リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第六節 リアラルト訓練学校編

第115幕 狂気を宿した勇者

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「あははは、はははは! 殺してやるぜぇぇ、グレリアァァァァ!」

 カーターはその巨躯と同じくらい大きな剣を構えて……瞬間移動でもしたかのように一気に俺の方に詰め寄ってくる。
 それはあの時、勇者会合で見せた拙い重力操作とは比べ物にならない程だ。

 俺はなんとか咄嗟に身体強化の魔方陣を展開して、その狂風のような斬撃から逃れるが、地面が抉れ、剣圧を叩きつけられるような感覚を覚える程の剛力から繰り出される最速の一撃。
 あんなもの、一発でも喰らったら骨が折れるどころの騒ぎでは済まないだろう。

 唯一の救いといえば、切れ味なんて呼ばれるものは全くないようで、斬り殺すことより磨り潰すことを目的とした武器だ……ということだ。

 もしあれが鋭く斬れるものだったら剣圧にも多少同じものが宿っていただろう。
 二度、三度と繰り出される瞬間的にだけ重さを付与された一撃が、嵐のように吹き荒れていく。

「あっはっははははは!! ……逃げるなぁぁぁぁぁ!!」
「っ……! か、身体が……!」

 カーターが俺に向かって左手をかざした瞬間、身体中が地面に引き寄せられるような感覚がして……それは次第に強くなっていく。
 指先を動かすことすら重苦しくて困難になりそうなこれは……俺に重力が付与されている……!?

「ぐっ……このっ」
「ひゃは、ひゃははは! 良いザマだなぁ! グレリアよぉぉぉぉ……!」

 幾度も身体強化を重ねているがそれでも身体の重さは変わらないから、無理やり動かすことになるだけで何も解決していない。

 なら、重力を軽減させる魔方陣を構築しなければならないのだが……そんな魔方陣は一度も作ったことがない。
 一から起動式マジックコードを書かなければならないから、瞬時に展開することは出来ない。

 出来るだけ素早く構築し、発動するにしても……しばらくはこの重みの増した身体に苛まれながら戦うことを余儀なくされるだろう。
 が、この程度、丁度いいくらいのハンデだ。

「アンヒュルのスパイ野郎が、俺様に楯突くからこうなるんだよぉぉ! いひっ、ひゃはは、理解できるか? なああああ!?」
「随分と狂ってるじゃないか。そう、盛るなよ」

 皮肉交じりの言葉の礼、と言わんばかりにさらに重力が俺の身体にのしかかってくる。
 足元の地面がひび割れ、音を立てながら抉れているのを客観的に見ながら、魔方陣を描いていく。

 そのまま再びカーターは自身の身体を軽くして、大剣を担ぐように構えながらこちらに向かって走ってくる。
 矢よりも早いその一撃をしっかりと見据え、拳で動きを逸らそうとしたんだが――。

「はああああぁぁぁぁぁ!!」

 背後から声と共に走ってきたのは、ミシェラだった。
 彼は笑みを浮かべながら、そのままカーターの巨体に蹴りを入れる。

「おにいちゃんとばかり遊んでないでさ、ぼくとも遊んでよ!」
「く……そがぁぁぁ! 邪魔するな、三下がぁぁぁぁぁ!!」

 カーターが俺からミシェラに標的を変えて剣を振り上げた瞬間、奴の身体に炎球が着弾し、奴の身体を鮮やかに燃やす。

「勇者だからって、調子に乗らないことね」
「シエラ……」

 シエラが戦闘に参加することを決意し、そのまま――

「なんかわからねぇけど、やることは変わらねぇ! 師匠がグレリア様であろうがなかろうが、前進あるのみ、だぜ!」
「よくわからないけど、とりあえずアイツを倒せばいいってことね」
「私も、がんばりますよー」

 レグル、ルルリナ、シャルランと順々に武器を構えて……ま、まずい!

「お前ら、余計な手を出すな! ここは俺一人で――」
「グレファ、私たちだってやれるのよ?」

 シエラはウィンクしながらカーターと相対しているが、それは違う。
 俺の勘がこいつは自分一人で相手をするべきだと言っている。

 そもそもこの程度の攻撃、喰らってる内にすら入らないというのに……。
 だが、それをこの場で本当に理解しているのは俺一人。

 傍から見たら必死に魔方陣で対策しているように見えているのだろう。
 本当は面倒だから先に重力攻撃の対策を取ろうとしていただけだとしても。

「そうそう、師匠はそこで見ていてくださいよ」
「違う! この程度の男、俺一人で――」
「この程度……だと……?」

 更に遮るように地の底から響くような声がカーターから聞こえてくる。

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!」

 ゴォゥン! という音が聞こえたかと思うと、俺の方に一気に重さが増してきた。
 この重力は……。

「がっ……」
「な、なに、これ……」

 それでも少々膝が曲がる程度で済んだのだが……他のみんなはそうはいかず、全員が慣れない重力に倒れ伏していた。

「う、ごけ……」
「こ……の……」
「あひゃははは! 馬鹿が! この俺様にぃぃ……アリッカルのルイス・カーター様に勝てると本気で思ってんかよぉぉぉ!!」

 自分に酔うかのように両手を広げ、高らかに笑うカーターのその姿は……勇者会合で出会った時よりも異質。
 より恐ろしく途方も無い自信に満ちあふれている。

「お前らに相応しい死をくれてやるよ……てめぇら!」

 カーターの合図で出現したのは――魔方陣で姿を隠していた兵士たち。
 その全てが微妙に見たことがある……杖のような筒を携えた軽装の姿をしていた。

 あれは……アリッカルの兵士だったのか……!

「低能のお前らにはこのアサルトライフルの威力を知るいい機会を与えてやるよぉぉぉ……やれ!」

 全員に向けてパパパパッ、パパパパッと軽快な何かを撃つ音が複数聞こえ、俺はそれと同時に仲間たちの前に防御壁の魔方陣を作り出し、重力を元に戻す魔方陣を破棄した。
 ちょうど改良最中だったせいで発動までは至らなかったが、最早そんなことはどうでもいい。

 ――よくもここまでのことをやってくれたな。
 普段の俺の悪い癖はなるべく相手と同じ条件で、出来るだけ対等に戦おうとするところ……綺麗に勝とうとするところだ。

 自分でそれは理解している。それは俺の心の驕り……最大の欠点だってことを。
 わかっていたはずなんだが……今回はっきりと裏目に出てしまった。
 彼らを諌められなかった俺の責任だ。俺がもっとはっきりと格の違いを教えてやっていれば、少なくとも言うことを聞いてくれただろう。

 なら……それを精算しようじゃないか。
 俺は……もう自分を止めない。

「覚悟しろ、カーター」
「……はっ、覚悟すんのはてめぇの方だよ。グレリアよぉぉ」

 相変わらず不遜な態度を取るカーターに向かって、俺は今まで敵だと認識していなかった。
 確かにエセルカにした態度に怒りもしたし、それに対し、怒りをぶつけるように攻撃もした。

 だが、こうもはっきりと認識したことはなかっただろう。
 だから告げよう――

「自分のしてきた事を後悔して逝け。
 勇者としての誇りなく、英雄としての矜持きょうじも無い者に相応しい幕引きを……!」

 ――お前は、俺の敵だと。
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