リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

文字の大きさ
330 / 415
第十七節・落日の国編

幕間 裏切り者の末路

しおりを挟む
 その日、ナッチャイスの王都チョウラクは炎の海に包まれていた。住んでいる者。訪れた者……その全ては例外なく言葉を紡ぐことの出来ない骸と化してしまい、そこを歩むのはたった一人の少女だけだった。あらゆる町・村……地下都市を除いた地上の全ては、その少女一人の為すがままにやられてしまった。

 そこに具現したのは一つの地獄。ありとあらゆる苦しみと嘆きを詰め込んだ劫火の光景。そこで少女は、まるで楽しむようにゆっくりと歩いていた。何も映さないその瞳は、ただ一人の為に。

 城の中に入り、迷うことなく玉座へと歩みを進めた少女を待ち受けていたのは……最早この国では数少ない生き残りとなったミンメア女王だった。女王は何も語らず歩いてくる少女を憎々しげに睨み、苛立つように立ち上がる。

「……どういうこと? こんな事をして、ただで済むと思っているのか?」

 その問に答えることのない少女に、ミンメア女王は玉座に飾ってあった槍を構え――た瞬間、どこからともなく放たれた銃弾に弾き飛ばされてしまう。その槍も『空間』の魔方陣で瞬く間に別の場所へと消え去ってしまい、唖然とした表情の女王と無表情の少女だけが残されてしまった。

「な……!?」
「無駄な抵抗は止めることね」
「くっ……何故だ……ヘルガ!!」

 少女――ヘルガはつまらなさそうにミンメア女王を見ていた。道端で倒れる乞食を見るような視線を向けられ、女王は耐えきれなくなり、魔方陣を構築する。彼女の持つ原初の起動式アカシックコードである『源』の文字を組み合わせた『炎』の魔方陣。『神』とは違い多少威力は劣るが、自在に操ることが出来る特徴を持っている。
 まるで鞭のようにしなりながら襲いかかってくる炎を、ヘルガは冷静に見つめ、その軌道に魔力を内包した銃弾を撃ち込んでいく。最初は勢いのあった炎は、ヘルガの元に来るまでにか細いものとなって……終には届かずに消えてしまう。まるで……この後のミンメア女王を揶揄するかのように。

「ヘルガ!」
「ミンメア……自分が何をしたのか、わかってる?」
「何をしたか……? 私がグランセストと停戦することがそんなに問題か?」
「お前は私たちを……いいえ、私のцарьを裏切った!!」

 言葉を口にした瞬間、怒りに満ちた表情でヘルガはミンメア女王を睨んだ。その感情の吐露に女王は恐れるように一歩後退ってしまった。
 自らが臆している事実に気づいたミンメア女王は、拳を握りしめて自身を奮い立たせるように身体の震えを抑えながら一歩、前に歩み出た。

「裏切った? 私は言われた通りの役割を果たしていたではないか!」
「貴女の役割はцарьの為に平和を築く事。それ以外に何もありはしない。他の王も同じ」
「違う! 私の役割はこの国を守る事にある!」
「それはцарьが貴女に命じた役割。それを貴女はグランセストの地上人共に尻尾を振って果たそうとしている。これは明らかな裏切り。царьの誇りを冒涜する行為に他ならない!」
「っ……! それでも……ここまでする必要ないはず! ここに住んでる者の中には何も知らない者も――」
「関係ない。貴女が裏切った時点で、この国の全てが同罪になる。царьの邪魔をする者を排除する……それが私の役割」

 ミンメア女王は、これ以上ヘルガと話をしても無駄だと悟ったのか、それ以上何も言うことはなく、目の前の怨敵を滅するべく魔方陣を構築しようとするが……その瞬間に、女王の身体はヘルガの召喚した無数の銃による射撃で撃ち抜かれてしまった。圧倒的な速さで展開された『空間』の魔方陣に為すすべもなくミンメア女王はその生命を落としてしまった。床に崩れ落ちた死体に向けて、ヘルガは無慈悲にも追撃の魔方陣を発動し、天井の方から極太のレーザーが放たれ……ミンメア女王はその玉座と共に跡形もなく消し去ってしまった。

「до свидания,изменник」

 今はもうない玉座とミンメア女王に向かって侮蔑するような視線を向けてそれだけ呟いたヘルガは、最早用はないと言わんばかりに踵を返し、城を後にする。ロンギルス皇帝のシナリオ通りにいかない者。彼の道を阻む者をヘルガは決して許しはしない。それは今も……未来も同じだった。だからこそ、逆にロンギルス皇帝の意思であれば、どんなに思うところがあっても黙って従う。

 城から出たヘルガは上空から兵器を喚び出し、そのレーザーによって城も全てを灰へと帰してしまう。ナッチャイスが存在したという事実すら無にしていく程の威力のそれは、一夜にしてチョウラクの都を消し去ってしまった。

 ジパーニグに使者として向かったイーリンがナッチャイスに戻り、ミンメア女王に結果を報告したその日の出来事だった。地下都市アンキンを残し、地上は消し炭に。たった一人の少女が引き起こした地獄絵図は一夜にして幕を下ろした。

 最後に残ったナッチャイスの勇者――シュウ武龍ウーロンだけであり、魔人との戦争のことすら満足に聞かされていなかった彼は、ジパーニグの一都市で研鑽を積んでいる最中だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...