リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第十節 女王の誓い・決別編

第185幕 不安な旅の始まり

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 アルディから女王に会うように言われた次の日、俺は学校長に会いに行った。
 流石にまた無断で休学するわけにはいかないからだ。

 せめて学校長には伝えておかなければならないだろう。
 そう思って俺は彼に首都アッテルヒアから女王の使いの者が現れ、女王の元に来るように言われた事を報告すると、また頭を抱えてしまった。

 まあ、気持ちはわかる。
 学校長側からすれば、補習が終わるまでは学校に留まって欲しいのだろう。

 しかし女王からの直接の要請を受けてしまっては、それを無視することなど出来るわけもない。
 学業を優先させてしまえば、学校長の首が飛びかねない事態になることだって十分に考えられるのだ。

 最終的には半分諦め、どこか魂が抜けたかのような様子で、俺が首都アッテルヒアに向かうのを認めてくれた。
 ……その時、揉め事の原因になるから、必ずエセルカを連れて行くように念押しされてしまったんだけどな。

 確かに、俺が側にいないと何をするかわかったものじゃないからな。
 それを踏まえてもあまりに必死に念押ししてくるものだから、俺の方も引き気味になりながら了承した。

 問題はくずはだったが……今の彼女は、俺が付いていなければ不味い。
 容態は今のところ安定しているが、未だに記憶の全てを取り戻していない。
 初めて使った魔方陣だということもあって、もう少し経過を見ておきたいというのが本音だ。

 そうなると、残ったシエラは学校に待機することになるのだけれど――

「えー、私はここに残れって?」
「余り大所帯で行くものでもないだろ」
「でも、エセルカの面倒見ながらくずはの事見れる?」

 そういう風に言い返されると、俺の方も何も言えない。
 今のエセルカは精神的にかなり危うい場所にいて、こっちも俺がそばに付いていないといつ爆発するかもわからない。

 彼女の相手をしながらくずはの様子を見るのは、結構疲れるだろう。

「ほら、今面倒そうな顔してた。
 私がいればエセルカの方に集中出来ると思うけど?」
「……わかったわかった」

 俺は降参するように両手を上げて、ため息を一つついた。

「それにしても、珍しく乗り気だな」
「当たり前じゃない。
 エセルカとグレファがいなくなったら、二人に向いていた好奇の目が、今度は私に向くんだよ?
 そういう事、少しは考えてほしいんだけど」

 確かに、最近ではエセルカが自己紹介で盛大にやらかしてくれたせいか、レグルなんかの一部を除くと近寄ってくる魔人がすっかり減ってしまった。
 なんでも俺の側には『笑顔で敵意を振りまく闇の少女』が存在するらしい。

 彼女に一度でも睨まれれば、泣いて許しを請うても魂を奪っていくらしい。
 そしてなぜか俺はその少女の『所有物』であり、手を出した瞬間音もなく拐われ、無限の恐怖を与えるのだとか。

 俺が抑えてる状態でも既にこれだけの風評被害を受けている。
 そんな少女と共に行動することを認められているシエラにも、火の粉が散って当然というわけか。

 というか、シエラにそういう事は言われたくない。
 彼女の発言で何度冷や汗をかいたかわかったものじゃない。

「わかった。
 それじゃあ、シエラは馬車の手配をしておいてくれ。
 俺はエセルカと一緒に旅の支度をする」
「私、手伝わなくていい?」
「三人とも旅支度するのはあまり効率良くないだろう。
 エセルカは俺から離れたがらないし、一人で動けるシエラが行ってくれた方が都合がいい」
「わかった。他になにか必要なもの、ある?」
「そうだな……」

 とは言われたものの、特に何かを思いつかない。
 食事や寝泊まりなどは適度に町に寄って行こうと考えているからな。
 今のくずはに野宿は厳しいだろうし、エセルカに寝込みを襲われる可能性がゼロではない以上、あまり他人に見られたくない。

 いや、いくら彼女でも野宿でそんな事をしないとは思いたいが……俺の願望を聞き届けてくれるとは思えない。
 彼女に関して言えば、常に最悪を想定しながら考えた方がいいだろう。

 ……正直、今回の旅には不安な要素が多い。
 それはくずはとエセルカの二人の事なんだが、そもそもリスクの無い旅なんてありえない以上、割り切るしかない。

 とりあえず今は、学校長にシエラを連れて行くことを説明しなければならないだろう。


 ――


 準備を始めて五日後、俺たちは副首都ファロルリアの入り口にある馬車へと向かっていた。

「まさか、また女王様のところに行くなんて思いもしなかったわね」
「グランセストの女王様ってどんな人物なんだろう? くずはちゃんも楽しみだね」
「う……ん」

 シエラはまたあのミルティナ女王に会えることが嬉しいようで、思いを馳せるように笑っていた。
 エセルカの方には、お前とは多分(小動物的に)気が合うだろうと伝えると、余計に楽しみだとウキウキしている様子だった。

 ……とてもじゃないが、これから旅が始まるようには見えない。
 どちらかと言えば女子たちの集まりといった様相だ。

「二人共、首都に行く間にだって魔物が出てくる可能性は十分にある。
 あまり楽観視しないように、適度に気を引き締めて事に望むよう」
「「はーい」」

 なんというか、引率の先生にでもなった気分だ。
 馬車で人通りの多い道を行く以上、魔物に出会う事はまずないとは思う。
 が、だからといってお遊び気分のままいられると必ず痛い目に遭うからな。

 どうにも俺のところに来てから緊張感がないというか……少し緩んでる気配すらある。
 一度彼女たちの気を引き締めさせないといけないのかもしれない。

「さあ、それじゃあ行くぞ」

 たどり着いた馬車に三人を先に乗り込ませ、最後に俺が乗る。
 御者の手綱さばきに馬がいななきの声を上げ、少しずつ馬車が動き出していく。

 ゆっくりと遠ざかっている副首都を見送りながら……俺たちは女王に会いに行くため、グランセストへの首都への道を、再び歩むのだった。
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