44 / 415
第二節 勇者たちとの旅路編
第43幕 英雄達の攻防
しおりを挟む
他の勇者や護衛たちも観戦の為に一般席側に移り、今は俺とカーターの二人がこの広い闘技場の中にいるのみ。
「後悔するなよ。俺様に歯向かったことをよ!」
「なんだ寝てるのか?」
「……どういう意味だ」
「寝言を言ってる暇があったらさっさと現実に戻ってこい。
そう言ったんだよ」
相変わらず挑発に乗りやすい男だ。
自分に確固たる自信があるのならば、この程度の挑発で青筋を立てることもないだろうに。
空虚な自信。言葉で揺らぐ程度のものしか持ち合わせていない証拠だ。
俺達が睨み合う中、エンデハルト王は戦いの開始を告げる前の口上を述べ始めた。
「それでは、カーター対グレリアの戦いを始める。
双方とも、これはあくまで腕試しである。明らかな手抜きは感心しないが、出来るだけ力を見せつつ、節度ある戦い方をすることだ」
つまりなるべく本気を出しながら、死なないように手加減しろということなのだろうが、またえらく難しいことを言ってくれる。
大体そんなものは目の前の馬鹿を見てから言ってほしいものだ。
カーターは最初からそんなもの知ったことではないと言わんばかりに俺を睨んでいるんだからな。
「それでは、戦闘、開始!」
エンデハルト王の言葉と共に、カーターは一気に駆け出してきたが……図体の割に恐ろしく速い。
どこからそんな速度が出せるんだ、と言いたくなるほどだ。
「ほら、よぉ!!」
軽い音を立てて繰り出された蹴り。威力はそれほどでもないだろうと判断した俺は、片手で受け止め反撃しようとしたのだが……なぜか嫌な予感がして踏ん張るように大地を踏みしっかりと防ぐ体勢を取る。
鈍い音と共に蹴りが俺の両腕に深くめり込み、その衝撃で地面を擦るように弾き飛ばされるが、なんとか堪え、カーターの挙動を見据える。
……どういうことだ?
さっきまで軽いと判断したあの蹴りが、まるで重りを入れているかのような重い一撃になっている。
全体重を載せたとしてもこれだけの威力の蹴りは出せないはずだ。
そんな風に思っていると、再び軽やかな足取りでカーターは俺に接近してくる。
「どうしたどうしたぁ! 口先だけのクソガキがぁ!」
息もつかせぬ拳の連打。
軽いかと思われるその一撃一撃は、途中で重さが加わったかのような鈍い痛みを伝えてくる。
……ん? 『重さが加わる』?
自分で思って我ながらその考えは当たっているのかも知れないと思った。
つまり、カーターの能力は……『重さを操ること』だ。そうすれば説明がつく。
俺の方になんともないということは、能力を把握しきれていないのか、もしくは自分にしか使えないのかのどちらかだろう。
「そらそらそらそらぁ!!」
俺が何もしてこないのを良いことに、左に右にと、小気味のいいパンチを次々と繰り出してくる。
……いい加減、調子に乗らせておくべきではないだろう。
魔方陣が使えれば倒すのも簡単なのだが、それが封じられてる今、身体能力だけで渡り合うのは不利。
なら、使える手はなんでも使わないとな!
「大地を揺るがせ我が魔力。他者の行動を阻害せよ【ランドシェイク】!」
「おわっ、なんだ!?」
襲撃者が襲ってきた時に使った大地を揺らす魔法。
これで少しはこちらが有利になればと思ったが、予想以上に体勢を崩している。
少々予想外だったが、チャンスだ。
カーターは既に俺が攻撃できる範囲にいる。
そのまま俺は無防備な体に一撃を入れ、【ランドシェイク】が止んだ瞬間に大地を思いっきり踏みしめ、カーターの腹部を下から突き上げるように鋭い一撃を食らわせてやった。
「ぐぶっ……」
「まだ、まだぁ!」
緩んだ隙を見逃すほど、俺は優しくはない。
立て続けにくるりと一回転しながら上段回し蹴りの体勢をとり、そのまま流れるように鋭い蹴りをお見舞いしてやる。
ちょうど顎の部分に当たり、激しく頭が揺さぶられたようだ。
ふらふらとよろけ、片膝をつきかけたそこにさらに畳み掛けるように地面を踏みしめ、上半身を捻るように腰を動かす。
そのまま思いっきり力を込めて繰り出すのは、身体全てを使って解き放つ渾身の右ストレート。
体勢を整えかけてるカーターの顔面にそれが突き刺さり、打ち抜くように振り抜いた。
カーターはそのまま吹っ飛び、満足に受け身も取れずに無様に転げてしまった。
決して油断せず、カーターの動きを見守るが、完全に決まったようで起き上がる気配がなかった。
「な、何が起こったんだ?」
「なんだよあの動き……」
俺とカーターの攻防を見て驚愕の表情を浮かべながらがやがやと騒ぎ立てているのは、勇者とその護衛。
気持ちはわかる。
あれはセイルとかだったら回し蹴りを放つ前に体勢を整えられていただろうし、よしんばそこまではいけたとしても、ストレートを放つ間が無かっただろう。
俺の方も身体強化を使わずに繰り出したせいでそれなりに身体に負担がかかった。
対して国のトップに立つ王達は興味深そうに俺の方を注目しているようだった。
「グレリア! すげぇ!
回し蹴りからストレートの辺りの動作なんて全然見えなかったぜ!」
俺はセイルがあんまりにも尊敬の眼差しを浮かべて騒ぎ立てるもんだから、思わず拳をグッと突き上げ、ちょっとした喜びをアピールした。
かなりやってしまった感がある……誰から見てもわかるほどの圧勝。
だけどこれで少しはさっきの借りを返すことができたと言えるだろう。
カーターのように英雄である――勇者である事をいいことに好き放題やろうとする奴に対しても牽制できるだろうし、一石二鳥というものだろう。
「後悔するなよ。俺様に歯向かったことをよ!」
「なんだ寝てるのか?」
「……どういう意味だ」
「寝言を言ってる暇があったらさっさと現実に戻ってこい。
そう言ったんだよ」
相変わらず挑発に乗りやすい男だ。
自分に確固たる自信があるのならば、この程度の挑発で青筋を立てることもないだろうに。
空虚な自信。言葉で揺らぐ程度のものしか持ち合わせていない証拠だ。
俺達が睨み合う中、エンデハルト王は戦いの開始を告げる前の口上を述べ始めた。
「それでは、カーター対グレリアの戦いを始める。
双方とも、これはあくまで腕試しである。明らかな手抜きは感心しないが、出来るだけ力を見せつつ、節度ある戦い方をすることだ」
つまりなるべく本気を出しながら、死なないように手加減しろということなのだろうが、またえらく難しいことを言ってくれる。
大体そんなものは目の前の馬鹿を見てから言ってほしいものだ。
カーターは最初からそんなもの知ったことではないと言わんばかりに俺を睨んでいるんだからな。
「それでは、戦闘、開始!」
エンデハルト王の言葉と共に、カーターは一気に駆け出してきたが……図体の割に恐ろしく速い。
どこからそんな速度が出せるんだ、と言いたくなるほどだ。
「ほら、よぉ!!」
軽い音を立てて繰り出された蹴り。威力はそれほどでもないだろうと判断した俺は、片手で受け止め反撃しようとしたのだが……なぜか嫌な予感がして踏ん張るように大地を踏みしっかりと防ぐ体勢を取る。
鈍い音と共に蹴りが俺の両腕に深くめり込み、その衝撃で地面を擦るように弾き飛ばされるが、なんとか堪え、カーターの挙動を見据える。
……どういうことだ?
さっきまで軽いと判断したあの蹴りが、まるで重りを入れているかのような重い一撃になっている。
全体重を載せたとしてもこれだけの威力の蹴りは出せないはずだ。
そんな風に思っていると、再び軽やかな足取りでカーターは俺に接近してくる。
「どうしたどうしたぁ! 口先だけのクソガキがぁ!」
息もつかせぬ拳の連打。
軽いかと思われるその一撃一撃は、途中で重さが加わったかのような鈍い痛みを伝えてくる。
……ん? 『重さが加わる』?
自分で思って我ながらその考えは当たっているのかも知れないと思った。
つまり、カーターの能力は……『重さを操ること』だ。そうすれば説明がつく。
俺の方になんともないということは、能力を把握しきれていないのか、もしくは自分にしか使えないのかのどちらかだろう。
「そらそらそらそらぁ!!」
俺が何もしてこないのを良いことに、左に右にと、小気味のいいパンチを次々と繰り出してくる。
……いい加減、調子に乗らせておくべきではないだろう。
魔方陣が使えれば倒すのも簡単なのだが、それが封じられてる今、身体能力だけで渡り合うのは不利。
なら、使える手はなんでも使わないとな!
「大地を揺るがせ我が魔力。他者の行動を阻害せよ【ランドシェイク】!」
「おわっ、なんだ!?」
襲撃者が襲ってきた時に使った大地を揺らす魔法。
これで少しはこちらが有利になればと思ったが、予想以上に体勢を崩している。
少々予想外だったが、チャンスだ。
カーターは既に俺が攻撃できる範囲にいる。
そのまま俺は無防備な体に一撃を入れ、【ランドシェイク】が止んだ瞬間に大地を思いっきり踏みしめ、カーターの腹部を下から突き上げるように鋭い一撃を食らわせてやった。
「ぐぶっ……」
「まだ、まだぁ!」
緩んだ隙を見逃すほど、俺は優しくはない。
立て続けにくるりと一回転しながら上段回し蹴りの体勢をとり、そのまま流れるように鋭い蹴りをお見舞いしてやる。
ちょうど顎の部分に当たり、激しく頭が揺さぶられたようだ。
ふらふらとよろけ、片膝をつきかけたそこにさらに畳み掛けるように地面を踏みしめ、上半身を捻るように腰を動かす。
そのまま思いっきり力を込めて繰り出すのは、身体全てを使って解き放つ渾身の右ストレート。
体勢を整えかけてるカーターの顔面にそれが突き刺さり、打ち抜くように振り抜いた。
カーターはそのまま吹っ飛び、満足に受け身も取れずに無様に転げてしまった。
決して油断せず、カーターの動きを見守るが、完全に決まったようで起き上がる気配がなかった。
「な、何が起こったんだ?」
「なんだよあの動き……」
俺とカーターの攻防を見て驚愕の表情を浮かべながらがやがやと騒ぎ立てているのは、勇者とその護衛。
気持ちはわかる。
あれはセイルとかだったら回し蹴りを放つ前に体勢を整えられていただろうし、よしんばそこまではいけたとしても、ストレートを放つ間が無かっただろう。
俺の方も身体強化を使わずに繰り出したせいでそれなりに身体に負担がかかった。
対して国のトップに立つ王達は興味深そうに俺の方を注目しているようだった。
「グレリア! すげぇ!
回し蹴りからストレートの辺りの動作なんて全然見えなかったぜ!」
俺はセイルがあんまりにも尊敬の眼差しを浮かべて騒ぎ立てるもんだから、思わず拳をグッと突き上げ、ちょっとした喜びをアピールした。
かなりやってしまった感がある……誰から見てもわかるほどの圧勝。
だけどこれで少しはさっきの借りを返すことができたと言えるだろう。
カーターのように英雄である――勇者である事をいいことに好き放題やろうとする奴に対しても牽制できるだろうし、一石二鳥というものだろう。
1
あなたにおすすめの小説
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる