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第20話 空を裂く黒い翼
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大地が震え、空が悲鳴を上げた。
闇と光のぶつかり合いが止まらず、境界そのものが裂けていく。
黒い雲が渦を巻き、炎のような稲光が空を貫いた。
その中心で、アルデンが両手を広げて笑っている。
「封印の均衡は破れた! これで“主”が目覚める。神と魔が再び相まみえるのだ!」
ユナが祈りを続け、シオンは必死に結界を修復していた。
しかし崩壊は止まらない。
「リオさん、もう抑えきれません! このままだと世界そのものが崩壊します!」
「わかってる……でも、ここで止めるしかない!」
俺は聖剣を握りしめ、光の刃を走らせた。
空間そのものが悲鳴を上げる。
アルデンはそれでも悠然と立ち、黒い靄が彼の背から伸び始める。
それはやがて、翼になった。
「これは……まさか……」ユナが息を呑む。
「神を封じるために生まれた“堕天の器”……奴自身が封印と融合している!」
黒い翼が羽ばたくたびに風が弱まり、光が飲み込まれていく。
アルデンの声が静かに響いた。
「人は希望を語る。だが希望の裏には常に絶望がある。勇者とはその矛盾の象徴だ」
「違う!」
俺は叫び、剣を構える。
「希望は誰かに押し付けられるものじゃない。苦しみの先に、自分で掴むものだ!」
アルデンが笑った。
「ならば証明してみせろ。お前が真の勇者ならば、この翼の黒を超えてみろ!」
翼が広がり、空が完全に暗転する。
圧倒的な力とともに、風そのものが弾けた。
地面から吹き飛ばされそうな衝撃に、ユナとシオンは後方に倒れ込む。
「リオさん!」
声が遠くなった。
全身の血が沸騰するように熱く、意識が霞む。
――その時、胸の中で聖剣が光った。
音が消える。
頭の中に、あの懐かしい声が響いた。
“立て、リオ。剣はもうお前のものだ”
「兄さん……」
“お前の選ぶ道が正しいかどうかなんて、誰にもわからない。だが、“選ぶ”ことだけが勇者の証だ”
気づくと、足元で地が輝いていた。
竜の力、封印の精霊、そして仲間たちの祈りが一点に集まり、俺の剣に宿っていく。
光が形を変え、黒い翼へ真っ向からぶつかる。
「勇者よ、貴様までこの光に溺れるか!」
「違う、繋ぐんだ!」
衝突の瞬間、空が二つに割れた。
雷鳴のような轟音、吹き荒れる爆風。
光と闇の境界がぐにゃりと歪み、空間そのものが反転する。
目を開けると、そこは空の上だった。
浮遊する岩の上、果てしない蒼穹。そして対面には黒い翼を広げるアルデンがいる。
「ここは……?」
「二つの世界の狭間。封印が生まれた“始まりの地”だ」
アルデンは静かに言った。
「お前の兄もここで同じ選択をした。世界を救うか、自分を救うか、だ」
「兄は世界を選んだ。そして俺は――兄を選ぶ!」
剣を構え、全身の力を込める。
光が迸り、周囲の空気が震えた。
「兄さんが残した道を俺が歩ききる。それが俺の答えだ!」
地面を蹴り、空を駆ける。
黒い翼の影が光を呑み込み、聖剣の閃光がそれを貫いた。
光の粒子と闇が混ざり、まるで夜明けのように境界が揺れる。
互いの刃がぶつかり合うたび、世界の輪郭が軋む音がした。
「なぜだ! 人は何度だって裏切る! 希望は歪むだけだ!」
「だからこそ何度でも立ち上がるんだ!」
一歩、一閃。
俺の剣がアルデンの胸を貫いた瞬間、黒い翼が粉々に砕け散った。
沈黙。
時間が止まったかのように世界が静止する。
アルデンは微かに笑い、血に濡れた手で俺の肩を掴んだ。
「お前にもいつか分かる。正義とは、犠牲を受け入れた者の名だ。……レオンのようにな」
「俺は兄さんとは違う。犠牲を“超えて”生きてみせる」
アルデンの目が僅かに見開かれ、やがて光を失った。
翼の破片が風に舞い、空が再び青く染まっていく。
裂けた空の亀裂が閉じ、世界が再び形を取り戻した。
俺は力が抜け、その場に膝をついた。
遠くでユナとシオンの声が聞こえる。
「リオさん!」
彼らが駆け寄ってくる。地上の光がゆっくりと戻り、封印の崩壊は止まっていた。
ユナが安堵の息をつく。
「封印が安定しました……でも、まだ完全ではない。このままだと、あなたが……」
「大丈夫だ。俺がいる限り、この剣が世界を支える」
聖剣を地に突き立てると、光が地脈を走った。
草が芽吹き、枯れた大地が色を取り戻していく。
シオンが呆然と呟いた。
「……本当に、世界が再生してる」
ユナが微笑む。
「リオさん、あなたはもう勇者です。誰の影でもない、あなた自身の伝説を刻んだ」
「いや、まだ終わってない。兄さんを……完全に取り戻すまでは」
空を見上げる。
消えゆく雲の隙間に、黒い羽が一枚だけ漂っていた。
それは、さっき砕け散ったアルデンの翼の欠片だ。
手を伸ばすと、羽は光に変わり、聖剣の中へ吸い込まれていった。
まるで、闇さえも光に還るように。
「兄さん……見ててくれ。俺はまだ、戦う」
風が吹き抜け、封印の地に静かな夜が訪れる。
空には、光をまとった白い翼がひとつ残されていた。
