リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第六節 リアラルト訓練学校編

幕間・王の魔法

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 グレリアがミシェラたちを率いてヒッポグリフの棲まう草原に向かっている最中……人側の国では彼らが知らぬ悪意の波が押し寄せようとしていた。

 これはそう――くずはたちがアリッカルに行くことになった時まで遡る……別の場所での話。


 ――


 王の言葉は魔法を宿している。
 それは善きことであれ、悪しきことであれ、彼の言葉の一つ一つは魔力を帯びている。
 例を上げるのであれば、イギランスの王が言えるだろう。

 彼を知らぬ者は、彼の国の動きはまるで一個の意思で動いているように見える。
 例えそれで利益が出ようと損害が出ようと……一切の揺るぎない鋼のような意思により、動いている。

 他の国では起こりうる反乱もこの国には存在しない。
 王が彼らと出会い、落ち着いて話し合いをすれば、彼らは不思議と矛を収めるのだ。
 それはまるで予定調和ですらあったかのように。
 最初から彼のシナリオ通りだったとでも言うかのように存在するのがイギランスと呼ばれる国なのだ。

 そこにあるのはの意思であり、の感情であり、王の言葉なのだ。

 もう一度ここに記そう。
 王の言葉は魔法を宿している。

 これが本当かどうか……確かめる術はない。
 だが一つ言えることは彼の言葉……を……き――聞くべきである。
 それこそが唯一幸せに通じる道であり、彼の魔法は、常に正しく有り続ける。

 ――『魔法に宿る物』一部抜粋――


 ――


 夜の青い闇が世界を覆い、月明かりの元全てが優しく包まれている。
 闇は全てを隠してくれる。悲しみであれ、痛みであれ……例えそれが悪意であれ。

「事態は上手く運んでいるようだな」
『……そうだな』
「どうした? 全て我らが思うままではないか」

 そして今、イギランス――エンデハルト王の部屋で話されていることすら、闇は覆い隠してくれる。
 部屋には明かりを灯さず、ただ一つ光るは淡い青の玉。
 そこに響くのは男の声。高いのか低いのか、響きながら周囲にぼそぼそと聞こえてくるそれは誰の声かはエンデハルト王ですら知っていなければ判断することは出来ないだろう。

 しかしその声はどこか面白くなさそうな感情を声に乗せて表していた。

『王よ、貴様は障害というものを何だと思っている?』
「は? いきなり何を……」
『答えよ』

 有無を言わさない男の言葉に、エンデハルト王は少々考え込む。
 何も考えずに適当を言えるものではない……彼とはその程度の薄い付き合いではないからだ。
 当然、嘘も吐けない。ならば必然として、エンデハルト王は本音でそれを語らなければならないだろう。

「不要であればそれに越したことはないものだと考えている。
 障害というものに万が一躓きでもすれば、それは立ち止まり、停滞することに繋がるだろう」
『……浅いな』

 鼻で笑うかのような一言。だがそれは、たしかにエンデハルト王の怒りにほんの少し、触れたと言ってもいいだろう。
 その不愉快な感情を表に出さないだけでも大したものだ。

「では、貴殿はどう考えているのだ? 参考がてら、お聞かせ願いたいものだな」
『障害とは乗り越える為にある』

 エンデハルト王は思わず鼻で笑い返しそうになるのを必死で堪えた。
 障害は乗り越える為にあるものであることくらい最初からわかっているのだ。

 だが、それを口に出せば、彼と話している男の癇に障ってしまう可能性が僅かながら存在する。
 たとえ極小の可能性であっても、エンデハルト王にとってそれは致命的なことなのだ。
 彼の怒りに触れるということは、すなわちこの世界で生きる資格を失うということ。

 万が一であろうと、それはあってはならない出来事だということを彼自身が心底理解しているからこそ、決して馬鹿にすることなく黙っていたのだ。

『ふっ、浅はかだ、と思うであろう?』
「それは……」
『取り繕わなくとも良い。
 だが続けよう。障害とは、未来への贈り物なのだよ。
 それは乗り越えてこそ新しい道へ……より高い世界へ我らを押し上げてくれる。
 障害というのは世界が我らに与えた贈り物と呼べるものなのだ』

 それは父が子に言い聞かせるように。
 師が弟子へと伝えるように……自然と心の中に入っていく。
 彼の言葉こそ至言であるというかのように。

「あの者にそれだけの力があるとは思えぬが……彼がいずれままならぬ事態を引き起こすのを願っている……と?」
『我らの今の流れ……それすら断ち切りここまで迫るのであれば、それは正しく真の障害と言えるだろう。
 故に、彼にはより、頑張ってもらわなければならない』
「……では」

 ゴクリ、と喉を鳴らすエンデハルト王は男の言葉の続きを促す。
 その答えを、既に知っているはずなのに、男の口から聞かなければならないと感じたからだ。

『……やはり、盛り上げなくてはならないだろう。
 今、彼らは……アリッカルか』
「既に私の言葉を聞いている者たちだな。後は……仕上げをすればすぐにでも使えるだろう」
『ならば、それでよし。必要であればこちらからも兵を向かわせよう』
「いや、その必要はない。あれらの仕上がりは順調なのであろう?」
『……報告通りであれば、男の方は既に完成していると聞く。
 なるほど、ならば問題ないな』

 男の満足したかのような愉快そうな笑い声が響き渡る。

『ならば後は――』
「ああ、貴殿のご随意のままに」

 青い光はゆっくりと消え、今は最早何も照らさぬ大きな玉がそこにあるのみ。

「『王の言葉には魔法が宿っている』……か。
 正に、その通りだな」

 呟かれた言葉は誰に向けたものなのか……それはエンデハルト王のみが知っていることだった。
 闇に深く消え、何も残らなかったかのように……その会話も全ては包み隠されていく。

 事態はゆっくりと動き出す。
 重い腰を上げ、それを知らぬ者を翻弄するために――。
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