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第十二節 人の国・裏の世界 セイル編
第207幕 クワドリス城での軟禁
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「お兄ちゃん……退屈だね」
スパルナはベッドの上で天井を見ながら死にそうなほどか細い声で呟いていた。
俺たちはヘルガに案内されるまま城に入った後、城の一室に押し込められてしまったのだ。
ベッドは二つあってふかふかだし、入り口に見張りはいるが食べ物なら要求通りにしてくれる。
ただ、部屋から出られないように警戒はされているようで、周囲は厳重に結界で覆われている。
試しに魔方陣で壊してみるかとも思ったけど……下手なことをして余計な怪我をしたらそれこそ馬鹿みたいだ。
別に待遇が悪いわけでもないし、ここは敵地でこちらは地理に疎い。
もう一度捕まるようなヘマをすれば待遇が今より悪くなるのは目に見えているし……なにより普通だったら侵入するのに頭を悩ませるはずが、すんなり来れてむしろちょうど良かったくらいに考えてる。
ヘルガに連行してくるように命令を下せるような人物なんて皇帝かそれに近い役職を持っている奴らになるはずだ。
それなら余計に今すぐ脱走する必要なんて無いってわけだ。
今は少しでも情報を手に入れる事を優先すべきだろう……と思う。
自信がないのはしょうがない。兄貴ほど自信満々に行動出来る人の方が珍しいんだから。
だから退屈を持て余し気味になるのは仕方ない訳で……行儀良く本を読むより、活発に動き回る事が好きなスパルナにはなんとも言えない地獄が続いている。
このまま暇に押し潰されて死ぬんじゃないかと思うほど絶望していた彼の期待に応えるかのように扉が開き、この城のメイドと思える人たちが押し掛けてきた。
「な、なんだなんだ?」
いきなりの展開になんとも情けない疑問をぶつけてしまうけど、入ってきた彼女たちは何も言わずに数人でこの部屋になだれ込み、最後に一人のメイドがやってきた。
「失礼いたします」
それだけ言ってメイドたちは俺とスパルナを分けるように囲って、彼を連れて行こうとしていた。
「お、おい、ちょっと待て!」
「ご安心ください。少々着替えさせていただくだけですので」
「お、お兄ちゃーん!」
わちゃわちゃとしている間に、リーダーと思える女性の指示に従う周囲のメイドに俺とスパルナは離れ離れになってしまった――。
――
半ば無理やり着替えさせられた俺は、そのままどこかの部屋へと案内してもらった。
グラムレーヴァだけは頑なに手放さなかったからメイドの方も諦めていたけど……他はビシッと決まった落ち着きのある服装にされてしまった。
黒色のこの服は、ジパーニグだと間違いなく流行らないだろうな。
上流階級の人はそれなりに動きやすく、しかし派手な服を好むからな。
というか……この服にグラムレーヴァは似合わないな。
それでも安心感が違うから、決して手放すことはしないが。
向こうも無理やり取ろうとしないことから、俺が武器を持っていたとしても何ら問題はないということだろう。
案内されてからしばらくの間は俺一人で退屈を持て余していたところに……美少女が現れた。
ドレスにその身を包み、恥ずかしそうにしているその少女は、俺に顔を見られたくないのかそっぽを向いてこちらに視線を合わせようとはしなかった。
しかしなんでこんな少女がやってくるのだろうか? と疑問に思ってると――
「あ、あの……そんな見ないで……」
なんてどこか情けなくも聞き覚えのある声が聞こえてきて、思わず目を見開いて驚いてしまった。
いや、よく見たらこの髪型も見たことがある。
「お前……スパルナか!?」
「う、うん……」
綺麗に整えられたスパルナは本当に少女と見間違えたくらいだ。
というか――
「なんでそんな格好してるんだ?」
「いや……女の人たちが『こんな男の子みたいな格好して……』って呟きながらぼくに……」
半分くらい泣いていそうな声で俺の方を見ている彼を改めてよく見てみる。
確かにこの子は顔つきが中性寄りで、少年にしては小柄の体型が余計にそれを際立たせている。
恐らく、胸の全くない女の子として見ても問題ないくらいだろう。
彼の本体は鳥の形態の方だから、多少は身体を自由に作ることが出来るはずだけれど……元になった身体から大幅に変更することはその分魔力を消費することらしいからあまりしたくはないのだとか。
「……結構似合うぞ」
「お兄ちゃん……」
なんていうか、上手い言葉が思いつかなかったから軽く頬をかきながらどこかに視線を彷徨わせていると少しうんざりした声音が聞こえてきたけど……仕方がないだろう。
他ならぬスパルナ自身がそういう顔や体付きをしてるんだから。
「……しかし、なんで俺たちはこんな格好をさせられたんだ?」
「さあ?」
話を逸らすために適当な話題を振ったのだけれど、露骨すぎてスパルナは全くノッてくれなかった。
そんな多少気まずい空気の中、しばらく待っていると……やがて扉が開いて、そこから一人の男が入ってくる。
