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第十六節・一つの決着 セイル編
第285幕 地下に吹く風
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最初の基地の戦車を全て破壊するか、動きを止めた俺たちは、飛び立つ前の攻撃機を破壊して、次の基地へ。
二度目は敵もこちらの攻撃を予測していたのか、最初のところよりも警戒が厳重だった。……が、やはり鳥が魔方陣を展開してくるとは予測していなかったらしく、慌てたのはあまり変わらなかった。
流石に最初の基地とは違って、戦車は既に格納庫から出ていて、攻撃機も俺たちを次々と砲火を放ってきた。あれには参ったな。なにせ空は奴らの独壇場だ。さしもの俺も、空を飛ぶことは出来ないからな。だが――
「よーし、それじゃいっくよー!」
――そこはスパルナの世界だ。流石に服を脱いでマントを着せる時間がなかったから、服が破れてしまった。一瞬、悲しそうな目をしてたから、また新しい服を買ってやる必要があるだろう。
「な、なんだ? あれは……?」
「怯むな! 戦え!」
「あは、喰らえ!」
動揺を隠せない軍官の上空から攻撃機が円を描くように旋回してきて、スパルナを捉える。
だが、スパルナは素早く攻撃機の下側について、魔方陣を発動させる。大きな火球に焼かれた攻撃機はあっという間に墜落し、爆発炎上してしまう。
「スパルナ! 上は任せたぞ!」
「うん! お兄ちゃんは下をお願いねー!」
こういう時、仲間がいることにありがたさを感じる。任せられる……信頼できるってのは、良いことだ。
「とはいえ、おんぶにだっこじゃ、兄としてはいられないよなっ!」
「撃て! 撃てーっ!」
軍官が一斉に射撃してくる中、掻い潜るようにすり抜けていく。一つ、また一つ。銃撃を躱して行く度に、熱を感じる。
俺は今、死の嵐の中を生きている。だけど……どっか、なにかが物足りない。いや、多分俺は気付いてる。俺はずっと死線を潜り抜けてきた。ヘルガやラグズエルと戦い、数々の魔物との死闘をした俺には……今のこの銃撃がどこか遅く感じる。ヘルガの攻撃よりも隙が多くて、動きが遅い。射線がわかれば、ある程度は読むことが出来る。
……正直、自分でも笑えるくらい強くなったな、なんて我ながら思う。銃が放つ弾の速度は変わらないはずなのに、ヘルガと軍官たちでは随分違うような気がするんだもんな。
俺は『熱』『霧』『生』の三つの起動式を発動させる。
「なっ……? ぐっ、ごほっ、がほっ! ぁ、ああ、がっ……!」
見るからに危険そうな真っ赤な霧が軍官たちの口から喉を通り、身体の内側を灼く。おまけに戦車が奪う量を上回るほどの濃密な魔力。最初は戦車の攻略法に難儀したが、一度見つけてしまえば簡単だ。
並の魔人を相手にすればこの戦車は無敵だろう。これはそういう、一定の――平均の魔人を想定して造られた物だ。俺やスパルナや、兄貴のような強さを持つ者だったらそれをすり抜けることが出来るほどの魔力を込めて魔方陣を発動することが出来る。次に問題になるのは装甲だ。圧倒的火力で打ち抜けるならそっちの方がいいけど……いくら密閉していても、そこは生きている者が乗って、動かすように出来ている。なら、それを突いてやればいい。
『霧』を使ったのは我ながら良い判断だ。そこに『生』を組み込めば自在に操ることが出来る。どんな些細な隙間でも入り込めばこっちのものだ。後はやりたい事に合わせて属性を付ければこっちの思い通りに事が運ぶ。
「くっ、くそっ……増援を呼べ! 早く!」
一人が戦線から離れて応援を呼びに行ったが、今更それは遅い。このまま戦い、押し込んで見せる!
