リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第十五節・再び相見える二人

第268幕 反発し合う者

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 多少長くなったが、セイルは俺の話を真剣に聞いていた。カッシェの方はまだ目を覚さなかったが、その分しっかりと伝えられたと思う。

 ……本来なら、俺たちもシグゼスたちを探した方がいいだろう。しかし、無闇に動いて体力を消費するのは現状得策ではないし、なにより動けないカッシェを置いて遠くまで行くことは出来なかった。

 セイルに司を倒した事を伝えると、彼はどこか昔を懐かしむようにどこか遠くを見て哀愁漂う顔を見せていた。

「そっか……司は、逝ってしまったのか」
「……ああ」
「俺、初めて勇者を見た時の事、まだ覚えてるよ。司とくずは……俺らとあんま変わらないのに、ずっと強い力を持ってるんだって思ってた。この人たちが魔人に襲われてるみんなを救ってくれるんだってな」

 セイルは昔と今の違いを感じているようだった。俺は……どうなんだろうか? 少なくとも勇者にそこまでの幻想を持っていたわけじゃない。興味がなかったというのは嘘だが、救ってくれるんだと思っていたわけではなかった。

 だから、セイルのように昔の思い出との乖離を感じることも…….なかった。

「それが今じゃこうして敵対してるんだもんな。父さんも母さんも……もう誰も俺のことを覚えてないし、きっと魔人として恐れてるって考えると複雑な気分になるよ」
「……そうだな」

 父も母も……今頃何をしているだろうか? 俺は、あの人たちの前で正しく息子としてあり続ける事が出来ただろうか? 今となってはわからないことだが……セイルの思いに触れて、俺もふと、両親を懐かしく思った。
 転生したということを隠してはいたが、純粋に子どもの反応をすることは出来なかったろう。それに若干負い目を感じるのは、俺が本当の息子じゃないからかもしれない。

「……兄貴。俺、行くよ」
「……どこに?」

 沈痛な面持ちをしていたセイルは、何か覚悟が決まったような顔つきをしていた。そこには以前、ボロボロになりながらくずはを俺に預けた男の姿はなく、自信をその目に宿した――強く成長した姿があった。

「ジパーニグに行って、クリムホルン王を討つ。戦車も攻撃機も直接基地を叩かない限り現れ続けるはずだ。それにシアロル以外にも地下都市はあるはずだし、そこからなにかわかるかもしれない」

 セイルの言うことはもっともだ。俺も同じ考えに辿り着いていた。
 出てくる敵を叩くのには限度がある。グランセストが対応し続けられるならそれでもいいが、この国にそれほどの力はない。ミルティナ女王もわかっているだろうが、このままでは陥落も時間の問題だ。

 いくら俺でも身体は一つしかない。守れる場所は一ヶ所だけだし、五つの国全てが物量で来られると対処のしようがない。だが――

「セイル。お前は一人で行って成し遂げられる勝算はあるのか? いや、大きな鳥であるスパルナと一緒か……。
 それでも、国相手になんとか出来る可能性は低いんじゃないか?」
「……それじゃあ、兄貴だったらやれるって言いたいのか? 兄貴もこの国の事情はわかってるはずだ。敵はいつでも圧倒的な物量に物を言わせて攻め込むことができる。それをしないのは皇帝がそれじゃつまらないと思ってるからだ。今やらないと……手遅れになってしまう」
「落ち着け」

 セイルの熱意は伝わった。俺も出来るならばやっているが、俺は今集団に所属している。女王の判断も仰がずにこれ以上勝手なことをする訳にはいかない。
 どこか焦っているセイルをなだめ、一つため息をついた。

「俺も今すぐには動けない。少なくとも女王に許可を得なければならない。だから――」
「……兄貴、変わったよな。前の兄貴だったら動いてから考えてたぜ。そんな風には言わなかった」
「人は変わる。俺はお前と背負っている物が違うだけだ」

 今の俺は女王に従い、グランセストの国民を守る義務がある。それが騎士団の一員として、一番大切にしなければならないことだ。
 セイルのように、大事な者の為に動けるような身軽さは……今の俺にはない。

「それは……俺の背負ってる物が軽いって、そう言いたいのか?」

 セイルはなにを勘違いしたのか、俺が考えている事と全く違うことを思って、拳を震わせていた。

「いや、俺はただお前の生き方が羨ましいと思ってだな――」
「俺は……俺にも、兄貴に負けないぐらいの思いがある。それを背負えるだけの力を手にしたつもりだ」

 力強く俺を見据えるその瞳に、少し圧倒された。
 これが、あのセイルだって? 改めて昔とは随分違うと痛感した。
 根拠のない自信じゃない。確固たる戦いの経験に裏付けられた成長が彼にはある。それなのに心はどこまでもまっすぐだ。

 そんな彼を……羨ましく思った。ここまでよく、立派になってくれたと。だから――

「兄貴?」
「……スパルナはまだ見つけてないみたいだな。カッシェもまだ目を覚さないみたいだし……セイル、そこまで言うのなら、俺に力を示してみろ。納得出来るだけの強さを見せてくれるなら、俺ももう何も言わない。お前の生きてきた歴史を、感じさせてくれ」

 今のセイルがどこまで俺と渡り合えるか試してみたくなった。
 本当なら、今すべきことではないだろう。だが、ここで何もしなければセイルは発ってしまうだろう。

 だからこそ……今、ここで彼を見極める。
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