46 / 273
第四章 見習い竜騎士
13 立太子式の舞踏会 疲れたわ
しおりを挟む
ユーリは控え室から舞踏会の会場に戻ると、王妃の前に出向いた。
「ユーリ、姿が見えないから心配していましたのよ」
まさかユーリが知り合ったばかりの殿方と庭に行っては無いだろうとは思ったが、数曲の間ユーリが見あたらなかったので心配になり、女官に控え室を探しに行かしたのだ。
「すみません、少し控え室で休んでいました。初めての舞踏会で疲れてしまって」
華奢なユーリが疲れたと言うと、王妃はまさかシャンパンで酔って寝ていたとは思いもよらず信じこんだ。
「あら、まぁ、若いのに疲れただなんて駄目ね。舞踏会は夜中まで続くのよ、休憩しながら踊りなさいね」
まだ踊るのかとユーリは溜め息をついたが、皇太子殿下にダンスの途中で割り込まれたシャルルに誘われ、断りきれずダンスすることになる。
「私はユーリ嬢のお祖父様のアリスト卿を尊敬しているのです。とても優れた竜騎士隊長ですし、厳しい上司ですが、公正なお方です」
ユーリはシャルル・フォン・マルセイ大尉が竜騎士の礼服を着ているのを今ごろ気づいた。
「シャルル様の竜は?」
絆の竜騎士と騎竜は殆ど知っていたが、パートナーの竜の名前はまだ知らないのも多いので、どの竜だろうと訊ねる。
「貴女も立派な竜バカですね。サイラスとずっとパートナーを組んでいます」
シャルルは竜騎士の名前より、竜の名前を先に覚える竜バカぶりを笑いながらユーリに教える。
「サイラス、王宮の竜舎で時々会うわ、とても素直な良い竜だわ」
自分の竜を誉められて嬉しく思わない竜騎士はいないので、シャルルはユーリが大好きになった。
「貴女の騎竜はイリスですね。イリスは私が見習い竜騎士の時に一度乗ったことがありますが、その頃は不幸そうで心配していたのです。今のイリスはとても幸せそうで、見ているだけで嬉しくなりますね」
イリスが多分すごく態度悪かっただろうと、ユーリは恥ずかしくなって謝った。
「シャルル卿、すみません。イリスは父と絆を結べなかった時から、ずっと拗ねてたみたいで、感じが悪かったのでは無いかしら。あの子は、どうも我が儘でごめんなさいね」
ユーリがイリスを我が子のように愛しているのに気づいて、シャルルは絆の竜騎士になれなかった時の心の痛みを思い出す。
「竜は竜騎士に似るのだとしたら、イリスが我が儘なのは私のせいなのかしら?」
ユーリは前から竜と竜騎士が似た性格の者同士、絆を結んだり、パートナーになっているのを不思議に感じていた。
「え、竜が竜騎士に似る? 初めてききました。どういう意味でしょうか」
ダンスをしながらの会話にしては、内容が複雑でユーリはどう説明しようかと躊躇っているうちに、曲が終わってしまった。
「ユーリ嬢、少し話をしませんか? 竜と竜騎士が似るというのは興味深いですし、休憩して飲み物でも飲みましょう」
先ほどまで控え室で休憩していたが、見知らぬ相手にお世辞言われながらのダンスにウンザリしていたので、シャルルの誘いを承諾した。
シャルルに会場のコーナーにある椅子にエスコートされて、シャンパンを差し出されたユーリは、さっき酔って寝たので受け取るのを躊躇した。
「失礼、シャンパンはお嫌いでしたか? 他の飲み物を取ってきます」
飲み物を取りに行こうとするのを制して、さっきまで控え室で休憩していたから必要ないと正直に言った。
「私はどうも社交界とは相性が良くないみたいですわ。舞踏会が終わるまで、こうして椅子に座っていれたら楽なのに。控え室にいれたら、もっと良いけど……」
今夜の舞踏会の華であるユーリの言葉に、厳格で曲がった事や軽薄な振る舞いが嫌いなアリスト卿のお孫さんらしいと、見た目と全く違う内面に気づいて、軍人のシャルルは親近感を持った。
「竜と竜騎士が似るというのは、絆の竜騎士だけですか? パートナーの竜と竜騎士はどうなのでしょうか」
