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Episode8 聖遺物を求めて
第41話 対峙
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「………」
ゆっくりと目を開いたその先で、幕舎の支柱に掛けられたランタンの炎が揺らめいている。
「…ここ…は…」
「アルモ…気がついたんだな、良かった!」
愛しい人の透き通るような声が耳に入り、私は歓喜に震えた。
「アコード!本当に、ずっとそばにいてくれたのね…」
「当たり前じゃないか。アルモに何かあったら、俺は…」
「ありがとう、アコード!………ところで、私の魔法は…」
「無事、成功したさ。今頃、アンティムさん率いるターパ軍とセレスタ軍が合流して、公国軍と戦っているはずさ」
「そう、それなら良かった」
アコードの言葉に胸をなでおろした私は、起き上がろうと試みた。
”ヨロッ…”
上体を起こすことまではできた私だったが、そのまま立ち上がろうとした瞬間に立ちくらみを起こしてしまった。
”ガシッ”
「アルモ!大丈夫か!?」
そんな軟な私を、アコードがしっかりと支えてくれ、転倒は免れた。
「大丈夫…じゃないかな………やっぱり、あの場にいた全員を瞬間移動(テレポーテーション)させるのは、少し無理があったのかな…」
「いきなり起き上がるのは、今のアルモには危険だ。起き上がりたい時は言ってくれ!」
「ええ、そうするわ」
アコードにエスコートされ、私は近くにあったチェアに座る。それを確認したアコードも、近くにあったチェアに腰かけた。
「それで…セレスタとターパの合同軍と、公国軍との戦況はどうなの?」
「ターパ軍が合流する前は、セレスタ軍が劣勢だったようだけど、アンティムさんが先陣を切って窮地に陥っていたセレスタ王率いる本隊を助け、戦況は一変したようだ」
「公国軍からすれば、盟主を禅譲したはずのアンティムさんが急に現れ、戦いを仕掛けてくるのだもの………混乱して当然だわ」
「ターパ軍と合流したセレスタ軍本隊は、アンティムさんの呼びかけで投降した公国軍を吸収して、ランデスがいる公国軍本隊へと向かっているそうだ」
「…私が、今回戦力外であることが、甚だ残念で仕方ないわ」
「…でも、アルモの瞬間移動(テレポーテーション)がなければ、ターパ軍の援軍が入らなったセレスタ軍本隊は今頃壊滅していたことだろう。だから、今は休んでいいんだよ、アルモ」
「…うん」
「俺とアルモ以外の4人は、セレスタ陛下とアンティムさんの護衛ということで、ターパ軍の一員として動いている。だから、安心して休んでくれ」
「ありがとう、アコード」
***
”キンカンキン………キンカンキン………”
”ザシュッ…”
「グハッ!」
”ブゥン…”
「…」
”バタン”
周囲を見渡すと、味方の公国軍兵が次々と倒れていくのが分かる。
「(…一体どうなっている!?セレスタ軍には、我が軍の数が実際の半分以下と情報を流した。故に、それを相手できる最低の人数しか、セレスタ王は軍を編成していないはずだし、斥候からの報告もそのようになっている。セレスタ軍の右翼隊も全滅したはずなのに、我が軍が圧されているのは、何故だ!?)」
すると、次の瞬間、聞き覚えのある女性の声が、戦場に轟いた。
『ザパート連合公国の兵士たちに告ぐ。我が名はアンティム。公国の盟主である!!』
アンティムの声で、戦っていた全ての兵士たちの手が止まり、声のする方向へと顔を向けた。
「アンティム…様……だって!?」
「ランデス様の説明によれば、アンティム様はランデス様に盟主の座を譲ったはずでは!?」
「アンティム様の隣にいるのは………敵国セレスタの国王では!?」
『お前達はランデスに騙されている!私はランデスに盟主の座を譲ってはおらぬ。ランデスに幽閉され、ランデスは盟主を自称したのだ!!』
『私を解放してくれたのは、ここにいるセレスタ国王陛下と、英雄クレスの末裔アルモ殿とその仲間たちだ。そして、私はこの馬鹿げた戦いが終わった後、隣にいらっしゃるセレスタ国王陛下の妃となり、この大陸は再び一つの国として再出発する。故に、この戦いは全く無意味なものなのだ!!クーデターを図ったランデスに従って犬死する必要はない。剣を納め、どうか投降して欲しい』
アンティムの声が届いてから数秒と絶たないうちに、戦場のあちこちから、剣の刀身と地面の石がぶつかって鳴り響く音が木霊した。
「(あの姿、そしてこの声は、アンティムに間違いない………くそっ!廃砦の警備を少なくし、軍に回したのはやはり間違いだったか…)」
生き残っていた公国軍の全兵士が、アンティムの呼びかけに応じて剣から手を放す中、ランデスだけはそれをせず、馬をアンティムの元へと走らせていた。
”パカラッパカラッパカラッパカラッ………”
ランデスが馬を走らせてから数分と経たないうちに、彼はアンティムとセレスタ王のすぐ近くまで歩を進ませていた。
「アンティム!!」
互いに顔が判別できるところまでランデスが近づいた時、彼は彼女の名を叫んだ。
「お前は………ランデス!!」
「セレスタ王よ!!アンティムを我が手から救い出し、公国軍を投降させたことで勝ったつもりでいるのだろうが、そうは問屋が卸さないぞ!」
次の瞬間、ランデスは小型のボーガンを懐から取り出すと、電光石火、セレスタ王の心臓目がけて矢を放った。
ゆっくりと目を開いたその先で、幕舎の支柱に掛けられたランタンの炎が揺らめいている。
「…ここ…は…」
「アルモ…気がついたんだな、良かった!」
愛しい人の透き通るような声が耳に入り、私は歓喜に震えた。
「アコード!本当に、ずっとそばにいてくれたのね…」
「当たり前じゃないか。アルモに何かあったら、俺は…」
「ありがとう、アコード!………ところで、私の魔法は…」
「無事、成功したさ。今頃、アンティムさん率いるターパ軍とセレスタ軍が合流して、公国軍と戦っているはずさ」
「そう、それなら良かった」
アコードの言葉に胸をなでおろした私は、起き上がろうと試みた。
”ヨロッ…”
上体を起こすことまではできた私だったが、そのまま立ち上がろうとした瞬間に立ちくらみを起こしてしまった。
”ガシッ”
「アルモ!大丈夫か!?」
そんな軟な私を、アコードがしっかりと支えてくれ、転倒は免れた。
「大丈夫…じゃないかな………やっぱり、あの場にいた全員を瞬間移動(テレポーテーション)させるのは、少し無理があったのかな…」
「いきなり起き上がるのは、今のアルモには危険だ。起き上がりたい時は言ってくれ!」
「ええ、そうするわ」
アコードにエスコートされ、私は近くにあったチェアに座る。それを確認したアコードも、近くにあったチェアに腰かけた。
「それで…セレスタとターパの合同軍と、公国軍との戦況はどうなの?」
「ターパ軍が合流する前は、セレスタ軍が劣勢だったようだけど、アンティムさんが先陣を切って窮地に陥っていたセレスタ王率いる本隊を助け、戦況は一変したようだ」
「公国軍からすれば、盟主を禅譲したはずのアンティムさんが急に現れ、戦いを仕掛けてくるのだもの………混乱して当然だわ」
「ターパ軍と合流したセレスタ軍本隊は、アンティムさんの呼びかけで投降した公国軍を吸収して、ランデスがいる公国軍本隊へと向かっているそうだ」
「…私が、今回戦力外であることが、甚だ残念で仕方ないわ」
「…でも、アルモの瞬間移動(テレポーテーション)がなければ、ターパ軍の援軍が入らなったセレスタ軍本隊は今頃壊滅していたことだろう。だから、今は休んでいいんだよ、アルモ」
「…うん」
「俺とアルモ以外の4人は、セレスタ陛下とアンティムさんの護衛ということで、ターパ軍の一員として動いている。だから、安心して休んでくれ」
「ありがとう、アコード」
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”キンカンキン………キンカンキン………”
”ザシュッ…”
「グハッ!」
”ブゥン…”
「…」
”バタン”
周囲を見渡すと、味方の公国軍兵が次々と倒れていくのが分かる。
「(…一体どうなっている!?セレスタ軍には、我が軍の数が実際の半分以下と情報を流した。故に、それを相手できる最低の人数しか、セレスタ王は軍を編成していないはずだし、斥候からの報告もそのようになっている。セレスタ軍の右翼隊も全滅したはずなのに、我が軍が圧されているのは、何故だ!?)」
すると、次の瞬間、聞き覚えのある女性の声が、戦場に轟いた。
『ザパート連合公国の兵士たちに告ぐ。我が名はアンティム。公国の盟主である!!』
アンティムの声で、戦っていた全ての兵士たちの手が止まり、声のする方向へと顔を向けた。
「アンティム…様……だって!?」
「ランデス様の説明によれば、アンティム様はランデス様に盟主の座を譲ったはずでは!?」
「アンティム様の隣にいるのは………敵国セレスタの国王では!?」
『お前達はランデスに騙されている!私はランデスに盟主の座を譲ってはおらぬ。ランデスに幽閉され、ランデスは盟主を自称したのだ!!』
『私を解放してくれたのは、ここにいるセレスタ国王陛下と、英雄クレスの末裔アルモ殿とその仲間たちだ。そして、私はこの馬鹿げた戦いが終わった後、隣にいらっしゃるセレスタ国王陛下の妃となり、この大陸は再び一つの国として再出発する。故に、この戦いは全く無意味なものなのだ!!クーデターを図ったランデスに従って犬死する必要はない。剣を納め、どうか投降して欲しい』
アンティムの声が届いてから数秒と絶たないうちに、戦場のあちこちから、剣の刀身と地面の石がぶつかって鳴り響く音が木霊した。
「(あの姿、そしてこの声は、アンティムに間違いない………くそっ!廃砦の警備を少なくし、軍に回したのはやはり間違いだったか…)」
生き残っていた公国軍の全兵士が、アンティムの呼びかけに応じて剣から手を放す中、ランデスだけはそれをせず、馬をアンティムの元へと走らせていた。
”パカラッパカラッパカラッパカラッ………”
ランデスが馬を走らせてから数分と経たないうちに、彼はアンティムとセレスタ王のすぐ近くまで歩を進ませていた。
「アンティム!!」
互いに顔が判別できるところまでランデスが近づいた時、彼は彼女の名を叫んだ。
「お前は………ランデス!!」
「セレスタ王よ!!アンティムを我が手から救い出し、公国軍を投降させたことで勝ったつもりでいるのだろうが、そうは問屋が卸さないぞ!」
次の瞬間、ランデスは小型のボーガンを懐から取り出すと、電光石火、セレスタ王の心臓目がけて矢を放った。
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