その風貌と威圧感はあの時と何も変わらない。
……そう、今俺たちの目の前には、勇者会合で出会った時から変わらない姿の――シアロル帝国のロンギルス皇帝が現れたのだった。
スパルナはベッドの上で天井を見ながら死にそうなほどか細い声で呟いていた。
俺たちはヘルガに案内されるまま城に入った後、城の一室に押し込められてしまったのだ。
ベッドは二つあってふかふかだし、入り口に見張りはいるが食べ物なら要求通りにしてくれる。
ただ、部屋から出られないように警戒はされているようで、周囲は厳重に結界で覆われている。
試しに魔方陣で壊してみるかとも思ったけど……下手なことをして余計な怪我をしたらそれこそ馬鹿みたいだ。
別に待遇が悪いわけでもないし、ここは敵地でこちらは地理に疎い。
もう一度捕まるようなヘマをすれば待遇が今より悪くなるのは目に見えているし……なにより普通だったら侵入するのに頭を悩ませるはずが、すんなり来れてむしろちょうど良かったくらいに考えてる。
ヘルガに連行してくるように命令を下せるような人物なんて皇帝かそれに近い役職を持っている奴らになるはずだ。
それなら余計に今すぐ脱走する必要なんて無いってわけだ。
今は少しでも情報を手に入れる事を優先すべきだろう……と思う。
自信がないのはしょうがない。兄貴ほど自信満々に行動出来る人の方が珍しいんだから。
だから退屈を持て余し気味になるのは仕方ない訳で……行儀良く本を読むより、活発に動き回る事が好きなスパルナにはなんとも言えない地獄が続いている。
このまま暇に押し潰されて死ぬんじゃないかと思うほど絶望していた彼の期待に応えるかのように扉が開き、この城のメイドと思える人たちが押し掛けてきた。
「な、なんだなんだ?」
いきなりの展開になんとも情けない疑問をぶつけてしまうけど、入ってきた彼女たちは何も言わずに数人でこの部屋になだれ込み、最後に一人のメイドがやってきた。
「失礼いたします」
それだけ言ってメイドたちは俺とスパルナを分けるように囲って、彼を連れて行こうとしていた。
「お、おい、ちょっと待て!」
「ご安心ください。少々着替えさせていただくだけですので」
「お、お兄ちゃーん!」
わちゃわちゃとしている間に、リーダーと思える女性の指示に従う周囲のメイドに俺とスパルナは離れ離れになってしまった――。
――
半ば無理やり着替えさせられた俺は、そのままどこかの部屋へと案内してもらった。
グラムレーヴァだけは頑なに手放さなかったからメイドの方も諦めていたけど……他はビシッと決まった落ち着きのある服装にされてしまった。
黒色のこの服は、ジパーニグだと間違いなく流行らないだろうな。
上流階級の人はそれなりに動きやすく、しかし派手な服を好むからな。
というか……この服にグラムレーヴァは似合わないな。
それでも安心感が違うから、決して手放すことはしないが。
向こうも無理やり取ろうとしないことから、俺が武器を持っていたとしても何ら問題はないということだろう。
案内されてからしばらくの間は俺一人で退屈を持て余していたところに……美少女が現れた。
ドレスにその身を包み、恥ずかしそうにしているその少女は、俺に顔を見られたくないのかそっぽを向いてこちらに視線を合わせようとはしなかった。
しかしなんでこんな少女がやってくるのだろうか? と疑問に思ってると――
「あ、あの……そんな見ないで……」
なんてどこか情けなくも聞き覚えのある声が聞こえてきて、思わず目を見開いて驚いてしまった。
いや、よく見たらこの髪型も見たことがある。
「お前……スパルナか!?」
「う、うん……」
綺麗に整えられたスパルナは本当に少女と見間違えたくらいだ。
というか――
「なんでそんな格好してるんだ?」
「いや……女の人たちが『こんな男の子みたいな格好して……』って呟きながらぼくに……」
半分くらい泣いていそうな声で俺の方を見ている彼を改めてよく見てみる。
確かにこの子は顔つきが中性寄りで、少年にしては小柄の体型が余計にそれを際立たせている。
恐らく、胸の全くない女の子として見ても問題ないくらいだろう。
彼の本体は鳥の形態の方だから、多少は身体を自由に作ることが出来るはずだけれど……元になった身体から大幅に変更することはその分魔力を消費することらしいからあまりしたくはないのだとか。
「……結構似合うぞ」
「お兄ちゃん……」
なんていうか、上手い言葉が思いつかなかったから軽く頬をかきながらどこかに視線を彷徨わせていると少しうんざりした声音が聞こえてきたけど……仕方がないだろう。
他ならぬスパルナ自身がそういう顔や体付きをしてるんだから。
「……しかし、なんで俺たちはこんな格好をさせられたんだ?」
「さあ?」
話を逸らすために適当な話題を振ったのだけれど、露骨すぎてスパルナは全くノッてくれなかった。
そんな多少気まずい空気の中、しばらく待っていると……やがて扉が開いて、そこから一人の男が入ってくる。
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