リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第三節 英雄の道 セイル編

第61幕 交差する者たち

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 俺は司の返事も聞かずに扉を蹴破り、中に突入する。
 あの少女の悲鳴……俺の勘違いじゃなければエセルカの声だ。

 そう言えば宿から帰ってからエセルカの様子がおかしかった。
 どこか余所余所しいというか、なにか挙動不審だった気がする。

 蹴り込んで入った部屋の先にいたのは司と……組み敷かれて必死に抵抗している様子のエセルカの姿だった。

「セ、セイルくん……」
「ちっ、なに入ってきてんだ!」
「お前こそ! エセルカに何してる!」

 半分ほど上の服が破れていて、ギリギリ胸は見えてないし、下の方も特に破れてるとかはない。
 そこのところは安心したけど、こいつ……エセルカを無理やり犯そうとしていたのか……!

「何してる? 見てわからないのか?
 グレリアの情報と引き換えに、ちょっと遊ぼうってことだよ」
「ふざけるなよ……!」

 何が情報と引き換えだ。
 大した情報も持っていないこの男が言うセリフか……!

「は、離して……!」
「おいおい、知りたくないのか? グレリアのことをよ」
「……こんな事して教えてもらったって、グレリアくんは喜ばない!」
「はっ、そうかよ。なら力ずくだ」

 静かな怒りを宿した目で、エセルカは司の事を睨んでいるのだが、あいつは『だからどうした』と言うかのように再び服に手を伸ばそうとしていた。

「させるわけねぇだろうがっ!」

 これ以上、あいつに変なことはさせない!
 そう意気込んで司に向かって突進するのだが、なぜか俺は司のいた場所を空振り、代わりにエセルカの上に乗ってしまっていた。

「なっ……!?」
「え……?」

 一体どうなってるんだ?
 さっきまで司がいたはずなのに、いつの間にか影も形も見えなくなってしまっている。

「こっちだよ。こっち」

 後ろの方から聞こえた声に振り向くと、そこにはいやらしい笑顔で拳を振り上げている司の姿があった。
 流石の俺も完全に虚を突かれた状態で避けることは出来ず、不格好ながらギリギリ防御するので精一杯だった。

「くっ……」
「ふぅん、これを防ぐか。なら……」

 そのままエセルカが下にいるにもかかわらず……いや、いるのがわかってるからこそ何度も何度も俺の事を殴ってきた。

 ちっ……防御するにも限度がある。
 だけどここに釘付けにされている以上、俺の方も下手に手出しはできない。
 どうしたら……。

「この馬鹿、やめなさいよ!」

 くずはは俺の事を散々殴ってくれている司に向かって剣を抜き放って、そのまま振り下ろす。
 司はちょうど殴り終わって拳を引っ込めている状態だったのだが、次の攻撃に移らず、そのまま一歩引いて回避していた。

「危ないな。本当に戦うつもりか?」
「あんたがこれ以上、あたしの仲間を傷つけるようだったら、それぐらいするわよ」

 毅然として立ち向かうくずはに対し、鼻で笑う司。
 その間に俺はエセルカの上から降りて、きちんと戦える体勢を取る。

「はっ、そっちがその気なら……」

 再び、いきなり姿が消えた……いや、相当体勢を低くして、突撃しているようだった。
 だけど、一体いつの間に?

 さっきまでただ突っ立っていただけだったはずなのに、いつの間にかくずはに向かってきている。
 ……これが司の勇者としての能力なのか? さっぱりわからない。

「この……」
「遅いんだよ! 凍てつけ我が魔力。矢となり敵を射抜け【アイスアロー】!」

 なんの躊躇いもなく魔法を使ってくる司に対し、【アイスアロー】を避けて剣を振り上げた……までは良かったのだが、追いついてきた司に手元を蹴り込まれて弾き飛ばされてしまった。

「くっ……」
「悪いが、おれはお前に興味ないからな。
 本気でやらせてもらうぞ!」
「待て! やらせるかよ!」

 ちょうど俺が司の背後を付く形で殴りかかったのだがそれがまずかった。

「燃え盛れ我が魔力。球となりて敵を焼き払え【ファイアボール】!」

 俺の方も見ずに手をかざして【ファイアボール】を飛ばしてきたが、あんなもん避けてしまったら部屋が燃えてしまうというのに、なんて時に使いやがる……!

「くぅぅあぁぁぁ!」
「セ、セイル!」

【ファイアボール】の直撃を受けて強かに壁に背中を打ち付けてしまい、負傷してしまう。
 その事に動揺したくずはに対して、司は遠慮も何もなく腹部に蹴りを入れてくる。

「くぅ……」
「馬鹿が。おれに楯突いた罰だ。凍てつけ我が魔力。球となりて敵に解き放て【アイスボール】」

 そのまま【アイスボール】の直撃を受けたくずはは、部屋から弾き飛ばされ、廊下の方に放り出されてしまった。

「おいおい、全然勝負にならないじゃないか」

 気づいたときには俺の近くに歩み寄ってきた司がそのまま何度も俺を踏みつけてくる。

「ぐっ、がぁ……」
「馬鹿が。おれの能力をロクに把握してないくせに油断してるからそうなるんだ」
「や、やめて……!」

 俺を踏みつけながら嘲笑を浮かべる司に対し、気弱ながらはっきりとした力強い意志を宿したエセルカの声が届いてくる。

「ふん、ならおれに抱かれることだな。
 そうすればこの二人は勘弁してやるよ。
 ああ、下手なこと考えるなよ? 魔法を使ったら、こいつを盾にしてやるからな」
「…………」

 俯いて表情のしれないエセルカに満足げにゆっくりと歩み寄る司。
 くそっ……動け……!

 しこたま打ちのめされた俺は必死で体勢を整え、構えるのだけれど、もはや立っているだけでふらふらと言った様子だ。
 エセルカのところに向かっていた司は、そんな姿の俺を認め、あざ笑う。

「ち、ちっくしょう……」

 またか。
 また無力を味わうのか……。

 そう思った瞬間――俺はその姿を目にした。
 黒い外套にその身を包み、司の前に立ちふさがる一人の男の姿。
 男は隠していた顔の部分をさらけ出して……。

「グレリア……?」
「久しぶりだな。こんな風に再会するとは思わなかったが」

 そこには一年前に行方不明になったグレリアが――俺達の前に立っていた。
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