リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

文字の大きさ
159 / 415
第八節 ヒュルマの国・動乱編

第154幕 アリッカル潜入

しおりを挟む
 アリッカルの首都――サンシンレア。
 一日近隣の町で身体を休め、その後は夜になるまで時間を待ってから行動を開始する。
 左右に二つずつ。背中に交差させて二つ。どうあがいてもそんなに振るえるわけないだろう、とこの姿を見た人は思いそうな様相を呈していた。

 誰もが寝静まった夜に行動を開始した理由は唯一つ。
 人に見つかることにさえ気をつけていれば、昼間よりも見つかることが少ないからだ。
 隠密性を上げる為、『気配隠蔽』と『消音』の魔方陣を展開させる。
 今回は姿を隠す必要はなく、ただ物音などが立たないようにすればいい。

 グランセストのように魔石を使った灯りがあるわけでもない。
 その分灯りを持った兵士の巡回が多い……イギランスの方とはちょっと違う感じの警戒体制だ。
 あっちはそれなりに灯りを設置してあったからな。

 しかし、魔方陣を使って暗闇に紛れるのは――

「おい、こっちにいるんだよな?」
「ああ、間違いない」

 ほとんど音の少ないこの廊下にぼそぼそと響く喋り声。
 兵士たちが数人でこっちに向かって歩いてきながら喋っている……そんな感じだ。

 俺は一瞬、自分の魔方陣が解かれているのかと思って確認したのだけれど、落ち着いて考えたら別にそんな事はない。
 考えられる可能性は……敵の方に『索敵』関連の魔方陣を使える人物がいるということだ。

 隠密系の魔方陣を構築している相手を見つけるなんて芸当、他には出来ない。
 ということは……この国も魔人か、魔方陣を使える人のどちらかがいるというわけだ。

 相手の魔力の動きを読む系統の魔方陣は中々に扱うのが難しい。
 流し込む魔力の量次第で精度が変化するから、使える奴はそれにかかりっきりにならなければならない。

 あくまで本格的に探そうとしたら……だがな。
 エセルカを探したときのように魔力など、様々な痕跡を辿る『探索』の魔方陣のようなものもある。
 今回のは動けない分、それよりもずっと強力なものと考えていいだろう。

 ただ、性能というか、精度はあんまり良くないみたいだ。
 俺がこの近辺にいるということだけしか知ることが出来ないみたいだからな。

 しかし動けば敵にそれを知られる事になる……が、今は放置するしかない。
『索敵』関連の魔方陣を使ってる相手を見つけなければ対処のしようがないからだ。
 その代わりに、『魔力』『幻』『人』の起動式マジックコードを構築して、展開する。

 これは魔力を持った人形の幻を生み出すものだ。
 遠目から見たらゆらゆらと佇んでいたり、歩いていたりするように見えるのだが、近くに寄るとすぐに偽物だとわかる程度の単純な魔方陣だ。

 だけど魔力の流れを見ながらこっちの動きを遠巻きに観察している――『索敵』の魔方陣を使う相手は見分けがつかない。
 精度が高い場合はより高密度の魔力の練って構築しなければバレるだろうが、今回の場合はそれなりで十分だろう。

『隠密』と『索敵』はどれだけ相手の魔力を上回り、構築してくる魔方陣の対処が出来るかが鍵だ。
 俺の方もそんなに多彩な方ではないが、この程度の相手に遅れを取ることはない。

 近くを通っていく兵士たちをうまくやり過ごしながら、先に進んでいって、更に先程と同じ魔方陣を展開していって、相手の索敵を徐々に乱していく。

 既にこちらが潜入していることは知られているのだから、今更隠れるも何もあってものではない。
 今は俺がどこにいるかわからなくするのが先で、その間に一度自分にかけてる魔方陣を解除して、『魔力隠蔽』『防音』の起動式マジックコードで再び自身を強化。

 これで相手の索敵の魔方陣に引っかからなくなり、それを頼りにしている相手はいつまでも俺の幻を負い続けることになるだろう。
『遮断』や『隠蔽』は気配か魔力のどちらかしか選択できないから、ここからはもっと息を潜めて行動しなければならない。

 以前、両方を入れて魔方陣を発動した時、反発してしまって……最終的に微妙で終わってしまった記憶がある。
『水』や『炎』を同時に使っても大した威力が出ないように、どうしても相性が悪いものというのは存在する。

 しかし……まさか相手が『索敵』系統の魔方陣使えるとは思いもしなかった。
 これじゃ、ほとんど魔人を相手にしているようなものだ。

 人というのは詠唱魔法を主軸にしていて、魔方陣は邪神の法……とか本で書いておきながら、国の中枢はこんな状態なのだから、どれだけ国として歪んでいるかわかったものではない。

 しかし……こうなってくるとなんで魔方陣を邪法扱いしているのかがわからなくなってくる。
 軍隊の質を高めるなら、詠唱魔法よりも魔方陣の方が効率がいいとは思うのだけれど……。

 実際、村や町を警備しているヒュルマ側の兵士は詠唱魔法しか知らないだろう。
 なんでこんな面倒な事をしているのかはさっぱりわからない。

 ……ここも考えても仕方ないだろう。
 政治のことや国の裏側のことはわからない……が、少なくとも国民のことを考えてのことではないに違いない。

 なら……それだけわかっていればいいさ。

 上の連中が自分たちのことしか考えていない――。
 俺が動く理由としては、十分な理由だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...