リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第十三節 銀狼騎士団・始動編

第224幕 女王を愛する者

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「アルディか。丁度いい。貴殿からも言ってやってはくれまいか?
 あの男の過ぎた言動、少々行き過ぎだとは思わぬか?」

 俺のときとは打って変わって冷静さを取り戻した……シグゼスと呼ばれた男は、同意を求めるような視線をアルディに向ける。
 彼は俺とシグゼスの交互に視線を向けて、ようやく状況が理解できたと言うかのように微笑んで頷いていた。

「シグゼスさん。我らは女王陛下の御心の元に集まった……いわば同志のはずです。
 それはグレファさんも同じ。多少言葉遣いに問題があったとしても、それは決して揺るぎないことでしょう?」
「し、しかし……!」
「まだ彼はこの銀狼騎士団へと加わった新参者です。多少礼節に欠けていても良いではありませんか。
 我らが尊き女王陛下も彼の発言を認めておられます。ここは我らも広い器を持って受け止めるべきでは?」
「う、ううむ……」

 アルディに説き伏せられている様子のシグゼスは、腕を組んでしばらく考え込んでいる様子だった。
 しばらくの間それが続いて……ようやく自分に納得のいく答えを得られたのだろう。彼は深く頷いて俺への敵対心を解いてくれた。

「アルディの言うことも一理ある。貴様もまだ未熟者だ。それを導いてやるのも私の使命――いや、宿命と言っても過言でもないだろう!」

 ばっと右手を勢いよくこちらに突き出したかと思うと、ふっと笑ってシグゼスはそのままきびすを返して歩いていってしまった。

「……アルディ、ありがとう」
「いいえ、ですが気をつけてくださいね? 銀狼騎士団には女王陛下を心底敬愛されている方も多い。
 グレファさんの発言は女王陛下の隣を歩いていくと受け取られかねないのですから」
「ああ、気をつける」

 相変わらずのいい男っぷりだ。
 なにはともあれ彼のおかげで窮地を脱することが出来た。
 アルディは笑みを浮かべていたが、何を思ったのか俺の方に顔を近づけ小声で耳打ちするように教えてくれた。

「シグゼスは女王陛下を愛しておられますから、特に注意されたほうがよろしいですよ。
 私やジェスさんとは違う意味で身を捧げておりますからね」
「それは……大丈夫なのか? あの方は――」

 そう、あのミルティナ女王はエセルカより少し高い程度で大体同じくらいだ。
 正直なところ、少女と呼んでも差し支えないだろう。
 思わずいやそうな顔をしてしまうが、アルディは実に楽しげに俺を見てきた。

「駄目ですよ? あの方は貴方の上司。先輩なのですから。
 上の者を立てるのもまた、後から入ってきた者の務めですよ」
「……はぁ、意外と食えないやつだな」

 ため息を一つ。しかし、堅物だと思っていたアルディにも茶目っ気のような部分が見れてなんだか親近感が湧いてきた。

「それで、エセルカたちはどこに?」
「彼女たちは宿舎に案内されてますよ。流石に学校の時のように相部屋という訳にもいきませんからね」
「……よく知ってるな」
「はははっ、学校の様子を伺っていた時に、たまたまですよ」

 アルディのやつめ……いつの間にそんな事を知っていたんだ。

「あれは不可抗力だ。その後は……なし崩しにだが」
「大体わかりますよ。さあ、貴方も宿舎に案内しますので付いてきてください」

 俺との会話に満足したのか、アルディは終始ご機嫌で俺を案内してくれた。


 ――


 銀狼騎士団の洗礼を受けてから次の日。
 俺たちはエテルジナ城から少し離れた訓練場へと足を運んでいた。

「グレファくん! 会えなくて寂しかった……」

 まだ別れて一日すら経っていないのに、もう何年も会っていない恋人に再会したような口調でエセルカは俺に抱きついてきた。
 今回は俺も彼女も銀狼騎士団の鎧を纏っているからか、ガチャンと互いの防具がぶつかりあう音と硬い感触が伝わってくるが、向こうはまるで気にしていない様子だ。

「グレファ、くずはは?」
「今は一人で訓練しているさ」

 エセルカの後ろを呆れるように付いてきていたシエラは、俺たちとは別にこの城に来たくずはのことを気にかけているようだった。

 宿舎に案内された時、アルディにはくずはの事をついでに聞いてみた。
 どうやら彼女は俺やエセルカたちとは違う……城の兵士の一人として部屋を与えられているようだった。
 兵士……とは言っても実質俺が時間がある時に教える以外は一人で訓練しているくらいだ。

「良かったのかな……」
「彼女が望んだ事だ。それに、俺もなるべく彼女を見てやるさ」

 三人で込み入った話をしている内に時間になったのか、騎士団員が全員集まった。
 ジェスや昨日絡まれたシグゼスなんかも洗礼の時と同じくらい真面目な顔で団長の方を見ていた。

「……新しく入った者もいることだ。まずは自己紹介から始めようではないか。
 皆知っているとは思うが、我が名はアウドゥリア・ハウルス。
 名誉ある女王陛下直属の銀狼騎士団の団長を務めているものだ」

 相変わらず凛々しくも堂々とした姿の男だ。
 彼は玉座の間で見た鎧――ではなく、右肩に狼のレリーフをあしらっている白銀の鎧を着ていた。
 あれが礼装用だとすれば、こっちは戦闘用……というわけか?

「我ら誉高い銀狼騎士団に入団したからには、例えどのような形であろうともその命の一片まで女王陛下に捧げなければならない。そして……我ら騎士は互いに信じ合い、常に最善の道を取る必要がある。
 故にまずは新人騎士共の実力を見たいと思う」

 静まり返った空気が一変してざわつき、俺たちの方に視線が集まる。

「もちろん、新人共が終われば、次は貴様たちだ。覚悟が出来ていないのであれば今のうちにするとよかろう。
 それでは……グレファ、エセルカの両名は前に出よ」
「私と……グレファくんが?」

 何を考えているのかは知らないが、アウドゥリア団長も俺たちが知り合いであるからこそ選んだのだろう。
 熱っぽい視線がエセルカから向けられ、俺は深いため息をついた。
 何かもう一波ありそうな予感がしてきた。
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