リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第十九節・機械兵と最後の勇者編

第336幕 怯え惑う者への救済

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 最初に介入した戦闘以降、俺は度々激戦区となっていた場所に現れ、降伏勧告を行った後、拒否した兵士たちの命を次々奪っていった。最初の戦いでは完全にやりすぎたが、あの光景を目に焼き付けた兵士の何人か逃げ延びて俺の噂をばらまいているらしく、俺の姿を見た兵士があまりの恐ろしさに腰を抜かしたりしていたな。
 そういう連中の場合は徹底抗戦を唱える者は少なかった。彼らの上官や司令官は保身的だったり、部下に無意味な戦いをさせたくないと思う者も多かったおかげで、無条件降伏を飲んでくれる者もいた。

 ……が、それを知らない者はやはりそう簡単に応じてくれる訳もなく、むしろ魔人の分際で調子に乗っていると思われ、一斉射撃をされたりと本当に色々あった。ヘルガを引きずり出すために必要以上に強引な手を取っていたけど、降伏したヒュルマには決して悪くない待遇で接した事もあって、あまり問題は起きなかった。

 中には村に残してきた妻だとか、子供だとかを心配してる者もいたが、そういう者たちにはいずれ再会出来るようにミルティナ女王になんとか取り計らってもらえるように手紙を出している事を伝えている。中には最初に壊滅させた軍隊の中にいた友人の事で恨みをぶつける者もいたけど……戦争というのはそういうものだ。誰かが誰かを殺し、恨みを買う。そういう連鎖でしか戦い続けるは出来ない。互いに掲げている『正義』なんてものは戦争をする理由でしかない。だから彼らが俺を恨むのであれば、それも仕方ない。

 色んな事がありながら、時には降伏を受け入れた兵士たちを魔人側に引き渡し、時に抵抗する兵士たちを容赦なく始末しながら戦場を駆け抜けていったら……久しぶりにルーシーと顔を合わせることになった。

「グレリア……」
「……ルーシー、久しぶりだな」
「……ええ、お久しぶり、ですわ。随分、暴れてくれたようですわね」

 髪をかきあげて気丈に振る舞っているが、よくよく見てみると身体が震えている。必死にそれを隠そうとしている辺り、彼女は実力の差をきちんと理解しているのだろう。

「話したいことは色々あるが、今は一つだけ聞いておこう。……降伏する気はあるか?」
「な……ないって……言ったら……?」
「……そんな震えた声で言っても説得力無いぞ。お前も俺との力の差ははっきり感じているんだろう? 勇気と蛮勇は違う。無駄死にしたくないなら、兵士共と一緒に降伏しろ」

 俺の一言に、ルーシーの後ろにいた兵士たちに緊張が走った。周囲の兵士たちと視線を交わしているソレには、『助かるかも知れない』という希望が僅かに見えるくらいだった。

「それで……わたくしが降伏……するとでも?」
「しないのなら……覚悟するんだな」
「……っ!?」

 思いっきり殺気を込めてぶつけてやると、ルーシーは明らかに怯えた表情をして……まるで追い詰められて死を受け入れた獲物のようだった。見てて哀れになりそうな程の姿だけれど、一切の同情はしない。あのゴーレムが縦横無尽に暴れ回る未来を作らない為に、やれることはなんでもやってみせると誓ったのだからな。

「どうする? はっきりと決断してもらおうか」
「……ひ、一つだけ、聞かせてもらえませんか?」

 恐々としたルーシーの声音は、こっちに恭順する意思が見え隠れしているようだった。だからこそ、俺は一言頷いて彼女の発言を促した。

「わたくしが降伏すれば……今ここで戦意のない兵士の方々も同様に、受け入れてもらいたいのですわ。彼らにも帰るところがあります。ですから……」
「良いだろう。この後に及んで敵対してきた者は知らないが、こちらの指示に従ってくれるのであれば、危害を加えないと約束しよう」

 その言葉に、ルーシーとその周辺にいた兵士たちから安堵のため息が漏れ出た。しかし――

「ちょっと待てよ! あんた、勇者なんだろ!? なんで戦わないんだよ!!」

 空気の読めない一人の男が銃を突き付けてこちらに迫ってきた。それに追従するように数人の兵士たちも共に。

「……勇者だからこそ、ですわ。わたくしの目的は『戦う』事ではありませんの。ここで彼の攻撃を仕掛ければ、わたくしも含んだ全ての人を……彼は殺すでしょう。はっきり申し上げますと、わたくしでは彼の足元にも遥か遠く及びません。ならば、選ぶ道は――」

 ルーシーが話している最中に乾いた音が何発も響き渡る。それは彼女ではなく、俺に向けられた殺意。
『こいつさえ殺せば』『こいつさえいなくなれば』……とそういう気持ちが嫌というほど伝わってきた。

「ルーシー」
「まっ、待ってくださいまし! 彼らは――」

 ルーシーが話し終えない内に『神』『速』の魔方陣で詰め寄って、『神』『拳』『剣』の魔方陣で発砲してきた者を全て穿ち殺す。

「いいな?」
「……わかりました」

 この日。徹底抗戦の勢いのあった彼らは、ルーシーの戦意が全くなかったことが決定的となり、戦線を継続できないと判断。彼女と共に降伏の意思を示した。

 ――予定外とは言え、ある意味これでヘルガを呼び寄せる駒は揃った。言い方は悪いが、ルーシーの絶望。存分に利用させてもらおう。
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