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第四節 魔人の国・探求編
第65幕 魔人の首都
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俺はシエラと合流した後、彼女に連れられるままに最初に辿り着いた都市から、魔人の国の首都であるアッテルヒアへと向かうことになった。
俺としてはこの世界について知られれば良かったし、向こうが一緒に行くことに否定的でなかったことだけでもありがたかったのだ。
出来ればこの国のことに少しでも明るい人間――魔人とでも言えば良いのだろうか――と行動を共にするという願いが叶ったのだが、そのことに関して随分とあっさり引き受けたものだと思った。
「初めて会ったときの印象が最悪だったから、断られるかと思ったぞ」
「そう? 私もあの時は同じように思ってたけど……何故かしらね。
今はどっちかというと懐かしい感じがするわ。
一度しか会ったことなかったはずなのに……不思議な気分よ」
そう言って嬉しそうに笑う彼女の姿は、やけに印象的で、シエラも同じような感情を抱いてくれたんだなと改めて思った。
案外、本当に娘の生まれ変わりなのかもしれない。
髪も目も違うのだけれど……なんといえばいいのだろうか。
魂の形が似ているという表現がしっくりきそうだ。
一緒に行くことが決まって……まず最初に直面した問題としては、鎧馬での旅に俺が慣れきっていたということだろうか。
久しぶりに馬に揺られ、生き物の匂いとともに進んだ道は若干堪えた。
そして……辿り着いた場所、首都アッテルヒアはどこか古い景色を見ているように感じた。
「ここが首都アッテルヒア……」
グランセストという国名には聞き覚えがなかったが、首都名にはとても懐かしい響きを感じた。
なぜならそこは、俺が生まれ育った村と同じ名前だったからだ。
これが偶然だと片付けることは出来ないだろう。
なにしろ邪神ファルト。グレリア様と呼ばれた存在。
そしてその俺が生まれ育った村と同じ名前の首都。
偶然っていうのはここまで重ならないものだ。
もはやそれを超えた……ある種の必然すら感じる。
「ふふ、どう? 初めて見たんでしょう?」
「……まあ、そうだけど。
なぜ初めてだと分かる?」
「いや、そんなに周囲を見回していたら誰だってわかるわよ。
お上りさんかなにかかしらね」
くすくすと笑うシエラは本当に愉快そうだ。
全く……一度娘を思い出してしまったからか、どうにもこの悪戯な笑顔がダブってしまう。
それが自然と、俺に笑みを作らせる。
「全く、あまりからかうなよな」
「……貴方、馬鹿にされてるのよ?
それでなんで笑ってられるのかしらね」
若干不機嫌そうに俺の事を見ているシエラに対し、出来る限り満面の笑みを浮かべてこう言ってやった。
「お前が子供のように笑ってるからだよ」
――
さて、せっかく首都に辿り着いたのは良いのだが何をしようか……。
具体的なことも決まってないのに考えなしの行動をしてしまったが、よくよく考えたらこういう時の為にシエラと行動をともにしてるんじゃないか。
「なあシエラ」
「ん? あによ」
「……いや、すまん」
腹が減ったと言い出したシエラが適当に選んだ食堂で、今彼女は口いっぱいにパンを頬張っている最中だった。
……そういえばこの食堂で出てきたパンも白くてふわふわ。
柔らかさと小麦特有の風味、かすかに香るように舌を包む仄かな甘味がまさに極上の逸品。
ここにも違和感の種が転がっていた。
これだけの上質なパン……昔は出会ったことすらなかった。
ジパーニグのときのように明確な違いがあるわけでもない。
町も文化も……俺がいた時と似通っている部分の方が多い。
だけど……食事だけが決定的に違う。出されている肉や野菜も種類が多く、ここだけが圧倒的に違う。
下手をすればジパーニグやイギランスよりも上質な物を食べてるのではないか? と思うほどだ。
「もぐむぐ……言いたいことがあったらはっきり言いなさいよ」
「口に何かを含んだまま話すのは、マナー違反というものだろう」
飲み込んだ後、不満そうに俺の事を睨むシエラだったが、ため息混じりに諭すと納得はしてくれた。
全く、そういうところがまた子供っぽいというのに。
「……で、何よ」
「シエラはこの首都によく来るのか?」
「……たまに、だけど。どうして?」
なぜ今それを聞くんだというように疑問を浮かべているが、俺にとっては重要な問題だ。
「それならこの国の図書館と……後はそうだな、有名なところとか案内してくれよ。
俺がいたところじゃ本とか珍しかったからさ。わかるだろう?」
「ああ……なるほど」
妙に納得している様子のシエラだったが、そんな生暖かい目でこっちを見るのはやめろ。
「わかった。図書館と……あとはこの首都でとっておきに有名な場所に案内してあげるわ」
――
食事を終えて案内された図書館はジパーニグのルエンジャで利用した図書館と負けず劣らずの広さを誇っている。
……文明の発達したジパーニグとほぼ同規模の……明らかに人側による介入が行われた建物だ。
シエラの案内の元、俺はここにやってきた。
――もしも俺の考えが正しければ。
ジパーニグを含めた周囲の国と、この魔人の国の抱える歪み、軋みズレる違和感。
この答えを目の前の図書館は少なからず提示してくれるであろう。
それは不思議でも何でも無く、確固たる事実になる。
そう信じ、一歩、図書館の中へと入っていくのだった――。
俺としてはこの世界について知られれば良かったし、向こうが一緒に行くことに否定的でなかったことだけでもありがたかったのだ。
出来ればこの国のことに少しでも明るい人間――魔人とでも言えば良いのだろうか――と行動を共にするという願いが叶ったのだが、そのことに関して随分とあっさり引き受けたものだと思った。
「初めて会ったときの印象が最悪だったから、断られるかと思ったぞ」
「そう? 私もあの時は同じように思ってたけど……何故かしらね。
今はどっちかというと懐かしい感じがするわ。
一度しか会ったことなかったはずなのに……不思議な気分よ」
そう言って嬉しそうに笑う彼女の姿は、やけに印象的で、シエラも同じような感情を抱いてくれたんだなと改めて思った。
案外、本当に娘の生まれ変わりなのかもしれない。
髪も目も違うのだけれど……なんといえばいいのだろうか。
魂の形が似ているという表現がしっくりきそうだ。
一緒に行くことが決まって……まず最初に直面した問題としては、鎧馬での旅に俺が慣れきっていたということだろうか。
久しぶりに馬に揺られ、生き物の匂いとともに進んだ道は若干堪えた。
そして……辿り着いた場所、首都アッテルヒアはどこか古い景色を見ているように感じた。
「ここが首都アッテルヒア……」
グランセストという国名には聞き覚えがなかったが、首都名にはとても懐かしい響きを感じた。
なぜならそこは、俺が生まれ育った村と同じ名前だったからだ。
これが偶然だと片付けることは出来ないだろう。
なにしろ邪神ファルト。グレリア様と呼ばれた存在。
そしてその俺が生まれ育った村と同じ名前の首都。
偶然っていうのはここまで重ならないものだ。
もはやそれを超えた……ある種の必然すら感じる。
「ふふ、どう? 初めて見たんでしょう?」
「……まあ、そうだけど。
なぜ初めてだと分かる?」
「いや、そんなに周囲を見回していたら誰だってわかるわよ。
お上りさんかなにかかしらね」
くすくすと笑うシエラは本当に愉快そうだ。
全く……一度娘を思い出してしまったからか、どうにもこの悪戯な笑顔がダブってしまう。
それが自然と、俺に笑みを作らせる。
「全く、あまりからかうなよな」
「……貴方、馬鹿にされてるのよ?
それでなんで笑ってられるのかしらね」
若干不機嫌そうに俺の事を見ているシエラに対し、出来る限り満面の笑みを浮かべてこう言ってやった。
「お前が子供のように笑ってるからだよ」
――
さて、せっかく首都に辿り着いたのは良いのだが何をしようか……。
具体的なことも決まってないのに考えなしの行動をしてしまったが、よくよく考えたらこういう時の為にシエラと行動をともにしてるんじゃないか。
「なあシエラ」
「ん? あによ」
「……いや、すまん」
腹が減ったと言い出したシエラが適当に選んだ食堂で、今彼女は口いっぱいにパンを頬張っている最中だった。
……そういえばこの食堂で出てきたパンも白くてふわふわ。
柔らかさと小麦特有の風味、かすかに香るように舌を包む仄かな甘味がまさに極上の逸品。
ここにも違和感の種が転がっていた。
これだけの上質なパン……昔は出会ったことすらなかった。
ジパーニグのときのように明確な違いがあるわけでもない。
町も文化も……俺がいた時と似通っている部分の方が多い。
だけど……食事だけが決定的に違う。出されている肉や野菜も種類が多く、ここだけが圧倒的に違う。
下手をすればジパーニグやイギランスよりも上質な物を食べてるのではないか? と思うほどだ。
「もぐむぐ……言いたいことがあったらはっきり言いなさいよ」
「口に何かを含んだまま話すのは、マナー違反というものだろう」
飲み込んだ後、不満そうに俺の事を睨むシエラだったが、ため息混じりに諭すと納得はしてくれた。
全く、そういうところがまた子供っぽいというのに。
「……で、何よ」
「シエラはこの首都によく来るのか?」
「……たまに、だけど。どうして?」
なぜ今それを聞くんだというように疑問を浮かべているが、俺にとっては重要な問題だ。
「それならこの国の図書館と……後はそうだな、有名なところとか案内してくれよ。
俺がいたところじゃ本とか珍しかったからさ。わかるだろう?」
「ああ……なるほど」
妙に納得している様子のシエラだったが、そんな生暖かい目でこっちを見るのはやめろ。
「わかった。図書館と……あとはこの首都でとっておきに有名な場所に案内してあげるわ」
――
食事を終えて案内された図書館はジパーニグのルエンジャで利用した図書館と負けず劣らずの広さを誇っている。
……文明の発達したジパーニグとほぼ同規模の……明らかに人側による介入が行われた建物だ。
シエラの案内の元、俺はここにやってきた。
――もしも俺の考えが正しければ。
ジパーニグを含めた周囲の国と、この魔人の国の抱える歪み、軋みズレる違和感。
この答えを目の前の図書館は少なからず提示してくれるであろう。
それは不思議でも何でも無く、確固たる事実になる。
そう信じ、一歩、図書館の中へと入っていくのだった――。
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