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第十二節 人の国・裏の世界 セイル編
第217幕 再び舞い戻る地上
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俺たちが魔法鉄道を抜ける道を選択するとは思っていなかったのだろう。
暗闇は広がるが他の誰かの存在は一切なかった。
気配察知の魔方陣で周囲を見ても特に何もない。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ああ。俺のことは気にするな」
スパルナがこちらを心配そうに顔を少し動かして俺の方を見ているのを感じる。
それを諌めるように注意すると、彼はすぐに正面を向き、ひたすら闇の中を進んでいく。
しかしこうも暗いと本当に自分たちが先に進んでいるのか? という疑問を抱きそうになる。
結構目が慣れてきたとはいえ、周囲には壁が広がって目の前は暗闇のままなのだから。
「お兄ちゃん……これ、いつまで続くんだろう?」
スパルナは少しうんざりするかのようにため息をついて、文句を言いながら飛んでいる。
見渡す限り暗闇に壁……スパルナじゃなくても同じように思うさ。
だけどそれもしばらくしたら状況が変化する。
「スパルナ、明かりが見えてきたぞ」
「あ、本当だ!」
嬉しそうな声をあげるスパルナも徐々に近づいてくる明かりが見えたようだ。
あれは多分……俺たちが魔法鉄道に乗った場所だろう。
どれだけの長い距離を飛んできたかはわからないが、ここまで来たらあと少しだ。
魔法鉄道の駅に降り立った俺は、スパルナから飛び降りて彼が少年の姿の時に羽織っていた布を取り出していた。
……正直なところ、スパルナにはきちんとした服を着てもらいたい。
だけど彼にはまだあの姿になってもらう必要がある。
クワドリスの城から出た時にすぐさま離脱するためにだ。
この地下から上に向けて穴を空ける……というのは流石に出来ない。
どれだけの力を使うことになるかわからないし、ヘルガと一戦交えることになった時に魔力が少ないと不利になる。
不測の事態に対処するには、出来る限り力を温存しながら進むしかないってわけだ。
「どうだ? 疲れたか?」
「ううん。これくらいなら平気だよ。それより早く行こう」
少年の姿に変化したスパルナは、すぐさま布を羽織って先を行こうと催促をしてきた。
それに応じるように来たときは降りた階段を駆けあがる。
さらに上に登るために今度は延々と階段を登り続け……少しうんざりしかけた時、ようやくあの広い空間へと出ることが出来た。
……のだけど、やはり俺たちの前に立ち塞がる敵がいた。
「……やっぱりな。来ると思ったよ」
俺たちを出迎えたのは冷たい目をした少女――ヘルガと縦ロールのルーシーだった。
「まさかここまで来るなんて……よくあの地下都市を抜けることができましたわね?」
どうやらスパルナの正体を二人とも知らないのだろう。
ルーシーの方はなんでここにいるのか? と心底不思議そうな顔をしていた。
それだけでこの二人は最初からここに配置されていたことがわかる。
「こっちにも色々と隠し玉があるんだよ。ヘルガの方は驚かないのか?」
「この程度の事も出来ない弱者にあの方の寵愛を受ける資格はない」
むしろここまで来て当然と言うかのような表情さえ浮かべている。
相当皇帝に熱を上げてるヘルガには悪いが、俺は彼の側にいるつもりはない。
「あの方からは殺すなという命を受けてる。
大人しくするなら何もしない」
「……そう言われてじゃあまいった、と言うとでも?」
ここで黙って捕まるつもりは全くない。
そういう意思表示をした瞬間――ヘルガは面白いものを見るような目で俺の方に視線を向けた。
「私を倒すつもり?」
「当たり前だ。一度目は完全に負けちまったが、二度目はそうはいかない」
そう、あの時の俺はなんの手も足も出せずにヘルガに完敗した。
悔しくて、泣いて……今の俺がある。
もう……あんな無様な負け方はしない。
俺たちは勝ってここから脱出するんだ。
「スパルナ。お前はルーシーの方を頼む」
「わかったよ。お兄ちゃん……絶対、勝てるよね?」
過去にヘルガに捕まえられ、その実力の片鱗を垣間見たスパルナは不安そうに俺の事を見ていた。
……正直なところ不安で仕方ない。
過去にボロ負けした記憶が蘇って、俺の心を圧迫していく。
それでも戦うと決めた以上はここで弱気な姿を見せるわけにはいかない。
ぐっと強く拳を握りしめて、真剣な表情でスパルナの方を向いて……強気に笑ってやる。
「当たり前だ。俺が負けるとこ、見たことあるか?」
「う、ううん……」
ふるふると首を横に振るスパルナは少しずつ俺の笑顔の影響を受けたのか、緊張が解けていく。
スパルナの――弟分の目の前なんだ。
少しは良いところを見せなければ嘘だというものだろう。
「頼んだぞ、スパルナ」
「……任せて! お兄ちゃん!」
これ以上言葉を交わすことはない。
スパルナがルーシーに向かっていくのを視界に収めた後……俺は改めてヘルガに向き直った。
グラムレーヴァをゆっくりと抜いて構える俺に対し、彼女はあくまで隙のある体勢のまま。
「行くぞ! ヘルガァ!」
「……吠える男は弱く見える」
「気合の入った男の覚悟、とくと見せてやる!」
ヘルガが魔方陣を展開しているのを見ながら、俺はまっすぐ彼女に向かって突進する。
グラムレーヴァ……俺に、力を貸してくれ……!
