234 / 415
第十二節 人の国・裏の世界 セイル編
第220幕 覚悟の力
しおりを挟む
近づいてきたヘルガは俺の顔を見下ろしながら不思議そうにしていた。
「もう動けないはずなのに、よく私にそんな目を向けていられるわね」
「へえ、どんな目をしてるんだ? 教えてくれよ」
大方、怯えているような顔をしてるとでも思ったのだろう。
俺にまだ戦う気力がある事が不思議で仕方ないらしい。
「……わかってるの? その体じゃ、もう満足に動く事すら出来ないのよ?」
ヘルガは視線を俺の腕や足に向けて状態を確かめている。
腕は千切れそうなほど撃ち抜かれ、足の方もさぞかし見通しが良くなっているだろう。
今も血が流れて痛かったり寒かったりするくらいだ。
早めに止血しないと間違いなく死ぬ……。
そんな状態で、なんでこの男は笑っていられるのか? そんな風に思っている事だろう。
――当たり前だ。俺が望んでいるのは今この距離なのだから。
遠距離ではヘルガには勝てない。
『命』で作り出した三匹の獣たちも……元々俺との連携攻撃を中心にしてくれている。
個々の能力は……他の勇者をあまり知らないからなんとも言えないが、大体ルーシーぐらいなら倒せる程度だろう。
ヘルガの相手をするには足りない。
もっと強烈で確かな個体……この三体を合計して上回ることが出来る程の強さを持っていて、かつ小さな存在でなくてはならない。
『命』『水』『龍』で生み出した龍は大きすぎて確実にスパルナを巻き込む。
そんな事をしてもこっちにはなんの得もない。
――だったら……作ってやる。
『再』『生』『身体』の三つの起動式を構築して展開し、即発動する。
ヘルガは再び俺が自爆するんじゃないかと警戒して離れているけど、別に余裕がないわけじゃない。
腕や足――全身の重傷が瞬く間に完治して、さらに『風』『刃』の魔方陣をて発動しながら近くにオチていたグラムレーヴァを手に取る。
「……っ!?」
いきなり俺の傷が癒えて攻撃に移ったことに驚いたヘルガだったけど、頭の切り替えが早かったのだろう。
即座に魔方陣を展開して遠くに移動しようとしていた。
「悪いが、逃がすわけにはいかない!」
今ヘルガから離れてしまったら、俺はまた同じような――いや、それ以上に危険なことをしなければならないだろう。
これが完全に好機なんだ……!
身体強化の魔方陣を今の自分の限界を超えるように重ねて展開していく。
全身の血が沸騰するかのように熱い。自分の意志とは関係なく、暴れだしそうになる。
ヘルガが次々に魔方陣を展開していき、自分は遠くの方で姿を表そうとしている。
それを見つけた俺の方は冷静に……しかし熱を宿したかのように一気に駆け抜ける。
視力を強化する魔方陣を発動させて次々に撃ち放たれる銃撃の数々をかいくぐり、俺はヘルガの元へと走り抜ける。
わざわざここで視力を強化したのには理由がある。
いくら身体を強化しても目で感じるものは変わらない。
兄貴のように普通の状態でも戦いによって研ぎ澄まされた感覚と鍛え上げられた動体視力は俺にはない。
それを補うための術がこれというわけだ。
「早い……!?」
「遅い!」
いくら銃による攻撃が驚異的な速度で放たれる死を内包したものであろうとも、今の限界まで強化した俺にはっきりとどう飛んでくるか見える。
弾速も俺が避けられる程度に感じられるし、これならば十分に戦える。
全身に強い負担を与えるこれはあまり使いたくなかった。
だが、ヘルガ相手に温存しようなんてことが間違っていた。
魔方陣を次々に展開していき、俺にたいして弾幕を張り続けるヘルガの表情は少しずつ強張っていくのがわかる。
今までいいようにしてきた相手が、今度は自分を翻弄しようとしているのだから当然だ。
だけど……それだけでは終わらせない。
接近しつつ、更に魔方陣の構築を始める。それは『生命』『炎』『魔人』の三つの起動式。
あくまで生み出すのは魔力生命体……『命』で生み出した魔力の獣と同じだ。
初めて作るものだからこそ左手で少しずつ作りながら、右手でグラムレーヴァを握りしめ、ヘルガに斬りかかっていく。
案の定ナイフで迎え撃って来るが、刃を合わせた瞬間にヘルガは俺の力に押し負けるようによろけて後ろに下がる。
「……どうして」
「はっ! 覚悟を決めた男の力……目に焼き付けろぉっ!」
ヘルガは苦々しい視線を俺に向け、自身に身体強化の魔方陣を重ねていくけど……ここに来てはっきりとわかったことがある。
彼女は俺より自分の身体に作用する魔方陣を使うのが下手だ。
ヘルガが魔方陣を十重ねられるとすれば、俺はそれをもっと簡単に重ねることが出来るだろう。
……その分、負担が強すぎるくらいだけど、俺には『生命』の魔方陣がある。
いくら身体が壊れそうになっても、魔力が続く限り治してみせる。
ヘルガが無数の魔方陣を操り、空間から無数の銃を呼び出して攻撃してくるのであれば……俺はこの身一つ。
生命を生み出し、死してなお生きる身体で食らいつく。
決して諦めない。必ずスパルナと共に地上に帰る。
思い知れよヘルガ。『生きる』覚悟をした者の本気を……!
