リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第二十二節・終曲の激戦 セイル編

第375幕 覚悟足りぬ者の末路

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 スパルナの側に寄って行く。適当に魔方陣を展開して、ロンギルス皇帝とヘルガの目を眩ませるように煙幕を張った。

「スパルナ……スパルナ……!」
「お、にい……ちゃん……」
「喋るな! 少しでも体力を――!」

 自分が言っている事が嘘くさく聞こえる。斬られた上、魔方陣を使う前に腹を貫かれた後がある。今、俺には『生命』の魔方陣はない。スパルナの命が少しずつ失われていく様を、ただ見ているだけしか出来なかった。

「ぼ、ごほっ、ぼくね……お兄ちゃんに、出会えて、よか、ったぁ」
「喋るな……喋らないでくれぇ……」

 両手で抱きかかえて、涙が溢れそうになるのを堪えながら頭を振る事しか出来ない自分が……こんなにも情けない。覚悟は出来ていたはずだ。だけど……俺が出来ていたのは死ぬかもしれないという事。生き残るという事だけだった。スパルナを失う覚悟。それが出来て……なかった。

「ぼく。こほっ、あの時、ね。うれし、こほっ……かった。い……っぱい、いろい、ろ、くれて……」
「……スパルナ」
「おにい、ちゃん。生きて。ぼく……の、ぶん……まで……」

 それだけ言って、スパルナ、は……。

「スパルナァァァァッッ!!」

 とめどなく溢れる叫びと悲しみ。怒り。苦しみ……色んな感情が合わさって……嗚咽を上げるしか出来なかった。

「最期の別れは済んだか?」
「……ロンギルスゥゥゥゥ!」
「はははっ、怖いな。だが、わかっていたことだろう? 別れを惜しむ時間を与えてやっただけ、ありがたいと思ってもらいたいものだ」
「スパルナは……お前たちのくだらない研究の犠牲者だったんだ……! それを……お前は!」
「だからどうした? 私にとってはどうでもいいことだ」

 見下ろしながら、はっきりと言い切ったロンギルス皇て――いや、ロンギルスに……どうしようもない怒りを覚えた。スパルナを床に降ろして、ゆっくりと立ち上がる。この男は……このまま野放しにしてはいけない。今、ここで、決着をつけなくてはならない。

「ほう、すっかり戦意も失うかと思ったが……中々どうして。面白いことになってきたではないか」
「царь。これ以上遊んでる時間は……」
「遊びだって……?」

 自分の身体が緩やかに動いて……ヘルガを睨みつける。彼女の無表情さに、余計に怒りが増幅していく。

「お前たちには遊びでも、俺やスパルナにとっては真剣だったんだ! それを……!」
「ならば誇れとでも言えば良かったか? 自分たちは平然と人を殺しておいて、仲間が死ねばそうやって怒る。度し難いものだよ。都合が良いと思わないのか?」
「……仲間の事を大切にして、何が悪い。友を、家族を! 殺された事に憤る事の何が悪い!」
「悪い、とは言わんさ。だが、貴様はそれをぶつける資格があるのか? お前たちが殺してきた者には友もいただろう。家族もいただろう。ふ、ふふふ、いいや、そうやって自分の事を差し置いて、怒りに身を任せるのは愚か者の特権だ」

 両手を広げ、謳うようにゆっくりと歩いているロンギルスの言っている事くらい、わかってるさ。だけど……それでも! 制御できない感情がある。それが、また人だ!

「皇帝……! お前だけは……お前だけは必ず倒す!」
「やってみるがいい。貴様程度にやられる私ではないわ!」

 ヘルガを従えたロンギルスは豪胆に笑ってみせる。彼にはわかってるんだろうな。俺じゃ、二人を相手取って戦う事なんて出来ない事に。でも……それでも、男には決して退けない時がある! それが今、この時! 家族を殺されて……黙ってみてなんていられるか!

「私がいる事を……忘れるな!」
「邪魔だぁぁっ! どけぇぇぇっ!!」

 ヘルガが銃を撃ってくるのを避けながら、グラムレーヴァの刃を煌めかせる。その間にロンギルスの魔方陣が展開されていって……それを迎撃するように俺も魔方陣を展開する。剣や動きはまだなんとかなる。身体を強化して、動きを洗練すれば戦いになる。だけど、魔力だけはどうすることも出来ない。『奪』や『生命』といった原初の起動式オリジンコードの類を相手にするには……。

「どうした? 威勢が良いのは最初だけか?」
「まだまだぁぁっ!」

 ロンギルスの『奪』は容赦なく俺の魔力を奪っていく。そして、ヘルガが『空間』で銃を次々と召喚して、俺を追い詰めていく。
 くそっ……このままじゃ、いずれ……!

 二人の連携に少しずつ追い込まれていく俺は起死回生の捨て身を狙う覚悟をしたその瞬間、爆音と言ってい程の音がして思わずそっちの方を見てしまった。扉があった辺りが吹き飛ばされていて……そこには誰か――男のシルエットみたいなものが立っていた。

「あれは……」
「……ふむ、時間を掛けすぎたようだな」
「なるほど。エンデハルト王の言ったとおりだ」

 そこには、俺も良く知っている男――グレリアの兄貴が立っていた。

「あ、兄貴……」
「セイル……待たせたな」

 もう少し早く来てくれたら――いや、そういう考えはよそう。兄貴が来てくれたおかげで希望が見いだせた。一対一なら……絶対に負けはしない……!
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