120 / 415
第六節 リアラルト訓練学校編
第118幕 アリッカルの勇者
しおりを挟む
ソフィアさんは俺から視線を外さず、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
その姿勢は……とても勇者会合の時に戦っていた彼女の姿とは一致しない。
一体どれだけの鍛錬を積んだら、こんな身のこなしが出来るのだろうか?
彼女の立ち居振る舞いだけでわかる。間違いなくカーターよりも上だ。
魔力の方はどうかは知らないが……気を抜けるような相手ではないことは間違いないだろう。
「グ、グレファ、彼女は?」
「ソフィア・ホワイト……ヒュルマの勇者だ」
「ま、また勇者!? なんでここに……」
「決まってるじゃない? 貴方を待っていたからよ」
すっと妙に艶めかしい動きでソフィアさんは俺を指差し、茶目っ気溢れる笑顔をこちらに向けてきた。
……やはり俺狙いか。
だけど、ソフィアさんの言い方はまるで俺がアンヒュル側にいることがわかっていたかのような物言いだ。
「……どういうことだ? なんで俺を……」
「決まってるでしょう。エセルカ……だったかしらね? 小さくて可愛らしい……貴方のガールフレンド。
彼女が今どこにいるか、わかる?」
「……盾に使う気か」
エセルカ、セイル、くずはは今アリッカルにいる。
それはつまり……彼女たちは囚われている……そう考える方が自然だろう。
ギリリ、と思わず歯を食いしばってソフィアさんを睨みつけてしまう。
だが、一番腹が立つのは他でもない俺自身にだ。
俺は学園生活を楽しんでいた。謳歌していると言ってもいいだろう。
その間もセイルたちはアリッカルで孤独に戦い、敗北して捕まったんだ。
あいつらは一層懸命戦っていたのに俺は……!
これほど自分自身が情けなくなってくることはない。
「ふふっ、誤解しないでちょうだい。彼女は本国で丁重にもてなしてるわ。
他でもないジパーニグの勇者の仲間なんだから」
「ちっ……」
その言葉に、俺は思わず舌打ちしてしまう。
今のソフィアさんの言葉をきちんと理解したのがいるとすれば……思わず顔だけだが後ろの方を振り返って見てみると、レグルとルルリナは気付いていないようだったが、シャルランは青ざめた表情で俺とソフィアさんを交互に見やっていた。
やっぱり……。
さっきのソフィアさんの言葉は、アンヒュルにもわかりやすいように俺がヒュルマの勇者と関わりがある――仲間だと言っているようなものだろう。
「彼女に会いたい? ふふっ、私と一緒に来てくれたら、会わせてあげても良いんだけどなぁ」
その言葉に、思わず俺は感情を揺さぶられてしまった。
だがそれをグッと飲み込んで、ただ睨むだけで留める事にしたのだ。
本当はセイルがどうなったのか、なんでエセルカだけがもてなされているのか……聞きたいことは山ほどある。
だが、今それをしたらシャルラン以外にも気付く者が現れるだろう。
ただでさえこの討伐試験のメンバーはほとんど瓦解している。
学校に戻ったら、二度と顔を合わすことはないだろうと思わせられる程には壊れている。
それがもし俺が『ヒュルマの仲間』であるなんて事が伝わってしまったら、今この場で揉め事になること受け合いだ。
「……断る。わかっていることだろう?」
「ええ。聞いてみただけよ」
くすくすと笑ってあっさり認めるソフィアさんの行動が理解できない。
彼女は俺をどうしたいんだ? 目的がまるで見えない。
「そう警戒しないでよ。私はただ、親切心で教えてあげようって思っただけなんだから」
「見え透いた嘘だな」
「ええ、そうね」
くすくすと笑ってすぐにさっき言ったことをすぐに否定する彼女の考えが全く読めない。
今もそうだ。
そういうやり取りをしたかと思うと、彼女はその巨大な鈍器であるハンマーの柄を左手一本で持って、打撃部分の頭を引きずるように俺の方に近寄ってくる。
武器を抜いた時にドズゥゥンと鈍い音が地面に叩きつけられたし、相当重いのだけは伝わってきたが……やる気か。
「ふ……ふふっ、さあ、そろそろお喋りはやめにして、本当の熱い戦いをしましょうね。
私は出来損ないのカーターとは違うわよ?」
妖しい笑みを浮かべながらじりじりと近づいてする姿はどこか空恐ろしくも感じるだろう。
徐々にこちらに向かう速度が早くなってきて……最後には駆け足で俺のところにきて、身体強化の魔方陣を重ねて発動させて、その素早い動きで力いっぱいその大槌を振り下ろしてきた。
嫌な予感がして大げさに距離を取ったが……それが幸いした。
――ヒュン……ドゴォォォォォォンンンッッ!!
