リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第五節 分かたれた人と魔人編

第80幕 イギランスの闇

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 イギランスの城の中、兵士達が目の前を通り過ぎるのを俺たちも黙ったまま歩きながらやり過ごす。
 ちらっとエセルカの方を見てみると、不安げに兵士たちを見上げている小動物の姿が見えた。

 しっかし、この子は本当に成長しないな……。
 いや、精神が、というより身体が。
 エセルカと出会ってから三年ぐらい経つはずなのに、相変わらずの小動物さで、こいつは本当に俺と同じ年齢なのか? と思うほどだ。

 なんというか、子供と紛れても全然違和感がない。

「……流石ね。この魔方陣、全く兵士たちから見えてないなんて」

 兵士たちが過ぎ去った後、小声で感心するかのように話しかけてくるのはシエラ……の方なんだが、俺はむしろその魔方陣の構築に疑問が起こったほどだ。

起動式マジックコードの単語なら『気配隠蔽』にするより『気配遮断』の方がいいだろう?」
「それはそうだけど……普通、そんな『良いだろう』って思う事も実行に移すこともないわよ……」

 呆れたような顔で俺の方を見ているシエラだったが……なるほど。
 現代の魔方陣も俺が認識しているものとは少し違うのかもしれない。
 それは……どちらかというと、劣化しているという部分にだが。

 今使ってる魔方陣は気配と姿を遮断するものだ。
 同じものを使ってる者同士なら見えることも出来るし、連携が取りやすい。

 一件暗殺向きの魔方陣だが、その代わりこれを使ってる間は他の魔方陣を起動することが出来ず、扉や壁など……なにかに触れた瞬間に解除される。

 これは自分が持っている武器にも該当する。
 もっとも、起動式マジックコードを書き換えればそれも解消されるが……そうすると他の部分に影響が出てくる。

 それに消費する魔力も多いから、その後の戦いや消費量を考えて比較したら、割りに合わない事のほうが多くなる。
 いくら魔方陣だからといっても必ずしも万能というわけではない。

 炎を魔方陣で展開したからといって、永遠に消えないようにできなかったり、熱さや痛みを与えることなく相手を負傷させることが出来ないのと同じで、魔方陣には限度があるのだ。

 ……まあ、だからこそ扉を開ける度に毎回魔方陣を発動させてるわけなんだが。

「それよりも……随分と奥まで来たはずなんだが……」

 ひとまず話を打ち切って、俺はおぼろげな明かりに包まれている通路を見ながら呟いた。
 城の中を随分と探し回ったはずなのだが、何の収穫も得られていない。

「どうする? 一旦引いて、他の作戦を考える?」
「いや……もう少し探索してみよう。
 一度ここまでやってきたんだ。戻るにしても、少しでも何かを掴まないと、な」

 とは言っても、これ以上の探索に意味はあるのだろうか?
 そんな風に考えていたその矢先だ。

「……随分と大きな扉だね」

 エセルカがぼそっと呟いたのをシエラが黙って頷いているが、確かに大きい。
 それと……なにか聞こえる気がする。

「誰かいるみたいだけど……どうする?」
「俺が開ける。二人は離れててくれ」

 エセルカとシエラは黙って頷いて扉の方から離れるのを確認すると、まず自分にかかっている魔方陣を解除した俺は、消音の魔方陣を展開し、俺たちが通れるほど扉を開けてすぐ、に気配遮断の魔方陣を使う。

 誰かがいる以上、声をだすことも出来ないから目線だけで二人に指示をだして中に侵入する。

 部屋はそれなりに豪華で、高貴……というか城の中でも地位の高い者がいるような部屋に見える。
 恐らく王か……それに準ずる者の部屋なんだろう。

 部屋にいた『誰か』は意外とすぐに見つかった。
 机に肘を突き、大きく輝く水晶のような玉を前になにやら考えながら独り言を話しているエンデハルト王がいた。

 シエラ・エセルカの二人に喋らないように手で指示をだして、なにを話しているのか聞いてみることにした。


 ――


「ああ、あれからこちらの方は音沙汰なし。
 恐らくやられたか……捕虜にされたかどちらかであろう」
『そうか……ならばこちらの出番というわけか』

 ……二人の男の声がする。
 この場にいるのはエンデハルト王だけのはずなんだが……。

「どうするのだ? わしのところで三度目の……」
『いや、何度も【英雄召喚】を行っては疑問を抱く者も増えるだろう。
 ここは……彼女に行ってもらおう』
「……信用できるのか?
 お主はいささかあの勇者のことを過大評価しておるのではないか?」

 エンデハルト王が疑問を口にした瞬間、そこにはいないはずの男の怒気が伝わってくるような気がした。
 それを王は一心に受けているのか、目をキョロキョロと左右に動かし、不安げな様子を見せる。
 王としての尊厳なんかはそこには無く、彼個人の性格を表しているようだった。

『彼女は私が最も信頼しておる者だ。
 彼女を疑うということは私を疑うということ。
 ……よもや、貴様は私を疑っているのではあるまいな?』
「そんなわけでは……! 申し訳ない。過ぎた言葉であった」

 心底済まないと感じて謝っているであろうその声音は、誰もいない――いや、あの水晶玉から出されていると思われる声の主の怒りに怯えているようだった。
 エンデハルト王の回答に納得したようで、怒気を収め、冷静さを取り戻していた。

『いいや、わかってくれればよい。我らはかつて同じ地で生きた者』
「『この世界で数少ない同志』……わかっておるよ」

 その言葉と同時に水晶玉は光を失い、エルデハルト王は背もたれに身体を預け、目を閉じてぼそっと呟いていた。

「……わかっておるさ。この異世界、好きなように振る舞えているのは、新しい人生を楽しめているのは、貴殿のおかげであるということもな」

 今……確かに聞こえた。
【異世界】【新しい人生】……その言葉が導き出される答えは――たった一つ。

 
 だけど、この場でそれを話すのはまずい。
 シエラもエセルカも驚きやら困惑やらの表情を浮かべている。
 これ以上ここに留まることは得策じゃない。

 俺はこの場を離脱することを決め、二人に指示を出して部屋から――この城から離れることにした。
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