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第二十三節・最終決戦
第390幕 襲う虚無感
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俺が次に目を覚ました時、よくわからない部屋の中だった。
「こ……こは……」
頭の中が重い。まるで重りがのっかってるようで、上手く考えがまとまらない。こういう時は……一つずつ正確に思い出すのが一番だろう。
確か……スパルナを失って――
「――そうだ。スパルナは、死んだんだ……」
頭の中に色んな事が噴き出すように思い出される。ヘルガにぼろぼろにされたスパルナが、最後に俺の盾になってその命を散らした。そして、その後すぐに兄貴が乱入して……最後に俺は、ロンギルスを討ちとったんだ。
「……スパルナ」
思い出すのはホットケーキを初めて食べた時の笑顔とか、初めてコートを買った時の笑顔とか……俺が落ち込みそうになったり、弱気になりそうになったときに見せてくれた笑顔。
「……って、笑ってる顔ばっかりじゃないか」
手の甲で目元を隠すようにすると、少し視界が暗くなって……思い出がより鮮明に浮かび上がってくる。スパルナは……なんだかんだ言って大体笑顔でいてくれた。そりゃ戦闘中とか……真剣だったりとかもしたけれど、今振り返ってもあの子との思い出の大体は、嬉しそうに笑う姿だったんだ。
「……俺、スパルナに救われてた。それなのに……俺は……!」
ロンギルスを倒して、ヘルガも兄貴に倒された。シアロルはもう終わりだ。その安心感からか、俺の目からは涙が溢れ出ていた。絶えず止まる事のない俺は、両手で目で覆って、抑えようとしても止まらない。
もう、終わった。そう……全てが終わったんだ。本当なら喜ばないといけないはずなんだ。
シアロルの頂点がいなくなったことで、兵士たちの統率は乱れ、士気だってもの凄く下がっているはずだ。制圧までには時間が掛かるかも知れないけれど、それでも兄貴がいるグランセスト側が勝利するのは時間の問題だ。その後もかなり揉める事にはなるだろうけれど、平和への道は開かれるはずだ。
それなのに……俺の心の中には何も残ってなかった。怒りも喜びも湧き上がってこなくて、悲しみも涙が流れる度に抜け落ちていくようだ。守ると決めたスパルナも、俺のせいで失ってしまった。
あの時は完全に怒りと勢いだけでなんとか戦うことが出来た。確かに仇は討った。でも、これが残された者の感情ってやつなのか……?
ただただ、虚しいだけ。
夢だったらいい。嘘だったらいい。そんな虚構がよぎっては消えるだけだった。
――
どれだけの時間泣いていたかわからないけれど……誰かが部屋に入ってくることもなくて、枯れ果てるまで涙を流したような気がする。
「……もう」
もう、このまま消えてしまいたい。いなくなってしまいたい。死んでしまえば……。
――お兄ちゃん、ぼくの分まで生きて。
スパルナの言葉が頭の中に蘇ってくる。あの時、息絶える寸前のあの子はそう言っていた。こんな情けない俺の事を、最後まで心配してくれていた。
「『生きて』……か……」
随分重い言葉を貰ってしまった。そうだ……。俺はスパルナの為にも生きなきゃいけない。そう思った瞬間、身体中の疲れと空腹を覚えてきた。
「何か食べないと……」
よろよろと起き上がって部屋から出る。どうやら、俺が寝てた部屋は二階にあるみたいで、階段から降りた俺を見つけた男が声を掛けてきた。
「セイル様! お気づきになられたのですか!?」
「……様?」
今までそういう風に呼ばれた事がなかったから、妙に恥ずかしいと言うか……。
「どうされました?」
「いや、なんでもない。それより、何か食べる物ないかな?」
「少し待ってください。すぐに用意致しますので」
頭を下げた男は、どこかに行ってしまった。俺に好意を持ってるみたいだったから思わず言ってしまったけど……結局、あの男は誰だったんだろう?
