リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

文字の大きさ
186 / 415
第九節 迫りくる世界の闇・セイル編

第179幕 命吹き込む魔方陣

しおりを挟む
「ふ……ははは! ぼろぼろになって、まだ戦えるってか?
 悩みを振り切ったような目をしてるが、これだけの差が覆るとでも思ってるのか?」
「当たり前だ。勝算のない戦いをするほど、俺も馬鹿じゃない」

 これから先、ただ怒りに任せて戦いに行ったんじゃ勝てない。
 そんな敵を相手にする為に俺は今まで鍛えてきたんだ。

 剣も魔方陣も……俺が出来る事全て!

「勝てるつもりでいるのか? 剣も魔方陣も、俺と比べれば見劣りするお前が?
 笑わせんなよ!」
「勝手に笑ってろよ。すぐにそんな事も出来なくしてやる」

 荒い息を整えながら、俺は魔方陣を展開していく。
 起動式マジックコードは『命』『炎』『鷹』で構築する。
 それに魔力を注ぎ込むと身体に負担が掛かり、俺は一瞬虚脱感を覚えるが、こんなものは大した事ではない。

「喰らえ――!」

 発動した魔方陣から飛び出したのは、鋭いくちばし。
 左右の足は三つの爪が生えていて……雄々しく羽ばたくその姿は、何よりもたくましい。

 子供の頃、アサルトホークという魔物を見たことがある。
 と言っても狩られて死体になっていたものを……だけれどな。
 それを知っているからか、具現化した炎の鷹もそれに似た感じになっていた。

「な……なんだ? その魔方陣は……!」

 ラグズエルは驚きながら一歩後ろに下がって俺の魔方陣から飛び出してきた炎の鷹を見て、困惑していた。

 それもそうだ。
 俺自身、魔方陣を使う相手と何度も戦ったことはあるが、こんな風に生き物を形どった魔方陣を扱う奴には出会ったことはない。

 あの真っ白の世界で出会った不思議な少年から貰った力。
 その一つがこの『命』の起動式マジックコードを使用する魔方陣だ。

 他にももう一つあるけど……特にこれは『炎』や『氷』に文字通り『命』を吹き込む事ができる。
 初めて使った時は、上手くコントロールが出来ずに魔力をガンガン吸い取られてあっという間に気絶してしまったりもしたが、今はそんなヘマはしない。

 この時の為に、俺は何度もぶっ倒れながら魔方陣を行使し続け、自身を酷使したのだから。

「行けっ!」

 命令すると炎の鷹はけたたましい鳴き声を上げ、一直線にラグズエルの方へと突進していく。
 彼はそれを回避して、不敵な笑みを浮かべているようだけど、それだけで俺の魔方陣を上手く避けたつもりなら……それは甘い。
 これはただ一度避けただけで終わるような代物じゃない。

 炎の鷹はそのまま旋回して、再びラグズエルの背後から襲いかかってくる。

「なに……!?」
「そう簡単にこの魔方陣を避けられると思うなよっ」

 俺は更に魔方陣を展開させる。
 今度の起動式マジックコードは『命』『氷』『狼』だ。
 以前、勇者会合からの帰りに襲われた時に見た黒い狼の魔物。
 あれを再現して作った氷の狼に俺はまたがり、指示を出してラグズエルに突撃する。

「ラグズエル!」
「はっ! その程度の児戯が……俺に通じると思うなよ!」

 ラグズエルは魔方陣を展開して、大きな水の槍を発生させて炎の鷹を迎撃するけど、するりとそれを紙一重でかわして、一気にラグズエルに肉薄し、彼は憎々しげに顔を歪めた。

「ちっ……まさかお前がこれほどの魔方陣を扱うとはな……!」
「影で俺が修行していたのは、お前も知っていたはずだ。
 その成果が……これだぁぁっ!」

 炎の鷹の突撃をかわしたラグズエルに向かって、氷の狼に乗った俺の剣戟が襲いかかり、彼はそれをぎりぎり剣で防いできた。
 身体から魔力がどんどん抜けていくのを感じる。

 絶えず気絶するまで魔力を扱い、訓練していたしていたおかげで、体内の魔力量が大幅に上がっているのを感じるけど……それでもこの減り方は不味い。
 そう長くは耐えきれるものじゃない。

 戦いが長引けば、不利になるのは俺の方だ。
 だからこそ……一気に決める!

 俺は魔方陣を展開し、更に追撃を仕掛ける。
 起動式マジックコードは『命』『雷』『虎』だ。
 これも子供の頃にフォレストタイガーという魔物の死体を見たからこそ、思いついた魔方陣だ。

「三匹とも、奴を撹乱しろ!」

 ある程度ラグズエルに接近した俺は、氷の狼から飛び降り、三匹の獣に指示を出す。
 彼らは俺の与えた命令通りに警戒しつつも、ラグズエルの隙をいつでも突くことができるように動いてくれる。

 一気に距離を詰めて、ラグズエルに斬りかかった俺の方は、容易く受け止められるのだが、それと同時に雷の虎があいつの喉笛に食らいつこうと飛びかかっていく。

「ちっ、鬱陶うっとうしい!」

 ラグズエルは俺の剣を押し返して、そのまま反対側に飛び込むように回避するのだけれど、それを待ち構えるかのように炎の鷹が襲いかかり、やつの身体を焼いていく。

「ぐ……おおおお……!!」

 転げ回るように逃げるラグズエルに追撃を仕掛ける氷の狼だけれど、眼前に魔方陣を展開され、激しい爆発とともに流れていた魔力の一部が途切れるのを感じた。
 氷の狼の残骸が周囲に飛び散り、そこに俺が飛び込むように乱入してくる。

「まだ……まだぁ!」
「調子に乗るなよ! セイル風情がぁぁぁっ!!」

 完全に頭が切れたというかのように吠えるラグズエルと激しく剣戟を交わし、俺が押し負けて弾き飛ばされると、すぐさま二匹の獣が猛攻を加える。

 そして俺が攻防に参戦すると、今度は二匹の獣に流れる魔力を出来る限り抑える為に待機をする……それの繰り返しを続けて、俺とラグズエルの戦いは徐々に苛烈さを増していき、庭だった場所は徐々に荒れ地へと変わり、建物も崩れてきている。

 そんな騒ぎの中、魔人の一人も現れないのは目の前の男の策略の一つなのだろうが……今はそれがありがたかった。

 決着を焦らず……でも急がなければならない。
 なら、俺も全力で――自分に今出せる最大の魔方陣・動きを繰り出すしかない。

 その結論に達した俺は、戦闘を二匹の獣に任せ、魔方陣の展開を始める。
 最大の一撃を放つ為に……俺の全てを懸けて、この男だけはここで葬ってみせる――!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...