空と陸。同時に繰り広げられる怒涛の攻めで俺たちは二つ目の基地で待機していた戦車や攻撃機をみるみるうちに撃ち落としていって……大半の戦車の動きを封じ、そのまま壊した後くらいか。そいつはやってきた。
「…….なるほど、このような事になっているとはな」
「あ、あなたは……!」
軍官たちが目を見張るように驚き、俺も同じような目で現れた男を見た。彼は空間を裂いて現れたかのように見えたけど…….あれは多分、ヘルガの魔方陣だ。
確か…….どっかの本で見た事がある。原初の起動式とか呼ばれてる類のものだ。
それは奇跡。常人では扱うことすら拒絶される文字で作り上げた起動式だと書いてあったな。俺の『生命』や兄貴の『神』の事を指していて……ヘルガのそれも普通のそれとは違う。他の誰にも扱えないからこそ、すぐにわかった。
「ふん、貴様が件の男か。まさかここまでの者とはな」
「貴方――いや、あんたは……クリムホルン王」
そんなヘルガの魔方陣から現れたのは、ジパーニグの王・クリムホルンだった。まさかこの国の王様がこんなところに現れるなんて思いもしなかった。……その瞬間、空気が一変した。軍官の下がり気味だった士気が、一気に取り戻した。まるで澱んだ空気を吹き飛ばすかのような突風。
敵の事ながらすごい、と思った。半ば諦め、弱気になっていた軍官たちの顔がみるみる内に輝きを取り戻し、強気になっている。これが……これが、王様って奴なのか。
見下ろすような視線を向ける彼に、俺は何か、心がざわめくのを感じた――。
二度目は敵もこちらの攻撃を予測していたのか、最初のところよりも警戒が厳重だった。……が、やはり鳥が魔方陣を展開してくるとは予測していなかったらしく、慌てたのはあまり変わらなかった。
流石に最初の基地とは違って、戦車は既に格納庫から出ていて、攻撃機も俺たちを次々と砲火を放ってきた。あれには参ったな。なにせ空は奴らの独壇場だ。さしもの俺も、空を飛ぶことは出来ないからな。だが――
「よーし、それじゃいっくよー!」
――そこはスパルナの世界だ。流石に服を脱いでマントを着せる時間がなかったから、服が破れてしまった。一瞬、悲しそうな目をしてたから、また新しい服を買ってやる必要があるだろう。
「な、なんだ? あれは……?」
「怯むな! 戦え!」
「あは、喰らえ!」
動揺を隠せない軍官の上空から攻撃機が円を描くように旋回してきて、スパルナを捉える。
だが、スパルナは素早く攻撃機の下側について、魔方陣を発動させる。大きな火球に焼かれた攻撃機はあっという間に墜落し、爆発炎上してしまう。
「スパルナ! 上は任せたぞ!」
「うん! お兄ちゃんは下をお願いねー!」
こういう時、仲間がいることにありがたさを感じる。任せられる……信頼できるってのは、良いことだ。
「とはいえ、おんぶにだっこじゃ、兄としてはいられないよなっ!」
「撃て! 撃てーっ!」
軍官が一斉に射撃してくる中、掻い潜るようにすり抜けていく。一つ、また一つ。銃撃を躱して行く度に、熱を感じる。
俺は今、死の嵐の中を生きている。だけど……どっか、なにかが物足りない。いや、多分俺は気付いてる。俺はずっと死線を潜り抜けてきた。ヘルガやラグズエルと戦い、数々の魔物との死闘をした俺には……今のこの銃撃がどこか遅く感じる。ヘルガの攻撃よりも隙が多くて、動きが遅い。射線がわかれば、ある程度は読むことが出来る。
……正直、自分でも笑えるくらい強くなったな、なんて我ながら思う。銃が放つ弾の速度は変わらないはずなのに、ヘルガと軍官たちでは随分違うような気がするんだもんな。
俺は『熱』『霧』『生』の三つの起動式を発動させる。
「なっ……? ぐっ、ごほっ、がほっ! ぁ、ああ、がっ……!」
見るからに危険そうな真っ赤な霧が軍官たちの口から喉を通り、身体の内側を灼く。おまけに戦車が奪う量を上回るほどの濃密な魔力。最初は戦車の攻略法に難儀したが、一度見つけてしまえば簡単だ。
並の魔人を相手にすればこの戦車は無敵だろう。これはそういう、一定の――平均の魔人を想定して造られた物だ。俺やスパルナや、兄貴のような強さを持つ者だったらそれをすり抜けることが出来るほどの魔力を込めて魔方陣を発動することが出来る。次に問題になるのは装甲だ。圧倒的火力で打ち抜けるならそっちの方がいいけど……いくら密閉していても、そこは生きている者が乗って、動かすように出来ている。なら、それを突いてやればいい。
『霧』を使ったのは我ながら良い判断だ。そこに『生』を組み込めば自在に操ることが出来る。どんな些細な隙間でも入り込めばこっちのものだ。後はやりたい事に合わせて属性を付ければこっちの思い通りに事が運ぶ。
「くっ、くそっ……増援を呼べ! 早く!」
一人が戦線から離れて応援を呼びに行ったが、今更それは遅い。このまま戦い、押し込んで見せる!
空と陸。同時に繰り広げられる怒涛の攻めで俺たちは二つ目の基地で待機していた戦車や攻撃機をみるみるうちに撃ち落としていって……大半の戦車の動きを封じ、そのまま壊した後くらいか。そいつはやってきた。
「…….なるほど、このような事になっているとはな」
「あ、あなたは……!」
軍官たちが目を見張るように驚き、俺も同じような目で現れた男を見た。彼は空間を裂いて現れたかのように見えたけど…….あれは多分、ヘルガの魔方陣だ。
確か…….どっかの本で見た事がある。原初の起動式とか呼ばれてる類のものだ。
それは奇跡。常人では扱うことすら拒絶される文字で作り上げた起動式だと書いてあったな。俺の『生命』や兄貴の『神』の事を指していて……ヘルガのそれも普通のそれとは違う。他の誰にも扱えないからこそ、すぐにわかった。
「ふん、貴様が件の男か。まさかここまでの者とはな」
「貴方――いや、あんたは……クリムホルン王」
そんなヘルガの魔方陣から現れたのは、ジパーニグの王・クリムホルンだった。まさかこの国の王様がこんなところに現れるなんて思いもしなかった。……その瞬間、空気が一変した。軍官の下がり気味だった士気が、一気に取り戻した。まるで澱んだ空気を吹き飛ばすかのような突風。
敵の事ながらすごい、と思った。半ば諦め、弱気になっていた軍官たちの顔がみるみる内に輝きを取り戻し、強気になっている。これが……これが、王様って奴なのか。
見下ろすような視線を向ける彼に、俺は何か、心がざわめくのを感じた――。
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