リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第五節 分かたれた人と魔人編

第78幕 分かたれた者たち

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 大所帯になってきた俺達は、イギランスへと行く組とここにとどまりアンヒュル――つまり魔人と戦い、ジパーニグに気取られないようにする為の二組に分かれることにした。

 ……本当は全員で行くか、ジパーニグとイギランスを調べる組に別れた方が良いのだろう。
 実際エセルカとセイルはそうしようとしたのだが、ルーシーとくずはがそれに反対してきた。

 ここで誰かが魔人を食い止めなければ……特にジパーニグの勇者であるくずははここに残らなければジパーニグに怪しまれてしまうだろう、というのが彼女たちの意見だ。

「逃げるんなら魔方陣で身体を強化して一気に離れればいいじゃない。
 少なくとも私は一緒に調べればいいと思うけど?」

 シエラはさもそれが当たり前のように口にしているが、それはちょっと無理というものだ。
 魔人なら確かにそれも可能なのだろうけど、それが出来るのは俺とシエラの二人だけだからな。

「……わたくしたちはあなたがた魔人の方とは違って、詠唱魔法しか覚えてきておりませんわ。
 一日二日程度で覚えられるものでしたらそれもいい案でしょうけど……」

 ルーシーの言うことももっともだ。
 俺たちのように自由自在に魔方陣を使えるのなら、いざという時には逃げに徹することも出来るだろう。
 だけどそれは現実的ではない。

 確かに今ジパーニグに警戒されるのはまずいかもしれない。
 一番の理由としては……司の存在だ。

 ジパーニグに疑いをかけられた場合、まず間違いなく司が刺客として現れるだろう。
 あいつの能力は俺にはわからなかった。

 いつの間にかナイフが迫ってきたときには驚いたが……それよりも武器が飛んできたすぐの司の位置が気になった。
 あれは投げてすぐにどうこう出来るような位置じゃない。
 まるで最初から投げていたような……。

 とにかく、俺であれば対処のしようもあるが、イギランスに行く側には一年前に魔物に乗って超遠距離から攻撃してきた存在がいることも考えられる。

 その二つの脅威をセイルたちが……俺がいないチームがなんとか出来るのか? そう考えると難しいのではないか……という結論に達する。

 それならば、ジパーニグにはなるべく怪しまれず……先にイギランスを調べるほうが先決、ということだ。


 ――


「それじゃあそっちはよろしくお願いね」
「ああ、任された」

 ジパーニグに残ることになったのはくずは・セイル・ルーシーの三人。
 イギランスに行くことになったのは俺・エセルカ・シエラの三人だった。

 エセルカが俺と一緒に行きたいと強く願ったからこうなった感じだ。

 ルーシーは最初イギランスに向かわせようと考えたのだが、イギランスに行けば彼女の事を知っているものも出てくるだろう。
 それこそヘンリーにたまたま町で会ったなどとなれば、監視がつくだけでは済まないだろう。

 彼女はイギランスが他国から隠す形で【英雄召喚】で喚び出した勇者だからな。
 勇者会合で変に目立った俺には……恐らく監視くらいはつくだろうが、それ以上はないと思う。

 だからこそルーシーにはジパーニグに留まらせておいて、偽名で通すようにしてある。
 勇者としての力は身の危険を感じた時以外使わないように言い含めておいているから……多分大丈夫だろう。

 万が一に司や他の周囲に怪しい動きが確認できたときは迷わず魔人の国の領域に逃げるよう言ってあるしな。

 くずははセイルの方をちらちらと見ていたからあいつと行動を共にした方がいいだろうというのが俺とエセルカと……なぜか会ったばかりのルーシーの判断だった。

 シエラが俺とイギランスに行くことになったのはいざとなったら魔方陣を扱うことが出来るという一点に尽きる。
 二人が魔人であれば、残りの一人を俺かシエラが担いで急速離脱することも可能というわけだ。

「グレリア、エセルカはお前がいなくて寂しがってたからな、ちゃんと守ってやれよ?」
「ちょ、ちょちょちょちょっとセイルくん!? な、なんでそんなこと言うの!?」

 セイルが茶化すようにいたずら小僧みたいな笑みを浮かべてそんな事を言うと、エセルカが顔を真っ赤にして大慌てでおろおろとしてしまう。

「ほんっと、デリカシーがない殿方は嫌ですわ……。
 もう少しなんとかなりませんの?」
「そう言わないで……あいつにも良いところはあるのよ」

『ああもう、本当に嫌ですわ』みたいな言葉が聞こえてきそうなほど顔をしかめているルーシーに対し、口を濁すように目線を反らして頬を掻くくずは。

「イギランスに行くのは良いけど、あんまり野宿とかしないようにしてよ?」
「わかってるって……」

 シエラはシエラで野宿は好きじゃないみたいな口調で言ってるが……まあ、良いだろう。

「グレリア」
「なんだ?」
「一応馬車を抑えてるから、それを使ってちょうだい」
「ああ、ありがとう」

 まさかくずはに気遣われるとは思ってもみなかったが、それも彼女が成長した証だろう。
 思わず苦笑いしながらも、俺たちは鎧馬の馬車の方面まで歩いて……一年ぶりのイギランスへ向かったのだった――。
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