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第十三章 ユーリ王妃
5 こんな相手と結婚したくない!
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ユーリ達はフォン・フォレストを飛び立つと、一路カザリア王国に向かった。キャサリンはボリスと頑張って付いて行った。途中で何度かの休憩を取って、ニューパロマの大使館に着いた時は、全員がホッとした。
「アリー、ロザリー、キャシー、よく頑張って付いて来たわね。今日は、お風呂に入って、休憩しておきなさい」
初めての長旅に疲れた三人は、母上の言葉に素直に従い、ソリスも長旅に疲れたのか、サロンの暖炉の前に寝そべった。
しかし、グレゴリウスとユーリは慌ただしく風呂を使うと、礼装に着替えて王宮へと夕食会に行くのだった。王宮へ向かう馬車の中で、駐カザリア王国大使のユージーンは最新のエドアルドとジェーンの様子を伝えた。
「ペネローペ男爵夫人を領地に帰して、ジェーン王妃を王宮に迎えたまでは良かったのですが……二人の仲は、修復不可能な程に冷え切っていますね。エドアルド国王陛下はプライドの高い方ですので、ジェーン王妃に頭を下げて戻って来て貰ったのに、相手が折れないのが気に入らないのでしょう」
ユーリは浮気をしていたのに、勝手な言い分だわと怒った。
「王妃様、お怒りにならないで下さいね。確かに浮気したエドアルド国王陛下が悪いのですが、此処まで悪化させたのは、ジェーン王妃にも責任があると思いますわ。流産してからというのもは離宮に籠もり、何度エドアルド国王陛下が王宮に帰ってきてくれと頼んでも、無視されたのですから。殿方から、目を離してはいけないのです」
ダイアナ大使夫人の言い分を、ユーリは納得できなかった。
「だって流産したら、ショックを受けるのは当然だわ。私も、泣き暮らすと思うもの。私がストレーゼンの離宮で泣き暮らしている間に、グレゴリウスが浮気したら……離婚だわ! あれ? ジェーン王妃は離婚したくないから、王宮に帰ったのよね……コンスタンス様も、まだエドアルド国王陛下を愛しているのに、意地を張っていると書いていらしたわ」
愛しのユーリに離婚と言われて、心臓がドキッとしたグレゴリウスだったが、浮気などしないよとキスをして、ユージーン夫婦に呆れられてしまった。ユージーンは、ユーリならグレゴリウスが万が一浮気しても、大騒ぎして殴りつけて怒るが、反省して謝ったらアッサリ許すだろうと思う。
人前よ! とグレゴリウスを押し退けながらも、イチャイチャしているようにしか見えない、結婚16周年でもラブラブな国王夫妻に付け入る隙はないと安心する。
「ともかく王妃様は、浮気騒動など無かったように振る舞って下さい。あちらの面子を潰す事になりますから」
馬車から降りる前にユージーンに釘を刺されて、ユーリはわかっているわと答えたが、その声に怒りが籠もっているのにグレゴリウスは本当かなと不安になる。
「グレゴリウス国王陛下、ユーリ王妃、ようこそお越し下さいました」
にこやかに出迎えたエドアルドとジェーンに、グレゴリウスとユーリも、お久しぶりですと挨拶を交わして、和やかに夕食会が始まった。
「長旅でお疲れだと思って、親しい人達だけの夕食会にしましたの」
ジェーンの言うとおり明日の公式の晩餐会とは違い、ハロルド夫妻、ジェラルド夫妻、ユリアン夫妻のみでの夕食会は気楽な雰囲気に満ちる。ユーリは懐かしいメンバーとの会話を楽しみながら、夕食会を終えて、ご婦人方とサロンへと移る。
夕食会のテーブルに残ったグレゴリウスは、エドアルドがユーリをうっとりと眺めていたのに気づいて、内心ではムッとしていた。
「ユーリ王妃様は、全くお変わりないですね。今夜も素晴らしいドレスをお召しでしたから、家内が羨ましがりそうですよ」
ジェラルドはライトブルーのドレスをスッキリと着こなしていたユーリのドレス姿に、またユングフラウの洋裁店のマダム達に金が流れるなと国務大臣らしく考える。
「いえ、ジェーン王妃様のように、落ち着いてくれると良いのですが、相変わらずバタバタしています」
