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第十二節 人の国・裏の世界 セイル編
第211幕 別世界の都市
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ロンギルス皇帝にこの地下都市に連れてこられて……ホテルの一室に案内されてから三日程の時が経った。
シアロルの帝都クワドリスでも当たり前に使われていた浄化陣が刻まれ、魔力で水が出るようになっている。
この……スラヴァグラードでも同じようになっているんだけれど、他にも『電気』の起動式なんてものもあって、それを使って街灯を灯していたり……様々な発展を遂げていた。
地下にあって空模様を再現しているのですら魔方陣――人風に言うと浄化陣のおかげなのだとか。
あまりにも地上との格差が激しくて、最初の方は全く付いていけなかった。
そんな中、元気を取り戻していったのはスパルナの方だった。
皇帝が側にいたときはあんなに大人しかったのに、いなくなった途端興味を爆発させていた。
相変わらず女装したままなのに周囲を探索したり、遠目から見ていた少年が顔を赤らめながら話しかけてくるのを笑顔で対応したり……。
窮屈だった分、存分に楽しもうという気力で満ち溢れていた。
子どもっていうのは好奇心の塊なんだなと改めて実感した程だ。
俺の方はむしろ未知への恐怖のほうが勝っている。
遥かに高度な文明。
戦闘なんてしたことがないであろう人ばかりだけれど、これだけの技術力があれば、俺たちが想像もつかないような武器を持っていてもおかしくない。
俺ですらそれくらいわかるほど、地上のどの都市ともここは違いすぎた。
辛うじて近いのはクワドリスだろうけど……あそこは元々シアロル帝国領だ。
比べるにしても同じ皇帝が治める場所じゃ何の意味もない。
魔人の国ですらここまで自在に魔方陣を使うことは出来ないだろう。
文化も大体クワドリス以下人の国以上といった感じだし……とてもじゃ張り合うことが馬鹿らしいくらいだ。
そんな異質な都市にスパルナと俺の二人だけが浮いたように存在してる。
これに恐怖を感じないだけの強い心を持てるような経験なんて積んでいるわけもなく、妙に不安が胸の中に渦巻いているんだ。
ただ、それと同時にスパルナの好奇心に同調している部分もある。
食べ物はクワドリスよりもずっと豊富で、飲み物も非常に美味しい。
見たことない娯楽も多く、本も知らないことが色々と書かれている。
なんのつもりでロンギルス皇帝が俺たちをここに連れてきたのかは知らない。
もしかしたら心を折るためなのかもしれないが……俺はとっくに覚悟しているとあの人にも告げていたはずだ。
全てを受け入れ、知るべきことを知り、その上で行動する……。
ヘルガに、ラグズエルに翻弄され、無知が招いた結果にうんざりした。
もっと強ければ、物を知っていたなら……上手く立ち回れたかもしれない。
そんな『たら』や『れば』なんて考えたってどうしようもないことだ。
だから――なにも知らないままの自分は嫌った。
自分の運命は他の誰でもない、自分で切り拓く。
それがあの人の後ろ姿を見て、考え方に触れて……俺が出した結論だった。
様々な未知に恐怖もするし、興味も湧く。
だからこそ俺の足は、本の集まる場所――図書館へと向かっていた。
――
スパルナと町を歩いたり本を読んで過ごしたりしているうちに、気付いたら十日程の時が過ぎていた。
「お兄ちゃん、もう15時だよ。おやつの時間!」
「ん、ああ。わかった」
完全に順応したスパルナは幼鳥が親に向かって餌が欲しいとさえずるかのようにおやつの時間を訴えかけていた。
服装の方もこっちに馴染んでいて、ホットパンツに白いワイシャツに赤いネクタイを巻いた姿をしていた。
いくら地下とはいえ、雪の大地であるシアロルにしては随分と軽装していると思うけど……ここにも魔方陣が関係している。
『暖』の起動式が刻まれているそれを着ていると、体全体がどこか暖かく包まれているようにすら感じるのだ。
それに加えてこのスラヴァグラード全体の気温は魔方陣で管理されていて、ある程度過ごしやすく調整されている。
季節感を出すために多少寒かったりもするのだけれど、服のおかげで地上のように着込む必要はまったくない。
だからか、ここの人々は自分の着たいように服を着ているし、スパルナのような寒そうな格好も許されているというわけだ。
ちなみに俺は……トラウザーズとか呼ばれていた黒いズボンにベスト。
それに加えて白のシャツといった装いだ。
初めて買い物しようとしたときはお金はどうしようかと思ったもんだが、人の国のものと全く同じで助かった。
「今日はなに?」
「えー……あー……ホットケーキだ」
「お兄ちゃんが作ってくれるの!?」
目をキラキラさせながら俺の事を見ているスパルナに頷くと、彼はさらにはしゃいでいた。
仕方ないから準備しようと本を閉じたところでノックの音が聞こえた。
スパルナがタイミング悪いものを見るような目で扉の方に視線を向けているのをなだめながら扉を開けると――そこにいたのは見知らぬ男性だった。
「あんたは……?」
「突然の訪問申し訳ございません。
セイル様。我らがロンギルス皇帝が明日、貴方様を食事にご招待されたい……と」
彼は丁寧に頭を下げ、俺に要件だけ伝えてきた。
その言葉にごくりと喉を鳴らす。
……とうとう、この日がきたか。
誘われるがままここに連れてこられ、ようやくこの時を迎えた。
何が起こるかわからないけど、ここは皇帝の庭のようなもの。
最大限準備していったほうがいいだろう。
端的に告げた男が立ち去った後、これからなにをしようかと考えていた時――
「お兄ちゃーん! ホットケーキーッ!」
……その前に後ろの騒がしい子どもにホットケーキを焼いてあげるほうが先か。
シアロルの帝都クワドリスでも当たり前に使われていた浄化陣が刻まれ、魔力で水が出るようになっている。
この……スラヴァグラードでも同じようになっているんだけれど、他にも『電気』の起動式なんてものもあって、それを使って街灯を灯していたり……様々な発展を遂げていた。
地下にあって空模様を再現しているのですら魔方陣――人風に言うと浄化陣のおかげなのだとか。
あまりにも地上との格差が激しくて、最初の方は全く付いていけなかった。
そんな中、元気を取り戻していったのはスパルナの方だった。
皇帝が側にいたときはあんなに大人しかったのに、いなくなった途端興味を爆発させていた。
相変わらず女装したままなのに周囲を探索したり、遠目から見ていた少年が顔を赤らめながら話しかけてくるのを笑顔で対応したり……。
窮屈だった分、存分に楽しもうという気力で満ち溢れていた。
子どもっていうのは好奇心の塊なんだなと改めて実感した程だ。
俺の方はむしろ未知への恐怖のほうが勝っている。
遥かに高度な文明。
戦闘なんてしたことがないであろう人ばかりだけれど、これだけの技術力があれば、俺たちが想像もつかないような武器を持っていてもおかしくない。
俺ですらそれくらいわかるほど、地上のどの都市ともここは違いすぎた。
辛うじて近いのはクワドリスだろうけど……あそこは元々シアロル帝国領だ。
比べるにしても同じ皇帝が治める場所じゃ何の意味もない。
魔人の国ですらここまで自在に魔方陣を使うことは出来ないだろう。
文化も大体クワドリス以下人の国以上といった感じだし……とてもじゃ張り合うことが馬鹿らしいくらいだ。
そんな異質な都市にスパルナと俺の二人だけが浮いたように存在してる。
これに恐怖を感じないだけの強い心を持てるような経験なんて積んでいるわけもなく、妙に不安が胸の中に渦巻いているんだ。
ただ、それと同時にスパルナの好奇心に同調している部分もある。
食べ物はクワドリスよりもずっと豊富で、飲み物も非常に美味しい。
見たことない娯楽も多く、本も知らないことが色々と書かれている。
なんのつもりでロンギルス皇帝が俺たちをここに連れてきたのかは知らない。
もしかしたら心を折るためなのかもしれないが……俺はとっくに覚悟しているとあの人にも告げていたはずだ。
全てを受け入れ、知るべきことを知り、その上で行動する……。
ヘルガに、ラグズエルに翻弄され、無知が招いた結果にうんざりした。
もっと強ければ、物を知っていたなら……上手く立ち回れたかもしれない。
そんな『たら』や『れば』なんて考えたってどうしようもないことだ。
だから――なにも知らないままの自分は嫌った。
自分の運命は他の誰でもない、自分で切り拓く。
それがあの人の後ろ姿を見て、考え方に触れて……俺が出した結論だった。
様々な未知に恐怖もするし、興味も湧く。
だからこそ俺の足は、本の集まる場所――図書館へと向かっていた。
――
スパルナと町を歩いたり本を読んで過ごしたりしているうちに、気付いたら十日程の時が過ぎていた。
「お兄ちゃん、もう15時だよ。おやつの時間!」
「ん、ああ。わかった」
完全に順応したスパルナは幼鳥が親に向かって餌が欲しいとさえずるかのようにおやつの時間を訴えかけていた。
服装の方もこっちに馴染んでいて、ホットパンツに白いワイシャツに赤いネクタイを巻いた姿をしていた。
いくら地下とはいえ、雪の大地であるシアロルにしては随分と軽装していると思うけど……ここにも魔方陣が関係している。
『暖』の起動式が刻まれているそれを着ていると、体全体がどこか暖かく包まれているようにすら感じるのだ。
それに加えてこのスラヴァグラード全体の気温は魔方陣で管理されていて、ある程度過ごしやすく調整されている。
季節感を出すために多少寒かったりもするのだけれど、服のおかげで地上のように着込む必要はまったくない。
だからか、ここの人々は自分の着たいように服を着ているし、スパルナのような寒そうな格好も許されているというわけだ。
ちなみに俺は……トラウザーズとか呼ばれていた黒いズボンにベスト。
それに加えて白のシャツといった装いだ。
初めて買い物しようとしたときはお金はどうしようかと思ったもんだが、人の国のものと全く同じで助かった。
「今日はなに?」
「えー……あー……ホットケーキだ」
「お兄ちゃんが作ってくれるの!?」
目をキラキラさせながら俺の事を見ているスパルナに頷くと、彼はさらにはしゃいでいた。
仕方ないから準備しようと本を閉じたところでノックの音が聞こえた。
スパルナがタイミング悪いものを見るような目で扉の方に視線を向けているのをなだめながら扉を開けると――そこにいたのは見知らぬ男性だった。
「あんたは……?」
「突然の訪問申し訳ございません。
セイル様。我らがロンギルス皇帝が明日、貴方様を食事にご招待されたい……と」
彼は丁寧に頭を下げ、俺に要件だけ伝えてきた。
その言葉にごくりと喉を鳴らす。
……とうとう、この日がきたか。
誘われるがままここに連れてこられ、ようやくこの時を迎えた。
何が起こるかわからないけど、ここは皇帝の庭のようなもの。
最大限準備していったほうがいいだろう。
端的に告げた男が立ち去った後、これからなにをしようかと考えていた時――
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