尋常ではない程の威力を秘めた一撃が俺のいた場所に襲いかかってきた。
カーターの一撃なんてそよ風のように感じるほどの衝撃が、地面をめくり上げながら襲いかかってくる。
しかもそのまま流れるように俺の方に追撃を仕掛けてくるものだから、言葉も出ない。
……これが、ソフィアさんの勇者としての実力。
カーターの重力操作とは違う、純粋な能力を底上げされた者の攻撃だ。
若干自身の能力に振り回されがちだったあいつとは違い、ソフィアさんは完全にその力を自分の支配下に置いている。
身体強化の魔方陣のおかげで速度も申し分ない。
重い武器はその一撃の強さから振り下ろすか遠心力に任せて振り回すくらいしか速度の乗った攻撃はない……はずなのだが、ソフィアさんはまるで細剣でも振り回すかのように扱っている。
……なるほど。確かにカーターの時とは違う別の感情が沸き立ってくるのがわかる。
が、悪いがこのまま俺の方も押し切らせてもらう。
この場に限って言えば俺も相手に合わせる戦い方はしないと決めているからな。
その姿勢は……とても勇者会合の時に戦っていた彼女の姿とは一致しない。
一体どれだけの鍛錬を積んだら、こんな身のこなしが出来るのだろうか?
彼女の立ち居振る舞いだけでわかる。間違いなくカーターよりも上だ。
魔力の方はどうかは知らないが……気を抜けるような相手ではないことは間違いないだろう。
「グ、グレファ、彼女は?」
「ソフィア・ホワイト……ヒュルマの勇者だ」
「ま、また勇者!? なんでここに……」
「決まってるじゃない? 貴方を待っていたからよ」
すっと妙に艶めかしい動きでソフィアさんは俺を指差し、茶目っ気溢れる笑顔をこちらに向けてきた。
……やはり俺狙いか。
だけど、ソフィアさんの言い方はまるで俺がアンヒュル側にいることがわかっていたかのような物言いだ。
「……どういうことだ? なんで俺を……」
「決まってるでしょう。エセルカ……だったかしらね? 小さくて可愛らしい……貴方のガールフレンド。
彼女が今どこにいるか、わかる?」
「……盾に使う気か」
エセルカ、セイル、くずはは今アリッカルにいる。
それはつまり……彼女たちは囚われている……そう考える方が自然だろう。
ギリリ、と思わず歯を食いしばってソフィアさんを睨みつけてしまう。
だが、一番腹が立つのは他でもない俺自身にだ。
俺は学園生活を楽しんでいた。謳歌していると言ってもいいだろう。
その間もセイルたちはアリッカルで孤独に戦い、敗北して捕まったんだ。
あいつらは一層懸命戦っていたのに俺は……!
