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第136話 司祭から頼みごとをされる元魔王
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司祭に呼ばれたアリエスは、深刻な表情で出迎えられた。
一体何が起きているのだろうかと、心配になってきてしまう。
「司祭様、お呼びでしょうか」
「おお、アリエス。よく来てくれたね。とりあえずそこに座りなさい」
司祭に言われたので、アリエスはおとなしく椅子に腰掛ける。
部屋の中にはアリエスの育ての親である牧師の姿もある。そろって深刻な表情をしているので、アリエスはなかなか不安でたまらない。
元魔王とはいっても、今は十一歳の少女だ。そちらの方がどうしても自然と態度に出てしまうのである。
「どうなさったのでしょうか。魔王軍との話し合いは無事に終わりまして、魔族との大きな衝突は無くなりました。それでも何かご不安でもあるのでしょうか」
アリエスは司祭に対して質問を投げかけている。このようなことを思うのも、まあ当然というところだろう。
聖女としてやることはやり遂げたはずなのである。だというのに、深刻な表情を向けられてしまえば、アリエスが気にならないわけがないのである。
「いや、魔王軍との問題を解決してくれたのは、国としてはありがたい話なのですよ」
司祭はアリエスの問い掛けに、このように答えている。
「でしたら、なぜ」
アリエスは問い掛ける。
司祭は牧師と顔を合わせると、アリエスに向かって話を始める。
「魔族との間で脅威がなくなると、次は何が起こるか分かっているのかな?」
「え……?」
アリエスは思わず言葉を失ってしまう。自分の予想だにしていない事態があるというのかという、意外さからくる反応である。
「……正直、想像しかねます」
アリエスは正直に答える。
なにせ魔王時代にはあまり経験がない話だからだ。
長らく自分が魔王として統治していたということもあって、その間、魔王軍をはじめとした多くの魔族の状況は安定していた。それゆえに、アリエスは司祭の質問に答えられなかったのだ。
「そうか……。アリエスは優しいから分からぬか」
司祭は予想通りだったのか、淡々とした様子で話している。
あまりにも分からない話なので、アリエスは顔を歪めてじろじろと司祭の顔を眺めている。
「司祭様、もったいぶらずにお話し願えませんか?」
「そうだな、話すとしよう」
アリエスの催促に、司祭は話を始めることにした。
「人間というのは実に愚かなものでな、外敵がいなくなると、今度は人間同士で争うのだ」
「まあ、そうなのですね」
司祭の話に、アリエスは驚いた表情を浮かべていた。
ところが、アリエスはなんとなく話が見えてきたのか、司祭の話を遮って、提案を始める。
「分かりました。今度は人間同士の争いを食い止めればよいのですね」
「理解が早くて助かる。教会と聖女同士のつながりがあるとはいえ、どちらも国家には逆らえぬ。魔族という脅威がいたからこそ抑えられていた欲望が、これを機に発露せぬとも限らぬからな」
「そうですね。……となりますと、テレグロス王国でしょうか。キャサリーン様のお話を聞く限りは、あまりいい印象を抱きませんでしたし」
「まあ、そうだな。本当に理解が早いな、アリエスは」
「だてに魔王をしておりませんよ。種族が違えば考えも異なりますからね、魔族というのは。それをまとめ上げていた私の手腕の見せどころでしょうかね」
柔らかな笑みを見せてアリエスを褒める司祭に対して、普段はすることのない仕草で話をするアリエスである。ここはちょっとばかり魔王が顔を出したようだった。
「そこでアリエスに頼みたいことがある」
「分かりました。私にできる限りのことをさせていただきます。なんでも仰って下さい」
司祭が真面目な顔をすると、アリエスもまた、気合いの入った引き締まった表情を見せている。
「そうだな。サンカサスとテレグロス、二国の周辺各国の説得に回ってもらいたい」
「分かりました。平和な世界というのは、私の魔王時代からの望みでございます。かならず、各国の説得を成功させてみせましょう」
「うむ、頼んだぞ、アリエス」
「はい、お任せ下さい」
司祭の言葉に、アリエスはしっかりと頭を下げて約束をしていた。
アリエスが部屋を去ると、司祭と牧師がほっとした様子を見せている。
「ふぅ……。本当に素直に育ってくれたものだな」
「まったくですぞ。魔王と聞かされた時は、心臓が止まる思いでしたからな」
「ほっほっほっ、私もですぞ」
正直なところ、魔王だった人物が転生した姿と聞いた時にはとてもじゃないが信じられなかった。
しかし、魔族を次々と手元に引き込んでいたことを思うと、なんとなくながら納得できる話だった。
「不思議な話ですな」
「ええ、聖女から最も遠い場所にいたと思われる人物が、これだけしっかりと聖女を務めあげているのですからね」
「……アリエスならば、やり遂げてくれるかもしれませんな」
「ええ。サンカサスの聖女として認めた以上、私たちはアリエスに賭けるしかないのですよ」
「何もなければいいのだがのう……」
司祭も牧師も、アリエスのことをかなり気にかけているようだった。
人間たちの国同士の平和な関係を、元魔王のたった十一歳の少女に託すことになったのだ。気にならない方がおかしいというものである。
「我々でも、できるだけ手助けをしなければなりませんな」
「ええ、各国の教会に書簡を出すこととしましょう」
頼むだけでは、育ての親として情けないと考えた司祭と牧師は、できる限りの援助をと思い、各国の教会に向けた書簡を認めることにしたのだった。
一体何が起きているのだろうかと、心配になってきてしまう。
「司祭様、お呼びでしょうか」
「おお、アリエス。よく来てくれたね。とりあえずそこに座りなさい」
司祭に言われたので、アリエスはおとなしく椅子に腰掛ける。
部屋の中にはアリエスの育ての親である牧師の姿もある。そろって深刻な表情をしているので、アリエスはなかなか不安でたまらない。
元魔王とはいっても、今は十一歳の少女だ。そちらの方がどうしても自然と態度に出てしまうのである。
「どうなさったのでしょうか。魔王軍との話し合いは無事に終わりまして、魔族との大きな衝突は無くなりました。それでも何かご不安でもあるのでしょうか」
アリエスは司祭に対して質問を投げかけている。このようなことを思うのも、まあ当然というところだろう。
聖女としてやることはやり遂げたはずなのである。だというのに、深刻な表情を向けられてしまえば、アリエスが気にならないわけがないのである。
「いや、魔王軍との問題を解決してくれたのは、国としてはありがたい話なのですよ」
司祭はアリエスの問い掛けに、このように答えている。
「でしたら、なぜ」
アリエスは問い掛ける。
司祭は牧師と顔を合わせると、アリエスに向かって話を始める。
「魔族との間で脅威がなくなると、次は何が起こるか分かっているのかな?」
「え……?」
アリエスは思わず言葉を失ってしまう。自分の予想だにしていない事態があるというのかという、意外さからくる反応である。
「……正直、想像しかねます」
アリエスは正直に答える。
なにせ魔王時代にはあまり経験がない話だからだ。
長らく自分が魔王として統治していたということもあって、その間、魔王軍をはじめとした多くの魔族の状況は安定していた。それゆえに、アリエスは司祭の質問に答えられなかったのだ。
「そうか……。アリエスは優しいから分からぬか」
司祭は予想通りだったのか、淡々とした様子で話している。
あまりにも分からない話なので、アリエスは顔を歪めてじろじろと司祭の顔を眺めている。
「司祭様、もったいぶらずにお話し願えませんか?」
「そうだな、話すとしよう」
アリエスの催促に、司祭は話を始めることにした。
「人間というのは実に愚かなものでな、外敵がいなくなると、今度は人間同士で争うのだ」
「まあ、そうなのですね」
司祭の話に、アリエスは驚いた表情を浮かべていた。
ところが、アリエスはなんとなく話が見えてきたのか、司祭の話を遮って、提案を始める。
「分かりました。今度は人間同士の争いを食い止めればよいのですね」
「理解が早くて助かる。教会と聖女同士のつながりがあるとはいえ、どちらも国家には逆らえぬ。魔族という脅威がいたからこそ抑えられていた欲望が、これを機に発露せぬとも限らぬからな」
「そうですね。……となりますと、テレグロス王国でしょうか。キャサリーン様のお話を聞く限りは、あまりいい印象を抱きませんでしたし」
「まあ、そうだな。本当に理解が早いな、アリエスは」
「だてに魔王をしておりませんよ。種族が違えば考えも異なりますからね、魔族というのは。それをまとめ上げていた私の手腕の見せどころでしょうかね」
柔らかな笑みを見せてアリエスを褒める司祭に対して、普段はすることのない仕草で話をするアリエスである。ここはちょっとばかり魔王が顔を出したようだった。
「そこでアリエスに頼みたいことがある」
「分かりました。私にできる限りのことをさせていただきます。なんでも仰って下さい」
司祭が真面目な顔をすると、アリエスもまた、気合いの入った引き締まった表情を見せている。
「そうだな。サンカサスとテレグロス、二国の周辺各国の説得に回ってもらいたい」
「分かりました。平和な世界というのは、私の魔王時代からの望みでございます。かならず、各国の説得を成功させてみせましょう」
「うむ、頼んだぞ、アリエス」
「はい、お任せ下さい」
司祭の言葉に、アリエスはしっかりと頭を下げて約束をしていた。
アリエスが部屋を去ると、司祭と牧師がほっとした様子を見せている。
「ふぅ……。本当に素直に育ってくれたものだな」
「まったくですぞ。魔王と聞かされた時は、心臓が止まる思いでしたからな」
「ほっほっほっ、私もですぞ」
正直なところ、魔王だった人物が転生した姿と聞いた時にはとてもじゃないが信じられなかった。
しかし、魔族を次々と手元に引き込んでいたことを思うと、なんとなくながら納得できる話だった。
「不思議な話ですな」
「ええ、聖女から最も遠い場所にいたと思われる人物が、これだけしっかりと聖女を務めあげているのですからね」
「……アリエスならば、やり遂げてくれるかもしれませんな」
「ええ。サンカサスの聖女として認めた以上、私たちはアリエスに賭けるしかないのですよ」
「何もなければいいのだがのう……」
司祭も牧師も、アリエスのことをかなり気にかけているようだった。
人間たちの国同士の平和な関係を、元魔王のたった十一歳の少女に託すことになったのだ。気にならない方がおかしいというものである。
「我々でも、できるだけ手助けをしなければなりませんな」
「ええ、各国の教会に書簡を出すこととしましょう」
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