エドアルドは3男3女に恵まれたグレゴリウスが羨ましい。その上、今夜のユーリは若い時の姿そのもので、忘れかけていた初恋を思い出して胸がキュンとする。
そして、ペネローペにユーリの面影を重ねていた、自分の愚かさをハッキリと自覚した。ジェーンが流産して離宮に籠もり、何度も説得したが王宮に帰らず寂しい毎日を送っていたエドアルドは、貴族達からニューパロマの遊廓に美しい歌姫がいると誘われて、気楽な気持ちで付いて行った。
厳しいエリザベートに育てられたエドアルドは、遊廓の下品さにはウンザリしたが、ペネローペの可憐な姿と綺麗な歌声に初恋の相手を重ねてしまった。
「こんな場所に、いてはいけない」
まだ若いペネローペを遊廓に売り飛ばした親に怒りを感じて保護しようとしたまでは良かったのだが、誘惑に負けてしまった。屋敷を用意して音楽を学ばすつもりが、愛人になってしまい、浮気に腹を立てたジェーンと大喧嘩になった。
王宮にまで入れてしまったのは、離宮に籠もったジェーンへの当て付けだったが、ペネローペは教養もなく、ハロルドは勿論、他の側近達にも会わせたく無かった。
今夜、エドアルドはユーリに会って、ペネローペとは全く違うと目が覚めた。可憐な姿は若い頃と全く変わってなかったが、母親として子どもを気遣う様子に落ち着きを感じる。
ハロルドは、エドアルドが本当はペネローペに興醒めしているのに気付いていた。愛人として隠れ家での逢い引きをしている間は気が付かなかったかもしれないが、王宮は教養のない者では勤まらない。
勿論、国王の寵姫として取り入ろうと貴族達はチヤホヤしていたし、その貴族達の中にはローラン王国や東南諸島の手先になっている者もいた。
エドアルドは賢明な国王で、ペネローペに政治などには口出しさせなかったが、王宮の雰囲気は堕落していた。ペネローペは悪い人間では無かったのだろうが、国王の寵姫となって有頂天になってしまったのだ。その上、女の子を出産して男爵夫人とされると、次は王子をと取り巻き達に唆されて、王妃の座も夢ではないと、傲慢な振る舞いが鼻につきだした。
エドアルドがペネローペに飽きてきだした丁度良い時期に、グレゴリウス国王とユーリ王妃が訪問してくれたとハロルドは感謝する。
ユーリはサロンでジェーンと久しぶりに会って話をしていたが、触れてはいけない事があるので、通り一遍の話題になる。
「エリザベート王妃様は、実家の領地で過ごされていると聞きましたが、御息災でしょうか?」
ヘンリーが亡くなってから、エリザベートは実家でのんびりと余生を過ごしていたが、ペネローペの件でエドアルドに厳しく意見をして絶交状態だった。ダイアナ大使夫人は鬼門に近い話題だと冷や汗をかいたが、ジェーンは自分の味方をしてくれたエリザベートには感謝していた。
「エリザベート様はお元気にお暮らしですが、田舎暮らしに退屈されていましたわ。きっと、ユーリ様にお会いしたいと思われます」
「そうですね、娘達と訪問してみたいですわ。でも、お行儀良くさせないといけませんわね」
ユーリは、エリザベートに厳しく行儀を直された事を思い出して、肩をすくめる。ジェーンは全く年を感じさせない若々しいユーリが、6人もの子どもに恵まれたのを羨ましく感じる。ドレスの話や、それぞれの子どもの話をしている内に、殿方も合流して和やかな雰囲気になった。
「ユーリ王妃様、久しぶりに歌を聞かせて頂けませんか」
ハロルドに歌を頼まれて、ユーリは少し躊躇していたが、グレゴリウスに勧められて一曲だけと歌う。ユーリの歌声は若い頃よりも、深みを帯びて、聞いている人を優しい気持ちにした。
エドアルドとジェーンは寄り添って、ユーリの歌声を聞いているうちにお互いに馬鹿な意地を張るのはよそうという気持ちになる。歌が終わると、全員が拍手した。
「近頃はレッスンを受けていませんから、お恥ずかしいですわ」
恥ずかしがるユーリをグレゴリウスは、とても上手だったよと褒める。ユージーンは、18年前ニューパロマで当時のエリザベート王妃の音楽会に出るために、大使館で練習したことを思い出して苦笑する。下手くそなピアノに驚き焦った事や、歌が上手すぎてエリザベート王妃に気に入られ過ぎて困ったことなどを、帰りの馬車で話して笑う。
「明日は、アリーをスチュワート王子に会わすのね…‥…」
ドレスを着替えてベッドに入りながら、ユーリの心配はやはりエドアルド夫妻の事より娘の事だった。
「アリエナは美少女だから、スチュワート王子も気に入るさ」
ユーリはスチュワートが気に入るかどうかより、アリエナがどう思うかが大切だと溜め息をつく。
若い王子と王女の顔合わせを、気楽な物にして緊張させないようにしようと大人達は考えて、王宮でのお茶会で会わせる事にした。澄んだ秋空にターシュが飛ぶ王宮で、スチュワートとアリエナは顔合わせしたが、二人とも行儀良くしてはいたが、話は弾まなかった。
「アリエナ王女は、凄い美少女ですね。誰かに、似ているような……」
まだお見合いには若い二人が、行儀良く庭を歩いているのを、ユーリは心配そうに眺める。カザリア王国側はエドアルド国王夫妻と、外務次官のハロルドがお茶会に参加していた。
ハロルドの質問に、エドアルドもどこかで見た迫力のある美貌だと考えていた。
「アリエナは、フォン・フォレストの血筋を強く引いているみたいです」
ハロルドとエドアルドは、ああ……と納得する。
「では、迫力の美女になられますね」
ユーリの祖母のモガーナを思い出して、性格も似ていたら困るのだがと失礼なことを考える。そんな大人達の視線の先にいるスチュワートとアリエナは、お互いにウンザリしながら庭を散歩する。
「スチュワート様は、何が武術でお得意ですか?」
沈黙に耐えかねたアリエナの質問に、スチュワートは女の子らしくないなと感じる。
「剣が好きです」
アリエナは、折角こちらから質問を振ってあげたのに、貴女は何が得意ですかぐらい聞けないのかと、内心で馬鹿にする。そんなアリエナの気持ちを敏感にスチュワートは感じとって、内心でこんな相手と結婚したくないと毒づく。
アリエナもスチュワートが自分を気に入って無いのを感じて、絶対にこんなガキとは結婚したくないと思う。
二人が沈黙のまま庭をぐるりと回って帰って来た時、ユーリはアリエナがスチュワートを気に入らなかったのに気づいた。
アリエナとスチュワートのお見合いは、無惨に失敗した。
「アリー、ロザリー、キャシー、よく頑張って付いて来たわね。今日は、お風呂に入って、休憩しておきなさい」
初めての長旅に疲れた三人は、母上の言葉に素直に従い、ソリスも長旅に疲れたのか、サロンの暖炉の前に寝そべった。
しかし、グレゴリウスとユーリは慌ただしく風呂を使うと、礼装に着替えて王宮へと夕食会に行くのだった。王宮へ向かう馬車の中で、駐カザリア王国大使のユージーンは最新のエドアルドとジェーンの様子を伝えた。
「ペネローペ男爵夫人を領地に帰して、ジェーン王妃を王宮に迎えたまでは良かったのですが……二人の仲は、修復不可能な程に冷え切っていますね。エドアルド国王陛下はプライドの高い方ですので、ジェーン王妃に頭を下げて戻って来て貰ったのに、相手が折れないのが気に入らないのでしょう」
ユーリは浮気をしていたのに、勝手な言い分だわと怒った。
「王妃様、お怒りにならないで下さいね。確かに浮気したエドアルド国王陛下が悪いのですが、此処まで悪化させたのは、ジェーン王妃にも責任があると思いますわ。流産してからというのもは離宮に籠もり、何度エドアルド国王陛下が王宮に帰ってきてくれと頼んでも、無視されたのですから。殿方から、目を離してはいけないのです」
ダイアナ大使夫人の言い分を、ユーリは納得できなかった。
「だって流産したら、ショックを受けるのは当然だわ。私も、泣き暮らすと思うもの。私がストレーゼンの離宮で泣き暮らしている間に、グレゴリウスが浮気したら……離婚だわ! あれ? ジェーン王妃は離婚したくないから、王宮に帰ったのよね……コンスタンス様も、まだエドアルド国王陛下を愛しているのに、意地を張っていると書いていらしたわ」
