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第十二節 人の国・裏の世界 セイル編
第214幕 争いの歴史の正体
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「……なるほど。ならば仕方あるまい」
皇帝は静かに立ち上がり、俺たちに背を向けたままゆっくりと部屋の窓に近寄っていく。
結構隙を見せているようにも思えるのだけど、この人の放つ威圧感がそれを打ち消しているようにも感じた。
「貴様はやはり何もわかっていないようだな」
「……ここで断っても意味がないってことをですか?」
俺が察するに、今さっきの問いはある意味脅迫に近い。
この場で『はい』と頷かなかったとしても、力づくで言うことを聞かせることだって可能だ。
地下都市から地上に逃げるには俺たちでは圧倒的に不利。
どうせ無理なのだから、素直に言うことを聞いていればいいのに……というニュアンスを含んだものかと思ったのだけれど、皇帝は俺の問いかけに嘲りの混じったため息を一つついた。
「貴様の行動の全てが無意味、だというのだ。
ここから逃げ出し……その後どうする? 魔人の者たちと合流し、人の国を攻めるか?」
「それは……」
「そんなことをして何になる? 無意味な争いが増えるだけだ」
「無意味じゃ――」
少なくとも、人や魔人が争うことはなくなるはずだ……そんな風な事を言おうとしたのだけれど、まるで分かってるかのように俺の言葉は片手で制されてしまった。
「なぜ、ヘルガがこの地にいるのかよく考えたか?
勇者共の大多数が魔人の――グランセストへと向かう事なく留まっている理由を……貴様は理解できているか?」
皇帝の質問に俺は黙って少し言葉を選ぶように考えることにした。
それは俺も一度は疑問に思った事だ。
勇者の中でもヘルガは別格に強い。
一人で一軍を相手にする事だって出来ると思わせるほどの強さを秘めている。
カーターだってそれなりに戦えただろうし、ルーシーも今の実力ならそこらへんの魔人くらい簡単に倒してしまえるはずだ。
いくら人自体が魔人に劣っていても、勇者がいればかなり拮抗した――いいや、優位に立てる戦いになるのではないか? とさえ思う。
「それは……皇帝たち国の上に立つ者たちの安全を第一に考えてるから……では?」
なんとか言葉にしたそれはどこか薄っぺらい、ただ状況を見ただけで出した結論だった。
心の底から失望した様子の皇帝は上から見下ろすような視線を俺に向けてきた。
「本当にその程度の浅知恵しか浮かばぬのであれば、とんだ買い被りだったようだ」
「それでは、貴方はわざと今の状況を作り出していると……そう言いたいのですか?」
案の定違っていたその答えに対する嘲笑に気にすることなく別の答えを投げかける。
だけどそれは、ありえるようであり得ないことだ。
だって、そんな事して一体なんの得があるんだ?
人の国の王様なのであれば、良い悪いは別にして敵対者を排除して、国民の身の安全を確保する方が先なのではと思うからだ。
そうすれば、今よりもっと豊かになる。
技術だって……この地下の人たちが色々と教えればもっと発展するはずだ。
この人の考えが、俺には全く理解できなかった。
「その通りだ。人と魔人の争いは全て我らが仕組み管理している。
ほとんどは小規模の戦闘程度ではあるが、時折大規模な争いを行う事もある。
貴様も歴史の勉強は十分にしているのであろう?」
皇帝の言葉は人の国の真実だ。
魔人たちと何度も争いあった歴史の中では、かなり大きな被害が出たこともある。
町一つが壊滅していたり、逆に何の被害も出なくて終わったり……。
人の歴史は魔人との闘争の歴史とも言われていたりするからな。
「一体何のために……」
「人というのは……いいや、生物とは争う為に生まれた存在だからだ。
生命あるものを刈り取らなければ、己の存在を維持することすら難しい」
「そんなことは――」
「ほう? 麦も米も、貴様が先程食していた肉ですらも生命あるものを加工し食材としたものだ。
ならば我々は、すべからく生命を取り込んで自らの存在を保っているということになる。
もちろん、これはあくまで極論・暴論の類ではあるがな」
「すべからく?」
スパルナが『わけわかんない』って言ってるような顔でハテナマークを浮かべているけど、俺もよくわからん。
異世界の言葉は難しいことが多すぎる。
「……動物が生きる為には当然何かを食べなければならん。
食材とは命あるものを加工して作るものだ」
俺たちが理解出来てない事に深いため息をついた皇帝は、わかりやすいように言い直してくれた。
どうにも皇帝は物事を難しく伝えようとしがちだ。
偉い人――位の高い人というのはみんなそんな感じなんだろうか?
……ああ、だめだ。
スパルナのせいで気が緩んでしまった。
それでも彼のおかげで皇帝の言葉がよくわかった……んだが、なんでそんな話をしたのかがわからない。
「生きる為に必要な行為だったら、それも仕方ないだろ」
「言っただろう、極論だと。
しかしあらゆる世界で生命を奪うという行為は生き物がもつ最も自然な行為だ。
人はその理で繁栄し、発展した存在だと言っていい。だからこそ我らが管理し、守っているのだ。
人という種が絶滅せぬようにな」
皇帝が何を考えているのか、しっかりと理解できているわけじゃない。
俺には別に高尚な考えもないし、そこまで回る頭だってない。
だけどこの人の言うことは……なにかちぐはぐな感じがした。
皇帝は静かに立ち上がり、俺たちに背を向けたままゆっくりと部屋の窓に近寄っていく。
結構隙を見せているようにも思えるのだけど、この人の放つ威圧感がそれを打ち消しているようにも感じた。
「貴様はやはり何もわかっていないようだな」
「……ここで断っても意味がないってことをですか?」
俺が察するに、今さっきの問いはある意味脅迫に近い。
この場で『はい』と頷かなかったとしても、力づくで言うことを聞かせることだって可能だ。
地下都市から地上に逃げるには俺たちでは圧倒的に不利。
どうせ無理なのだから、素直に言うことを聞いていればいいのに……というニュアンスを含んだものかと思ったのだけれど、皇帝は俺の問いかけに嘲りの混じったため息を一つついた。
「貴様の行動の全てが無意味、だというのだ。
ここから逃げ出し……その後どうする? 魔人の者たちと合流し、人の国を攻めるか?」
「それは……」
「そんなことをして何になる? 無意味な争いが増えるだけだ」
「無意味じゃ――」
少なくとも、人や魔人が争うことはなくなるはずだ……そんな風な事を言おうとしたのだけれど、まるで分かってるかのように俺の言葉は片手で制されてしまった。
「なぜ、ヘルガがこの地にいるのかよく考えたか?
勇者共の大多数が魔人の――グランセストへと向かう事なく留まっている理由を……貴様は理解できているか?」
皇帝の質問に俺は黙って少し言葉を選ぶように考えることにした。
それは俺も一度は疑問に思った事だ。
勇者の中でもヘルガは別格に強い。
一人で一軍を相手にする事だって出来ると思わせるほどの強さを秘めている。
カーターだってそれなりに戦えただろうし、ルーシーも今の実力ならそこらへんの魔人くらい簡単に倒してしまえるはずだ。
いくら人自体が魔人に劣っていても、勇者がいればかなり拮抗した――いいや、優位に立てる戦いになるのではないか? とさえ思う。
「それは……皇帝たち国の上に立つ者たちの安全を第一に考えてるから……では?」
なんとか言葉にしたそれはどこか薄っぺらい、ただ状況を見ただけで出した結論だった。
心の底から失望した様子の皇帝は上から見下ろすような視線を俺に向けてきた。
「本当にその程度の浅知恵しか浮かばぬのであれば、とんだ買い被りだったようだ」
「それでは、貴方はわざと今の状況を作り出していると……そう言いたいのですか?」
案の定違っていたその答えに対する嘲笑に気にすることなく別の答えを投げかける。
だけどそれは、ありえるようであり得ないことだ。
だって、そんな事して一体なんの得があるんだ?
人の国の王様なのであれば、良い悪いは別にして敵対者を排除して、国民の身の安全を確保する方が先なのではと思うからだ。
そうすれば、今よりもっと豊かになる。
技術だって……この地下の人たちが色々と教えればもっと発展するはずだ。
この人の考えが、俺には全く理解できなかった。
「その通りだ。人と魔人の争いは全て我らが仕組み管理している。
ほとんどは小規模の戦闘程度ではあるが、時折大規模な争いを行う事もある。
貴様も歴史の勉強は十分にしているのであろう?」
皇帝の言葉は人の国の真実だ。
魔人たちと何度も争いあった歴史の中では、かなり大きな被害が出たこともある。
町一つが壊滅していたり、逆に何の被害も出なくて終わったり……。
人の歴史は魔人との闘争の歴史とも言われていたりするからな。
「一体何のために……」
「人というのは……いいや、生物とは争う為に生まれた存在だからだ。
生命あるものを刈り取らなければ、己の存在を維持することすら難しい」
「そんなことは――」
「ほう? 麦も米も、貴様が先程食していた肉ですらも生命あるものを加工し食材としたものだ。
ならば我々は、すべからく生命を取り込んで自らの存在を保っているということになる。
もちろん、これはあくまで極論・暴論の類ではあるがな」
「すべからく?」
スパルナが『わけわかんない』って言ってるような顔でハテナマークを浮かべているけど、俺もよくわからん。
異世界の言葉は難しいことが多すぎる。
「……動物が生きる為には当然何かを食べなければならん。
食材とは命あるものを加工して作るものだ」
俺たちが理解出来てない事に深いため息をついた皇帝は、わかりやすいように言い直してくれた。
どうにも皇帝は物事を難しく伝えようとしがちだ。
偉い人――位の高い人というのはみんなそんな感じなんだろうか?
……ああ、だめだ。
スパルナのせいで気が緩んでしまった。
それでも彼のおかげで皇帝の言葉がよくわかった……んだが、なんでそんな話をしたのかがわからない。
「生きる為に必要な行為だったら、それも仕方ないだろ」
「言っただろう、極論だと。
しかしあらゆる世界で生命を奪うという行為は生き物がもつ最も自然な行為だ。
人はその理で繁栄し、発展した存在だと言っていい。だからこそ我らが管理し、守っているのだ。
人という種が絶滅せぬようにな」
皇帝が何を考えているのか、しっかりと理解できているわけじゃない。
俺には別に高尚な考えもないし、そこまで回る頭だってない。
だけどこの人の言うことは……なにかちぐはぐな感じがした。
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