「さぁ、私も全ての竜が竜騎士に似てるかはわかりませんけど、知り合いの竜騎士と竜がおかしい程言い回しとかが似ていたので。パリスとジークフリート卿、キリエとハインリッヒ卿、とてもフェミニストでお世辞が上手なの」
シャルルは引退したハインリッヒとキリエはあまり知らなかったが、ジークフリートとパリスを思い浮かべながら話を聞く。
「ラモスとお祖父様は、厳しくて、でも公正ですわ。ギャランスと国王陛下、アラミスと皇太子殿下は、気配りできて温和です。あっ、パートナーでもアトスとユージーンは、生真面目で融通が利かないけど優しい……あらっ? ユージーンも優しいのかな? 優しいと言うには無理があるかも知れないけど、心配性で小言が多いのは私がしっかりしてないからかしら」
シャルルはユーリの竜と竜騎士の似た性格の評価に笑いながら、自分の知ってる竜騎士と竜を思い出した。
「そうですね、確かに賑やかな竜騎士の竜は賑やかですし、無口な竜騎士の竜は寡黙ですね。今まで考えもつかなかったけど、竜が竜騎士に似るのか、それとも竜が似た性格の竜騎士を選ぶのか?」
「私もどちらかわからないんです。リューデンハイムのアンドレ校長のカーズはとても口うるさくて、竜舎の罰掃除の時に、隅まで寝藁を敷けとかチェックが厳しくて困りましたわ。でも、竜が元々そんなに口うるさいなんて考えられないでしょ。長年アンドレ校長とパートナーを組んでるうちに、似たのではないかと思ったの」
竜にチェックされながらの罰掃除しているユーリの姿を想像して、王宮の舞踏会なのに笑ってしまう。
二人が楽しそうに会話しているのをチェックしていた人達は、気の良いマウリッツ公爵夫人以外、少しはらはらする。
特に、ユーリの緑の魔力を知ってる外務相と国務相は、シャルル・フォン・マルセイ大尉のような一軍人とユーリが引っ付いたりしたら、国家の損失ではないかと身勝手な考えで、部下に邪魔に入らせようと画策する。
外務相はジークフリートに目で二人の邪魔をするように合図したが、やっと話せる相手を見つけて楽しそうにしているユーリが気の毒で、気づかなかった振りをして、秋波をおくってきている貴婦人をダンスに誘い出した。
ユージーンはジークフリートの態度に業を煮やした外務相に直接命令を受けた。遠目にも笑いながら楽しそうに会話している二人の邪魔をするのは嫌だったが、仕方なく近づいていく。
だが、ユージーンにとってラッキーな事に、ユーリとダンスしたいと思っている独身貴族はいっぱいいる。歓談中に失礼ですが次の曲をご一緒にと、ダンスに連れ出されてしまった。
シャルルは自分達に近づいて来ていたユージーンに気づいており、マウリッツ公爵夫人に言われて邪魔しに来たのだと誤解した。
「ユージーン卿は、ユーリ嬢の従兄でしたね。マウリッツ公爵夫人はユーリ嬢の後見人なのですか? ユーリ嬢と会うには、マウリッツ公爵夫人の許可を得ないといけないのでしょうか」
社交界にデビューした令嬢とデートしたり、次のパーティーに誘ったりするには、普通は母親の許可を取るのだが、ユーリが母のロザリモンド姫を亡くしているのは周知なので、誰が後見人か知るのは次のステップに進む許可を得る為に必要だった。
「母は、ユーリの父親の従姉ですし、義理の叔母になりますけど、後見人ではありませんよ。ユーリの後見人は、祖母のモガーナ・フォン・フォレスト様ですし、ユングフラウの後見人代理は王妃様です」
ユージーンは軍人のシャルル・フォン・マルセイ大尉については余り知らなかったが、確か海軍提督の息子だったと記憶の中から引っ張り出した。
シャルルはユージーンに後見人は王妃様だと聞いて、皇太子殿下がユーリに夢中なのはダンスに割り込みされて承知していたから、ハードルが高いのにいやでもきづかされたが、諦める気持ちには微塵もならない。
ユーリは次から次へと王妃様の許可を得た独身貴族と踊り続け、国王と王妃が舞踏会から退出なさる頃には、本当に踊り疲れた。
若い独身貴族やデビューした令嬢方にとっては、国王や王妃や年寄りの貴族達がいなくなってからが、舞踏会の本番なのだが、ユーリは祖父のマキシウスと早々に舞踏会場を後にした。
