リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

文字の大きさ
289 / 415
第十五節・再び相見える二人

第272幕・強いられた国民

しおりを挟む
 カッシェに事情を話した後、俺たちはシグゼスのいるであろう町へと走っていく事になった。魔方陣で身体を強化しているから、それ自体には問題はなかったが、彼がいるであろう場所の方はかなり遠い町だった。

 もっとこの近辺にある町や村を使うわけにはいかなかったのか? と聞くと――

「お前は知らないだろうけどな。他の場所は俺たちのとこよりも先にあのこーげきー? って奴に焼かれたんだよ。酷いもんだぜ」

 と、苦汁を飲まされた顔で嫌そうに呟いていた。
 どうやら、俺たちがいた町以外にもあらゆる場所で爆撃されていたようだ。それだけの規模でされてはこちらもひとたまりもない。
 そういう訳で、シグゼスたちはアッテルヒアに近い町に行く事にしたというわけだ。
 カッシェはそのことを俺に知らせる為に単身、残ってくれていたらしい。一般兵より騎士である彼の方が生存の確率も高いだろうということだ。

「それにしてもまさかこんな事が出来る奴がいるなんてな」

 走りながら肩を回したり傷を負った部分を眺めたりして、感嘆していた。それも当然だ。魔方陣は様々な恩恵を俺たちにもたらしてくれるが、誰かを治療出来る魔方陣なんてものは知る限り、見た事も聞いた事もない。
 身体の自己治癒力を強化する程度の魔方陣なら存在するが、それ以上のものはなかった。

 それだけでセイルがどれほどすごい事をしていたかわかる。少し話を聞いてみたが、あれが使えるならどんな重傷でもたちまち回復する事だろう。だが、それと同時に不安に思う事がある。
 もし、瀕死であっても身体を癒す事が出来るというのであれば、多少無茶をしても問題ない。セイルに限って無いとは思うが、それは最悪、危機意識の希薄に繋がる。

 どんな怪我をしても大丈夫。治せるからまだやれる。そんな風に考える者が増えるだろう。だからこそ、この起動式マジックコードは封印されてしまったのかもしれない。

「あまり無理に動かすなよ? まだ治ったばかりなんだから」
「わかってるって。グレファは心配性だな」

 全くわかってない顔で笑ってるが、あれだけの傷を負った昨日の今日だ。心配の一つもするさ。
 本人は全く気にして無いが、どんな副作用があるかわからないのだから。本来なら様子を見てから動くのが筋だ。それを無理してシグゼスのところに向かっているのだからな。

「ほら、それよりもっと速く走ろうぜ。あんまりシグゼスさん心配させるわけにはいかねぇからな」
「……そうだな」

 シグゼスは無事にたどり着けただろうか? ……まあ、そんな心配は無用かもしれない。
 今は足を動かして、なるべく早く町に行く事が大切だろう。

 ――

 それから一日が過ぎて、俺たちはシグゼスがいる町へとたどり着いた。
 あちこちにテントが張っており、生活している者たちの姿が見える。

「これでは野宿とあまり変わらないな」
「仕方ないさ。ここにだって魔人は住んでる。受け入れられる量を超えちまえばこうなるってことさ」

 それは俺もわかるが……だからといってこんな光景を許せるかと問われれば否と答えるだろう。
 いくら大きい町がなかったとはいえ、こんな風に町を囲むようにテントを張り巡らされれば、元々の住民だって生活し辛い。まるで家を持ってる事が悪いようにも思えてくるだろう。

 先程テントで生活している魔人たちの顔を見たが、不満・絶望などの負の感情が多い。中には俺たちの騎士鎧を見ただけで怒りの視線を向けてくる者すらいる。

「嫌になるよな。俺たちだって万能じゃない。それでも出来る限り最善を尽くしたってのに」

 カッシェもその視線に気づいているのか、疲れた顔で深いため息をついていた。
 彼の気持ちもわかる。自分たちは全力で国民を守り、その結果、被害もかなり少なくなった。だが、それが逆に不満の原因にもなっている。

「仕方ないだろう。ここにこれだけの人数を支えるだけの食糧なんてあるはずがない。家財はほとんど捨てて逃げてきて、劣悪環境での生活を強いられ、食事すら満足に出来ないとなれば、不満は自然と起こりうる。そしてそれを向けられるのは俺たちだ」
「だったら自分たちでなんとかしろーって話なんだよな。こっちだってそこまで面倒見切れるかよ。俺たちはあいつらの母親じゃないんだぜ?」
「わかってるさ」

 カッシェは俺の言葉に納得できない! といった様子で不満を露わにしている。確かに、命を張ってる本人たちからしたら納得できない事だろう。
 だけど、俺たちの食事や武器防具の全ては彼らが納めている税のおかげで回っていると言っても過言じゃない。

 ……とは言っても、そこまで気にしてたらこんな仕事は務まらないだろうけどな。

 結局、俺たちには今の不満をなんとかすることは出来ない。ただ、向けられる視線に耐えるしかないだろう。

「それで、駐留場までどれくらいあるんだ? ここには来たことないからわからないんだ」
「……もうすぐだ。ほら、あそこ」

 カッシェが指を差したその先は武装した兵士たちが数人見張りとして立っている建物だった。
 時間はかかったが、ようやくシグゼスたちと合流する事が出来そうだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...