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第145話 次なる交渉の場へ向かう元魔王
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こうして、ゼラブでの交渉を終えたアリエスは、いよいよ次の国に向けて出発することになる。
アリエスの出発の場には、エリスはもちろん、教会の司祭と頭首であるルホスも立ち会っていた。
「それでは、私は次の国へと向かいます。魔族との争いが縮小するといいますのに、別の争いが起きてしまっては平和は永遠に訪れませんからね」
「まったくですな。しかし、それをアリエス様のような小さな聖女様にお任せしていいのかと思いますと、我々も心苦しくなってきます」
アリエスの言葉を受けて、ゼラブ国の司祭はとても申し訳なさそうに話している。
本来ならばこのような交渉事は教会が担うべきことである。聖女という存在は、本来は魔族や天災、疫病に対して活動する存在なのだ。和平交渉といった政治の舞台に、通常出ることはない。
ところが、今回。サンカサス王国は和平交渉をアリエスに一任したのである。
なんとも異常なことである。
それであるにもかかわらず、ゼラブ国は今回のサンカサス王国の判断を評価している。
その理由が、アリエスの正体だ。
アリエスは、元魔王である魔族の生まれ変わりだ。
元魔王でありながらも、聖女としての務めを必死に果たそうとしているのだ。どこまでも真っすぐな聖女の姿に、人々は感動しているのである。
それに加えて、アリエスには多くの魔族が付き従っている。今回の交渉の場にやってきたサハーとスラリーが、どこまでもアリエスに対して忠誠を誓っている姿は、多くの人々を驚かせた。
だからこそ、ゼラブ国の人たちはこう思ったのだ。「この聖女に賭けてみよう」と。
「エリス様」
「はい、アリエス様」
出発を前に、アリエスはエリスに声をかけている。
「私がいなくても、立派に聖女としての務めを果たすのですよ」
「もちろんです、アリエス様。ボクはアリエス様の娘でもあるんです。アリエス様に負けないくらい、立派な聖女になってみせます」
「ふふっ、何も知らない人が聞いたら混乱しそうなことを仰りますね」
エリスの宣言を聞いて、アリエスはおかしくて笑ってしまっている。なにせ、エリスよりもアリエスの方がふたつ年下なのだから。娘といわれれば、誰だって首を傾げてしまうものである。
その一方で、エリスの様子はというと、最初に比べればずいぶんと自信を持つようになったと思う。
自分が魔族との混血であり、さらには聖女としての能力も未熟だったため、エリスはかなりおどおどとしたところがあった。
アリエスにつけてもらった稽古に加えて、自身との関係性があることも分かったことは、エリスにとってかなりの自信となっているようである。これならばもう、頼りない聖女と呼ばれることはないだろう。
「では、私はもうそろそろ出発します。エリス、自分の担当であるゼラブ国を、しっかりと支えるのですよ」
「はい、アリエス様!」
がっちりと胸の前で手を組み、目を輝かせながらエリスは大きな声でアリエスの言葉に答えていた。その顔を見て、アリエスはほっとしたようである。
「では、みなさま。ゼラブ国の発展をお祈りしております」
アリエスはペガサスに乗り、カプリナたちの乗る馬車とともに次の国へと向けて出発していく。
その後ろでは、エリスをはじめとしたお見送りの人たちが、精一杯に手を振っていた。
この時のことを、アリエスは聖女に転生して一番よかった日と手記に記していた。
ゼラブ国を出発した馬車は、次の目的地へと向けて進んでいく。
少々進んだところで、カプリナがアリエスに質問を投げかけている。
「あの、アリエス様」
「なんでしょうか、カプリナ様」
「次の目的地は、どちらの国でしょうか」
カプリナは次の国のことが気になっているようだ。ちなみに御者の人は行き先を知っているので、馬車をその方向に向けて歩かせている。
「次は、オーロラ様のいらっしゃるハデキヤ帝国です。おそらくここは、かなり説得が難しくなるでしょうね」
「ハデキヤ帝国ですか。難しいという割には、どうしてこんな最初の方に……」
アリエスの説明に、カプリナは疑問をぶつけている。
「ハデキヤ帝国自体はそれほど問題としないと考えております。ですが、問題なのは聖女様の方なのですよ」
「聖女様の方?」
カプリナはきょとんとした顔をしている。
カプリナ自体は、ハデキヤ帝国には一度足を踏み入れている。それでも、アリエスの言っていることがどうにも理解できないようなのだ。
「オーロラ様は、テレグロス王国のキャサリーン様とはご親友なのですよ。今回はテレグロス王国への警戒を呼び掛ける行脚です。人間界の情勢について話をすれば、国名は出さずとも、おのずとどこの国のことか悟って下さるでしょう。そこで問題になるのが、お二人の仲なのですよ」
「な、なるほど……」
アリエスの説明を聞いたカプリナは、とても納得がいったようだった。
つまり、今回の説得の最大の難関は、聖女オーロラということになるわけなのだ。
「以前のお話を思い出す限り、キャサリーン様はテレグロス王国に忠誠を誓っている感じでしたし、場合によってはご友人であるお二人の仲を裂きかねません。ですので、難しいと評しているわけなのですよ」
「よく分かりました、アリエス様。ですが、アリエス様ならきっと成し遂げられると信じております」
「ええ、ありがとうございます、カプリナ様」
話を理解してもらえたようで、アリエスはほっとひと安心したようである。