愛しのユーリに離婚と言われて、心臓がドキッとしたグレゴリウスだったが、浮気などしないよとキスをして、ユージーン夫婦に呆れられてしまった。ユージーンは、ユーリならグレゴリウスが万が一浮気しても、大騒ぎして殴りつけて怒るが、反省して謝ったらアッサリ許すだろうと思う。
人前よ! とグレゴリウスを押し退けながらも、イチャイチャしているようにしか見えない、結婚16周年でもラブラブな国王夫妻に付け入る隙はないと安心する。
「ともかく王妃様は、浮気騒動など無かったように振る舞って下さい。あちらの面子を潰す事になりますから」
馬車から降りる前にユージーンに釘を刺されて、ユーリはわかっているわと答えたが、その声に怒りが籠もっているのにグレゴリウスは本当かなと不安になる。
「グレゴリウス国王陛下、ユーリ王妃、ようこそお越し下さいました」
にこやかに出迎えたエドアルドとジェーンに、グレゴリウスとユーリも、お久しぶりですと挨拶を交わして、和やかに夕食会が始まった。
「長旅でお疲れだと思って、親しい人達だけの夕食会にしましたの」
ジェーンの言うとおり明日の公式の晩餐会とは違い、ハロルド夫妻、ジェラルド夫妻、ユリアン夫妻のみでの夕食会は気楽な雰囲気に満ちる。ユーリは懐かしいメンバーとの会話を楽しみながら、夕食会を終えて、ご婦人方とサロンへと移る。
夕食会のテーブルに残ったグレゴリウスは、エドアルドがユーリをうっとりと眺めていたのに気づいて、内心ではムッとしていた。
「ユーリ王妃様は、全くお変わりないですね。今夜も素晴らしいドレスをお召しでしたから、家内が羨ましがりそうですよ」
ジェラルドはライトブルーのドレスをスッキリと着こなしていたユーリのドレス姿に、またユングフラウの洋裁店のマダム達に金が流れるなと国務大臣らしく考える。
「いえ、ジェーン王妃様のように、落ち着いてくれると良いのですが、相変わらずバタバタしています」
エドアルドは3男3女に恵まれたグレゴリウスが羨ましい。その上、今夜のユーリは若い時の姿そのもので、忘れかけていた初恋を思い出して胸がキュンとする。
そして、ペネローペにユーリの面影を重ねていた、自分の愚かさをハッキリと自覚した。ジェーンが流産して離宮に籠もり、何度も説得したが王宮に帰らず寂しい毎日を送っていたエドアルドは、貴族達からニューパロマの遊廓に美しい歌姫がいると誘われて、気楽な気持ちで付いて行った。
厳しいエリザベートに育てられたエドアルドは、遊廓の下品さにはウンザリしたが、ペネローペの可憐な姿と綺麗な歌声に初恋の相手を重ねてしまった。
「こんな場所に、いてはいけない」
まだ若いペネローペを遊廓に売り飛ばした親に怒りを感じて保護しようとしたまでは良かったのだが、誘惑に負けてしまった。屋敷を用意して音楽を学ばすつもりが、愛人になってしまい、浮気に腹を立てたジェーンと大喧嘩になった。
王宮にまで入れてしまったのは、離宮に籠もったジェーンへの当て付けだったが、ペネローペは教養もなく、ハロルドは勿論、他の側近達にも会わせたく無かった。
今夜、エドアルドはユーリに会って、ペネローペとは全く違うと目が覚めた。可憐な姿は若い頃と全く変わってなかったが、母親として子どもを気遣う様子に落ち着きを感じる。
ハロルドは、エドアルドが本当はペネローペに興醒めしているのに気付いていた。愛人として隠れ家での逢い引きをしている間は気が付かなかったかもしれないが、王宮は教養のない者では勤まらない。
勿論、国王の寵姫として取り入ろうと貴族達はチヤホヤしていたし、その貴族達の中にはローラン王国や東南諸島の手先になっている者もいた。
エドアルドは賢明な国王で、ペネローペに政治などには口出しさせなかったが、王宮の雰囲気は堕落していた。ペネローペは悪い人間では無かったのだろうが、国王の寵姫となって有頂天になってしまったのだ。その上、女の子を出産して男爵夫人とされると、次は王子をと取り巻き達に唆されて、王妃の座も夢ではないと、傲慢な振る舞いが鼻につきだした。
エドアルドがペネローペに飽きてきだした丁度良い時期に、グレゴリウス国王とユーリ王妃が訪問してくれたとハロルドは感謝する。
ユーリはサロンでジェーンと久しぶりに会って話をしていたが、触れてはいけない事があるので、通り一遍の話題になる。
