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第116話 正体を明かす元魔王
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アリエスはラースと魔族たちの間に降り立つ。
ラースをぎっと睨み付けた後、魔族たちに対して視線を向ける。
「大丈夫ですか?」
「えっ?!」
聖女であるアリエスに声をかけられて、魔族たちは戸惑っている。
聖女という存在は、本来は魔族とは敵対関係にある。その認識があるゆえに、魔族たちは戸惑っているのだ。
「ふふっ、私は聖女ゆえに反応に困っているみたいですね」
困惑している魔族に対して、アリエスは優しい目を向けている。
「大丈夫です。私はあなた方の味方です。私にとっての敵は……」
一度目を伏せると、アリエスは再びラースを見る。
「あの男、ただ一人です!」
優しく微笑んでいた目が鋭くなり、指を差しながら大声で言いきっていた。
「はっ、ほざけ。お前のようなガキに、俺様が倒せるというのか?」
全身が傷だらけになっているとはいえ、ラースがまだまだ余裕そうである。
確かに見た目だけなら、アリエスはまだ十一歳の少女だ。魔王を自称するラースからすれば、たとえ聖女であっても相手になるような存在ではないだろう。
そう、ただの聖女であるならば、だ。
だが、ここに立つアリエスは、普通の聖女ではない。
一部の者しか知らないが、聖女に倒された魔王の転生した聖女なのだ。
「おい、お前ら。その小娘を殺したのであれば、逃走したことは見逃してやろう」
ラースはにやりと笑って、目の前にいる魔族に命令を下す。
魔王の命令は絶対という暗黙の了解があるが、アリエスの後ろに立つ魔族たちは、なぜか動くことができなかった。
「おい、なぜ殺さない! そんなガキ、お前たちでも一捻りだろうが!」
動かない魔族に苛立ちを隠せないラースは、大声を出しながら大きく地面を踏みつけている。
その状況の中でも、アリエスは余裕の表情を崩さなかった。
「大丈夫ですよ、あなた方はあれの指示に従わなくても。なんといっても、私があれを倒しますからね」
「なんだと?!」
アリエスが言い放った言葉に、ラースが怒りを露わにしている。
「しかも、俺様に向かって『あれ』とは……。思い上がるのも大概にしろ!」
怒りを抑えきれなくなったラースは、アリエスに向かって突進を仕掛けてきた。
魔族たちは怯んで身構えてしまうが、アリエスはまったくもって慌てる様子はなかった。
「やれやれ、お前の短気は相変わらずのようですねえ。考える頭も持ち合わせていないようですし、あのディサイトのいいように操られてたのでしょうね」
「ほざけぇっ!」
アリエスの呆れた様子に、ラースはますますブチ切れていっている。
「ハイシールド」
アリエスが防壁を展開すると、ラースの攻撃はいとも簡単に止められてしまう。
「ガードインパクト」
淡々とアリエスが次の魔法を放つと、ラースの攻撃の威力がそのままラースへと跳ね返る。
衝撃を跳ね返されたラースは、思った以上に吹き飛んでしまう。
「うげぇっ!」
地面に叩きつけられたラースだったが、本当に頑丈が取りえらしく、簡単に起き上がっている。
「やれやれ、本当に体だけは頑丈ですね」
起き上がる姿に、アリエスは感心している。
「お前のような小娘ごときに、いいようにされてたまるか!」
相当にダメージがあったようだが、普通に立っているあたり、その頑丈さは褒められるレベルだろう。
「まったく、たかがオーガの分際で、誰のおかげで魔王軍の中枢にいられると思っているのですか。思い上がりも甚だしいですよ」
「小娘ごときが、知ったような口を利きおって……。お前なんぞに、俺様の苦労の何が分かるという!」
「知っていますとも。ラースは元々、ただのオーガでしかありませんでした。ですが、ある日、とある魔族に出会ったことで運命が一変したことも」
ラースが何かを言い出したので、アリエスも頭に来たらしい。いきなり、ラースの身の上について語り出したのだ。
「努力は素晴らしかったですよ。オーガといえば魔法は使えない種族ですけれど、そんな身でありながら、簡単な魔法は使えるようになったのですからね。魔族の教え方もよかったのですが、あなた自身にも才能があったのでしょうね」
アリエスが語り始めた内容に、ラースの眉がぴくりと動く。
「バカな……、なぜそれを……」
身に覚えのある内容であったがために、ラースは驚愕の表情を浮かべて仰け反っている。
それでも、アリエスはラースの過去を話すことをやめなかった。
アリエスが語るにしたがって、ラースの表情が段々と青ざめていっている。
「こ、小娘……。お前は一体何者なんだ……。なぜそんなことまで知っている」
ラースがおそるおそるアリエスに確認をしようとしている。
尋ねられたアリエスは、急に笑い始める。まるで気でも触れたように、とても大げさにだ。
「あら、いやですね。ここまでお話しても分かりませんか?」
目の前のラースも、後ろにいる魔族たちもまったく分からないといった表情だ。
アリエスは腰に手を当てて、やれやれといった感じである。そのまま首に手を回して、手を当てた方向に首を傾ける。
「はっ! その仕草は、まさか……!」
アリエスの仕草を見たラースが何かに気が付いたようだ。
「まさか、そんな……。だが、今の内容をすべて知っているのは、たった一人しかおられない」
目の前の事実と、信じたくないという葛藤が、ラースに襲い掛かっている。
頭を抱えるラースの姿に満足したのか、アリエスは再び腰に手を当てて、胸を張って堂々と言い放った。
「私は、聖女キャサリーン様に討伐されたあなたたちの魔王の生まれ変わりです!」
ラースをぎっと睨み付けた後、魔族たちに対して視線を向ける。
「大丈夫ですか?」
「えっ?!」
聖女であるアリエスに声をかけられて、魔族たちは戸惑っている。
聖女という存在は、本来は魔族とは敵対関係にある。その認識があるゆえに、魔族たちは戸惑っているのだ。
「ふふっ、私は聖女ゆえに反応に困っているみたいですね」
困惑している魔族に対して、アリエスは優しい目を向けている。
「大丈夫です。私はあなた方の味方です。私にとっての敵は……」
一度目を伏せると、アリエスは再びラースを見る。
「あの男、ただ一人です!」
優しく微笑んでいた目が鋭くなり、指を差しながら大声で言いきっていた。
「はっ、ほざけ。お前のようなガキに、俺様が倒せるというのか?」
全身が傷だらけになっているとはいえ、ラースがまだまだ余裕そうである。
確かに見た目だけなら、アリエスはまだ十一歳の少女だ。魔王を自称するラースからすれば、たとえ聖女であっても相手になるような存在ではないだろう。
そう、ただの聖女であるならば、だ。
だが、ここに立つアリエスは、普通の聖女ではない。
一部の者しか知らないが、聖女に倒された魔王の転生した聖女なのだ。
「おい、お前ら。その小娘を殺したのであれば、逃走したことは見逃してやろう」
ラースはにやりと笑って、目の前にいる魔族に命令を下す。
魔王の命令は絶対という暗黙の了解があるが、アリエスの後ろに立つ魔族たちは、なぜか動くことができなかった。
「おい、なぜ殺さない! そんなガキ、お前たちでも一捻りだろうが!」
動かない魔族に苛立ちを隠せないラースは、大声を出しながら大きく地面を踏みつけている。
その状況の中でも、アリエスは余裕の表情を崩さなかった。
「大丈夫ですよ、あなた方はあれの指示に従わなくても。なんといっても、私があれを倒しますからね」
「なんだと?!」
アリエスが言い放った言葉に、ラースが怒りを露わにしている。
「しかも、俺様に向かって『あれ』とは……。思い上がるのも大概にしろ!」
怒りを抑えきれなくなったラースは、アリエスに向かって突進を仕掛けてきた。
魔族たちは怯んで身構えてしまうが、アリエスはまったくもって慌てる様子はなかった。
「やれやれ、お前の短気は相変わらずのようですねえ。考える頭も持ち合わせていないようですし、あのディサイトのいいように操られてたのでしょうね」
「ほざけぇっ!」
アリエスの呆れた様子に、ラースはますますブチ切れていっている。
「ハイシールド」
アリエスが防壁を展開すると、ラースの攻撃はいとも簡単に止められてしまう。
「ガードインパクト」
淡々とアリエスが次の魔法を放つと、ラースの攻撃の威力がそのままラースへと跳ね返る。
衝撃を跳ね返されたラースは、思った以上に吹き飛んでしまう。
「うげぇっ!」
地面に叩きつけられたラースだったが、本当に頑丈が取りえらしく、簡単に起き上がっている。
「やれやれ、本当に体だけは頑丈ですね」
起き上がる姿に、アリエスは感心している。
「お前のような小娘ごときに、いいようにされてたまるか!」
相当にダメージがあったようだが、普通に立っているあたり、その頑丈さは褒められるレベルだろう。
「まったく、たかがオーガの分際で、誰のおかげで魔王軍の中枢にいられると思っているのですか。思い上がりも甚だしいですよ」
「小娘ごときが、知ったような口を利きおって……。お前なんぞに、俺様の苦労の何が分かるという!」
「知っていますとも。ラースは元々、ただのオーガでしかありませんでした。ですが、ある日、とある魔族に出会ったことで運命が一変したことも」
ラースが何かを言い出したので、アリエスも頭に来たらしい。いきなり、ラースの身の上について語り出したのだ。
「努力は素晴らしかったですよ。オーガといえば魔法は使えない種族ですけれど、そんな身でありながら、簡単な魔法は使えるようになったのですからね。魔族の教え方もよかったのですが、あなた自身にも才能があったのでしょうね」
アリエスが語り始めた内容に、ラースの眉がぴくりと動く。
「バカな……、なぜそれを……」
身に覚えのある内容であったがために、ラースは驚愕の表情を浮かべて仰け反っている。
それでも、アリエスはラースの過去を話すことをやめなかった。
アリエスが語るにしたがって、ラースの表情が段々と青ざめていっている。
「こ、小娘……。お前は一体何者なんだ……。なぜそんなことまで知っている」
ラースがおそるおそるアリエスに確認をしようとしている。
尋ねられたアリエスは、急に笑い始める。まるで気でも触れたように、とても大げさにだ。
「あら、いやですね。ここまでお話しても分かりませんか?」
目の前のラースも、後ろにいる魔族たちもまったく分からないといった表情だ。
アリエスは腰に手を当てて、やれやれといった感じである。そのまま首に手を回して、手を当てた方向に首を傾ける。
「はっ! その仕草は、まさか……!」
アリエスの仕草を見たラースが何かに気が付いたようだ。
「まさか、そんな……。だが、今の内容をすべて知っているのは、たった一人しかおられない」
目の前の事実と、信じたくないという葛藤が、ラースに襲い掛かっている。
頭を抱えるラースの姿に満足したのか、アリエスは再び腰に手を当てて、胸を張って堂々と言い放った。
「私は、聖女キャサリーン様に討伐されたあなたたちの魔王の生まれ変わりです!」
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