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第十五節・再び相見える二人
第278幕 行われていた実験
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一体どんな事が明かされるのかとエセルカの時以上に身構えていると、ヘンリーは困ったような笑顔を浮かべていた。
「あの、そこまで身構えられると、逆に話しにくいと言いますか……」
「……悪い」
とは言え、ヘンリーが急に『転生英雄』を話に持ち出してきたのだから、こういう風にもなる。魔人たちの中では信じられてきている事だし、俺も現にリアラルト訓練学校でそう言われてた者も何人も見た。だからこそ、真実というものを知りたいのだ。
「まず、グレファさんは『転生英雄』についてどれ程の事をご存知ですか?」
「……そうだな――」
ここで読んだ本。リアラルト訓練学校で学んだ事など、出来る限り話した。ヘンリーの方は時折詳細を聞くような事をしてはいたけど、基本的に黙ってくれていた。
「――と、言う訳だ」
「……大体わかりました。実は『転生英雄』は『勇者召喚』の次に行われた実験だそうです。彼らの理想図は『勇者』に報酬として渡した土地を全て回収し、発展を阻害すると同時に争いの火種を消さない事にあるでしょう」
「……それに何の意味がある? 何故そうまでして戦いを求める?」
「ロンギルス皇帝は人は争わずには生きてはいけない種族なのだ言っていました」
馬鹿らしい。火種を撒く者がいるから争いが絶えないのであって、誰もが戦いを望んでいる訳ではない。口にはしなかったが、顔に出ていたようだ。ヘンリーは苦笑いを浮かべて、頭を左右に振っていた。
「私は貴方の考えも、皇帝の言う事も理解できます。どちらでもあり、どちらでもない……そういう複雑さが人や魔人であり、知性のある種族の性みたいなものです。支配欲に囚われた者の業とも言いますか」
「それで『転生英雄』というのは具体的に何なんだ?」
皇帝やヘンリーの考えを聞いて話を膨らませるのも悪くはないが、今の本題はそれではない。ヘンリーもその事はわかっているはずだ。
「彼らは記憶を植え付けられているだけですよ。女王が彼らと袂を分かち、国内で彼らの息がかかった者を排除しているので今はいませんが、偽物の記憶を植え付けられる者がいたそうです」
「……だからといってそれで簡単に信じられるものなのか? 別に記憶を書き換える訳ではないんだろう?」
昔、グランセストにはラグズエルという記憶を自由に書き換える事が出来る男がいたというのは聞いている。ヘンリーが言ってるのはそれとは別人なんだろうが……なら、今までの経験や思い出から、それらが偽物だということがわかるはずだ。
「ふふっ、それを夢という形で見せ、実際体験させる……それがどんなにリアリティを持つものか、本物の英雄である貴方にはわからないでしょう。能力を底上げする為に薬を投入され、魔方陣を刻まれ、モルモットにされるのは幼い子どもです。はっきりとした強烈な自我を持つ前から施されたそれらを偽物だと誰がわかるのでしょうかね」
「……まるで見てきたような言い方だな」
ヘンリーの知っている情報は、ただ聞いただけでは語れない表情と言葉があった。真実味を帯びたそれらは、暗にヘンリーが関わっているのではないかと匂わせてくる。
そして……彼はそれを肯定するように深々と頷いていた。
「そうですね。私もあちら側についていた人間ですので。彼らが何をしていたのか……私が入れる範囲ですが見てきました。失敗したモルモットの辿った末路もね」
魔人の事を家畜か……いや、それ以下の扱いをしているヒュルマの者たちに対して、どうしようもない程怒りが湧いてきた。これが、知性のある者のやる所業か……!
