トラウマ抱えた冴えない男は、異世界で魔王を妻にします

ワスレナ

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第二章 リータ魔王国復興編

第35話 「戦争に向けた対策」

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「色々世話になったな」

 ガーライルは私とレイアに挨拶あいさつし、巣へと戻る準備をしている。

「ああ。それと、おぬしの里に戻ったら、グレイリーにまた会いたいと伝えておいてくれ」

「わかった。我が弟グレイリーもレイア様に会えたと伝えれば喜ぶじゃろう。 帰って皆に話がついたら、グレイリーも連れてくるつもりだ」

「うむ。楽しみにしておる。この前の時は、おぬしをグレイリーと見間違えてしもうたわ」

 どうやらレイアは国王が竜を召喚したさい、ガーライルの事をグレイリーと思っていたようだ。

「まあ双子だしな。間違うのも無理は無かろうて。では、そろそろ出立しゅったついたす。できるだけ早く戻ってくるでな」

 私達は上空へテレポートし、ガーライルを見送る。

「ここまでで十分だ。里の場所を知られるわけにはいかぬでな」

「ああ。里の皆によろしく伝えてくれ。気をつけてな」

「また会おう」

 ガーライルは助走をつけ、ゆっくり飛び立つと、次の瞬間高速で移動し、あっという間に見えなくなってしまう。

「早っ!!!! もう見えなくなってしまった。あんな大きな身体なのに」

「あれがあやつの特技じゃからな」

 ガーライルを送り出した後、私とレイアは私室に戻り、戦争に向けての準備を進める。私はレイアにこれまで考えていた話を切り出す。

「調理場で料理長から色々話を聞かせてもらった。レイアに料理を喜んでもらった事もそうなんだけれど、一番の目的は戦争に向けての兵糧ひょうろうの事なんだ」

兵糧ひょうろう? 食べ物の話か?」

「ああ、そうだ。リオリス国側の戦力が百万人以上いるって事は、ほぼ長期戦を覚悟かくごしないといけないよな。そうなると、大事なのは兵糧ひょうろうの確保とけが人への対応、そしてみんなの体調管理だ」

「うむ。タクトの考えてる事を話してくれ」

兵糧ひょうろうは大きく分けて、食糧の質、みんなに行き渡らせる流通力、そして移送手段だ」

 私は順を追ってレイアに説明する。

「まず、私ができる事で、料理長から魔界の食材などの情報を集めた。その中でみちびき出したのが、良質なパンと肉の提供なんだ」

「どういうことじゃ?」

「エネルギーとなる食べ物と、栄養のバランスのある食べ物を摂取しないと、いくさで力が出せないってのはわかるよな」

「そうじゃな。空腹では本来の力が出ないからな」

「うん。それに、お米はこの世界ではどちらかと言うと希少な食べ物みたいだから、戦争の食糧としては向かない。だから、柔らかいパンを食べてもらうのが一番いいと思った」

「なるほどのう。肉はどうなのじゃ?」

「牛肉、豚肉、いのししの肉あたりがいいんじゃないかな。一番はしっかり火を通した豚肉だ」

「うむ。仕入れについてはわらわに任せよ」

「ありがとう」

 レイアが私の意見を受け入れてくれる。有難ありがたい事だ。

「あと、料理はみんながきないように、料理長と相談してみるよ」

「うむ。楽しみにしておる。任せたぞ」

 食糧の質に関してはこれで大丈夫だと思う。次は流通と移送手段か。

「次は流通についてだな。これは戦力がわからないと何とも言えないか」

 考えのまとまらない私にレイアが答える。

「それに関してはわらわの方で情報を整理してからにしよう。結論はまだ先でよいじゃろう」

「それは助かる。よろしく頼むよ」

 私の言葉にレイアの顔が少しゆるむ。本当に頼りになる。

「あとは移送手段か…… これも流通ルートが決まってからでもよいか」

「それについては、魔法を使える魔族を少しそろえてほしいんだ」

 私の願いにレイアが不思議そうな顔をする。

「それはよいが、どうするのじゃ?」

「魔法を使おうと思ってるよ。ただ、普通の魔法じゃないから、レベルの高い魔術師が必要なんだ」

「なるほどな、そういう事か。あいわかった」

兵糧ひょうろうについては今はこのくらいでいいかな。けが人の対応も後でいいし、あとは最後の体調管理についてだな」

「体調管理? それはまこと大事なのか?」

「多分、魔族や魔物は人間より耐性が高くて体調をくずしにくいのかもしれないが、戦争のような過酷かこくな条件だと疲労ひろう蓄積ちくせきして、体調をくずして戦えなくなる者も出てくると思うんだ」

「確かに、長期戦だとそうなってくるか」

「ああ。そこで考えているのが、衛生えいせい管理だ」

衛生えいせいとはどういうことじゃ?」

 レイアが不思議そうに私に投げかける。

「病気や汚染から健康な状態を守る事、といったところか。魔族とは逆の概念がいねんかもしれないけどね」

「確かに。わらわ達は害する側になるな。考えもせなんだわ」

「普段の生活なら魔族は不要だろうけれど、戦争だとそれが必要になる。一人でも多く生きていてほしいからな」

「それで、何をするのじゃ?」

「うん。水を確保する上水施設と、汚染物を処理する下水げすい施設を作るんだ」

 私の提案にレイアが驚く。

「何を言っておる!? そんなものがこの短期間で作れるというのか!?」

 レイアの懸念けねんはもっともだ。簡単な事ではない。というか、無茶な事かもしれない。

「作れるじゃなくて、作らないといけないんだ」

 私の決意にレイアは少し考えこむ。

「そうじゃのう…… なら、奴らの協力が必要になるな」

「奴ら? それは一体?」

「ドッペルゲンガーじゃよ」

 ドッペルゲンガー――生まれながらのスパイにして暗殺者。彼らは出会った者とたがわぬ姿に擬態ぎたいできる不思議な魔物だ。姿だけでなく、思考や性格まで模倣もほうできるという。

「ドッペルゲンガーって、実際に存在したのか……」

「そうじゃ。奴らは普段は見えない場所で集団生活をしておるから、めったに遭遇そうぐうする事はあるまい。目的が無い限り外界に出る事も無いしのう」

「そうだったのか」

 そんな時、急にレイアに通信が入る。レイアの部下である地獄の使い、アシュレからである。

「どうした? 何かあったのか?」

「はっ! 実は文官達の間で問題が生じておりまして、魔王様にお越しいただきたいとの事でございます」

「あいわかった。すぐ向かうので、伝えてくれ」

「かしこまりました」

 通信を終えると、レイアが席を立って準備し始める。

「何か問題が起こったらしい。ちょうどよい機会じゃ。タクト、少しだけわらわと共に行ってくれるか?」

「ああ。いいよ」

 レイアには何か意図いとがあるのだろう。私はレイアの申し出に快諾かいだくする。どんな問題か不明だが、重大な事が発生したのかもしれない。不安を覚えつつ、私とレイアはアシュレ達の元へ向かう。

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ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回もまた、よろしくお願いいたします。
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