「まあ、いいか」
今はそんな事より、とりあえず何処かに座ろう。幸い、少し歩いた先に食堂みたいな場所があるし、そっちに行くか。
情けないけど、いつも以上にゆっくり歩きながらそこに向かう。
「あ、あれ……」
食堂に入ったら、数人の鎧を脱いで足元に置いてる兵士だろう魔人たちが食事をしていた。そこの一人が俺のことに気付いて、目を見開いて中腰になっていた。それに気づいた他の兵士も、俺の方に視線を向けてきた。
――一瞬の静寂が訪れて……次に響いたのは歓声だった。
「おいお前ら! 我らが英雄が目覚めたぞ!」
「セイル様! ありがとうございます!」
「俺たちの英雄だ!」
「え、えいゆー……?」
何を言ってるんだ……? 困惑しながら、喜んでいる兵士たちに視線を向けるけど、彼らの態度は全く変わらなかった。
「セイル!」
俺の疑問に答えてくれる者がいなくて困っていると、後ろの方から聞き知った声が聞こえてきた。後ろではパンや薄く切った肉と玉子とか……色々入った食器をトレーに載せている兄貴の姿があった。今まであまり見た事がない優しく微笑んでくれている兄貴の顔は……不思議と心が落ち着いていくような……ようやく帰ってきた、という実感を沸かせてくれたのだった。
「こ……こは……」
頭の中が重い。まるで重りがのっかってるようで、上手く考えがまとまらない。こういう時は……一つずつ正確に思い出すのが一番だろう。
確か……スパルナを失って――
「――そうだ。スパルナは、死んだんだ……」
頭の中に色んな事が噴き出すように思い出される。ヘルガにぼろぼろにされたスパルナが、最後に俺の盾になってその命を散らした。そして、その後すぐに兄貴が乱入して……最後に俺は、ロンギルスを討ちとったんだ。
「……スパルナ」
思い出すのはホットケーキを初めて食べた時の笑顔とか、初めてコートを買った時の笑顔とか……俺が落ち込みそうになったり、弱気になりそうになったときに見せてくれた笑顔。
「……って、笑ってる顔ばっかりじゃないか」
手の甲で目元を隠すようにすると、少し視界が暗くなって……思い出がより鮮明に浮かび上がってくる。スパルナは……なんだかんだ言って大体笑顔でいてくれた。そりゃ戦闘中とか……真剣だったりとかもしたけれど、今振り返ってもあの子との思い出の大体は、嬉しそうに笑う姿だったんだ。
「……俺、スパルナに救われてた。それなのに……俺は……!」
ロンギルスを倒して、ヘルガも兄貴に倒された。シアロルはもう終わりだ。その安心感からか、俺の目からは涙が溢れ出ていた。絶えず止まる事のない俺は、両手で目で覆って、抑えようとしても止まらない。
もう、終わった。そう……全てが終わったんだ。本当なら喜ばないといけないはずなんだ。
シアロルの頂点がいなくなったことで、兵士たちの統率は乱れ、士気だってもの凄く下がっているはずだ。制圧までには時間が掛かるかも知れないけれど、それでも兄貴がいるグランセスト側が勝利するのは時間の問題だ。その後もかなり揉める事にはなるだろうけれど、平和への道は開かれるはずだ。
それなのに……俺の心の中には何も残ってなかった。怒りも喜びも湧き上がってこなくて、悲しみも涙が流れる度に抜け落ちていくようだ。守ると決めたスパルナも、俺のせいで失ってしまった。
あの時は完全に怒りと勢いだけでなんとか戦うことが出来た。確かに仇は討った。でも、これが残された者の感情ってやつなのか……?
ただただ、虚しいだけ。
夢だったらいい。嘘だったらいい。そんな虚構がよぎっては消えるだけだった。
――
どれだけの時間泣いていたかわからないけれど……誰かが部屋に入ってくることもなくて、枯れ果てるまで涙を流したような気がする。
「……もう」
もう、このまま消えてしまいたい。いなくなってしまいたい。死んでしまえば……。
――お兄ちゃん、ぼくの分まで生きて。
スパルナの言葉が頭の中に蘇ってくる。あの時、息絶える寸前のあの子はそう言っていた。こんな情けない俺の事を、最後まで心配してくれていた。
「『生きて』……か……」
随分重い言葉を貰ってしまった。そうだ……。俺はスパルナの為にも生きなきゃいけない。そう思った瞬間、身体中の疲れと空腹を覚えてきた。
「何か食べないと……」
よろよろと起き上がって部屋から出る。どうやら、俺が寝てた部屋は二階にあるみたいで、階段から降りた俺を見つけた男が声を掛けてきた。
「セイル様! お気づきになられたのですか!?」
「……様?」
今までそういう風に呼ばれた事がなかったから、妙に恥ずかしいと言うか……。
「どうされました?」
「いや、なんでもない。それより、何か食べる物ないかな?」
「少し待ってください。すぐに用意致しますので」
頭を下げた男は、どこかに行ってしまった。俺に好意を持ってるみたいだったから思わず言ってしまったけど……結局、あの男は誰だったんだろう?
「まあ、いいか」
今はそんな事より、とりあえず何処かに座ろう。幸い、少し歩いた先に食堂みたいな場所があるし、そっちに行くか。
情けないけど、いつも以上にゆっくり歩きながらそこに向かう。
「あ、あれ……」
食堂に入ったら、数人の鎧を脱いで足元に置いてる兵士だろう魔人たちが食事をしていた。そこの一人が俺のことに気付いて、目を見開いて中腰になっていた。それに気づいた他の兵士も、俺の方に視線を向けてきた。
――一瞬の静寂が訪れて……次に響いたのは歓声だった。
「おいお前ら! 我らが英雄が目覚めたぞ!」
「セイル様! ありがとうございます!」
「俺たちの英雄だ!」
「え、えいゆー……?」
何を言ってるんだ……? 困惑しながら、喜んでいる兵士たちに視線を向けるけど、彼らの態度は全く変わらなかった。
「セイル!」
俺の疑問に答えてくれる者がいなくて困っていると、後ろの方から聞き知った声が聞こえてきた。後ろではパンや薄く切った肉と玉子とか……色々入った食器をトレーに載せている兄貴の姿があった。今まであまり見た事がない優しく微笑んでくれている兄貴の顔は……不思議と心が落ち着いていくような……ようやく帰ってきた、という実感を沸かせてくれたのだった。
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