「エリザベート王妃様は、実家の領地で過ごされていると聞きましたが、御息災でしょうか?」
ヘンリーが亡くなってから、エリザベートは実家でのんびりと余生を過ごしていたが、ペネローペの件でエドアルドに厳しく意見をして絶交状態だった。ダイアナ大使夫人は鬼門に近い話題だと冷や汗をかいたが、ジェーンは自分の味方をしてくれたエリザベートには感謝していた。
「エリザベート様はお元気にお暮らしですが、田舎暮らしに退屈されていましたわ。きっと、ユーリ様にお会いしたいと思われます」
「そうですね、娘達と訪問してみたいですわ。でも、お行儀良くさせないといけませんわね」
ユーリは、エリザベートに厳しく行儀を直された事を思い出して、肩をすくめる。ジェーンは全く年を感じさせない若々しいユーリが、6人もの子どもに恵まれたのを羨ましく感じる。ドレスの話や、それぞれの子どもの話をしている内に、殿方も合流して和やかな雰囲気になった。
「ユーリ王妃様、久しぶりに歌を聞かせて頂けませんか」
ハロルドに歌を頼まれて、ユーリは少し躊躇していたが、グレゴリウスに勧められて一曲だけと歌う。ユーリの歌声は若い頃よりも、深みを帯びて、聞いている人を優しい気持ちにした。
エドアルドとジェーンは寄り添って、ユーリの歌声を聞いているうちにお互いに馬鹿な意地を張るのはよそうという気持ちになる。歌が終わると、全員が拍手した。
「近頃はレッスンを受けていませんから、お恥ずかしいですわ」
恥ずかしがるユーリをグレゴリウスは、とても上手だったよと褒める。ユージーンは、18年前ニューパロマで当時のエリザベート王妃の音楽会に出るために、大使館で練習したことを思い出して苦笑する。下手くそなピアノに驚き焦った事や、歌が上手すぎてエリザベート王妃に気に入られ過ぎて困ったことなどを、帰りの馬車で話して笑う。
「明日は、アリーをスチュワート王子に会わすのね…‥…」
ドレスを着替えてベッドに入りながら、ユーリの心配はやはりエドアルド夫妻の事より娘の事だった。
「アリエナは美少女だから、スチュワート王子も気に入るさ」
ユーリはスチュワートが気に入るかどうかより、アリエナがどう思うかが大切だと溜め息をつく。
若い王子と王女の顔合わせを、気楽な物にして緊張させないようにしようと大人達は考えて、王宮でのお茶会で会わせる事にした。澄んだ秋空にターシュが飛ぶ王宮で、スチュワートとアリエナは顔合わせしたが、二人とも行儀良くしてはいたが、話は弾まなかった。
「アリエナ王女は、凄い美少女ですね。誰かに、似ているような……」
まだお見合いには若い二人が、行儀良く庭を歩いているのを、ユーリは心配そうに眺める。カザリア王国側はエドアルド国王夫妻と、外務次官のハロルドがお茶会に参加していた。
ハロルドの質問に、エドアルドもどこかで見た迫力のある美貌だと考えていた。
「アリエナは、フォン・フォレストの血筋を強く引いているみたいです」
ハロルドとエドアルドは、ああ……と納得する。
「では、迫力の美女になられますね」
ユーリの祖母のモガーナを思い出して、性格も似ていたら困るのだがと失礼なことを考える。そんな大人達の視線の先にいるスチュワートとアリエナは、お互いにウンザリしながら庭を散歩する。
「スチュワート様は、何が武術でお得意ですか?」
沈黙に耐えかねたアリエナの質問に、スチュワートは女の子らしくないなと感じる。
「剣が好きです」
アリエナは、折角こちらから質問を振ってあげたのに、貴女は何が得意ですかぐらい聞けないのかと、内心で馬鹿にする。そんなアリエナの気持ちを敏感にスチュワートは感じとって、内心でこんな相手と結婚したくないと毒づく。
アリエナもスチュワートが自分を気に入って無いのを感じて、絶対にこんなガキとは結婚したくないと思う。
二人が沈黙のまま庭をぐるりと回って帰って来た時、ユーリはアリエナがスチュワートを気に入らなかったのに気づいた。
アリエナとスチュワートのお見合いは、無惨に失敗した。
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