それが、希望の形だと信じながら――俺たちは次の道へ歩き出した。
(続く)
闇と光のぶつかり合いが止まらず、境界そのものが裂けていく。
黒い雲が渦を巻き、炎のような稲光が空を貫いた。
その中心で、アルデンが両手を広げて笑っている。
「封印の均衡は破れた! これで“主”が目覚める。神と魔が再び相まみえるのだ!」
ユナが祈りを続け、シオンは必死に結界を修復していた。
しかし崩壊は止まらない。
「リオさん、もう抑えきれません! このままだと世界そのものが崩壊します!」
「わかってる……でも、ここで止めるしかない!」
俺は聖剣を握りしめ、光の刃を走らせた。
空間そのものが悲鳴を上げる。
アルデンはそれでも悠然と立ち、黒い靄が彼の背から伸び始める。
それはやがて、翼になった。
「これは……まさか……」ユナが息を呑む。
「神を封じるために生まれた“堕天の器”……奴自身が封印と融合している!」
黒い翼が羽ばたくたびに風が弱まり、光が飲み込まれていく。
アルデンの声が静かに響いた。
「人は希望を語る。だが希望の裏には常に絶望がある。勇者とはその矛盾の象徴だ」
「違う!」
俺は叫び、剣を構える。
「希望は誰かに押し付けられるものじゃない。苦しみの先に、自分で掴むものだ!」
アルデンが笑った。
「ならば証明してみせろ。お前が真の勇者ならば、この翼の黒を超えてみろ!」
翼が広がり、空が完全に暗転する。
圧倒的な力とともに、風そのものが弾けた。
地面から吹き飛ばされそうな衝撃に、ユナとシオンは後方に倒れ込む。
「リオさん!」
声が遠くなった。
全身の血が沸騰するように熱く、意識が霞む。
――その時、胸の中で聖剣が光った。
音が消える。
頭の中に、あの懐かしい声が響いた。
“立て、リオ。剣はもうお前のものだ”
「兄さん……」
“お前の選ぶ道が正しいかどうかなんて、誰にもわからない。だが、“選ぶ”ことだけが勇者の証だ”
気づくと、足元で地が輝いていた。
竜の力、封印の精霊、そして仲間たちの祈りが一点に集まり、俺の剣に宿っていく。
光が形を変え、黒い翼へ真っ向からぶつかる。
「勇者よ、貴様までこの光に溺れるか!」
「違う、繋ぐんだ!」
衝突の瞬間、空が二つに割れた。
雷鳴のような轟音、吹き荒れる爆風。
光と闇の境界がぐにゃりと歪み、空間そのものが反転する。
目を開けると、そこは空の上だった。
浮遊する岩の上、果てしない蒼穹。そして対面には黒い翼を広げるアルデンがいる。
「ここは……?」
「二つの世界の狭間。封印が生まれた“始まりの地”だ」
アルデンは静かに言った。
「お前の兄もここで同じ選択をした。世界を救うか、自分を救うか、だ」
「兄は世界を選んだ。そして俺は――兄を選ぶ!」
剣を構え、全身の力を込める。
光が迸り、周囲の空気が震えた。
「兄さんが残した道を俺が歩ききる。それが俺の答えだ!」
地面を蹴り、空を駆ける。
黒い翼の影が光を呑み込み、聖剣の閃光がそれを貫いた。
光の粒子と闇が混ざり、まるで夜明けのように境界が揺れる。
互いの刃がぶつかり合うたび、世界の輪郭が軋む音がした。
「なぜだ! 人は何度だって裏切る! 希望は歪むだけだ!」
「だからこそ何度でも立ち上がるんだ!」
一歩、一閃。
俺の剣がアルデンの胸を貫いた瞬間、黒い翼が粉々に砕け散った。
沈黙。
時間が止まったかのように世界が静止する。
アルデンは微かに笑い、血に濡れた手で俺の肩を掴んだ。
「お前にもいつか分かる。正義とは、犠牲を受け入れた者の名だ。……レオンのようにな」
「俺は兄さんとは違う。犠牲を“超えて”生きてみせる」
アルデンの目が僅かに見開かれ、やがて光を失った。
翼の破片が風に舞い、空が再び青く染まっていく。
裂けた空の亀裂が閉じ、世界が再び形を取り戻した。
俺は力が抜け、その場に膝をついた。
遠くでユナとシオンの声が聞こえる。
「リオさん!」
彼らが駆け寄ってくる。地上の光がゆっくりと戻り、封印の崩壊は止まっていた。
ユナが安堵の息をつく。
「封印が安定しました……でも、まだ完全ではない。このままだと、あなたが……」
「大丈夫だ。俺がいる限り、この剣が世界を支える」
聖剣を地に突き立てると、光が地脈を走った。
草が芽吹き、枯れた大地が色を取り戻していく。
シオンが呆然と呟いた。
「……本当に、世界が再生してる」
ユナが微笑む。
「リオさん、あなたはもう勇者です。誰の影でもない、あなた自身の伝説を刻んだ」
「いや、まだ終わってない。兄さんを……完全に取り戻すまでは」
空を見上げる。
消えゆく雲の隙間に、黒い羽が一枚だけ漂っていた。
それは、さっき砕け散ったアルデンの翼の欠片だ。
手を伸ばすと、羽は光に変わり、聖剣の中へ吸い込まれていった。
まるで、闇さえも光に還るように。
「兄さん……見ててくれ。俺はまだ、戦う」
風が吹き抜け、封印の地に静かな夜が訪れる。
空には、光をまとった白い翼がひとつ残されていた。
それが、希望の形だと信じながら――俺たちは次の道へ歩き出した。
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