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第十九節・機械兵と最後の勇者編
第330幕 ずっと待ってる
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偶然に出会ったくずはと、適当な場所で食事をする事になった。行き先は彼女がよく行く酒場で、訓練や仕事が終わったらここに来るのだとか。店の中に入ると、店主や客に声を掛けられた。
「お、なんだい。今日は男連れか?」
「へー、それがくずはちゃんのコレかい?」
「あはは、そんな訳ないでしょう。私の彼はもっと格好良いんだから!」
「はっはははは! その兄ちゃんよりって、また随分持ち上げるな!」
それは俺がセイルよりも格好悪いと言ってるのだろうか? というか、俺を酒のつまみにしないで欲しい。
「くずは……」
「くすっ、これくらい良いでしょう?」
微笑みながら口に指を当てる仕草は可愛らしいが、それでもあまり納得は出来ない。
俺が講義するような視線を向けていても、くずはは涼しい顔をして店員や客の野次のような声掛けに愛想良く答えていきながら、テーブルの方についた。
「随分扱いに慣れてるが……毎回こんな感じなのか?」
「まあね。最初は戸惑ったけど、私もすっかり慣れたものよ」
こなれた様子で次々と注文を入れていく彼女の様子を眺めながら、どこか感慨深い気持ちになる。まるで立派に育った娘を見るかのような気分だ。
「……何そんな顔してるの?」
「え、ああ、悪い。どんな顔してた?」
「なんだか、娘を見る父親の目をしてた」
完全に見透かされてるようで、少し居心地が悪くなった……。
「あー、ほら、それより乾杯でもしよう。久しぶりに会ったんだしな」
「あ! ちょっと、誤魔化さないでよ!」
店員が持ってきた木製のビアマグを片手に軽く上に上げると。観念したようにくずはも合わせてくれた。
「「乾杯」」
同時に口づけ、勢いよく飲み干す。少し生ぬるいがちょうど良いくらいで、口に広がる味わいが胸に沁みるようだ。
「っはぁー……うん、美味しい」
「おお、良い飲みっぷりだな」
「そっちこそ。堅物そうであんまり飲み慣れてないと思ってたのに」
はは、エールなんて昔はよく飲んでたものだ。ただ、昔よりもより深く複雑な味わいになってる。個人的にはラガーとか書かれてる物も気になっていたが、文明の発達をこんなところで感じるとは思わなかった。
「私、エールもラガーもおんなじビールだと思ってたんだよね。ま、今は違うけど」
自慢するように胸を張る彼女は、おかわりを店員に頼みながら肉の串焼きを齧っていた。
……一瞬、酒が飲める年だったっけ? とも思っていたが、確かくずはは今年で20。魔人の国で酒が飲めるのは19からだから、飲み慣れていても何も問題はなかった。
「くずはももう酒が飲める年になったんだな」
「……なによ、そんなしみじみと。ちょっとおっさん臭いんだけど」
「仕方ないだろう。俺たちは子供の頃からの仲なんだしな」
それに、一回人生を全うしてるからおっさんよりも年取ってるつもりだ。肉体の年齢に引きずられて精神も幼くはなったが、それでも事実は変わらない。
「……こんな事、あんまり言いたくないけど、昔は良かったかも。セイルがいて、エセルカもいて……アリッカル行ったりとか」
「その頃だと、俺やシエラはいなかったな」
「だけど、あの頃のセイルはまだ子供っぽくて。私を守ってくれるって言っててもちょっと頼りなくて……」
遠い日を懐かしむくずはは、新しく持ってこられた酒をゆっくりと味わうように飲みながら肴を食べている。彼女に感化されるわけではないが、昔を懐かしむ気持ちはよくわかる。それからしばらくの間、肉や魚を食べながら思い出を語り合う。しばらく互いに話し合って……ある程度落ち着いた頃にくずははほろ酔いになっていた。
「あはは、なんだか、随分語っちゃったかも」
「そうだな。おかげで懐かしい思いをさせてもらったよ」
「……ねえグレファ」
再び運ばれてきた酒をちびちびと飲みながら、どこか遠くを見るような目でなにもない場所を見つめていた。その真剣な表情に、俺も先程までの軽口を叩くことをやめて、静かに彼女の話を聞くことにした。
「私ね、ずっと彼の隣に立てる女になりたかったの。今もずっと頑張ってるんだけどさ。でも……」
少し俯いて、その後は俺の顔をまっすぐ見てきた。それはどこか寂しそうな目をしていて、哀しげだった。
「でもさ、やっぱりちょっと辛い、かな。こんなに自分が弱い女だって思わなかった。ああ、何が言いたいんだろう。結構酔ったのかも……」
「別に良いさ。それで?」
「……グレファは戦場に行くんだよね?」
「ああ」
「だったら……セイルに伝えてほしいの。私、ずっと待ってるって」
「会えるとは限らないぞ?」
「……彼はきっと、戦いに行ってるはず。だから……お願い」
「わかった。会ったら必ず伝えよう」
中々言い出せずに詰まっていた事をようやく伝えられたと、くずはは微笑んでいて……俺はようやく彼女がこれを言うために食事に誘ってくれたのだとはっきりわかった。
『ずっと待ってる』そういう風に言われるような誰かがいるってことは本当に幸せなことだ。セイルには必ずくずはの気持ちを伝えよう。お前にも帰る場所があると、な。
「お、なんだい。今日は男連れか?」
「へー、それがくずはちゃんのコレかい?」
「あはは、そんな訳ないでしょう。私の彼はもっと格好良いんだから!」
「はっはははは! その兄ちゃんよりって、また随分持ち上げるな!」
それは俺がセイルよりも格好悪いと言ってるのだろうか? というか、俺を酒のつまみにしないで欲しい。
「くずは……」
「くすっ、これくらい良いでしょう?」
微笑みながら口に指を当てる仕草は可愛らしいが、それでもあまり納得は出来ない。
俺が講義するような視線を向けていても、くずはは涼しい顔をして店員や客の野次のような声掛けに愛想良く答えていきながら、テーブルの方についた。
「随分扱いに慣れてるが……毎回こんな感じなのか?」
「まあね。最初は戸惑ったけど、私もすっかり慣れたものよ」
こなれた様子で次々と注文を入れていく彼女の様子を眺めながら、どこか感慨深い気持ちになる。まるで立派に育った娘を見るかのような気分だ。
「……何そんな顔してるの?」
「え、ああ、悪い。どんな顔してた?」
「なんだか、娘を見る父親の目をしてた」
完全に見透かされてるようで、少し居心地が悪くなった……。
「あー、ほら、それより乾杯でもしよう。久しぶりに会ったんだしな」
「あ! ちょっと、誤魔化さないでよ!」
店員が持ってきた木製のビアマグを片手に軽く上に上げると。観念したようにくずはも合わせてくれた。
「「乾杯」」
同時に口づけ、勢いよく飲み干す。少し生ぬるいがちょうど良いくらいで、口に広がる味わいが胸に沁みるようだ。
「っはぁー……うん、美味しい」
「おお、良い飲みっぷりだな」
「そっちこそ。堅物そうであんまり飲み慣れてないと思ってたのに」
はは、エールなんて昔はよく飲んでたものだ。ただ、昔よりもより深く複雑な味わいになってる。個人的にはラガーとか書かれてる物も気になっていたが、文明の発達をこんなところで感じるとは思わなかった。
「私、エールもラガーもおんなじビールだと思ってたんだよね。ま、今は違うけど」
自慢するように胸を張る彼女は、おかわりを店員に頼みながら肉の串焼きを齧っていた。
……一瞬、酒が飲める年だったっけ? とも思っていたが、確かくずはは今年で20。魔人の国で酒が飲めるのは19からだから、飲み慣れていても何も問題はなかった。
「くずはももう酒が飲める年になったんだな」
「……なによ、そんなしみじみと。ちょっとおっさん臭いんだけど」
「仕方ないだろう。俺たちは子供の頃からの仲なんだしな」
それに、一回人生を全うしてるからおっさんよりも年取ってるつもりだ。肉体の年齢に引きずられて精神も幼くはなったが、それでも事実は変わらない。
「……こんな事、あんまり言いたくないけど、昔は良かったかも。セイルがいて、エセルカもいて……アリッカル行ったりとか」
「その頃だと、俺やシエラはいなかったな」
「だけど、あの頃のセイルはまだ子供っぽくて。私を守ってくれるって言っててもちょっと頼りなくて……」
遠い日を懐かしむくずはは、新しく持ってこられた酒をゆっくりと味わうように飲みながら肴を食べている。彼女に感化されるわけではないが、昔を懐かしむ気持ちはよくわかる。それからしばらくの間、肉や魚を食べながら思い出を語り合う。しばらく互いに話し合って……ある程度落ち着いた頃にくずははほろ酔いになっていた。
「あはは、なんだか、随分語っちゃったかも」
「そうだな。おかげで懐かしい思いをさせてもらったよ」
「……ねえグレファ」
再び運ばれてきた酒をちびちびと飲みながら、どこか遠くを見るような目でなにもない場所を見つめていた。その真剣な表情に、俺も先程までの軽口を叩くことをやめて、静かに彼女の話を聞くことにした。
「私ね、ずっと彼の隣に立てる女になりたかったの。今もずっと頑張ってるんだけどさ。でも……」
少し俯いて、その後は俺の顔をまっすぐ見てきた。それはどこか寂しそうな目をしていて、哀しげだった。
「でもさ、やっぱりちょっと辛い、かな。こんなに自分が弱い女だって思わなかった。ああ、何が言いたいんだろう。結構酔ったのかも……」
「別に良いさ。それで?」
「……グレファは戦場に行くんだよね?」
「ああ」
「だったら……セイルに伝えてほしいの。私、ずっと待ってるって」
「会えるとは限らないぞ?」
「……彼はきっと、戦いに行ってるはず。だから……お願い」
「わかった。会ったら必ず伝えよう」
中々言い出せずに詰まっていた事をようやく伝えられたと、くずはは微笑んでいて……俺はようやく彼女がこれを言うために食事に誘ってくれたのだとはっきりわかった。
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