『ユーリ、もう帰っちゃうのか……』
グレゴリウスはまだノルマが残っており、デビューした令嬢とのダンスを続けていたが、ユーリが帰ったのを寂しく思う気持ちと、他の独身貴族と踊る姿を見なくてよい安堵感で複雑だ。
「お祖父様、シャルル・フォン・マルセイ大尉という人をご存じですか? とても感じのよい方でしたわ、お祖父様を尊敬していると仰ってましたわ」
王宮からの帰宅途中、馬車の中でユーリは今夜踊った中で唯一印象に残っていたシャルルについて質問した。
シャルル・フォン・マルセイ大尉は、海軍一族の中で竜騎士になった変わり者で、マキシウスの部下でもあったので良く知っていたが、有能で野心的な軍人だった。
「彼は私の部下だ」
年頃の美しい娘を持つ父親の心情で、マキシウスはユーリに近づく男全てに警戒態勢を取ってしまう。当分シャルルはユーリをデートに誘うどころでは無いほどの激務を命令される羽目になった。
こうして、ユーリの社交界デビューの立太子式の舞踏会は終わった。
グレゴリウスは夜中過ぎまでデビューした令嬢とのダンスをこなし、リストが終わったのでヤレヤレと安心した所を、デビュー二年目の令嬢方に捕まり、結局明け方近くの舞踏会がお開きになるまで踊り続けた。
ジークフリートや、ユージーンや、フランツも早々に舞踏会場を後にしたユーリを羨ましく思いながら、皇太子殿下が退出されるまではと付き合って、舞踏会のお開きまで残っていた。
「さすがに疲れましたね」
ジークフリートは指導の竜騎士として、皇太子殿下を最後まで見守っていたので、いつもの舞踏会よりも気を使い、疲れ果てた。
「無事、立太子式とデビューの舞踏会が終わって良かった。これで、カザリア王国との同盟に集中できます」
ユージーンの仕事熱心さに、ジークフリートは呆れながらも、軽く睡眠を取ったらカザリア王国との同盟について条件を練り込む秘密会議に出席しなくてはと気持ちを切り替えた。
「ユーリ、姿が見えないから心配していましたのよ」
まさかユーリが知り合ったばかりの殿方と庭に行っては無いだろうとは思ったが、数曲の間ユーリが見あたらなかったので心配になり、女官に控え室を探しに行かしたのだ。
「すみません、少し控え室で休んでいました。初めての舞踏会で疲れてしまって」
華奢なユーリが疲れたと言うと、王妃はまさかシャンパンで酔って寝ていたとは思いもよらず信じこんだ。
「あら、まぁ、若いのに疲れただなんて駄目ね。舞踏会は夜中まで続くのよ、休憩しながら踊りなさいね」
まだ踊るのかとユーリは溜め息をついたが、皇太子殿下にダンスの途中で割り込まれたシャルルに誘われ、断りきれずダンスすることになる。
「私はユーリ嬢のお祖父様のアリスト卿を尊敬しているのです。とても優れた竜騎士隊長ですし、厳しい上司ですが、公正なお方です」
ユーリはシャルル・フォン・マルセイ大尉が竜騎士の礼服を着ているのを今ごろ気づいた。
「シャルル様の竜は?」
絆の竜騎士と騎竜は殆ど知っていたが、パートナーの竜の名前はまだ知らないのも多いので、どの竜だろうと訊ねる。
「貴女も立派な竜バカですね。サイラスとずっとパートナーを組んでいます」
シャルルは竜騎士の名前より、竜の名前を先に覚える竜バカぶりを笑いながらユーリに教える。
「サイラス、王宮の竜舎で時々会うわ、とても素直な良い竜だわ」
自分の竜を誉められて嬉しく思わない竜騎士はいないので、シャルルはユーリが大好きになった。
「貴女の騎竜はイリスですね。イリスは私が見習い竜騎士の時に一度乗ったことがありますが、その頃は不幸そうで心配していたのです。今のイリスはとても幸せそうで、見ているだけで嬉しくなりますね」
イリスが多分すごく態度悪かっただろうと、ユーリは恥ずかしくなって謝った。
「シャルル卿、すみません。イリスは父と絆を結べなかった時から、ずっと拗ねてたみたいで、感じが悪かったのでは無いかしら。あの子は、どうも我が儘でごめんなさいね」
ユーリがイリスを我が子のように愛しているのに気づいて、シャルルは絆の竜騎士になれなかった時の心の痛みを思い出す。
「竜は竜騎士に似るのだとしたら、イリスが我が儘なのは私のせいなのかしら?」
ユーリは前から竜と竜騎士が似た性格の者同士、絆を結んだり、パートナーになっているのを不思議に感じていた。
「え、竜が竜騎士に似る? 初めてききました。どういう意味でしょうか」
ダンスをしながらの会話にしては、内容が複雑でユーリはどう説明しようかと躊躇っているうちに、曲が終わってしまった。
「ユーリ嬢、少し話をしませんか? 竜と竜騎士が似るというのは興味深いですし、休憩して飲み物でも飲みましょう」
先ほどまで控え室で休憩していたが、見知らぬ相手にお世辞言われながらのダンスにウンザリしていたので、シャルルの誘いを承諾した。
シャルルに会場のコーナーにある椅子にエスコートされて、シャンパンを差し出されたユーリは、さっき酔って寝たので受け取るのを躊躇した。
「失礼、シャンパンはお嫌いでしたか? 他の飲み物を取ってきます」
飲み物を取りに行こうとするのを制して、さっきまで控え室で休憩していたから必要ないと正直に言った。
「私はどうも社交界とは相性が良くないみたいですわ。舞踏会が終わるまで、こうして椅子に座っていれたら楽なのに。控え室にいれたら、もっと良いけど……」
今夜の舞踏会の華であるユーリの言葉に、厳格で曲がった事や軽薄な振る舞いが嫌いなアリスト卿のお孫さんらしいと、見た目と全く違う内面に気づいて、軍人のシャルルは親近感を持った。
「竜と竜騎士が似るというのは、絆の竜騎士だけですか? パートナーの竜と竜騎士はどうなのでしょうか」
「さぁ、私も全ての竜が竜騎士に似てるかはわかりませんけど、知り合いの竜騎士と竜がおかしい程言い回しとかが似ていたので。パリスとジークフリート卿、キリエとハインリッヒ卿、とてもフェミニストでお世辞が上手なの」
シャルルは引退したハインリッヒとキリエはあまり知らなかったが、ジークフリートとパリスを思い浮かべながら話を聞く。
「ラモスとお祖父様は、厳しくて、でも公正ですわ。ギャランスと国王陛下、アラミスと皇太子殿下は、気配りできて温和です。あっ、パートナーでもアトスとユージーンは、生真面目で融通が利かないけど優しい……あらっ? ユージーンも優しいのかな? 優しいと言うには無理があるかも知れないけど、心配性で小言が多いのは私がしっかりしてないからかしら」
シャルルはユーリの竜と竜騎士の似た性格の評価に笑いながら、自分の知ってる竜騎士と竜を思い出した。
「そうですね、確かに賑やかな竜騎士の竜は賑やかですし、無口な竜騎士の竜は寡黙ですね。今まで考えもつかなかったけど、竜が竜騎士に似るのか、それとも竜が似た性格の竜騎士を選ぶのか?」
「私もどちらかわからないんです。リューデンハイムのアンドレ校長のカーズはとても口うるさくて、竜舎の罰掃除の時に、隅まで寝藁を敷けとかチェックが厳しくて困りましたわ。でも、竜が元々そんなに口うるさいなんて考えられないでしょ。長年アンドレ校長とパートナーを組んでるうちに、似たのではないかと思ったの」
竜にチェックされながらの罰掃除しているユーリの姿を想像して、王宮の舞踏会なのに笑ってしまう。
二人が楽しそうに会話しているのをチェックしていた人達は、気の良いマウリッツ公爵夫人以外、少しはらはらする。
特に、ユーリの緑の魔力を知ってる外務相と国務相は、シャルル・フォン・マルセイ大尉のような一軍人とユーリが引っ付いたりしたら、国家の損失ではないかと身勝手な考えで、部下に邪魔に入らせようと画策する。
外務相はジークフリートに目で二人の邪魔をするように合図したが、やっと話せる相手を見つけて楽しそうにしているユーリが気の毒で、気づかなかった振りをして、秋波をおくってきている貴婦人をダンスに誘い出した。
ユージーンはジークフリートの態度に業を煮やした外務相に直接命令を受けた。遠目にも笑いながら楽しそうに会話している二人の邪魔をするのは嫌だったが、仕方なく近づいていく。
だが、ユージーンにとってラッキーな事に、ユーリとダンスしたいと思っている独身貴族はいっぱいいる。歓談中に失礼ですが次の曲をご一緒にと、ダンスに連れ出されてしまった。
シャルルは自分達に近づいて来ていたユージーンに気づいており、マウリッツ公爵夫人に言われて邪魔しに来たのだと誤解した。
「ユージーン卿は、ユーリ嬢の従兄でしたね。マウリッツ公爵夫人はユーリ嬢の後見人なのですか? ユーリ嬢と会うには、マウリッツ公爵夫人の許可を得ないといけないのでしょうか」
社交界にデビューした令嬢とデートしたり、次のパーティーに誘ったりするには、普通は母親の許可を取るのだが、ユーリが母のロザリモンド姫を亡くしているのは周知なので、誰が後見人か知るのは次のステップに進む許可を得る為に必要だった。
「母は、ユーリの父親の従姉ですし、義理の叔母になりますけど、後見人ではありませんよ。ユーリの後見人は、祖母のモガーナ・フォン・フォレスト様ですし、ユングフラウの後見人代理は王妃様です」
ユージーンは軍人のシャルル・フォン・マルセイ大尉については余り知らなかったが、確か海軍提督の息子だったと記憶の中から引っ張り出した。
シャルルはユージーンに後見人は王妃様だと聞いて、皇太子殿下がユーリに夢中なのはダンスに割り込みされて承知していたから、ハードルが高いのにいやでもきづかされたが、諦める気持ちには微塵もならない。
ユーリは次から次へと王妃様の許可を得た独身貴族と踊り続け、国王と王妃が舞踏会から退出なさる頃には、本当に踊り疲れた。
若い独身貴族やデビューした令嬢方にとっては、国王や王妃や年寄りの貴族達がいなくなってからが、舞踏会の本番なのだが、ユーリは祖父のマキシウスと早々に舞踏会場を後にした。
『ユーリ、もう帰っちゃうのか……』
グレゴリウスはまだノルマが残っており、デビューした令嬢とのダンスを続けていたが、ユーリが帰ったのを寂しく思う気持ちと、他の独身貴族と踊る姿を見なくてよい安堵感で複雑だ。
「お祖父様、シャルル・フォン・マルセイ大尉という人をご存じですか? とても感じのよい方でしたわ、お祖父様を尊敬していると仰ってましたわ」
王宮からの帰宅途中、馬車の中でユーリは今夜踊った中で唯一印象に残っていたシャルルについて質問した。
シャルル・フォン・マルセイ大尉は、海軍一族の中で竜騎士になった変わり者で、マキシウスの部下でもあったので良く知っていたが、有能で野心的な軍人だった。
「彼は私の部下だ」
年頃の美しい娘を持つ父親の心情で、マキシウスはユーリに近づく男全てに警戒態勢を取ってしまう。当分シャルルはユーリをデートに誘うどころでは無いほどの激務を命令される羽目になった。
こうして、ユーリの社交界デビューの立太子式の舞踏会は終わった。
グレゴリウスは夜中過ぎまでデビューした令嬢とのダンスをこなし、リストが終わったのでヤレヤレと安心した所を、デビュー二年目の令嬢方に捕まり、結局明け方近くの舞踏会がお開きになるまで踊り続けた。
ジークフリートや、ユージーンや、フランツも早々に舞踏会場を後にしたユーリを羨ましく思いながら、皇太子殿下が退出されるまではと付き合って、舞踏会のお開きまで残っていた。
「さすがに疲れましたね」
ジークフリートは指導の竜騎士として、皇太子殿下を最後まで見守っていたので、いつもの舞踏会よりも気を使い、疲れ果てた。
「無事、立太子式とデビューの舞踏会が終わって良かった。これで、カザリア王国との同盟に集中できます」
ユージーンの仕事熱心さに、ジークフリートは呆れながらも、軽く睡眠を取ったらカザリア王国との同盟について条件を練り込む秘密会議に出席しなくてはと気持ちを切り替えた。
41
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる