19 / 415
第一節 アストリカ学園編
第19幕 精一杯の可愛らしさ・前編
しおりを挟む
エセルカと遊び(デート?)に行く約束をして、その当日。
俺はセイルと一階の食堂で食事を済ませた後、そのまま寮の入り口付近で彼女を待つことにした。
一応朝食後、というのは決めていたが、それ以上の約束はしていなかったからだ。
エセルカはまだ来ていなかったが、まあいい。
待つのも俺の役割と言えるだろうし……変に彼女を待たせてしまえば、後でクラスの女子共から何を言われるかわかったもんではない。
それに、これからのことを考えるのにもちょうどいい。
とは言ってもそんなに悩むことも無いのだけれど。
学生というこの世界では色々と学ばなければいけない立場である以上、俺もその役割を果たさなければならない。
それが済むまでは……ここに留まるしか無いからな。
その後は……自由に外を回ってみるのもありだろう。
アンヒュルと呼ばれる邪神を崇めているらしい種族とも合わなければならないだろうし、それが俺を知る手がかりになるのだと思う。
「あ、あの……」
「うん?」
ついつい考え事をしていたせいか、いつの間にかエセルカが来ていたようだ。
そちらの方に目を向けてみると、そこにいたのは――えらくめかしこんだエセルカの姿だった。
いや、ちょっと張り切り過ぎなんじゃないか?
ドレス……とまでは言わないが、白いブラウスに淡いピンク色の袖なしのワンピース。それと一体化していて、裾の方が白くフリル状になっているスカートを身に着けていた。
腰と胸元あたりにはリボンが装着されていて、胸元のは赤、腰の方のは白色をしている。白くて長い靴下みたいなのを履いてるようだけど、あれはタイツかな?
髪も大きな白いリボンのアクセサリーで後ろで一つにまとめられていた。
初めておしゃれしてきた子供みたいな印象を抱かせてくれるが、元々童顔よりなエセルカが着ると、結構可愛らしく見える。
これはもうあえて狙ったようにしか思えない。
「あ、あの、そんなみないで……」
「あ、ああ、悪い」
ついジロジロと見てしまったが、まさかここまでしてくるとは思わなかった。
対する俺は相当ラフな格好しているだけに、エセルカと一緒だと浮いて見える。
「ああ、そのな、可愛いぞ」
「え!? か、かかか、可愛いですか!? ど、どうも!」
なんでそんなに両手のひらをこっちに突き出してあわあわと上下に振ってるのだろうか。
拒絶されてるような、ここから先に進めないというのを表現してるような動きだ。
しどろもどろになっている姿が妙に可愛らしいが、ここでこれ以上ばたばたしていてもしょうがないだろう。
「まあなんだ……行こうか」
「う、うん!」
最初から衝撃的なことになったが、とりあえず町に繰り出そう。話はそれからだ。
――
二人で隣り合って歩くことになったルエンジャの町は、なんだか少し違って見えた。
相変わらず普通の地面とは違う石で塗り固められたようなところに、俺が見知ってる建物から奇妙なものまで様々に建っている場所だけれどな。
しかしここで困ったことが一つある。そう、会話が全く弾まない。
ちらちらとこっちを見る視線はあるんだが、気になってそっちを見ると慌てて逸らされてしまうのだ。
「お、あっちに花屋があるぞ」
「あ、そ、そうだね!」
「……」
「……」
この調子だ。
アクセサリー屋を見つけても、花屋を見つけても、「そうだね」の一言で終わらされてしまい、全く会話が続かない。
はてさてどうしたものか……。
俺の方もこのまま何も続かないのは困ってしまう。
ん? あそこにあるのは……。
「エセルカ」
「は、はい!」
「あっちに喫茶店があるから、入ろうか」
「は、はい!」
相変わらず中身が伴ってない返事だけど、まあいい。
これ以上こんな気まずい雰囲気で歩くのも苦しいし、ちょうどいい。
「あ……」
半ば強引に手を握って喫茶店に入ると、チリンチリンという涼やかな音色と共に聞こえてくる「いらっしゃいませ」。
案内されるままに席に座り、エセルカと向かい合うと……恥ずかしそうにうつむいてる彼女の姿が。
またそれかー……とも思わないでもないが、今日は大体こんな感じだし、今更だ。
「エセルカ」
「は、ひゃい!」
「なにか頼もうぜ。何にする?」
「う、うん……」
ようやくメニュー表に向き合うエセルカだが……本当にどうしたのだろうか?
誘ってきたのは彼女だし、学園で授業がある日なんかは楽しそうに待っていたような気がするんだが……。
さてはまた女子共になにか吹き込まれたか?
そうでもなければこんな風にしどろもどろになったりはしないだろう。
「決まったか?」
「えっとアイスコーヒーにしようかな……」
その後店員を呼び、アイスコーヒーとパンケーキを二セットずつと……ショートケーキ頼むことにした。
こればっかりは発展した世界を祝いたい気持ちになる。
甘いものは心を満たしてくれるからな。
なのだが……相変わらず落ち着きのないエセルカに思わずため息が出そうになる。
「何を吹き込まれたのか知らないけどよ、らしくないぞ」
「そ、うかな……?」
若干落ち込みがちのエセルカだが、このまま上の空の状態でいられても困る。
なんとか……せめていつもの状態に戻ってもらわなければ。
「せっかく町に出たんだからさ。もう少し楽しもうぜ。俺も楽しみにしてたし」
「た、楽しみにしてた……? 本当?」
「当たり前だろ」
「そ、そうなんだ……」
えへへ、とすごく嬉しそうに照れ笑いするエセルカは、いつもの調子を戻してくれたようで、その後は少々あわあわしながらも、普段通り……いや、普段以上に張り切っているようだった。
どうやら、ようやく普段通りの彼女と話ができそうだ――。
俺はセイルと一階の食堂で食事を済ませた後、そのまま寮の入り口付近で彼女を待つことにした。
一応朝食後、というのは決めていたが、それ以上の約束はしていなかったからだ。
エセルカはまだ来ていなかったが、まあいい。
待つのも俺の役割と言えるだろうし……変に彼女を待たせてしまえば、後でクラスの女子共から何を言われるかわかったもんではない。
それに、これからのことを考えるのにもちょうどいい。
とは言ってもそんなに悩むことも無いのだけれど。
学生というこの世界では色々と学ばなければいけない立場である以上、俺もその役割を果たさなければならない。
それが済むまでは……ここに留まるしか無いからな。
その後は……自由に外を回ってみるのもありだろう。
アンヒュルと呼ばれる邪神を崇めているらしい種族とも合わなければならないだろうし、それが俺を知る手がかりになるのだと思う。
「あ、あの……」
「うん?」
ついつい考え事をしていたせいか、いつの間にかエセルカが来ていたようだ。
そちらの方に目を向けてみると、そこにいたのは――えらくめかしこんだエセルカの姿だった。
いや、ちょっと張り切り過ぎなんじゃないか?
ドレス……とまでは言わないが、白いブラウスに淡いピンク色の袖なしのワンピース。それと一体化していて、裾の方が白くフリル状になっているスカートを身に着けていた。
腰と胸元あたりにはリボンが装着されていて、胸元のは赤、腰の方のは白色をしている。白くて長い靴下みたいなのを履いてるようだけど、あれはタイツかな?
髪も大きな白いリボンのアクセサリーで後ろで一つにまとめられていた。
初めておしゃれしてきた子供みたいな印象を抱かせてくれるが、元々童顔よりなエセルカが着ると、結構可愛らしく見える。
これはもうあえて狙ったようにしか思えない。
「あ、あの、そんなみないで……」
「あ、ああ、悪い」
ついジロジロと見てしまったが、まさかここまでしてくるとは思わなかった。
対する俺は相当ラフな格好しているだけに、エセルカと一緒だと浮いて見える。
「ああ、そのな、可愛いぞ」
「え!? か、かかか、可愛いですか!? ど、どうも!」
なんでそんなに両手のひらをこっちに突き出してあわあわと上下に振ってるのだろうか。
拒絶されてるような、ここから先に進めないというのを表現してるような動きだ。
しどろもどろになっている姿が妙に可愛らしいが、ここでこれ以上ばたばたしていてもしょうがないだろう。
「まあなんだ……行こうか」
「う、うん!」
最初から衝撃的なことになったが、とりあえず町に繰り出そう。話はそれからだ。
――
二人で隣り合って歩くことになったルエンジャの町は、なんだか少し違って見えた。
相変わらず普通の地面とは違う石で塗り固められたようなところに、俺が見知ってる建物から奇妙なものまで様々に建っている場所だけれどな。
しかしここで困ったことが一つある。そう、会話が全く弾まない。
ちらちらとこっちを見る視線はあるんだが、気になってそっちを見ると慌てて逸らされてしまうのだ。
「お、あっちに花屋があるぞ」
「あ、そ、そうだね!」
「……」
「……」
この調子だ。
アクセサリー屋を見つけても、花屋を見つけても、「そうだね」の一言で終わらされてしまい、全く会話が続かない。
はてさてどうしたものか……。
俺の方もこのまま何も続かないのは困ってしまう。
ん? あそこにあるのは……。
「エセルカ」
「は、はい!」
「あっちに喫茶店があるから、入ろうか」
「は、はい!」
相変わらず中身が伴ってない返事だけど、まあいい。
これ以上こんな気まずい雰囲気で歩くのも苦しいし、ちょうどいい。
「あ……」
半ば強引に手を握って喫茶店に入ると、チリンチリンという涼やかな音色と共に聞こえてくる「いらっしゃいませ」。
案内されるままに席に座り、エセルカと向かい合うと……恥ずかしそうにうつむいてる彼女の姿が。
またそれかー……とも思わないでもないが、今日は大体こんな感じだし、今更だ。
「エセルカ」
「は、ひゃい!」
「なにか頼もうぜ。何にする?」
「う、うん……」
ようやくメニュー表に向き合うエセルカだが……本当にどうしたのだろうか?
誘ってきたのは彼女だし、学園で授業がある日なんかは楽しそうに待っていたような気がするんだが……。
さてはまた女子共になにか吹き込まれたか?
そうでもなければこんな風にしどろもどろになったりはしないだろう。
「決まったか?」
「えっとアイスコーヒーにしようかな……」
その後店員を呼び、アイスコーヒーとパンケーキを二セットずつと……ショートケーキ頼むことにした。
こればっかりは発展した世界を祝いたい気持ちになる。
甘いものは心を満たしてくれるからな。
なのだが……相変わらず落ち着きのないエセルカに思わずため息が出そうになる。
「何を吹き込まれたのか知らないけどよ、らしくないぞ」
「そ、うかな……?」
若干落ち込みがちのエセルカだが、このまま上の空の状態でいられても困る。
なんとか……せめていつもの状態に戻ってもらわなければ。
「せっかく町に出たんだからさ。もう少し楽しもうぜ。俺も楽しみにしてたし」
「た、楽しみにしてた……? 本当?」
「当たり前だろ」
「そ、そうなんだ……」
えへへ、とすごく嬉しそうに照れ笑いするエセルカは、いつもの調子を戻してくれたようで、その後は少々あわあわしながらも、普段通り……いや、普段以上に張り切っているようだった。
どうやら、ようやく普段通りの彼女と話ができそうだ――。
1
あなたにおすすめの小説
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる