リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

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第二十三節・最終決戦

第378幕 グレリアの苦手なもの

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 ルッセルと別れてから半日が経ち、俺は最初にここにやってきた場所に戻ってきた。上手く地図が手に入り、大体どこにどんな施設があるか確認したし、後は合流するだけなのだが……。

「グレリア様!」

 大声で手を振りながらこっちに走ってくるルッセルの姿を見て、思わずうんざりしてしまった。

「ルッセル。俺たちは今ここに潜入しているってことを理解できているか?」
「? もちろんですよ。ですから少し小声で抑えているじゃありませんか」

 あれで小声なのか……。この男の尊敬するような視線はいいのだけれど、それ以上に周りの事を考えていないのだから問題だ。

「ルッセル。ここでは『様』付けは必要ない。俺もお前も、ここでは似たようなものだ。それを――」
「何を言ってるんですか!」

 ぐっと握り拳を作って力強く訴えかけるような視線を見たせいか、すこし身体を後ろに下げてしまった。

「僕とグレリア様とじゃ天と地! 天地程の差があります! それを呼び捨てだなんて……おこがましい……!」
「わかった。だが、人前ではやめてくれ。俺たちは重要な作戦でここにいるんだ。失敗は……例え俺でも許されない」
「……わかりました。グレリアさ――の迷惑にはなりたくありませんから」

 そうは言うものの、かなり不満そうな顔をしている。よほど俺の事を『様』付けで呼びたいのか……俺にはその気持ちは全く理解できないけどな。

「それで、そっちはどうだった?」
「はい。聞き込み――は流石に怪しまれるかな、と思いましたので、とりあえず適当な場所を歩き回ってきました!」
「そうか」

 安易な聞き込みに走らなくて良かった。本当に……安心した。少なくとも、そこらへんにまでは頭が回るようだ。

「それで?」
「一般人が生活している一般区と、工房のようなものが多数建っている工場区。それと、身なりのいいヒュルマが暮らしている上流区の三つがありますね。特に最後の地区は警備が厳重で、なにか変な小型のゴーレムが空を飛んでいました」

 ルッセルの説明は地図や俺が手に入れた情報と概ね間違いはない。小型のゴーレムというのは……偵察や監視を兼ねているのだろう。見つかったら攻撃するか大きな音を出して周囲に知らせてくるかのどちらか……どっちにしても、見つからずにいかなければいけないことに変わりはない。

 そのまま怪しまれないようにどこか適当な場所にゆっくりと歩きだすと、ルッセルもそれについてきてくれる。

「ルッセルはどこを目指した方が良いと思う?」
「それは……やっぱり上流区なのではないかと。ロンギルス皇帝のように誰かの上に立つ者ならば、やはりしっかりと鎮座していた方が民たちも安心するかと思います」

 普通に考えればそうなるだろうな。他の王だったなら俺もそう思っただろう。だが、相手はロンギルス皇帝とヘルガだ。一般的に身分の高い者がいそうなところには逆にいないと考えた方が良い。

「普通はそうだろうな。だが……俺は一般区に彼らはいると思うぞ」
「……なぜか聞いても良いですか?」
「ロンギルス皇帝という男は戦いを好む。自ら前線に立つ事をも厭わない程にな。だとすれば、他の国の王のように下々の戦いを優雅に見下ろすなどということはしないだろう。それを踏まえると……彼らがいそうなのは一般区にある軍施設。もしくは工場区との境目にある基地のどちらかだろう」

 戦いに関係ある施設のどれかにいることはまず間違い……はずだ。彼らがこの思考の裏を突かなければ、だけどな。

「す……す……素晴らしい!」

 俺の言葉を噛み締めるような表情を浮かべ、突然大きな声を上げ始めた。

「ルッセル、少し声を抑えろ」
「あ、はい! すみません……」

『すみません』の辺りから小声になったルッセルは、何かを堪えるようにぷるぷるとその身を震わせていた。
 ほんの僅かな間だけども、この男の俺に対する尊敬? の念はセイル以上のような気がする。魔人たちが『グレリア』を崇拝していた時のような……そんな感じの視線を良く感じるからな。

「ですが、その発想はありませんでした。なるほど……確かにロンギルス皇帝は凡百の王とは一線を画する存在。ともすれば、上流区にいると考えるのは愚策だったでしょう」

 両手を握り締めて『素晴らしい』と呟いたルッセルはその喜び……みたいなものをどう表現しようかと悩んでいるいるようだった。これほどの敬愛、というか……崇拝に近い感情を向けられるのはどうにも、な。

「納得したなら、今日、目星を付けて乗り込むぞ。準備は怠るなよ」
「はい。僕はグレリア様と一緒なら、いつでも準備はばっちりです!」

 俺は別に清いわけでも絶対的に正しいってわけでもない。本来なら神のように扱われるほどの人物でもないし、どちらかというと汚くて血生臭い男という表現がぴったりくる……はずなんだがな。
 向けられてるのが敵意とかの類ではなく、純粋な好意だけにあまり無碍にすることもできない。

「……どうにも、苦手な男だ」
「どうしました?」
「いや、何でもない。行こう」

 思わず心の中の呟きが漏れ出てしまったが、幸いルッセルには聞こえていなかったようだ。
 ……苦手、と言っても俺の事を好いてくれているから邪険に出来ない。そんな悶々とした想いを胸に秘めながら、歩き続けるのだった。
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