「もう動けないはずなのに、よく私にそんな目を向けていられるわね」
「へえ、どんな目をしてるんだ? 教えてくれよ」
大方、怯えているような顔をしてるとでも思ったのだろう。
俺にまだ戦う気力がある事が不思議で仕方ないらしい。
「……わかってるの? その体じゃ、もう満足に動く事すら出来ないのよ?」
ヘルガは視線を俺の腕や足に向けて状態を確かめている。
腕は千切れそうなほど撃ち抜かれ、足の方もさぞかし見通しが良くなっているだろう。
今も血が流れて痛かったり寒かったりするくらいだ。
早めに止血しないと間違いなく死ぬ……。
そんな状態で、なんでこの男は笑っていられるのか? そんな風に思っている事だろう。
――当たり前だ。俺が望んでいるのは今この距離なのだから。
遠距離ではヘルガには勝てない。
『命』で作り出した三匹の獣たちも……元々俺との連携攻撃を中心にしてくれている。
個々の能力は……他の勇者をあまり知らないからなんとも言えないが、大体ルーシーぐらいなら倒せる程度だろう。
ヘルガの相手をするには足りない。
もっと強烈で確かな個体……この三体を合計して上回ることが出来る程の強さを持っていて、かつ小さな存在でなくてはならない。
『命』『水』『龍』で生み出した龍は大きすぎて確実にスパルナを巻き込む。
そんな事をしてもこっちにはなんの得もない。
――だったら……作ってやる。
『再』『生』『身体』の三つの起動式を構築して展開し、即発動する。
ヘルガは再び俺が自爆するんじゃないかと警戒して離れているけど、別に余裕がないわけじゃない。
腕や足――全身の重傷が瞬く間に完治して、さらに『風』『刃』の魔方陣をて発動しながら近くにオチていたグラムレーヴァを手に取る。
「……っ!?」
いきなり俺の傷が癒えて攻撃に移ったことに驚いたヘルガだったけど、頭の切り替えが早かったのだろう。
即座に魔方陣を展開して遠くに移動しようとしていた。
「悪いが、逃がすわけにはいかない!」
今ヘルガから離れてしまったら、俺はまた同じような――いや、それ以上に危険なことをしなければならないだろう。
これが完全に好機なんだ……!
身体強化の魔方陣を今の自分の限界を超えるように重ねて展開していく。
全身の血が沸騰するかのように熱い。自分の意志とは関係なく、暴れだしそうになる。
ヘルガが次々に魔方陣を展開していき、自分は遠くの方で姿を表そうとしている。
それを見つけた俺の方は冷静に……しかし熱を宿したかのように一気に駆け抜ける。
視力を強化する魔方陣を発動させて次々に撃ち放たれる銃撃の数々をかいくぐり、俺はヘルガの元へと走り抜ける。
わざわざここで視力を強化したのには理由がある。
いくら身体を強化しても目で感じるものは変わらない。
兄貴のように普通の状態でも戦いによって研ぎ澄まされた感覚と鍛え上げられた動体視力は俺にはない。
それを補うための術がこれというわけだ。
「早い……!?」
「遅い!」
いくら銃による攻撃が驚異的な速度で放たれる死を内包したものであろうとも、今の限界まで強化した俺にはっきりとどう飛んでくるか見える。
弾速も俺が避けられる程度に感じられるし、これならば十分に戦える。
全身に強い負担を与えるこれはあまり使いたくなかった。
だが、ヘルガ相手に温存しようなんてことが間違っていた。
魔方陣を次々に展開していき、俺にたいして弾幕を張り続けるヘルガの表情は少しずつ強張っていくのがわかる。
今までいいようにしてきた相手が、今度は自分を翻弄しようとしているのだから当然だ。
だけど……それだけでは終わらせない。
接近しつつ、更に魔方陣の構築を始める。それは『生命』『炎』『魔人』の三つの起動式。
あくまで生み出すのは魔力生命体……『命』で生み出した魔力の獣と同じだ。
初めて作るものだからこそ左手で少しずつ作りながら、右手でグラムレーヴァを握りしめ、ヘルガに斬りかかっていく。
案の定ナイフで迎え撃って来るが、刃を合わせた瞬間にヘルガは俺の力に押し負けるようによろけて後ろに下がる。
「……どうして」
「はっ! 覚悟を決めた男の力……目に焼き付けろぉっ!」
ヘルガは苦々しい視線を俺に向け、自身に身体強化の魔方陣を重ねていくけど……ここに来てはっきりとわかったことがある。
彼女は俺より自分の身体に作用する魔方陣を使うのが下手だ。
ヘルガが魔方陣を十重ねられるとすれば、俺はそれをもっと簡単に重ねることが出来るだろう。
……その分、負担が強すぎるくらいだけど、俺には『生命』の魔方陣がある。
いくら身体が壊れそうになっても、魔力が続く限り治してみせる。
ヘルガが無数の魔方陣を操り、空間から無数の銃を呼び出して攻撃してくるのであれば……俺はこの身一つ。
生命を生み出し、死してなお生きる身体で食らいつく。
決して諦めない。必ずスパルナと共に地上に帰る。
思い知れよヘルガ。『生きる』覚悟をした者の本気を……!
0
あなたにおすすめの小説
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる