リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第十七節・落日の国編

第305幕 処刑闘技

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 少しはジパーニグの連中も考えていると思っていた俺が馬鹿だった。そんな風に感じさせる程、くだらない名前の催し――見世物にされていた。

 わざわざ紙を使ってでかでかと『執行! 魔人処刑闘技!』なんて書かれているのだから頰が引き立って半笑いになる。既に城中に配られており、ジパーニグの兵士たちは全員この事を知って、時折嫌な笑いを浮かべてひそひそと小声で話している。
 幸いにも城下町には配っていなかったらしく、陰険な空気は城の中だけで済んでいた。

 ロイウスは申し訳なさそうに頭を下げて、この事をジパーニグ側に問い詰めると知らぬ存ぜぬと言った様子でしらばっくれていたようだ。
 あれだけ城内に周知させておいて知らない訳がない。まず間違いなく彼ら――ジパーニグの上位陣がまき散らした情報に違いない。
 流石のロイウスもこんな事態になる事は想定していなかったらしく、何度も頭を下げられてしまったけど、こうなったのは彼のせいじゃない。むしろジパーニグの上の連中のせいだと言えるだろう。武闘派の連中だけでここまでの事が出来るとも思えないからな。

「こんなのあんまりじゃない? これじゃ罪人みたいだよ!」
「実際、奴らからしてみたら罪人なんだろ。俺は」

 グランセストに攻め込んできた彼らを薙ぎ払うように一気に倒したのは、他でもない俺だからな。恨みを買っていない方がおかしいか。

「グレリア、こんなの受ける事ないよ。明らかに向こうが――」
「言いたい事はわかるけどな、今辞めたと言えば、おくしただの何だのと色々言われかねない。引くわけにはいかないだろう」

 少し涙目で訴えかけてくるシエラの頭にぽんと手を乗せて、慰めるようにゆっくり撫でてやる。この子の言うこともわかる。こんな罠みたいな事をされてまでやる必要はない。だが……今回の一件、俺も頭にきたからな。奴らには、焚き付けるような真似をしたことを後悔させてやらないといけない。

 ――

 それから処刑闘技当日。俺たちはウキョウにある闘技場にやってきていた。ここは兵士たちの訓練場も兼ねてるらしいけど、結構広く、色んな用途で訓練することが出来そうだった。見世物を扱う側面があるからか、すり鉢状に作られていて、観客たちが座れるような場所になっている。
 そんな闘技場の控室。そこで俺は静かに時間が来るのを待っていた。

 他にはシエラや、一緒にアリッカルに来た者たちが待機してくれていて、どこか不安そうにしている。心配で見に来てくれているのはわかるが、この重たい空気をどうにかして欲しい。これでは逆に負担と言うものだ。

「時間だ」

 ジパーニグの兵士が一人、無表情で俺の事を迎えにきた。いよいよだと気を引き締めて、指示に従うように会場に入ろうとすると、後ろから服の裾を引っ張られた。

「グレリア…….その、気をつけてね」
「ああ、シエラもな。ここは奴らの国だ。その気になれば、お前たちを人質に取って……という事も十分に考えられる。気を抜かないようにしろよ」
「わかってる。兵士の方と上手くやるよ」
「頼んだぞ」

 ジパーニグの兵士が「早くしろ」という言葉に黙って従って、会場の中へと入った。
 その瞬間、観客席の方から歓声が聞こえてきた。周囲を見回すと、殺気だった兵士たちが俺を『殺せ! 殺せ!』と騒いでいたり囃し立てたりしていて、うんざりする。城の中であれだけ宣伝してたのだからそうなるだろうなと思ったが、あまりの欲求の素直さに驚いてしまう程だ。
 兵士以外の……王の側近や大臣の側の人物は逆に呆れていて、今の国の状況を考える事が出来る知性を持っているように見えた。

 アリッカルの側から使いとしてやってきた俺を殺せば、どう思われるのか……案外ヒュルマは全員仲間だとでも思っているのかもしれない。

 確かに共通の敵がいる現時点ではまとまる事が可能だろう。しかし、人の国は魔人を滅ぼす事を決めた。そうなれば次に敵意が剥くのは――一体どこになるか。
 アリッカルの場合、魔人であろうとなんであろうと、使者を無下に扱われた事実を突いて交渉が起こる事くらい目に見えてる。

 魔人も人も……そういう汚さくらい、持っているんだからな。多分、ここの連中は自分にそんなのが降りかかるなんて思ってもいない人種なんだろう。そんなふうに考えながら相手を待っていると、向かい側からはそれこそ無数の兵士共が銃を片手にわらわらと入場してきた。それを見ながら、流石にここに戦車を持ってくるような馬鹿さ加減むき出しの度胸はなかったか……と半ばほっとした。
 一応この闘技場に入れる人数限界くらいまでで終わったが、これは後続もありそうだ。

「グレリア……」

 その中心。最後に入場してきたアルフォンス・吉田が立派な鎧や盾を身にまとって、剣を腰に差している。他の軍服と銃を装備した兵士達とは少し違う。重苦しい声音で俺の名前を呼んだ吉田の顔はどこか晴れない。不満そうに苛立ちを誤魔化すような視線を八つ当たり気味に睨んでいるようだった。
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