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第十三節 銀狼騎士団・始動編
第226幕 動き出す者たち
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エセルカとの模擬戦が終わってから数日が経過した。
俺たちは騎士団員としての教えを受けたり、剣での訓練をしたりして時間を過ごしていた――そんなときだ。
俺はアウドゥリア団長の呼び出しを受けて、一人団長の執務室に足を運んでいた。
「銀狼騎士団グレファ・エルデ。ただいま参上いたしました」
「入れ」
ノックの後、扉の前でそんなやり取りを交わした俺はそのまま何も言わずに部屋に入った。
「よっ!」
「……」
そこにいたのはジェズと……あまり接点のない騎士だった。
オレンジ色の髪が短く整えられていて、睨むように鋭い黄色の目をしている。
俺より少し低い彼は……確かガルディン・ワルキルと言ったはずだ。
そのガルディンは腕を組んで静かに目を閉じていたようだけど、俺が入った途端視線だけこちらに寄越してきた。
「今回のメンツはこれでそろった。貴様たちにはイギランスへの潜入・調査を行ってもらう」
「潜入……ですか?」
何度か縁のある国名を聞いて首を傾げる俺にアウドゥリア団長は肯定するように一言呟いた。
「我らが女王陛下のお言葉……貴様らも知っていよう?」
「今までの俺たちの戦いは全部ヒュルマの王たちが仕組んだことで、これからグランセストは本当の戦争を始めるってやつですね」
「そうだ。ジェズの言った通り、今後はより一層激しい戦いが予想される。ならば、我々は敵の戦力を知らねばならん。
本来であれば新入りであるグレファを呼ぶことはなかったのだが……」
ちらりと団長の視線が俺に向く。
それにつられるようにジェズとガルディンもこっちに注目しているようだった。
「この男の実力は模擬試合で既に証明されている。だろう? ジェズ?」
「これはこれは……痛いお言葉で」
ジェズが少し苦い顔をして団長の皮肉な言葉に答えているが、あれは間違いなく女王との御前試合の事を言っているんだろう。
しばらく気まずい空気が漂っていたけど、アウドゥリア団長が一つ咳をした途端、再び緊張が戻ってきた。
「ゆえに…….今回は貴様ら三人にその役を任せたいと考えている。もちろん、王を仕留めることが出来るのであれば、それに越したことはない」
今度はちらっとこっちを見てニヤリと笑みを浮かべている。
団長の方にも俺がアリッカルやジパーニグに行っていた事が伝わっているのだろう。
「だけど、なんで俺たちなんだ? こーいうのって、それこそ諜報員の仕事じゃないのか?」
「ジェズの言うことも最もだが……兵士どもでは容易に敵の間者にされてしまう可能性がある。グレファは知っているな?」
「……記憶を操る男のことですね」
「そうだ。恐らく並の兵士では相手にすらならないだろう。ならば、女王陛下の剣として盾となるべき我らが動かなければならない」
もちろん、俺たちもその男に操られる可能性はある。だが、少なくとも一般兵よりは戦えるだろう。
それはこの短い騎士生活でなんとなく理解できている。
彼らは全員、ミルティナ女王を『我らが女王陛下』と呼んで心底慕っている奴らばかりだ。
……中にはそれ以上の感情を抱いているのもいるけどな。
「……成すべきことを為す」
ガルディンは短くそれだけ言ってまた腕を組んだまま静かになってしまった。
どうやらこの男も癖の強いやつのようだ。
「その通りだ。例えその仕事が騎士にそぐわぬ事であろうとも、我らが女王陛下の為であるならば、その全てを成し遂げなければならない」
アウドゥリア団長のその顔は随分と真剣味を帯びていて、それだけで彼がどれだけ自分が銀狼騎士団であることを誇りに思っているのかわかるほどだ。
例えそれが騎士に相応しくない役目であろうとも淡々とこなす気概を感じる。
「グレファは恐らく敵対勢力に顔が割れているだろう。可能な限り派手に動いて敵を惹き付けろ。
ジェズとガルディンの二人は隠密行動に終始せよ」
「でも、俺たちの顔も割れてるんじゃ?」
「それも覚悟の上だ。だからこそグレファが顔を晒して動き回ることに意味がある。
ガルディンは顔を隠し、ジェズは普段どおり振る舞え」
俺はともかく、ジェズは銀狼騎士団のことが知れ渡っているか確認する為に敢えてそうするのだろう。
一番諜報活動に期待がかかっているのはガルディンのようだけど……大丈夫なのか?
「……問題ない」
考えを読まれたかのように俺の方をちらっと見たガルディン。
あまり安心できる要素は少ないけど、信じるしかない……のだろう。
「質問はあるか?」
アウドゥリア団長の言葉にジェズはやれやれと言った様子でお手上げのポーズを取って頭を左右に振っていた。
ガルディンは相変わらず表情が変わらず不動のまま。
肝心の俺もこれ以上何も言う必要はなかった。
何も言わない俺たちに視線を向け……アウドゥリア団長は一度深く頷いて立ち上がった。
「よし、それでは作戦に入れ。経過報告には他の騎士を差し向けるからその者にするように。必ず……生きて戻ってこい」
「はっ!」
「わかりました!」
「……了解」
各々が団長の言葉に返事をして……俺たちは部屋を後にし、久しぶりに行くであろうイギランスへと向かうのだった……。
俺たちは騎士団員としての教えを受けたり、剣での訓練をしたりして時間を過ごしていた――そんなときだ。
俺はアウドゥリア団長の呼び出しを受けて、一人団長の執務室に足を運んでいた。
「銀狼騎士団グレファ・エルデ。ただいま参上いたしました」
「入れ」
ノックの後、扉の前でそんなやり取りを交わした俺はそのまま何も言わずに部屋に入った。
「よっ!」
「……」
そこにいたのはジェズと……あまり接点のない騎士だった。
オレンジ色の髪が短く整えられていて、睨むように鋭い黄色の目をしている。
俺より少し低い彼は……確かガルディン・ワルキルと言ったはずだ。
そのガルディンは腕を組んで静かに目を閉じていたようだけど、俺が入った途端視線だけこちらに寄越してきた。
「今回のメンツはこれでそろった。貴様たちにはイギランスへの潜入・調査を行ってもらう」
「潜入……ですか?」
何度か縁のある国名を聞いて首を傾げる俺にアウドゥリア団長は肯定するように一言呟いた。
「我らが女王陛下のお言葉……貴様らも知っていよう?」
「今までの俺たちの戦いは全部ヒュルマの王たちが仕組んだことで、これからグランセストは本当の戦争を始めるってやつですね」
「そうだ。ジェズの言った通り、今後はより一層激しい戦いが予想される。ならば、我々は敵の戦力を知らねばならん。
本来であれば新入りであるグレファを呼ぶことはなかったのだが……」
ちらりと団長の視線が俺に向く。
それにつられるようにジェズとガルディンもこっちに注目しているようだった。
「この男の実力は模擬試合で既に証明されている。だろう? ジェズ?」
「これはこれは……痛いお言葉で」
ジェズが少し苦い顔をして団長の皮肉な言葉に答えているが、あれは間違いなく女王との御前試合の事を言っているんだろう。
しばらく気まずい空気が漂っていたけど、アウドゥリア団長が一つ咳をした途端、再び緊張が戻ってきた。
「ゆえに…….今回は貴様ら三人にその役を任せたいと考えている。もちろん、王を仕留めることが出来るのであれば、それに越したことはない」
今度はちらっとこっちを見てニヤリと笑みを浮かべている。
団長の方にも俺がアリッカルやジパーニグに行っていた事が伝わっているのだろう。
「だけど、なんで俺たちなんだ? こーいうのって、それこそ諜報員の仕事じゃないのか?」
「ジェズの言うことも最もだが……兵士どもでは容易に敵の間者にされてしまう可能性がある。グレファは知っているな?」
「……記憶を操る男のことですね」
「そうだ。恐らく並の兵士では相手にすらならないだろう。ならば、女王陛下の剣として盾となるべき我らが動かなければならない」
もちろん、俺たちもその男に操られる可能性はある。だが、少なくとも一般兵よりは戦えるだろう。
それはこの短い騎士生活でなんとなく理解できている。
彼らは全員、ミルティナ女王を『我らが女王陛下』と呼んで心底慕っている奴らばかりだ。
……中にはそれ以上の感情を抱いているのもいるけどな。
「……成すべきことを為す」
ガルディンは短くそれだけ言ってまた腕を組んだまま静かになってしまった。
どうやらこの男も癖の強いやつのようだ。
「その通りだ。例えその仕事が騎士にそぐわぬ事であろうとも、我らが女王陛下の為であるならば、その全てを成し遂げなければならない」
アウドゥリア団長のその顔は随分と真剣味を帯びていて、それだけで彼がどれだけ自分が銀狼騎士団であることを誇りに思っているのかわかるほどだ。
例えそれが騎士に相応しくない役目であろうとも淡々とこなす気概を感じる。
「グレファは恐らく敵対勢力に顔が割れているだろう。可能な限り派手に動いて敵を惹き付けろ。
ジェズとガルディンの二人は隠密行動に終始せよ」
「でも、俺たちの顔も割れてるんじゃ?」
「それも覚悟の上だ。だからこそグレファが顔を晒して動き回ることに意味がある。
ガルディンは顔を隠し、ジェズは普段どおり振る舞え」
俺はともかく、ジェズは銀狼騎士団のことが知れ渡っているか確認する為に敢えてそうするのだろう。
一番諜報活動に期待がかかっているのはガルディンのようだけど……大丈夫なのか?
「……問題ない」
考えを読まれたかのように俺の方をちらっと見たガルディン。
あまり安心できる要素は少ないけど、信じるしかない……のだろう。
「質問はあるか?」
アウドゥリア団長の言葉にジェズはやれやれと言った様子でお手上げのポーズを取って頭を左右に振っていた。
ガルディンは相変わらず表情が変わらず不動のまま。
肝心の俺もこれ以上何も言う必要はなかった。
何も言わない俺たちに視線を向け……アウドゥリア団長は一度深く頷いて立ち上がった。
「よし、それでは作戦に入れ。経過報告には他の騎士を差し向けるからその者にするように。必ず……生きて戻ってこい」
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