるよりも、ゾディアーク伯爵の軍勢と魔王軍、双方に出る危害を最小限にとどめたかったからだ。ペガサスに乗れば、おそらく追いかけることは可能だろう。
身体強化を使い、できるだけ早くみんなのところへと戻っていく。
その途中で、アリエスは敗走する魔王軍と遭遇してしまう。
「あら、見覚えのある方々がたくさん」
「げえっ、聖女!」
アリエスがきょとんと何度もまばたきするのに対し、魔族たちの方は会ってはいけないものに出会ってしまったような表情を浮かべていた。
「よかったご無事なのですね。早く退きなさい。二度とラースに従わぬように城には戻らないことをお勧めします」
「……殺されないのか?」
「はい、私はあなた方を逃がします。私は慈悲深い聖女ですから」
両手を胸の前で合わせて、アリエスはにっこりと微笑んでいる。
アリエスの中の魔王は腕を組んで胸を張っているつもりだろうが、聖女なのでこういう動作になるのである。
「おお、ありがたい……」
魔族たちはなぜかアリエスを拝んでいた。
元が魔王なので普通だとは思われるが、今の姿は聖女なのでなんとも不思議な光景になっていた。
「ラースはディサイトという精神を操る魔族と組んで、みなさんを侵攻に駆り出したようです。そのディサイトは倒しましたので、今後を考えると一時的でもラースと距離を取る方がいいでしょう」
「そうだったのか……。俺たちはなんてことを」
「ああ、前の魔王様になんて顔向けをしたらいいんだ」
「大丈夫ですよ。ともかく今は、さっさと逃げなさい。今のままでは人間からの反撃を受けてしまいます」
「ありがてえ。……聖女って敵なはずなのに、なんだかあんたの言うことは信じられる気がするよ」
魔族から聞こえてくる言葉の一つ一つに、アリエスは胸が痛む。
自分が死んだことで、今いる魔族たちに苦労をかけているのかと思うと、いたたまれない気持ちになってしまうのだ。
「どうかご無事で」
「すまない」
言葉が見つからなくて、当たり障りのない言葉をかけるアリエス。だが、その声に対して返ってきた言葉に、アリエスはとても申し訳なくなってしまった。
「さて、伯爵様たちの追撃を極力抑えながら、魔族のみなさんをできるだけ逃がしませんと。ラースによって操られていた哀れな方々ですからね」
アリエスはひとまず、戦いを終結させるために伯爵たちのところへと急いだのだった。
ようやくアリエスは伯爵たちのところまで戻ってきた。
「おお、アリエス様、戻られましたか。一体どうしたのですか、魔族が逃げていくのですが」
「伯爵様、もう決着はつきました。これ以上の深追いは必要ございません」
「それはどういうことでしょうか」
アリエスの説明に、伯爵は首を捻っている。
「ほとんどの魔族が、精神を操る魔族によって無理やり戦わされていたのです。その魔族を討伐しましたので、我に返った魔族たちが状況を理解できずに混乱を起こしているのですよ」
「な、なんと?!」
アリエスの説明に、ゾディアーク伯爵は驚いている。
「私はこの戦いの大ボスである魔族との決着をつけるべく、再び戦場に赴きます。伯爵様はケガ人たちの救護をお願いします」
「分かりました。お気をつけて下さい」
アリエスは伯爵と別れて、まずはペガサスと魔族の兄妹を預けてきたカプリナのところへと向かう。
事情を説明して、兄妹をカプリナに預けると、アリエスはペガサスに乗ってラースを追いかけていく。
その頃のラースは、ようやくヴァコルの魔法から逃れられていた。
「くそっ、なんて面倒な魔法だったんだ。俺様をこんなところまで追い返しおって……」
岩のとげに攻め立てられて、体のあちこちに傷を負っているが、さすがは頑丈が取りえだけあって平然と立っているようだ。
「おい、ディサイト!」
離れてしまったディサイトを呼ぶが、反応がない。
もう一度大声で呼ぶものの、やはり反応が返ってくることはなかった。
「くそっ、逃げたかくたばったか……」
ラースは歯をぐっと食いしばっている。
「この俺様に恥をかかせおって。あの魔法使い、絶対に殺してやる……」
怒りに体を震わせながら、改めてラースはゾディアーク伯爵領へと向かって歩き始める。
「げっ、魔王様?!」
そこに撤退中の魔族が姿を現してしまう。
ラースは出くわした魔族たちをギロリと睨みながら、ゆっくりと近付いていく。
「お前たち、なぜ戻ろうとしている。人間どもを蹂躙しろといったはずだよな?」
「お、仰る意味が分かりません。私は戦うことが嫌いです。なのになぜ……」
「うるさい! とっとと人間を殺しに行け! さもないと……」
ラースは棍棒を振りかざし、魔族へと制裁を加えようとしている。
魔族にラースのこん棒が振り下ろされそうになった時だった。
「お待ちなさい!」
上空から女性の声が響き渡る。
それと同時に、魔族たちを守るように防御魔法が張られ、ラースの攻撃を防いだ。
「どこの誰だ!」
ラースの声が響き渡る。
上空からペガサスが舞い降り、魔族たちを守るようにアリエスは地面へと降り立った。
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