これほど自分自身が情けなくなってくることはない。
「ふふっ、誤解しないでちょうだい。彼女は本国で丁重にもてなしてるわ。
他でもないジパーニグの勇者の仲間なんだから」
「ちっ……」
その言葉に、俺は思わず舌打ちしてしまう。
今のソフィアさんの言葉をきちんと理解したのがいるとすれば……思わず顔だけだが後ろの方を振り返って見てみると、レグルとルルリナは気付いていないようだったが、シャルランは青ざめた表情で俺とソフィアさんを交互に見やっていた。
やっぱり……。
さっきのソフィアさんの言葉は、アンヒュルにもわかりやすいように俺がヒュルマの勇者と関わりがある――仲間だと言っているようなものだろう。
「彼女に会いたい? ふふっ、私と一緒に来てくれたら、会わせてあげても良いんだけどなぁ」
その言葉に、思わず俺は感情を揺さぶられてしまった。
だがそれをグッと飲み込んで、ただ睨むだけで留める事にしたのだ。
本当はセイルがどうなったのか、なんでエセルカだけがもてなされているのか……聞きたいことは山ほどある。
だが、今それをしたらシャルラン以外にも気付く者が現れるだろう。
ただでさえこの討伐試験のメンバーはほとんど瓦解している。
学校に戻ったら、二度と顔を合わすことはないだろうと思わせられる程には壊れている。
それがもし俺が『ヒュルマの仲間』であるなんて事が伝わってしまったら、今この場で揉め事になること受け合いだ。
「……断る。わかっていることだろう?」
「ええ。聞いてみただけよ」
くすくすと笑ってあっさり認めるソフィアさんの行動が理解できない。
彼女は俺をどうしたいんだ? 目的がまるで見えない。
「そう警戒しないでよ。私はただ、親切心で教えてあげようって思っただけなんだから」
「見え透いた嘘だな」
「ええ、そうね」
くすくすと笑ってすぐにさっき言ったことをすぐに否定する彼女の考えが全く読めない。
今もそうだ。
そういうやり取りをしたかと思うと、彼女はその巨大な鈍器であるハンマーの柄を左手一本で持って、打撃部分の頭を引きずるように俺の方に近寄ってくる。
武器を抜いた時にドズゥゥンと鈍い音が地面に叩きつけられたし、相当重いのだけは伝わってきたが……やる気か。
「ふ……ふふっ、さあ、そろそろお喋りはやめにして、本当の熱い戦いをしましょうね。
私は出来損ないのカーターとは違うわよ?」
妖しい笑みを浮かべながらじりじりと近づいてする姿はどこか空恐ろしくも感じるだろう。
徐々にこちらに向かう速度が早くなってきて……最後には駆け足で俺のところにきて、身体強化の魔方陣を重ねて発動させて、その素早い動きで力いっぱいその大槌を振り下ろしてきた。
嫌な予感がして大げさに距離を取ったが……それが幸いした。
――ヒュン……ドゴォォォォォォンンンッッ!!
尋常ではない程の威力を秘めた一撃が俺のいた場所に襲いかかってきた。
カーターの一撃なんてそよ風のように感じるほどの衝撃が、地面をめくり上げながら襲いかかってくる。
しかもそのまま流れるように俺の方に追撃を仕掛けてくるものだから、言葉も出ない。
……これが、ソフィアさんの勇者としての実力。
カーターの重力操作とは違う、純粋な能力を底上げされた者の攻撃だ。
若干自身の能力に振り回されがちだったあいつとは違い、ソフィアさんは完全にその力を自分の支配下に置いている。
身体強化の魔方陣のおかげで速度も申し分ない。
重い武器はその一撃の強さから振り下ろすか遠心力に任せて振り回すくらいしか速度の乗った攻撃はない……はずなのだが、ソフィアさんはまるで細剣でも振り回すかのように扱っている。
……なるほど。確かにカーターの時とは違う別の感情が沸き立ってくるのがわかる。
が、悪いがこのまま俺の方も押し切らせてもらう。
この場に限って言えば俺も相手に合わせる戦い方はしないと決めているからな。
0
あなたにおすすめの小説
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる