リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

文字の大きさ
358 / 415
第十九節・機械兵と最後の勇者編

第339幕 英雄の高揚

しおりを挟む
「ヘルガ……ここまでやるとはな……素直に認めよう。俺はまだ、心のどこかでお前をみくびっていたよ」
「だったら、今はどう?」

 俺の呟きを聞いていたのか、背後から出現したであろう彼女の攻撃を視線を向けるのとなく防御の魔方陣で防いで、『大地』『槍』の起動式マジックコードを発動させて、彼女の足元辺りに土の槍を出現させる。

「必ず倒すべき敵……という点は最初から変わらないな。強いて言えば、強敵に変わったくらいか」
「随分余裕ね。苛立ってくる……!」
「慌てふためくのが正しいか? 悪いがそういうのは間に合っている」

 再び銃が――とも思ったが、予想に反してヘルガは近接戦を挑んできた。ソードブレイカーと呼ばれる種類の短剣を片手に、鮮やかな斬撃を繰り出してくる。

 右、左、突き、右――のフェイントで左下斜めから。軽く放り投げるように短剣を持つ手を切り替えて……更には『空間』を駆使して自らの手を別の角度から出現させるという荒業まで繰り出してくる。

 近距離はこちらの分野と思っていたが……中々どうして思い通りにいかないな。

「この程度ではない……でしょう? もっと本気になりなさい!」
「十分本気で戦っているさ」

 時折斬撃が俺の身体を掠めるが、まだ多少時間はある。向こうがこちらのことを見て学習しているように、俺も彼女を見て学ぶ。身体の流れ。筋肉の動き。視線。その挙動の全てを頭の中に叩き込んでいく。

「……っ、何をした?」

 ヘルガの動きを読みながら少しずつ攻勢に移っていくと、嫌そうな声音が聞こえてきた。大方、俺の動きが彼女に対応していってるのが腹立たしいのだろう。

「わざわざ敵対している奴に教えるか?」
「……ふざけた口を。いいわ。その挑発、乗ってあげる……!」

 このやり取りをきっかけに、ヘルガの攻撃はより苛烈さを増していく。縦横無尽に繰り出される弾幕に、その隙間を縫うように行われる接近戦。離れると同時にミサイルの雨が降り注いできて、爆風が肌を焦がす。

 常人には到底さばき切れない攻撃の数々に心が躍る。これほどの技を前にして……これだけの力を見せられて、興奮を覚えない訳がない。この高揚感を邪魔するものは何もない。

「……貴方でもそんな顔、するのね」
「へぇ、どんな顔してる?」
「笑ってる。嫌になるほどに、ね!」

 背後からヘルガの銃火器。そして目の前には彼女のナイフが飛んできて……ゴーレムの巨体が頭上から落下してくる。

 ――ああ、確かに笑っているな。カーターやソフィアの時とは違う。本当に死を予感させる攻撃の嵐を受けてなお、自分の顔がにやついてる事に気付いた。
 結局、どう取り繕ったところで楽しんでいる自分がいる。

 冷静に……それでも油断しなければ、決して命に届く事はない。俺もこの身体になって成長して……あの時以上の力を身に付けているというわけか。
 惜しむべきはここに『グラムレーヴァ』が存在しない事だろう。アレが俺の手元にないからこそ、ここまでの勝負になっていると言えるだろう。

 正しい使い方を知っていれば、『グラムレーヴァ』は望んだだけ力を与えてくれる。そういう風に造られた物だからな。あれば心強いが、それを手にすれば『戦い』と呼べる行為はできなくなるだろうな。心の奥底で戦いを望んでいた俺は、無意識にアレを手元に置くことを避けていたのかもしれない。

「考え事? 随分、余裕――!」
「ああ。だったらもっと熱くしてくれよ。お前との戦いに――!!」

 一瞬、この戦い以外のことを考えていた俺を諫めるように極太の光線を放ち、自らの危険を顧みず果敢に攻めてくるヘルガ。憎悪で濁り染まった瞳をしている彼女は、とても美しかった。

 仕えている主人――皇帝の為だからこそ、ヘルガはここまでの力を発揮しているのだろう。何が彼女をそこまで駆り立てるのか。それは二人の間柄を全く知らない俺には、到底想像することさえ出来ないほどの強い信頼で結ばれているのだろう。愛情、忠誠……そういう関係で繋がった者は、時として凄まじい力を発揮するものだ。親愛・敬愛すべき者の為に怨敵を殲滅せんと立ち向かう彼女の姿は、味方からすればさぞかし美徳に感じるだろう。

「どうした!? この程度か!」

 前より少し動きが鈍くなった俺を見透かすように笑う彼女だが、今の俺を笑っているようじゃまだまだだ。
 ヘルガの攻撃を掻い潜り、近距離に接近した時――速攻で『神』『拳』『剣』の魔方陣を起動して、彼女の攻撃に合わせたカウンターを仕掛けた。この時を狙うためにわざと隙を見計らっていた、というわけだ。

「……くっ!」
「遅いっ!」

 ヘルガは慌てて『空間』に逃げ帰ろうとしていたが、それは間に合わない。俺の右手がヘルガの心臓を確実に――貫きかけたが、とっさに彼女は俺に背を向けてそれを回避した。

「かはっ……」

 息を吐き出した彼女の左胸から突き出した俺の手には血が滴っていて、どのみち彼女が致命傷であることを理解した。

「……どのみち、終わりだったな」
「……ふ、ふ、そ……はか、ら……?」

 時折咳き込みながら何かを呟いている彼女に気を取られていたが、その殺気に気付いてすぐさまヘルガから腕を抜いて離れた。そこにいたのは……厳しい顔つきをしていたロンギルス皇帝だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...