リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

文字の大きさ
376 / 415
第二十一節・凍てつく大地での戦い編

第357幕 長引く戦争への焦り

しおりを挟む
 最初の一戦以降。俺たちは長い戦いを続けざるを得なかった。『身体強化』で駆け抜けるにはゴーレムが邪魔だし、そのゴーレムは俺やセイルが相手をしなくては負担が大きい。その事が一ヶ月もの長い戦争の原因となっていた。それでもまだ持ち堪えている方だ。

「……こんな時に『生命』の起動式マジックコードがあれば楽なんだけどな」

 荒い息を整えながら深いため息を吐くその姿は、やつれた中年の男を彷彿とさせる。
 ……しかしそれも無理はない。なにせゴーレムが出てきたら俺たちが戦う以外選択肢が存在しない。他の者が戦う事になれば、すぐさま捻り潰されてしまうだろう。だからこそ、必然的に俺たちが相手をしなければならない……のだが、奴らの数は非常に多い。一体見つけたら百体はいるんじゃないかと思うほどだ。

 様々な感情と決意をその身に秘めて戦いに望んだのは良いのだが、現実というものはこんなものなのだろう。

「『身体強化』を使って一気に駆け抜けることが出来たら、今頃は……」
「使っても今頃は制圧どころか、皇帝やヘルガの対峙しながらゴーレムと戦うことになるだろう」

 そうなったら例え勝ったとしても、消耗したところを叩かれるのが目に見えている。俺はまだしも、セイルやスパルナがそれに耐えきれるかどうか……。

「少しずつ、堅実に向かうのが一番なんだね」
「そういうことだ」
「わかってはいるんだけどな……。こうもゴーレムとの連戦だと精神が参ってくるってもんだ」

 一刻も早くこの戦いを終わらせたい。平和な世界にしたい。そういう思いとは裏腹に、現実は少しずつしか進行していかない。そんなもどかしさがセイルの顔に表れていた。

「セイル。焦る気持ちはわかるが、戦いはまだまだ続く。むしろこれからどんどん激化していくだろう」

 今はまだ、シアロルとの国境付近での争いに済んでいるが、これが少しずつ城に近づくと……今まで以上の戦いを強いられる事になる。

「わかったさ。今回は少数精鋭で潜入してるわけじゃない。いずれシアロルやイギランスの主力ともぶつかる事になるだろうし、そうなったら激戦になるだろうってさ」

 神妙な面持ちのセイルも今後の展開について悩んでいるようだった。シアロルに辿り着けば今は姿を見せない戦闘機や攻撃機が襲いかかってくる。空からの攻撃はスパルナが応戦することになっている。俺たちでは出来ない攻撃も、彼なら問題なく成し遂げてくれるだろう。もちろんその分地上戦力は俺たちが叩かなければいけなくなるけどな。

「……とうとうシアロルの領土、か。なんだか随分遠くまで来たような気がするな」
「だって実際遠いし」
「いや、そういう意味じゃなくて」

 スパルナが笑顔で言った言葉に、セイルはがっくりと肩を落としてしまった。その様子に、俺も思わず苦笑いしてしまう。
 セイルの言いたい事は確かにわかる。思えば随分長い道のりだった……と感慨に耽りたいのだろう。それに……彼は何度かシアロルに訪れたんだったな。俺はこの国に来るのは初めてのせいか、そういう感情はどうにも薄い。

「思えばここでもいろんな事があったんだよね。嫌な思い出しかないような気がするけど」

 うえーっとか言いそうな顔で嫌そうなスパルナはセイルとはまるで正反対だ。こういうところは兄弟分といっても違うな。

「シアロル……一年中雪と寒気に覆われている……というのは聞いたが……」
「降ってる時と降ってない時はあるけど、基本的に寒い国だな。防寒対策は必要だと思う」
「あの時も寒くて辛かったもんね。シアロルで買った服とかはすごく暖かくて嬉しかったなー」

 二人がそれぞれの意見を言ってくれているが……恐らく、魔人の国ではそういう対策はしていないだろう。寒い時期もあるが、なんとかなる程度だからなぁ。

「まずは防寒対策から、か。シアロルの本隊とぶつかり合うのはまだ先だろう。それに……」

 ここのところ連戦続きだった。俺たちはともかく、兵士たちはかなり疲労しているはずだ。いくら士気が高くても、このままシアロルの首都を攻めるのは得策とは言えないだろう。

「お? 兄貴、どこに行くんだ?」
「ちょっと指揮官と話にな。ここで一度休んだほうがいい」
「でも、せっかくここまで来たんだ。今の勢いがある内に進めれば……」
「兵士たちの顔を見なかったか? 疲労が溜まっていては、出せる力の半分も出ないだろう。警戒しながら、最低でも兵士全員に防寒具が行き渡ってから……だな」

 それに自分たちの事を考えると、そう悪いことでもない。疲れを癒やし、今後の戦いに向けて俺たちも少し休んだほうが良い。

「そう、だな。俺たちが疲れてるくらいだし、兵士はそれ以上、ってわけか」
「そういうことだ。町や村のように完全に自由……というわけでもないだろうが、ないよりはマシだろう」

 セイルも納得がいったのか、しみじみと思いを馳せているような顔をしていた。俺はそれに背を向けて、指揮官のところに話に行く。
 ……ほどなくして、シアロル突入が万全になるまでの間、この国境で睨み足をしながら様子を見ることとなった。その時の指揮官のホッとした様子が、やけに頭の中に残ってしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...