暗闇は広がるが他の誰かの存在は一切なかった。
気配察知の魔方陣で周囲を見ても特に何もない。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ああ。俺のことは気にするな」
スパルナがこちらを心配そうに顔を少し動かして俺の方を見ているのを感じる。
それを諌めるように注意すると、彼はすぐに正面を向き、ひたすら闇の中を進んでいく。
しかしこうも暗いと本当に自分たちが先に進んでいるのか? という疑問を抱きそうになる。
結構目が慣れてきたとはいえ、周囲には壁が広がって目の前は暗闇のままなのだから。
「お兄ちゃん……これ、いつまで続くんだろう?」
スパルナは少しうんざりするかのようにため息をついて、文句を言いながら飛んでいる。
見渡す限り暗闇に壁……スパルナじゃなくても同じように思うさ。
だけどそれもしばらくしたら状況が変化する。
「スパルナ、明かりが見えてきたぞ」
「あ、本当だ!」
嬉しそうな声をあげるスパルナも徐々に近づいてくる明かりが見えたようだ。
あれは多分……俺たちが魔法鉄道に乗った場所だろう。
どれだけの長い距離を飛んできたかはわからないが、ここまで来たらあと少しだ。
魔法鉄道の駅に降り立った俺は、スパルナから飛び降りて彼が少年の姿の時に羽織っていた布を取り出していた。
……正直なところ、スパルナにはきちんとした服を着てもらいたい。
だけど彼にはまだあの姿になってもらう必要がある。
クワドリスの城から出た時にすぐさま離脱するためにだ。
この地下から上に向けて穴を空ける……というのは流石に出来ない。
どれだけの力を使うことになるかわからないし、ヘルガと一戦交えることになった時に魔力が少ないと不利になる。
不測の事態に対処するには、出来る限り力を温存しながら進むしかないってわけだ。
「どうだ? 疲れたか?」
「ううん。これくらいなら平気だよ。それより早く行こう」
少年の姿に変化したスパルナは、すぐさま布を羽織って先を行こうと催促をしてきた。
それに応じるように来たときは降りた階段を駆けあがる。
さらに上に登るために今度は延々と階段を登り続け……少しうんざりしかけた時、ようやくあの広い空間へと出ることが出来た。
……のだけど、やはり俺たちの前に立ち塞がる敵がいた。
「……やっぱりな。来ると思ったよ」
俺たちを出迎えたのは冷たい目をした少女――ヘルガと縦ロールのルーシーだった。
「まさかここまで来るなんて……よくあの地下都市を抜けることができましたわね?」
どうやらスパルナの正体を二人とも知らないのだろう。
ルーシーの方はなんでここにいるのか? と心底不思議そうな顔をしていた。
それだけでこの二人は最初からここに配置されていたことがわかる。
「こっちにも色々と隠し玉があるんだよ。ヘルガの方は驚かないのか?」
「この程度の事も出来ない弱者にあの方の寵愛を受ける資格はない」
むしろここまで来て当然と言うかのような表情さえ浮かべている。
相当皇帝に熱を上げてるヘルガには悪いが、俺は彼の側にいるつもりはない。
「あの方からは殺すなという命を受けてる。
大人しくするなら何もしない」
「……そう言われてじゃあまいった、と言うとでも?」
ここで黙って捕まるつもりは全くない。
そういう意思表示をした瞬間――ヘルガは面白いものを見るような目で俺の方に視線を向けた。
「私を倒すつもり?」
「当たり前だ。一度目は完全に負けちまったが、二度目はそうはいかない」
そう、あの時の俺はなんの手も足も出せずにヘルガに完敗した。
悔しくて、泣いて……今の俺がある。
もう……あんな無様な負け方はしない。
俺たちは勝ってここから脱出するんだ。
「スパルナ。お前はルーシーの方を頼む」
「わかったよ。お兄ちゃん……絶対、勝てるよね?」
過去にヘルガに捕まえられ、その実力の片鱗を垣間見たスパルナは不安そうに俺の事を見ていた。
……正直なところ不安で仕方ない。
過去にボロ負けした記憶が蘇って、俺の心を圧迫していく。
それでも戦うと決めた以上はここで弱気な姿を見せるわけにはいかない。
ぐっと強く拳を握りしめて、真剣な表情でスパルナの方を向いて……強気に笑ってやる。
「当たり前だ。俺が負けるとこ、見たことあるか?」
「う、ううん……」
ふるふると首を横に振るスパルナは少しずつ俺の笑顔の影響を受けたのか、緊張が解けていく。
スパルナの――弟分の目の前なんだ。
少しは良いところを見せなければ嘘だというものだろう。
「頼んだぞ、スパルナ」
「……任せて! お兄ちゃん!」
これ以上言葉を交わすことはない。
スパルナがルーシーに向かっていくのを視界に収めた後……俺は改めてヘルガに向き直った。
グラムレーヴァをゆっくりと抜いて構える俺に対し、彼女はあくまで隙のある体勢のまま。
「行くぞ! ヘルガァ!」
「……吠える男は弱く見える」
「気合の入った男の覚悟、とくと見せてやる!」
ヘルガが魔方陣を展開しているのを見ながら、俺はまっすぐ彼女に向かって突進する。
グラムレーヴァ……俺に、力を貸してくれ……!
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