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3 マディソン村の学校
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春の農繁期の盛りを過ぎると、マディソン村の学校に子どもたちが学びにやってくる。村の学校にはエマーソン先生一人しかいない。
「ふぅ、今年も新入生がやってくる時期だなぁ。また、文字から教えなきゃいけないのか……」
大きな町の教師を引退したお爺さん先生は、マディソン村で悪ガキ相手に最低限の文字と計算を教えるのに飽き飽きしていた。それでも、いつか学習意欲に燃えた子どもを指導できるのではないかとの夢を持ち、新学期に備え、何冊かの教科書を用意していた。
その新入生の一人がアシュレイだ。
「明日から、お前も学校に通うんだよ。ほら、この服を着てごらん」
祖母が縫っていた新しい服を着て、アシュレイは学校で友達ができるかなと緑の目を輝かせる。
「服はこれで良いとして、お前の髪はどうにかならないかねぇ。ベンジャミンもくせ毛だったけど、これほどくるくるじゃなかったよ」
祖母にブラシでぎゅうぎゅう髪をとかれて、アシュレイは悲鳴を上げる。
「お祖母ちゃん、痛いよ!」
アマンダは、どうにか鳥の巣状態では無くなったので、まだくるくるしていて不満だったが、ブラシを置いた。
「髪の毛を伸ばしてくくった方がまだまとまるかもしれないけど……男の子が長い髪なのは不潔になるんじゃないだろうか……」
アシュレイは、父親もくせ毛の髪の毛を括って整えていたので、大人になったら伸ばすのも良いかもしれないと思う。
「お父さんみたいにくくるよ!」
アマンダは、懐かしい我が子を思い出して茶色の髪を撫でてやる。
「そうだね。大きくなったら髪の毛を括ると良いよ。でも、子どものうちは短い方が清潔にできるからね」
アシュレイは、学校に通うことになって、祖母が満足するまで毎朝くるくるの髪の毛と格闘することになった。でも、その苦労は学校に着くまでに無駄になる。
「おはよう!」
せっかく整えた髪の毛も走った途端にくるくると巻き上がってしまう。でも、そんなことアシュレイも村の子ども達も気にしない。
「おはよう!」と、何人からも声がかかる。
初めは、町育ちのアシュレイを遠巻きにしていた子ども達も地元のマシューとアマンダの孫として受け入れてくれた。それは、長年にわたり堅実な生活をしている祖父母達への信頼のなせる業だ。
アシュレイは、エマーソン先生から習うまでもなく、文字の読み書きや計算ができた。母親のレティシアから習っていたからだ。レティシアの実家はナンツの薬師を代々行っていて、庶民とは一段上の生活をしていたのだ。港に出稼ぎに来ていた男と一目惚れして駆け落ち同然に結婚したため、アシュレイは庶民的な生活をしていたが、学習面では一歩抜きん出ていた。
「あのチビ生意気だな!」
出る杭は打たれる。エマーソン先生はアシュレイの能力を適切に評価して、一年生をスキップさせ三年生にした。この田舎の学校では珍しい事だ。
一年生は「アシュレイは賢いんだな」と思っただけだったが、飛び越された二年生と年下と机を並べる三年生は面白くなかった。
エマーソン先生は、女の子をムチでぶったりはしなかったが、反抗的な男の子にはしなやかな細い木の枝で手を打つこともあった。そうしないと、男の子は言う事を聞かなくなるからだ。
三年生のボスは、村の管理人の息子のアンガスだ。アシュレイが入学するまで、学校で一番だと自分では思っていたし、周りの子も管理人の子供であるアンガスには逆らわなかった。
「でも、エマーソン先生は暴力には厳しいよ」
アンガスに腰巾着扱いされているジムだが、マシューとアマンダと祖母が親しいので、小さなアシュレイに意地悪をするのを止めようとする。
