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第三節 英雄の道 セイル編
第54幕 怪しい話
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「……事になった……かし、計……だ」
何を言ってるのか上手く聞き取れず、俺は扉にぴったりと耳を当ててみる。
そうしたら、今度は前よりもと聞こえてきた。
「……だ……か。異世界転生……れない」
『異世界転生』? 転生というからには生まれ変わりのことを指すんだろうけど、異世界ってことは別の世界ってことか?
「……同じ……ない。
ならば、取り込んだほうが……。
転生……敵対する……不味いのでは?」
転生、敵対するのはまずい……もしかして……。
――国王は異世界から転生してきた人と何かしらの関係がある、ということか……?
だけど、それはそれで疑問が湧いてくる。
転生って言ったって、本人がそういう風に言いふらしてもしない限りわからないはずだ。
……でも、そんな事わざわざ言うか?
『俺は前は別の世界の人間だったんだぜ!』
なんて、頭がおかしい奴のセリフにしか思えない。
これが例えばティーチとかから飛び出してきた話であれば、俺も一笑に付したと思う。
だけど王様の真剣味の宿る言葉と、重苦しい雰囲気に、不思議と笑って済ませられるようなちゃんちゃら可笑しいものではないと感じさせてくれる。
「……安心しろ。聞かれ……殺す……」
そんな言葉が聞こえてきた瞬間、俺は極力足音を立てないように、だけど弾けるように急いでその場を後にした。
王様の言うことはどうも不明瞭だけど、なにか重要な事を言っていることははっきりと伝わってきた。
そして『殺す』……。
これは間違いなく知られれば口封じをするという意味だ。
幸い、王様は話に夢中だったようで、なんとか色々と迷いながらも部屋に辿り着くことの出来た俺は、軽く片手腕立てをしながら心を落ち着かせている間も、特になにか恐ろしいことが起こる……ということはなかった。
ふと安堵していると、扉からノック音が響いてきたもんだから、思わずドキィッ! とビビってしまう。
ばくばくうるさい心臓を抑えるようにそっと扉を開けるとそこにいたのは――エセルカだった。
「……? どうしたの?」
「い、いや……なんでもない。エセルカこそどうしたんだ?」
あまりにも驚いている俺を見て怪訝な表情を浮かべているエセルカに対し、なんとか平静を整えて聞き返す。
「えっと、くずはちゃんが外にご飯食べに行かないかって言ってたから……。
セイルくん、中々帰ってこなくて……」
「あ、ああ、うん。わかった。あまり慣れないからちょっと迷ってたんだ。
あー……えっと、汗流してからでいいか?」
「うん。お風呂の場所、わかる?」
「……そういや知らなかった」
途端に不潔なものを見る目で俺を見てくるエセルカの視線が突き刺さる。
あまりに何も考えずに放った言葉が俺の心を抉っていくのを感じながら、慌てて誤解を解かなければと言葉にする。
「い、いや、水浴びはしたぞ!? 別になにもしなかったわけじゃない!」
「……本当?」
「当たり前だろ!」
なんとかエセルカのその目を止めさせ、風呂場の場所を聞き出して、一汗流すことにした。
だけども、俺の頭の中にはあの時の王様の、誰かに話すような独り言が残っていて……しばらくそれに悩まされることになるだろうな、と深く、深くため息をつくのだった。
――
王様の部屋で盗み聞きした次の日。
俺達は城の門近く、王様が用意してくれていた馬車の目の前にいた。
汗を流して、くずはとエセルカと町を見回りながら色んな物を食べて……今王様に感謝の気持ちを伝えているくずはを見ているうちに、俺の気持ちもいくらか落ち着いてきた。
結局、俺がいくら考えたってわからない。
だったら、とりあえず今は頭の片隅にそれを覚えておいておけばいい。
いつかもっと色んな事を知って、何が善くて何が悪いか判断しなければならなくなった時の為に。
そういう結論を出した途端、少しは心が軽くなった気がした。
「二人共、勇者であるくずはをしっかりと守るのだぞ」
いつの間にかくずはと話し終わっていた王様は、俺とエセルカの前に立って、少し厳しい口調と優しげな視線で俺達に話しかけてきてくれた。
「はい! お任せください!」
「うむ、良い返事だ。
現在、もう一人の勇者――司が、アンヒュルの支配下である中央に比較的近いカナラサという町で活動している。
彼と合流し、共にアンヒュルを倒してくれ」
「はいっ!」
笑顔でしっかりと強い視線で応えるエセルカと、無言だが、はっきりと強く頷いた俺に満足したのか、そのまま王様は城の中に帰っていった。
「さ、それじゃ、早速いきましょうか」
「うん! くずはちゃんのこと、ちゃんと守るからね!」
「エセルカってば、気が早いわよ」
「……とりあえず二人共後ろに乗ってくれ。運転は俺がする」
俺達三人は互いの顔を見て、改めて自分たちの意思を確認するように深く頷くと、俺は運転席に。
くずはとエセルカは馬車の中に入っていく。
流石にこの二人に運転させるのは不安を感じるからな。
一度思いっきり深呼吸をして、俺は鎧馬の手綱を握りしめ、動くように指示を出す。
少しずつ動いていく馬車は、しばらくしてウキョウを出て、道なりに進みながらルエンジャを通って……司と合流するために彼がいるというカナラサの町に向かうのだった。
何を言ってるのか上手く聞き取れず、俺は扉にぴったりと耳を当ててみる。
そうしたら、今度は前よりもと聞こえてきた。
「……だ……か。異世界転生……れない」
『異世界転生』? 転生というからには生まれ変わりのことを指すんだろうけど、異世界ってことは別の世界ってことか?
「……同じ……ない。
ならば、取り込んだほうが……。
転生……敵対する……不味いのでは?」
転生、敵対するのはまずい……もしかして……。
――国王は異世界から転生してきた人と何かしらの関係がある、ということか……?
だけど、それはそれで疑問が湧いてくる。
転生って言ったって、本人がそういう風に言いふらしてもしない限りわからないはずだ。
……でも、そんな事わざわざ言うか?
『俺は前は別の世界の人間だったんだぜ!』
なんて、頭がおかしい奴のセリフにしか思えない。
これが例えばティーチとかから飛び出してきた話であれば、俺も一笑に付したと思う。
だけど王様の真剣味の宿る言葉と、重苦しい雰囲気に、不思議と笑って済ませられるようなちゃんちゃら可笑しいものではないと感じさせてくれる。
「……安心しろ。聞かれ……殺す……」
そんな言葉が聞こえてきた瞬間、俺は極力足音を立てないように、だけど弾けるように急いでその場を後にした。
王様の言うことはどうも不明瞭だけど、なにか重要な事を言っていることははっきりと伝わってきた。
そして『殺す』……。
これは間違いなく知られれば口封じをするという意味だ。
幸い、王様は話に夢中だったようで、なんとか色々と迷いながらも部屋に辿り着くことの出来た俺は、軽く片手腕立てをしながら心を落ち着かせている間も、特になにか恐ろしいことが起こる……ということはなかった。
ふと安堵していると、扉からノック音が響いてきたもんだから、思わずドキィッ! とビビってしまう。
ばくばくうるさい心臓を抑えるようにそっと扉を開けるとそこにいたのは――エセルカだった。
「……? どうしたの?」
「い、いや……なんでもない。エセルカこそどうしたんだ?」
あまりにも驚いている俺を見て怪訝な表情を浮かべているエセルカに対し、なんとか平静を整えて聞き返す。
「えっと、くずはちゃんが外にご飯食べに行かないかって言ってたから……。
セイルくん、中々帰ってこなくて……」
「あ、ああ、うん。わかった。あまり慣れないからちょっと迷ってたんだ。
あー……えっと、汗流してからでいいか?」
「うん。お風呂の場所、わかる?」
「……そういや知らなかった」
途端に不潔なものを見る目で俺を見てくるエセルカの視線が突き刺さる。
あまりに何も考えずに放った言葉が俺の心を抉っていくのを感じながら、慌てて誤解を解かなければと言葉にする。
「い、いや、水浴びはしたぞ!? 別になにもしなかったわけじゃない!」
「……本当?」
「当たり前だろ!」
なんとかエセルカのその目を止めさせ、風呂場の場所を聞き出して、一汗流すことにした。
だけども、俺の頭の中にはあの時の王様の、誰かに話すような独り言が残っていて……しばらくそれに悩まされることになるだろうな、と深く、深くため息をつくのだった。
――
王様の部屋で盗み聞きした次の日。
俺達は城の門近く、王様が用意してくれていた馬車の目の前にいた。
汗を流して、くずはとエセルカと町を見回りながら色んな物を食べて……今王様に感謝の気持ちを伝えているくずはを見ているうちに、俺の気持ちもいくらか落ち着いてきた。
結局、俺がいくら考えたってわからない。
だったら、とりあえず今は頭の片隅にそれを覚えておいておけばいい。
いつかもっと色んな事を知って、何が善くて何が悪いか判断しなければならなくなった時の為に。
そういう結論を出した途端、少しは心が軽くなった気がした。
「二人共、勇者であるくずはをしっかりと守るのだぞ」
いつの間にかくずはと話し終わっていた王様は、俺とエセルカの前に立って、少し厳しい口調と優しげな視線で俺達に話しかけてきてくれた。
「はい! お任せください!」
「うむ、良い返事だ。
現在、もう一人の勇者――司が、アンヒュルの支配下である中央に比較的近いカナラサという町で活動している。
彼と合流し、共にアンヒュルを倒してくれ」
「はいっ!」
笑顔でしっかりと強い視線で応えるエセルカと、無言だが、はっきりと強く頷いた俺に満足したのか、そのまま王様は城の中に帰っていった。
「さ、それじゃ、早速いきましょうか」
「うん! くずはちゃんのこと、ちゃんと守るからね!」
「エセルカってば、気が早いわよ」
「……とりあえず二人共後ろに乗ってくれ。運転は俺がする」
俺達三人は互いの顔を見て、改めて自分たちの意思を確認するように深く頷くと、俺は運転席に。
くずはとエセルカは馬車の中に入っていく。
流石にこの二人に運転させるのは不安を感じるからな。
一度思いっきり深呼吸をして、俺は鎧馬の手綱を握りしめ、動くように指示を出す。
少しずつ動いていく馬車は、しばらくしてウキョウを出て、道なりに進みながらルエンジャを通って……司と合流するために彼がいるというカナラサの町に向かうのだった。
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