ハデキヤ帝国を目指すアリエスたち。乗る馬車は、その問題であるテレグロス王国の中を進んでいる。
アリエスたちは無事にすべての国の説得が行えるのだろうか。最大の問題の国中を進みながら、アリエスは真剣に悩むのだった。
アリエスの出発の場には、エリスはもちろん、教会の司祭と頭首であるルホスも立ち会っていた。
「それでは、私は次の国へと向かいます。魔族との争いが縮小するといいますのに、別の争いが起きてしまっては平和は永遠に訪れませんからね」
「まったくですな。しかし、それをアリエス様のような小さな聖女様にお任せしていいのかと思いますと、我々も心苦しくなってきます」
アリエスの言葉を受けて、ゼラブ国の司祭はとても申し訳なさそうに話している。
本来ならばこのような交渉事は教会が担うべきことである。聖女という存在は、本来は魔族や天災、疫病に対して活動する存在なのだ。和平交渉といった政治の舞台に、通常出ることはない。
ところが、今回。サンカサス王国は和平交渉をアリエスに一任したのである。
なんとも異常なことである。
それであるにもかかわらず、ゼラブ国は今回のサンカサス王国の判断を評価している。
その理由が、アリエスの正体だ。
アリエスは、元魔王である魔族の生まれ変わりだ。
元魔王でありながらも、聖女としての務めを必死に果たそうとしているのだ。どこまでも真っすぐな聖女の姿に、人々は感動しているのである。
それに加えて、アリエスには多くの魔族が付き従っている。今回の交渉の場にやってきたサハーとスラリーが、どこまでもアリエスに対して忠誠を誓っている姿は、多くの人々を驚かせた。
だからこそ、ゼラブ国の人たちはこう思ったのだ。「この聖女に賭けてみよう」と。
「エリス様」
「はい、アリエス様」
出発を前に、アリエスはエリスに声をかけている。
「私がいなくても、立派に聖女としての務めを果たすのですよ」
「もちろんです、アリエス様。ボクはアリエス様の娘でもあるんです。アリエス様に負けないくらい、立派な聖女になってみせます」
「ふふっ、何も知らない人が聞いたら混乱しそうなことを仰りますね」
エリスの宣言を聞いて、アリエスはおかしくて笑ってしまっている。なにせ、エリスよりもアリエスの方がふたつ年下なのだから。娘といわれれば、誰だって首を傾げてしまうものである。
その一方で、エリスの様子はというと、最初に比べればずいぶんと自信を持つようになったと思う。
自分が魔族との混血であり、さらには聖女としての能力も未熟だったため、エリスはかなりおどおどとしたところがあった。
アリエスにつけてもらった稽古に加えて、自身との関係性があることも分かったことは、エリスにとってかなりの自信となっているようである。これならばもう、頼りない聖女と呼ばれることはないだろう。
「では、私はもうそろそろ出発します。エリス、自分の担当であるゼラブ国を、しっかりと支えるのですよ」
「はい、アリエス様!」
がっちりと胸の前で手を組み、目を輝かせながらエリスは大きな声でアリエスの言葉に答えていた。その顔を見て、アリエスはほっとしたようである。
「では、みなさま。ゼラブ国の発展をお祈りしております」
アリエスはペガサスに乗り、カプリナたちの乗る馬車とともに次の国へと向けて出発していく。
その後ろでは、エリスをはじめとしたお見送りの人たちが、精一杯に手を振っていた。
この時のことを、アリエスは聖女に転生して一番よかった日と手記に記していた。
ゼラブ国を出発した馬車は、次の目的地へと向けて進んでいく。
少々進んだところで、カプリナがアリエスに質問を投げかけている。
「あの、アリエス様」
「なんでしょうか、カプリナ様」
「次の目的地は、どちらの国でしょうか」
カプリナは次の国のことが気になっているようだ。ちなみに御者の人は行き先を知っているので、馬車をその方向に向けて歩かせている。
「次は、オーロラ様のいらっしゃるハデキヤ帝国です。おそらくここは、かなり説得が難しくなるでしょうね」
「ハデキヤ帝国ですか。難しいという割には、どうしてこんな最初の方に……」
アリエスの説明に、カプリナは疑問をぶつけている。
「ハデキヤ帝国自体はそれほど問題としないと考えております。ですが、問題なのは聖女様の方なのですよ」
「聖女様の方?」
カプリナはきょとんとした顔をしている。
カプリナ自体は、ハデキヤ帝国には一度足を踏み入れている。それでも、アリエスの言っていることがどうにも理解できないようなのだ。
「オーロラ様は、テレグロス王国のキャサリーン様とはご親友なのですよ。今回はテレグロス王国への警戒を呼び掛ける行脚です。人間界の情勢について話をすれば、国名は出さずとも、おのずとどこの国のことか悟って下さるでしょう。そこで問題になるのが、お二人の仲なのですよ」
「な、なるほど……」
アリエスの説明を聞いたカプリナは、とても納得がいったようだった。
つまり、今回の説得の最大の難関は、聖女オーロラということになるわけなのだ。
「以前のお話を思い出す限り、キャサリーン様はテレグロス王国に忠誠を誓っている感じでしたし、場合によってはご友人であるお二人の仲を裂きかねません。ですので、難しいと評しているわけなのですよ」
「よく分かりました、アリエス様。ですが、アリエス様ならきっと成し遂げられると信じております」
「ええ、ありがとうございます、カプリナ様」
話を理解してもらえたようで、アリエスはほっとひと安心したようである。
ハデキヤ帝国を目指すアリエスたち。乗る馬車は、その問題であるテレグロス王国の中を進んでいる。
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