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第十九節・機械兵と最後の勇者編
第339幕 英雄の高揚
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「ヘルガ……ここまでやるとはな……素直に認めよう。俺はまだ、心のどこかでお前をみくびっていたよ」
「だったら、今はどう?」
俺の呟きを聞いていたのか、背後から出現したであろう彼女の攻撃を視線を向けるのとなく防御の魔方陣で防いで、『大地』『槍』の起動式を発動させて、彼女の足元辺りに土の槍を出現させる。
「必ず倒すべき敵……という点は最初から変わらないな。強いて言えば、強敵に変わったくらいか」
「随分余裕ね。苛立ってくる……!」
「慌てふためくのが正しいか? 悪いがそういうのは間に合っている」
再び銃が――とも思ったが、予想に反してヘルガは近接戦を挑んできた。ソードブレイカーと呼ばれる種類の短剣を片手に、鮮やかな斬撃を繰り出してくる。
右、左、突き、右――のフェイントで左下斜めから。軽く放り投げるように短剣を持つ手を切り替えて……更には『空間』を駆使して自らの手を別の角度から出現させるという荒業まで繰り出してくる。
近距離はこちらの分野と思っていたが……中々どうして思い通りにいかないな。
「この程度ではない……でしょう? もっと本気になりなさい!」
「十分本気で戦っているさ」
時折斬撃が俺の身体を掠めるが、まだ多少時間はある。向こうがこちらのことを見て学習しているように、俺も彼女を見て学ぶ。身体の流れ。筋肉の動き。視線。その挙動の全てを頭の中に叩き込んでいく。
「……っ、何をした?」
ヘルガの動きを読みながら少しずつ攻勢に移っていくと、嫌そうな声音が聞こえてきた。大方、俺の動きが彼女に対応していってるのが腹立たしいのだろう。
「わざわざ敵対している奴に教えるか?」
「……ふざけた口を。いいわ。その挑発、乗ってあげる……!」
このやり取りをきっかけに、ヘルガの攻撃はより苛烈さを増していく。縦横無尽に繰り出される弾幕に、その隙間を縫うように行われる接近戦。離れると同時にミサイルの雨が降り注いできて、爆風が肌を焦がす。
常人には到底さばき切れない攻撃の数々に心が躍る。これほどの技を前にして……これだけの力を見せられて、興奮を覚えない訳がない。この高揚感を邪魔するものは何もない。
「……貴方でもそんな顔、するのね」
「へぇ、どんな顔してる?」
「笑ってる。嫌になるほどに、ね!」
背後からヘルガの銃火器。そして目の前には彼女のナイフが飛んできて……ゴーレムの巨体が頭上から落下してくる。
――ああ、確かに笑っているな。カーターやソフィアの時とは違う。本当に死を予感させる攻撃の嵐を受けてなお、自分の顔がにやついてる事に気付いた。
結局、どう取り繕ったところで楽しんでいる自分がいる。
冷静に……それでも油断しなければ、決して命に届く事はない。俺もこの身体になって成長して……あの時以上の力を身に付けているというわけか。
惜しむべきはここに『グラムレーヴァ』が存在しない事だろう。アレが俺の手元にないからこそ、ここまでの勝負になっていると言えるだろう。
正しい使い方を知っていれば、『グラムレーヴァ』は望んだだけ力を与えてくれる。そういう風に造られた物だからな。あれば心強いが、それを手にすれば『戦い』と呼べる行為はできなくなるだろうな。心の奥底で戦いを望んでいた俺は、無意識にアレを手元に置くことを避けていたのかもしれない。
「考え事? 随分、余裕――!」
「ああ。だったらもっと熱くしてくれよ。お前との戦いに――!!」
一瞬、この戦い以外のことを考えていた俺を諫めるように極太の光線を放ち、自らの危険を顧みず果敢に攻めてくるヘルガ。憎悪で濁り染まった瞳をしている彼女は、とても美しかった。
仕えている主人――皇帝の為だからこそ、ヘルガはここまでの力を発揮しているのだろう。何が彼女をそこまで駆り立てるのか。それは二人の間柄を全く知らない俺には、到底想像することさえ出来ないほどの強い信頼で結ばれているのだろう。愛情、忠誠……そういう関係で繋がった者は、時として凄まじい力を発揮するものだ。親愛・敬愛すべき者の為に怨敵を殲滅せんと立ち向かう彼女の姿は、味方からすればさぞかし美徳に感じるだろう。
「どうした!? この程度か!」
前より少し動きが鈍くなった俺を見透かすように笑う彼女だが、今の俺を笑っているようじゃまだまだだ。
ヘルガの攻撃を掻い潜り、近距離に接近した時――速攻で『神』『拳』『剣』の魔方陣を起動して、彼女の攻撃に合わせたカウンターを仕掛けた。この時を狙うためにわざと隙を見計らっていた、というわけだ。
「……くっ!」
「遅いっ!」
ヘルガは慌てて『空間』に逃げ帰ろうとしていたが、それは間に合わない。俺の右手がヘルガの心臓を確実に――貫きかけたが、とっさに彼女は俺に背を向けてそれを回避した。
「かはっ……」
息を吐き出した彼女の左胸から突き出した俺の手には血が滴っていて、どのみち彼女が致命傷であることを理解した。
「……どのみち、終わりだったな」
「……ふ、ふ、そ……はか、ら……?」
時折咳き込みながら何かを呟いている彼女に気を取られていたが、その殺気に気付いてすぐさまヘルガから腕を抜いて離れた。そこにいたのは……厳しい顔つきをしていたロンギルス皇帝だった。
「だったら、今はどう?」
俺の呟きを聞いていたのか、背後から出現したであろう彼女の攻撃を視線を向けるのとなく防御の魔方陣で防いで、『大地』『槍』の起動式を発動させて、彼女の足元辺りに土の槍を出現させる。
「必ず倒すべき敵……という点は最初から変わらないな。強いて言えば、強敵に変わったくらいか」
「随分余裕ね。苛立ってくる……!」
「慌てふためくのが正しいか? 悪いがそういうのは間に合っている」
再び銃が――とも思ったが、予想に反してヘルガは近接戦を挑んできた。ソードブレイカーと呼ばれる種類の短剣を片手に、鮮やかな斬撃を繰り出してくる。
右、左、突き、右――のフェイントで左下斜めから。軽く放り投げるように短剣を持つ手を切り替えて……更には『空間』を駆使して自らの手を別の角度から出現させるという荒業まで繰り出してくる。
近距離はこちらの分野と思っていたが……中々どうして思い通りにいかないな。
「この程度ではない……でしょう? もっと本気になりなさい!」
「十分本気で戦っているさ」
時折斬撃が俺の身体を掠めるが、まだ多少時間はある。向こうがこちらのことを見て学習しているように、俺も彼女を見て学ぶ。身体の流れ。筋肉の動き。視線。その挙動の全てを頭の中に叩き込んでいく。
「……っ、何をした?」
ヘルガの動きを読みながら少しずつ攻勢に移っていくと、嫌そうな声音が聞こえてきた。大方、俺の動きが彼女に対応していってるのが腹立たしいのだろう。
「わざわざ敵対している奴に教えるか?」
「……ふざけた口を。いいわ。その挑発、乗ってあげる……!」
このやり取りをきっかけに、ヘルガの攻撃はより苛烈さを増していく。縦横無尽に繰り出される弾幕に、その隙間を縫うように行われる接近戦。離れると同時にミサイルの雨が降り注いできて、爆風が肌を焦がす。
常人には到底さばき切れない攻撃の数々に心が躍る。これほどの技を前にして……これだけの力を見せられて、興奮を覚えない訳がない。この高揚感を邪魔するものは何もない。
「……貴方でもそんな顔、するのね」
「へぇ、どんな顔してる?」
「笑ってる。嫌になるほどに、ね!」
背後からヘルガの銃火器。そして目の前には彼女のナイフが飛んできて……ゴーレムの巨体が頭上から落下してくる。
――ああ、確かに笑っているな。カーターやソフィアの時とは違う。本当に死を予感させる攻撃の嵐を受けてなお、自分の顔がにやついてる事に気付いた。
結局、どう取り繕ったところで楽しんでいる自分がいる。
冷静に……それでも油断しなければ、決して命に届く事はない。俺もこの身体になって成長して……あの時以上の力を身に付けているというわけか。
惜しむべきはここに『グラムレーヴァ』が存在しない事だろう。アレが俺の手元にないからこそ、ここまでの勝負になっていると言えるだろう。
正しい使い方を知っていれば、『グラムレーヴァ』は望んだだけ力を与えてくれる。そういう風に造られた物だからな。あれば心強いが、それを手にすれば『戦い』と呼べる行為はできなくなるだろうな。心の奥底で戦いを望んでいた俺は、無意識にアレを手元に置くことを避けていたのかもしれない。
「考え事? 随分、余裕――!」
「ああ。だったらもっと熱くしてくれよ。お前との戦いに――!!」
一瞬、この戦い以外のことを考えていた俺を諫めるように極太の光線を放ち、自らの危険を顧みず果敢に攻めてくるヘルガ。憎悪で濁り染まった瞳をしている彼女は、とても美しかった。
仕えている主人――皇帝の為だからこそ、ヘルガはここまでの力を発揮しているのだろう。何が彼女をそこまで駆り立てるのか。それは二人の間柄を全く知らない俺には、到底想像することさえ出来ないほどの強い信頼で結ばれているのだろう。愛情、忠誠……そういう関係で繋がった者は、時として凄まじい力を発揮するものだ。親愛・敬愛すべき者の為に怨敵を殲滅せんと立ち向かう彼女の姿は、味方からすればさぞかし美徳に感じるだろう。
「どうした!? この程度か!」
前より少し動きが鈍くなった俺を見透かすように笑う彼女だが、今の俺を笑っているようじゃまだまだだ。
ヘルガの攻撃を掻い潜り、近距離に接近した時――速攻で『神』『拳』『剣』の魔方陣を起動して、彼女の攻撃に合わせたカウンターを仕掛けた。この時を狙うためにわざと隙を見計らっていた、というわけだ。
「……くっ!」
「遅いっ!」
ヘルガは慌てて『空間』に逃げ帰ろうとしていたが、それは間に合わない。俺の右手がヘルガの心臓を確実に――貫きかけたが、とっさに彼女は俺に背を向けてそれを回避した。
「かはっ……」
息を吐き出した彼女の左胸から突き出した俺の手には血が滴っていて、どのみち彼女が致命傷であることを理解した。
「……どのみち、終わりだったな」
「……ふ、ふ、そ……はか、ら……?」
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