リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

文字の大きさ
359 / 415
第十九節・機械兵と最後の勇者編

第340幕 場違いな決戦

しおりを挟む
「お前は……ロンギルス……皇帝」
「久しいな。グレリア。勇者会合以来か。お互い、随分と遠くまで来たものだな」

 まるで旧来の友との会合を懐かしむような口調でこちらに……いや、ヘルガに近づいていく。そんな事より、何故ここに皇帝がいる……? あまりのついていけない事態にルーシーもいつの間にかこちらに近づいてきていた。

「なんで皇帝が……?」
「……わからない。だが――」

 この状況。ヘルガが死にかけている今、この時に皇帝が現れたという事には意味がある。だが……それを成すのを黙って見ているほど、優しい男ではない。
 すぐさま『神』『雷』の魔方陣を発動させ、ロンギルス皇帝に向かってそれを解き放つ。

 神雷が皇帝に向かって襲いかかったが……それを片手で握りつぶす。魔方陣を使っているように見えたが、あまりの呆気なさに驚いてしまった。

「な……!?」
「生憎、貴様と戯れている時間はない」
「陛……下……」

 辛うじて息のあるヘルガの声に振り向いた皇帝の顔は、どこか慈しみを帯びた表情をして彼女を見ていた。攻撃してきた俺に対して最大限の警戒をしながら、ロンギルス皇帝は静かに膝をついて彼女を抱きかかえた。

「私のЛюбимая дочь。また手酷くやられたな」
「ц……ца……рь。わた――」
「よい。何も言わずとも伝わってくる。さあ、この力を……お前に」

 ロンギルス皇帝は魔方陣を構築していく。その起動式は……これは――『生命』『治癒』の二つ……!?
 なんでこの男が……? そんな疑問を感じながら、嘘であって欲しいと思う気持ちが溢れていた。あの『生命』というのは間違いなく原初の起動式アカシックコード。セイルが扱っていた文字だ。

 同じ原初の起動式アカシックコードを使える者なんてまずいない。少なくとも俺は会ったことはない。転生前も含めて、だ。だからこそ、こんな事は有り得ない。だが、ヘルガの傷がみるみる内に癒えていくのを見ると、それが真実だと無理やり理解させられてしまう。

 頭の中を整理している間に、致命傷だったヘルガの身体は綺麗に治っていて、傷跡一つ残っていない。

「陛下……ごめんなさい」
「謝らずとも良い。お前は本当によくやった。おかげで私も……欲しい物が手に入った。後は……」

 先程まであんなに敵意をむき出しにしていたヘルガは、すっかり戦意を失って大人しくなっていた。そんな彼女をゆっくり地面に立たせるように降ろしたロンギルス皇帝は、余裕すら感じる程の動きで俺に向き合ってきた。

「待たせたな」
「……聞きたいことは多いが、ロンギルス皇帝……その原初の起動式アカシックコードを何故持っている?」
「……ふふっ、そういえば貴様はセイルと友であったな。ならばその問いも必然か」
「御託はいい。答えてもらおうか」

 色々と言葉を並べて遠回しにしようとしているロンギルス皇帝に苛立つように言葉を投げかけると、愉しそうに含むような笑い声を上げられた。

「安心すると良い。あの男は生きている。軟禁している……と言った方が正しいだろうな」

 皇帝のその言葉に少し安堵した。ここで嘘を言う事に何かの意味があるとは思えない。少なくともセイルの無事が確認出来たのは確かな事だった。だが、それは俺の問いへの明確な答えではない。

「はははっ、そう殺気を込めて睨むな。小さく見えるぞ」
「皇帝……!」
「何でも誰かが教えてくれると思っているのであれば、それは間違いだと訂正しておこう。どのような時であれ、私がそれを教える事はない。知りたくば……自らの身を持って味わうのだな」

 ロンギルス皇帝は腰の黒塗りの鞘から剣を引き抜く。剣身すら黒く塗られたそれは引き寄せられそうなほどの妖しさを放っていた。 

 相対するだけでびしびしと威圧されているのを感じる。少しでも気を抜けば気圧されてしまう……そんな確信すら抱くほどの強者の波動。だが、俺も負けてはいられない。

 グレリア・ファルトとして――最古の英雄として、為さなければならない事がある。その為には……一歩も引けはしない!

「ほう、なんとも心地よい。やはり戦場の空気と言うものは心地良いな。グレリアよ。そうであろう? ルーシーよ」
「こ、皇帝陛下……あの」

 震えて俺とロンギルス皇帝を交互に見ているルーシーは、完全にこの場の空気に飲まれているようだった。

「よい。貴様の愚行、私が許そう。元来、勇者と呼ばれる者は皆そうであったからな。今更貴様一人の行動など、気に病むほどでもない。目の前の男の足を止める役目は果たしたのだからな」

 その言葉に、ルーシーは絶句しているようだった。勇者だなんだともてはやされ、責任を押し付けられた彼女に待っていたのは……使い捨ての道具のような扱いだったのだ。そうなるのも仕方ないだろう。
 よろよろとその場から立ち去るルーシーを横目に、改めて皇帝を正面から見据える。彼女に言葉を掛けてやりたいのは山々だが、今は状況が悪い。

 セイルをも倒したこの男の力を侮ってはいけない。本能でそれを察したからだ。ゆっくりとした動作で構えた後……ロンギルス皇帝は全力で俺に詰め寄って来た。
 その禍々しい刃を振り下ろし、全てを奪う為に―― 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...