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Episode8 聖遺物を求めて
第23話 セレスタ
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「………これで……本当に私の身は安泰なのだろうな!?」
月明りのような輝きを放つ鎧の前に、無数の屍が広がっている。
屍が身に着けた鎧には、剣と盾を模した紋章のものと、円卓を模した紋章のものの2つが存在していた。
問いかけられた人物は、剣を地面に向かって振ると、刀身に付着した血糊を地面に叩きつけた。
「王よ。先王の時代より、教団は貴国の味方であったはず。教祖様は、先王を高く評価しておいでなのですぞ!」
「それは分かっておる……当時、王太子だった私は父の命に従うことしかできなかった。故に、父とそなたらがどのような取り交わしをしていたのか、全く知らぬのだ。それを、隣国との約束を反故にしてまで、そなたらの提案を受け入れているのだ。不安にもなろう」
「(…領土の半分を失っても、この鎧を欲した先王の遺志を、保身のために潰すとは………まぁ、我々にとっては都合の良い話ではあるが……国民にとっては哀れな話だな…)」
問いかけられた人物の口元が、少し緩む。
「…何が可笑しいのだ!?」
「…いえ、何も………王よ。安心されよ。我が教団は、貴殿の………セレスタ王国の安全を、この鎧の管理権放棄と譲渡により保証すると、教祖様も詔勅を出されている」
教団の文様の封緘印がついた布の巻物が、王に手渡される。
「………インドゥーラ殿…そなたと、教軍兵1万を常駐してくれるのか。それはありがたい」
安堵したのか、王の表情が幾分和らぐ。
「さぁ王よ。戻り戦の準備をされよ。この中立地帯を突如強襲し、鎧の管理を独占しようとしたザパートを打ち倒す時が来たと号令を出すのです!!」
「…無論、教軍もこの戦、参加してくれるのであろうな!?」
「ご安心を。教祖様より、その旨賜っております故…」
「了解した」
「…王よ。本当に、この鎧、譲り受けて良いのだな!?」
「その鎧は、父が欲したものであって、私が欲したものではない。私の身の安全のためなら、喜んで差し出そう」
「…なら良いのだ。この鎧、確かに教団が預かった」
「では、私は王都セレスタに戻り、戦の準備をするとしよう」
「急いだ方が良い。教団に仇成す者が、ザパート連合公国に入ったとの未確認情報もある故…」
「分かった。忠告、ありがたく受け取っておこう。では、王宮で待っておるぞ」
”コツコツコツコツ…”
そう言うと、王は踵を返して建物から立ち去った。
「…無能な王め。まぁいい。これでクレスの鎧が、我が教団の手中に収まった。そして、これを足掛かりに、セレスタを教団の直轄地にするのだ」
”ドドドドドドドド…”
遠くから、蹄鉄と地面が奏でる音が木霊する。
「???王一人が立ち去るには、少し音が大きすぎな気がするが…まぁ、いい。まずは、この鎧の回収作業からだ」
インドゥーラは疑念を頭から追い出すと、鎧の回収作業を始めた。
***
「…それにしても、古代の技術には毎度驚かされるな…」
「徒歩で1時間かかる場所に、ものの10分で到着するなんて、フォーレスタの中で生活してきた私たちには、想像もできないことよね…」
「全くだ…」
漆黒の翼を、バルデワから徒歩1時間の場所に停泊させた俺たち5人は、ザイールとステラにより蘇った古代の技術力を使い、停泊から10分としないうちにバルデワの入口に到着していた。
「私も、馬車には乗ったことはあったけど、あの時は揺れで気持ち悪くなったわ。でも、今は気持ち悪いどころか、風を切って走っていて、とても気持ち良かったわね」
古代に存在した、主に化石燃料を使って走っていた『車』という乗り物を、魔法で具現化したものらしい。
漆黒の翼が停泊している方向を見ると、馬車が通った後のように、車輪の轍がくっきりと残されていた。
「魔道船といい、今回乗った車といい、古代の技術は今の技術よりも数百年は先をいっていたのではないかしら?」
「…でも、戦争があったとはいえ、そんな技術があったにも関わらず、滅んでしまったのも事実だ」
「きっと先人たちは、自らの技術力に溺れてしまっただろうな」
「私が盗賊だった頃、その道の教えとして『盛者必衰』というものがあった。人やモノの繁栄は、いつか必ず衰える日が来る、という意味だ」
「古代の技術を考えれば、今の時代が栄えているとは思えないけど、教団の将軍に勝ち続けている今、気を引き締める必要がある、ということね」
「勝って兜の緒を締めよ…という訳だな」
車をバルデワの入口にある門の管理棟の後ろに停車させ、これまた古代のステルス技術で車をその場に隠した俺たちは、さも徒歩で来ましたと言わんばかりに管理棟に設けられた受付に話しかけた。
「俺たちは旅の者だ。バルデワへの入国を許可頂きたいのが…」
「入国をご希望とのことですが………実は今、大変立て込んでおりまして………」
”パカラッパカラッパカラッ…”
そこに、急使と思われる人物が乗った馬が現れた。
「開門!!かいもーーーーん!!!急ぎ、領事様に報告したい議あり!」
早馬に乗った急使の前に、俺たちと話をしていた職員が躍り出る。
「どうしたのだ!今、領事様は立て込んでお出でで…」
「そんなことを言っている場合ではないのだ!!鎧が………クレス様の鎧が、中立地帯より奪われたのだ!!」
「えっ!?」
「何だって!!」
急使の前に躍り出た職員よりも早く、俺たちは絶句したのだった…
月明りのような輝きを放つ鎧の前に、無数の屍が広がっている。
屍が身に着けた鎧には、剣と盾を模した紋章のものと、円卓を模した紋章のものの2つが存在していた。
問いかけられた人物は、剣を地面に向かって振ると、刀身に付着した血糊を地面に叩きつけた。
「王よ。先王の時代より、教団は貴国の味方であったはず。教祖様は、先王を高く評価しておいでなのですぞ!」
「それは分かっておる……当時、王太子だった私は父の命に従うことしかできなかった。故に、父とそなたらがどのような取り交わしをしていたのか、全く知らぬのだ。それを、隣国との約束を反故にしてまで、そなたらの提案を受け入れているのだ。不安にもなろう」
「(…領土の半分を失っても、この鎧を欲した先王の遺志を、保身のために潰すとは………まぁ、我々にとっては都合の良い話ではあるが……国民にとっては哀れな話だな…)」
問いかけられた人物の口元が、少し緩む。
「…何が可笑しいのだ!?」
「…いえ、何も………王よ。安心されよ。我が教団は、貴殿の………セレスタ王国の安全を、この鎧の管理権放棄と譲渡により保証すると、教祖様も詔勅を出されている」
教団の文様の封緘印がついた布の巻物が、王に手渡される。
「………インドゥーラ殿…そなたと、教軍兵1万を常駐してくれるのか。それはありがたい」
安堵したのか、王の表情が幾分和らぐ。
「さぁ王よ。戻り戦の準備をされよ。この中立地帯を突如強襲し、鎧の管理を独占しようとしたザパートを打ち倒す時が来たと号令を出すのです!!」
「…無論、教軍もこの戦、参加してくれるのであろうな!?」
「ご安心を。教祖様より、その旨賜っております故…」
「了解した」
「…王よ。本当に、この鎧、譲り受けて良いのだな!?」
「その鎧は、父が欲したものであって、私が欲したものではない。私の身の安全のためなら、喜んで差し出そう」
「…なら良いのだ。この鎧、確かに教団が預かった」
「では、私は王都セレスタに戻り、戦の準備をするとしよう」
「急いだ方が良い。教団に仇成す者が、ザパート連合公国に入ったとの未確認情報もある故…」
「分かった。忠告、ありがたく受け取っておこう。では、王宮で待っておるぞ」
”コツコツコツコツ…”
そう言うと、王は踵を返して建物から立ち去った。
「…無能な王め。まぁいい。これでクレスの鎧が、我が教団の手中に収まった。そして、これを足掛かりに、セレスタを教団の直轄地にするのだ」
”ドドドドドドドド…”
遠くから、蹄鉄と地面が奏でる音が木霊する。
「???王一人が立ち去るには、少し音が大きすぎな気がするが…まぁ、いい。まずは、この鎧の回収作業からだ」
インドゥーラは疑念を頭から追い出すと、鎧の回収作業を始めた。
***
「…それにしても、古代の技術には毎度驚かされるな…」
「徒歩で1時間かかる場所に、ものの10分で到着するなんて、フォーレスタの中で生活してきた私たちには、想像もできないことよね…」
「全くだ…」
漆黒の翼を、バルデワから徒歩1時間の場所に停泊させた俺たち5人は、ザイールとステラにより蘇った古代の技術力を使い、停泊から10分としないうちにバルデワの入口に到着していた。
「私も、馬車には乗ったことはあったけど、あの時は揺れで気持ち悪くなったわ。でも、今は気持ち悪いどころか、風を切って走っていて、とても気持ち良かったわね」
古代に存在した、主に化石燃料を使って走っていた『車』という乗り物を、魔法で具現化したものらしい。
漆黒の翼が停泊している方向を見ると、馬車が通った後のように、車輪の轍がくっきりと残されていた。
「魔道船といい、今回乗った車といい、古代の技術は今の技術よりも数百年は先をいっていたのではないかしら?」
「…でも、戦争があったとはいえ、そんな技術があったにも関わらず、滅んでしまったのも事実だ」
「きっと先人たちは、自らの技術力に溺れてしまっただろうな」
「私が盗賊だった頃、その道の教えとして『盛者必衰』というものがあった。人やモノの繁栄は、いつか必ず衰える日が来る、という意味だ」
「古代の技術を考えれば、今の時代が栄えているとは思えないけど、教団の将軍に勝ち続けている今、気を引き締める必要がある、ということね」
「勝って兜の緒を締めよ…という訳だな」
車をバルデワの入口にある門の管理棟の後ろに停車させ、これまた古代のステルス技術で車をその場に隠した俺たちは、さも徒歩で来ましたと言わんばかりに管理棟に設けられた受付に話しかけた。
「俺たちは旅の者だ。バルデワへの入国を許可頂きたいのが…」
「入国をご希望とのことですが………実は今、大変立て込んでおりまして………」
”パカラッパカラッパカラッ…”
そこに、急使と思われる人物が乗った馬が現れた。
「開門!!かいもーーーーん!!!急ぎ、領事様に報告したい議あり!」
早馬に乗った急使の前に、俺たちと話をしていた職員が躍り出る。
「どうしたのだ!今、領事様は立て込んでお出でで…」
「そんなことを言っている場合ではないのだ!!鎧が………クレス様の鎧が、中立地帯より奪われたのだ!!」
「えっ!?」
「何だって!!」
急使の前に躍り出た職員よりも早く、俺たちは絶句したのだった…
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