リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第一節 アストリカ学園編

第19幕 精一杯の可愛らしさ・前編

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 エセルカと遊び(デート?)に行く約束をして、その当日。
 俺はセイルと一階の食堂で食事を済ませた後、そのまま寮の入り口付近で彼女を待つことにした。
 一応朝食後、というのは決めていたが、それ以上の約束はしていなかったからだ。

 エセルカはまだ来ていなかったが、まあいい。
 待つのも俺の役割と言えるだろうし……変に彼女を待たせてしまえば、後でクラスの女子共から何を言われるかわかったもんではない。

 それに、これからのことを考えるのにもちょうどいい。
 とは言ってもそんなに悩むことも無いのだけれど。
 学生というこの世界では色々と学ばなければいけない立場である以上、俺もその役割を果たさなければならない。
 それが済むまでは……ここに留まるしか無いからな。

 その後は……自由に外を回ってみるのもありだろう。
 アンヒュルと呼ばれる邪神を崇めているらしい種族とも合わなければならないだろうし、それが俺を知る手がかりになるのだと思う。

「あ、あの……」
「うん?」

 ついつい考え事をしていたせいか、いつの間にかエセルカが来ていたようだ。
 そちらの方に目を向けてみると、そこにいたのは――えらくめかしこんだエセルカの姿だった。
 いや、ちょっと張り切り過ぎなんじゃないか?

 ドレス……とまでは言わないが、白いブラウスに淡いピンク色の袖なしのワンピース。それと一体化していて、裾の方が白くフリル状になっているスカートを身に着けていた。
 腰と胸元あたりにはリボンが装着されていて、胸元のは赤、腰の方のは白色をしている。白くて長い靴下みたいなのを履いてるようだけど、あれはタイツかな?
 髪も大きな白いリボンのアクセサリーで後ろで一つにまとめられていた。

 初めておしゃれしてきた子供みたいな印象を抱かせてくれるが、元々童顔よりなエセルカが着ると、結構可愛らしく見える。
 これはもうあえて狙ったようにしか思えない。

「あ、あの、そんなみないで……」
「あ、ああ、悪い」

 ついジロジロと見てしまったが、まさかここまでしてくるとは思わなかった。
 対する俺は相当ラフな格好しているだけに、エセルカと一緒だと浮いて見える。

「ああ、そのな、可愛いぞ」
「え!? か、かかか、可愛いですか!? ど、どうも!」

 なんでそんなに両手のひらをこっちに突き出してあわあわと上下に振ってるのだろうか。
 拒絶されてるような、ここから先に進めないというのを表現してるような動きだ。

 しどろもどろになっている姿が妙に可愛らしいが、ここでこれ以上ばたばたしていてもしょうがないだろう。

「まあなんだ……行こうか」
「う、うん!」

 最初から衝撃的なことになったが、とりあえず町に繰り出そう。話はそれからだ。


 ――


 二人で隣り合って歩くことになったルエンジャの町は、なんだか少し違って見えた。
 相変わらず普通の地面とは違う石で塗り固められたようなところに、俺が見知ってる建物から奇妙なものまで様々に建っている場所だけれどな。

 しかしここで困ったことが一つある。そう、会話が全く弾まない。
 ちらちらとこっちを見る視線はあるんだが、気になってそっちを見ると慌てて逸らされてしまうのだ。

「お、あっちに花屋があるぞ」
「あ、そ、そうだね!」
「……」
「……」

 この調子だ。
 アクセサリー屋を見つけても、花屋を見つけても、「そうだね」の一言で終わらされてしまい、全く会話が続かない。
 はてさてどうしたものか……。
 俺の方もこのまま何も続かないのは困ってしまう。

 ん? あそこにあるのは……。

「エセルカ」
「は、はい!」
「あっちに喫茶店があるから、入ろうか」
「は、はい!」

 相変わらず中身が伴ってない返事だけど、まあいい。
 これ以上こんな気まずい雰囲気で歩くのも苦しいし、ちょうどいい。

「あ……」

 半ば強引に手を握って喫茶店に入ると、チリンチリンという涼やかな音色と共に聞こえてくる「いらっしゃいませ」。
 案内されるままに席に座り、エセルカと向かい合うと……恥ずかしそうにうつむいてる彼女の姿が。
 またそれかー……とも思わないでもないが、今日は大体こんな感じだし、今更だ。

「エセルカ」
「は、ひゃい!」
「なにか頼もうぜ。何にする?」
「う、うん……」

 ようやくメニュー表に向き合うエセルカだが……本当にどうしたのだろうか?
 誘ってきたのは彼女だし、学園で授業がある日なんかは楽しそうに待っていたような気がするんだが……。
 さてはまた女子共になにか吹き込まれたか? 

 そうでもなければこんな風にしどろもどろになったりはしないだろう。

「決まったか?」
「えっとアイスコーヒーにしようかな……」

 その後店員を呼び、アイスコーヒーとパンケーキを二セットずつと……ショートケーキ頼むことにした。
 こればっかりは発展した世界を祝いたい気持ちになる。
 甘いものは心を満たしてくれるからな。
 なのだが……相変わらず落ち着きのないエセルカに思わずため息が出そうになる。

「何を吹き込まれたのか知らないけどよ、らしくないぞ」
「そ、うかな……?」

 若干落ち込みがちのエセルカだが、このまま上の空の状態でいられても困る。
 なんとか……せめていつもの状態に戻ってもらわなければ。

「せっかく町に出たんだからさ。もう少し楽しもうぜ。俺も楽しみにしてたし」
「た、楽しみにしてた……? 本当?」
「当たり前だろ」
「そ、そうなんだ……」

 えへへ、とすごく嬉しそうに照れ笑いするエセルカは、いつもの調子を戻してくれたようで、その後は少々あわあわしながらも、普段通り……いや、普段以上に張り切っているようだった。
 どうやら、ようやく普段通りの彼女と話ができそうだ――。
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