「ふん、学校で殴ったらエマーソン先生にムチ打ちだろうけど、帰り道ならわからないさ。それに、ちょっと礼儀を教えるだけだ。あんなチビを本気で殴ったりするもんか。お前も来るんだぞ!」
ジムは、アンガスが何を企んでいるのか分からず、嫌々ながらうなずいた。それにアンガスを無視して家に帰るより、一緒にいた方が止まることもできるかもしれない。
こうして何人かの男の子が、アンガスの馬鹿な企みに参加することにした。
その日の放課後、男の子達は家に急ぐ。何故なら、家に帰って畑の手伝いや、家畜の餌やりなどを手伝わないといけないからだ。
「じゃあ、また明日ね!」
アシュレイも、一年生の友だちと別れて走っていた。
「先回りしてチビを捕まえるぞ」
まだマディソン村に来たばかりのアシュレイは、家と学校の間の道を使っていた。でも、畑や牧草地を突っ切れば、それより早い。それに、チビより三年生の男の子たちが足も長い。
「おかしいなぁ?」
アシュレイの祖父の家へと続く道の脇で、大きな木に隠れたアンガス達は、そろそろ姿が見えても良いはずだと首をひねる。
「もしかしたら、途中で道をそれたのかもしれない?」
ジムに言われて、アンガスは「見てこい!」と偉そうに命じる。
ジムは、マシューの家の近くまで走って行き、牛を牧草地から連れて帰っているアシュレイとすれ違った。
「アシュレイ、もう牛を連れて帰っているのか? 早いな」
「学校の帰りに牧草地へ行ったんだよ。家に帰ってから牧草地に行くより、早いんだ」
これではアンガス達が待ちぼうけになるはずだと、ジムは笑った。
ジムはこれでアンガスも飽きるだろうし、他の男の子達も家の手伝いをサボると親に叱られると思ったが、そうはならなかった。
「ちぇっ、チビめ! 今日は運が良かったな。明日は牧草地で待ち伏せだ!」
他の男の子達も、牧草地に行って牛を連れて帰れば二度手間にならないので、待ち伏せはそんなに嫌ではなさそうだ。
「もう、ほっとけば良いじゃないか」
ジムの真っ当な意見は無視された。
「ふぅ、今年も新入生がやってくる時期だなぁ。また、文字から教えなきゃいけないのか……」
大きな町の教師を引退したお爺さん先生は、マディソン村で悪ガキ相手に最低限の文字と計算を教えるのに飽き飽きしていた。それでも、いつか学習意欲に燃えた子どもを指導できるのではないかとの夢を持ち、新学期に備え、何冊かの教科書を用意していた。
その新入生の一人がアシュレイだ。
「明日から、お前も学校に通うんだよ。ほら、この服を着てごらん」
祖母が縫っていた新しい服を着て、アシュレイは学校で友達ができるかなと緑の目を輝かせる。
「服はこれで良いとして、お前の髪はどうにかならないかねぇ。ベンジャミンもくせ毛だったけど、これほどくるくるじゃなかったよ」
祖母にブラシでぎゅうぎゅう髪をとかれて、アシュレイは悲鳴を上げる。
「お祖母ちゃん、痛いよ!」
アマンダは、どうにか鳥の巣状態では無くなったので、まだくるくるしていて不満だったが、ブラシを置いた。
「髪の毛を伸ばしてくくった方がまだまとまるかもしれないけど……男の子が長い髪なのは不潔になるんじゃないだろうか……」
アシュレイは、父親もくせ毛の髪の毛を括って整えていたので、大人になったら伸ばすのも良いかもしれないと思う。
「お父さんみたいにくくるよ!」
アマンダは、懐かしい我が子を思い出して茶色の髪を撫でてやる。
「そうだね。大きくなったら髪の毛を括ると良いよ。でも、子どものうちは短い方が清潔にできるからね」
アシュレイは、学校に通うことになって、祖母が満足するまで毎朝くるくるの髪の毛と格闘することになった。でも、その苦労は学校に着くまでに無駄になる。
「おはよう!」
せっかく整えた髪の毛も走った途端にくるくると巻き上がってしまう。でも、そんなことアシュレイも村の子ども達も気にしない。
「おはよう!」と、何人からも声がかかる。
初めは、町育ちのアシュレイを遠巻きにしていた子ども達も地元のマシューとアマンダの孫として受け入れてくれた。それは、長年にわたり堅実な生活をしている祖父母達への信頼のなせる業だ。
アシュレイは、エマーソン先生から習うまでもなく、文字の読み書きや計算ができた。母親のレティシアから習っていたからだ。レティシアの実家はナンツの薬師を代々行っていて、庶民とは一段上の生活をしていたのだ。港に出稼ぎに来ていた男と一目惚れして駆け落ち同然に結婚したため、アシュレイは庶民的な生活をしていたが、学習面では一歩抜きん出ていた。
「あのチビ生意気だな!」
出る杭は打たれる。エマーソン先生はアシュレイの能力を適切に評価して、一年生をスキップさせ三年生にした。この田舎の学校では珍しい事だ。
一年生は「アシュレイは賢いんだな」と思っただけだったが、飛び越された二年生と年下と机を並べる三年生は面白くなかった。
エマーソン先生は、女の子をムチでぶったりはしなかったが、反抗的な男の子にはしなやかな細い木の枝で手を打つこともあった。そうしないと、男の子は言う事を聞かなくなるからだ。
三年生のボスは、村の管理人の息子のアンガスだ。アシュレイが入学するまで、学校で一番だと自分では思っていたし、周りの子も管理人の子供であるアンガスには逆らわなかった。
「でも、エマーソン先生は暴力には厳しいよ」
アンガスに腰巾着扱いされているジムだが、マシューとアマンダと祖母が親しいので、小さなアシュレイに意地悪をするのを止めようとする。
「ふん、学校で殴ったらエマーソン先生にムチ打ちだろうけど、帰り道ならわからないさ。それに、ちょっと礼儀を教えるだけだ。あんなチビを本気で殴ったりするもんか。お前も来るんだぞ!」
ジムは、アンガスが何を企んでいるのか分からず、嫌々ながらうなずいた。それにアンガスを無視して家に帰るより、一緒にいた方が止まることもできるかもしれない。
こうして何人かの男の子が、アンガスの馬鹿な企みに参加することにした。
その日の放課後、男の子達は家に急ぐ。何故なら、家に帰って畑の手伝いや、家畜の餌やりなどを手伝わないといけないからだ。
「じゃあ、また明日ね!」
アシュレイも、一年生の友だちと別れて走っていた。
「先回りしてチビを捕まえるぞ」
まだマディソン村に来たばかりのアシュレイは、家と学校の間の道を使っていた。でも、畑や牧草地を突っ切れば、それより早い。それに、チビより三年生の男の子たちが足も長い。
「おかしいなぁ?」
アシュレイの祖父の家へと続く道の脇で、大きな木に隠れたアンガス達は、そろそろ姿が見えても良いはずだと首をひねる。
「もしかしたら、途中で道をそれたのかもしれない?」
ジムに言われて、アンガスは「見てこい!」と偉そうに命じる。
ジムは、マシューの家の近くまで走って行き、牛を牧草地から連れて帰っているアシュレイとすれ違った。
「アシュレイ、もう牛を連れて帰っているのか? 早いな」
「学校の帰りに牧草地へ行ったんだよ。家に帰ってから牧草地に行くより、早いんだ」
これではアンガス達が待ちぼうけになるはずだと、ジムは笑った。
ジムはこれでアンガスも飽きるだろうし、他の男の子達も家の手伝いをサボると親に叱られると思ったが、そうはならなかった。
「ちぇっ、チビめ! 今日は運が良かったな。明日は牧草地で待ち伏せだ!」
他の男の子達も、牧草地に行って牛を連れて帰れば二度手間にならないので、待ち伏せはそんなに嫌ではなさそうだ。
「もう、ほっとけば良いじゃないか」
ジムの真っ当な意見は無視された。
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