「そんな怖い顔をしないでくださいよ。私自身、直接関わった訳ではないのですから。止めはしなかったのが同罪と言われれば何も言えませんけどね」
確かにヘンリーは何もしなかった。だけど、何もできなかったというのが正しいのだと思う。いくら勇者とはいえ、皇帝に逆らう事なんて出来はしない。彼に怒りをぶつけるのは筋違いなんだが……やっぱり心が上手く制御出来ない。
「……悪かった」
「いいえ。……それで、なのですが。初めて実験台になった子は今から二百年前の女の子だったんです。それが……」
「言ってくれ。ここまで知ったんだ。今更隠し立てはなしだ」
再び渋るように視線を彷徨わせていたヘンリーは、降参するように一つため息をついた。
「仕方ありませんね。良いですか、これはあくまで私が本や資料で知った内容ですからね? それだけは心に留めておいてください」
「わかった」
「……実は、その被検体の名前はアルシェラ。そして、この魔人の国で実験に関わり、発覚しそうになったときに切られたのがアールド・リンテルシェア。後に人の国に渡り、改名して産まれた娘で実験を続けていたそうです」
「ま、まさか……」
ヘンリーに懇願するような視線を向けたが、彼は無情にも頷いただけだった。
その事実に俺は足元が崩れ落ちそうになった。つまり、シエラは二百年前の魔人で、今までずっと実験台にされていたということ。
そして……人の国に渡った男は、エセルカの先祖だったということ……。
その事実が俺の胸を締め付けて離さなかった。
「あの、そこまで身構えられると、逆に話しにくいと言いますか……」
「……悪い」
とは言え、ヘンリーが急に『転生英雄』を話に持ち出してきたのだから、こういう風にもなる。魔人たちの中では信じられてきている事だし、俺も現にリアラルト訓練学校でそう言われてた者も何人も見た。だからこそ、真実というものを知りたいのだ。
「まず、グレファさんは『転生英雄』についてどれ程の事をご存知ですか?」
「……そうだな――」
ここで読んだ本。リアラルト訓練学校で学んだ事など、出来る限り話した。ヘンリーの方は時折詳細を聞くような事をしてはいたけど、基本的に黙ってくれていた。
「――と、言う訳だ」
「……大体わかりました。実は『転生英雄』は『勇者召喚』の次に行われた実験だそうです。彼らの理想図は『勇者』に報酬として渡した土地を全て回収し、発展を阻害すると同時に争いの火種を消さない事にあるでしょう」
「……それに何の意味がある? 何故そうまでして戦いを求める?」
「ロンギルス皇帝は人は争わずには生きてはいけない種族なのだ言っていました」
馬鹿らしい。火種を撒く者がいるから争いが絶えないのであって、誰もが戦いを望んでいる訳ではない。口にはしなかったが、顔に出ていたようだ。ヘンリーは苦笑いを浮かべて、頭を左右に振っていた。
「私は貴方の考えも、皇帝の言う事も理解できます。どちらでもあり、どちらでもない……そういう複雑さが人や魔人であり、知性のある種族の性みたいなものです。支配欲に囚われた者の業とも言いますか」
「それで『転生英雄』というのは具体的に何なんだ?」
皇帝やヘンリーの考えを聞いて話を膨らませるのも悪くはないが、今の本題はそれではない。ヘンリーもその事はわかっているはずだ。
「彼らは記憶を植え付けられているだけですよ。女王が彼らと袂を分かち、国内で彼らの息がかかった者を排除しているので今はいませんが、偽物の記憶を植え付けられる者がいたそうです」
「……だからといってそれで簡単に信じられるものなのか? 別に記憶を書き換える訳ではないんだろう?」
昔、グランセストにはラグズエルという記憶を自由に書き換える事が出来る男がいたというのは聞いている。ヘンリーが言ってるのはそれとは別人なんだろうが……なら、今までの経験や思い出から、それらが偽物だということがわかるはずだ。
「ふふっ、それを夢という形で見せ、実際体験させる……それがどんなにリアリティを持つものか、本物の英雄である貴方にはわからないでしょう。能力を底上げする為に薬を投入され、魔方陣を刻まれ、モルモットにされるのは幼い子どもです。はっきりとした強烈な自我を持つ前から施されたそれらを偽物だと誰がわかるのでしょうかね」
「……まるで見てきたような言い方だな」
ヘンリーの知っている情報は、ただ聞いただけでは語れない表情と言葉があった。真実味を帯びたそれらは、暗にヘンリーが関わっているのではないかと匂わせてくる。
そして……彼はそれを肯定するように深々と頷いていた。
「そうですね。私もあちら側についていた人間ですので。彼らが何をしていたのか……私が入れる範囲ですが見てきました。失敗したモルモットの辿った末路もね」
魔人の事を家畜か……いや、それ以下の扱いをしているヒュルマの者たちに対して、どうしようもない程怒りが湧いてきた。これが、知性のある者のやる所業か……!
「そんな怖い顔をしないでくださいよ。私自身、直接関わった訳ではないのですから。止めはしなかったのが同罪と言われれば何も言えませんけどね」
確かにヘンリーは何もしなかった。だけど、何もできなかったというのが正しいのだと思う。いくら勇者とはいえ、皇帝に逆らう事なんて出来はしない。彼に怒りをぶつけるのは筋違いなんだが……やっぱり心が上手く制御出来ない。
「……悪かった」
「いいえ。……それで、なのですが。初めて実験台になった子は今から二百年前の女の子だったんです。それが……」
「言ってくれ。ここまで知ったんだ。今更隠し立てはなしだ」
再び渋るように視線を彷徨わせていたヘンリーは、降参するように一つため息をついた。
「仕方ありませんね。良いですか、これはあくまで私が本や資料で知った内容ですからね? それだけは心に留めておいてください」
「わかった」
「……実は、その被検体の名前はアルシェラ。そして、この魔人の国で実験に関わり、発覚しそうになったときに切られたのがアールド・リンテルシェア。後に人の国に渡り、改名して産まれた娘で実験を続けていたそうです」
「ま、まさか……」
ヘンリーに懇願するような視線を向けたが、彼は無情にも頷いただけだった。
その事実に俺は足元が崩れ落ちそうになった。つまり、シエラは二百年前の魔人で、今までずっと実験台にされていたということ。
そして……人の国に渡った男は、エセルカの先祖だったということ……。
その事実が俺の胸を締め付けて離さなかった。
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